俳優探偵 僕と舞台と輝くあいつ (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041062388

作品紹介・あらすじ

売れない舞台役者麦倉は、オーディションを受けまくる毎日。そんな中、話題の2.5次元舞台「ヴァンパイア・ドライブ」のオーディションに合格するが・・・・・・友情、裏切り、過酷な競争が謎を呼ぶ!

感想・レビュー・書評

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  • 面白いです。と思います。
    タイトルに「探偵」とあるしミステリーだと紹介されているのですが、論理とかの他愛なさはいっそ挑戦的なほどでした。
    私は「佐藤友哉だから」という理由で手に取ったクチなので、なんら違和感はなく、むしろこの虚構と現実の喰らい合いみたいな様がスリリングで楽しかったです。

    第三幕「観ると死ぬ舞台」がやはりとても好きです。
    『猫の首』の真相をどう受け止めるか、意見分かれそうですが、私は信仰するみたいに納得してしまう。ちょっと大げさかなと思いつつ、薔薇の名前に似た種類の衝撃でした。その犯罪(といっていいのか)の、純度の高い美しさ。

    この作品、ジャンル分けするならなんでしょう……青春小説とかになるのでしょうか。
    でも私なら、ほんのひとつふたつの文章を拠り所にして文学だという。
    大団円の、死ぬまでつづく幸福の件とかけっこうな号泣しましたし。
    水口との殴り合いを経た後の
    >日常生活は完成された。
    だなんてもう、まだ2月始まったばかりで気が早いですが、2018年私に刺さった文章ベスト入り確実です。痛いよう。方向性が違うけれど、作中の言葉を借りればまさに「電流」的で、このまま間もなく完成されてしまうと怯えている身にとっては。
    電流と言えば、兄に初めて芝居を観に連れて行ってもらったエピソードそのものが、絶大な電気を帯びていると思う。だから一見、フィクション的ストレートに思えるムギ君の精神の遍歴(?)が、他にはない説得力を持っている。

    なんだか曖昧な言い方ばかりしてしまったけれど、要約すると「あー私やっぱ佐藤友哉書くもの好きなんだなー!」ということです。

    がんばれムギ君。シカ君も。
    今、読めて良かった。

  • ムギくんの歪んだ低空安定志向は自己投影してしまう。
    屁理屈の正論で自分を雁字搦めにして、正当化して、言い訳して、冒険はなく完璧さが、無敵さがそこにはある。
    だけどそれは常に同じ所にいるだけで、
    誰かと繋がることも、進むことも、残ることもない。
    この爆発しそうな自己顕示欲と生き抜くためには
    このすばらしい地獄を受け入れて進んでいくしかない。
    相変わらず言い回しが心地よかった。

  • トオル 「これはどんな本なの?読書に詳しい人!教えて!」
    昆虫博士「トオルくん。こんにちは。この本を紹介しよう。まず虫が出てこないよ」
    トオル 「そうなんだ。どんな本なの?」
    昆虫博士「2.5次元ミュージカルの俳優がなんか謎を解いたり解かなかったりする本だよ。俳優だし、表紙の絵から20代前半の専業俳優だと思ったけど、実は高校生だったという意味不明なメタミスリードが一番面白かったよ。作中で高校生要素はほぼ生かされない」
    トオル 「高校生なのに俳優なんだね」
    昆虫博士「正確には、オーディションにすら受からないので俳優じゃないし、しかも探偵でもない。なんだこの本」
    トオル 「おもしろかったですか?」
    昆虫博士「ミステリ要素がとにかくハテナだらけで、読み進めるのに非常に苦労したよ。できればお勧めしないね」
    トオル 「わかりました!教えてくれてありがとうございます!」
    昆虫博士「せめて虫の1匹でも出ていたら、と思うと残念でならない」

  • 「だからといって、百年も二百年もしんみりしていることはできない。生きているもの! きみはそれを、薄情と呼ぶのかい? あのねムギ君、気持ちはわかるが、生者と死者の区別ははっきりさせておきなさい」
    (P.254)

    今日が千秋楽。これですべてが終わり、そしてまたはじまるのだ。次の舞台が決まって、オーディションを受けて、落ちたり受かったりして、次の舞台、そのまた次の舞台……。
     死ぬまでつづく、その幸福。
     死ぬまでつづけるための、その努力。
    (P.282)

  • 主人公がいけすかない。
    こういう役者が自分の好きなキャラを演じているって知ったら、呪いたくなりそう。まあ、だからこそ、彼は受からないのだろうが。

  • 2.5次元舞台×ミステリ―×青春

    どれの要素も調和しておらず、
    ミステリー要素をいっそ省いたほうが面白いのではないかと思った。

  • 久しぶりのミステリ作品。
    相変わらず謎解きはあんまり練られたものではない。

    青春小説としての印象の方が深め。
    成功することの苦しみ、認められないことの苦しみ。
    未だに作者がもがいてるのが伝わる。

    個人的にはもっと純文学した作品が読みたい。

  • ん~、ん~、ビミョー。キャラは悪くないけど…。主人公よりワキの鹿間やビビ先輩のが立ってるし。全然探偵じゃないし。探偵してるのは俳優じゃなくて引きこもりの鹿間だし。

  • 日常ミステリ×佐藤友哉
    今風小説×佐藤友哉

    それすなわち、
    まるくなった佐藤友哉。

    読みやすくて面白いって、佐藤友哉に対しては、
    褒め言葉ではない気がする。

  • アニメや漫画の世界観を演じる2.5次元舞台。
    架空のテニスコートを走り回り
    架空の自転車で競い合い
    プロジェクションマッピングの魔法を使う。
    そんな舞台で役者に求められるのは、作品の為に個を差し出すこと。
    それでもなお、舞台の上に持ち込んでしまう個人のドラマの功と罪。

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著者プロフィール

1952年北海道釧路市生まれ。
1974年に北海道教育大学札幌分校特設美術課程卒業(美学・美術史専攻)。1976年に北海道教育庁北海道新美術館建設準備室の学芸員、翌年には北海道立近代美術館学芸員となる。1985年北海道立旭川美術館学芸課長。1990年からは北海道立近代美術館に戻り、2004年同館学芸副館長。2012年から2022年まで札幌芸術の森美術館館長を務める。この間、それぞれの美術館で数多くの北海道ゆかりの作家の個展や現代美術展を企画開催。
現在、AICA国際美術評論家連盟会員、北海道芸術学会会員、北海道美術館学芸員研究協議会会員。また旭川市中原悌二郎賞、札幌市本郷新記念札幌彫刻賞、ニセコ町有島武郎青少年公募絵画展、北海道陶芸展などの審査員を務める。

「2023年 『北の美術の箱舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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