- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041063361
作品紹介・あらすじ
母親の脳手術と死、そして解剖--。死化粧を前にした人びとの姿を、苛酷なまでのリアリティで濃密に描き、芥川賞候補となった「死化粧」。心臓移植を描いた「ダブル・ハート」他、初期医療小説を収録。
感想・レビュー・書評
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今作の医師たちは患者を治す立場にいない。
死んでいく患者たちと向き合う立場にある。それもあって、どの話もすごく重い…。
「死化粧」では医師の母の死。「訪れ」ではゆっくりと着実に向かう死。「ダブル・ハート」では決定的な死を医者が与えることになる。
これらの中で特に「訪れ」の衰弱し、狂っていく患者に対する主人公の心持ちと、「ダブル・ハート」の殿村の心持ちが印象に残った。
「訪れ」では、患者に死の引導を渡せず、ダラダラと希望を持たすような嘘をつき続ける医師の苦悩が描かれている。医師は体を治すだけでなく、ひとの心にも延々と向き合い、時には目を逸らさなければならない酷な仕事だと思った。
「ダブル・ハート」の殿村は派閥争いのある大学病院に勤務している。戦いの中にいる環境の為、患者を生かすために植物状態の患者の心臓を抜き取ることを任されたことを屈辱に感じ、負け戦だと思っている。と同時に、その妻と交流をすることで勝負事でない部分での葛藤や苦しみを味わっていく。
この行ったり来たりを繰り返す感がすごく印象に残った。やっぱりどうやってもひとは多面体で、だから辛いんだとも思った。
最後、移植した患者が死亡したことを妻と笑い合うことで殿村の立場は私たちに確固としたものにうつる。
作者は元々医師であり、そこから小説家に転身したと知った。経歴でひとを決めつけるのは良くないけど、だからこそ医療現場のすえた匂いがする部分を克明に描けるんだなと思った。
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死化粧が処女作にして芥川賞候補、訪れと霙が直木賞候補らしい。
いずれも人間の生死がテーマになっており、描写がリアルなだけに読後感はすこぶるよくない。脳腫瘍、癌、心臓移植、重症心身障害児、いずれも単純な物語にならないのが渡辺氏の文章力である。
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大学時代読み漁った渡辺淳一の中の一冊
ほとんどは実家に置いたままのはずなのだが、なぜかこれだけ自宅にあった。
著者プロフィール
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