いつかの人質 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 1277
感想 : 103
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041063392

作品紹介・あらすじ

宮下愛子は幼いころ、ショッピングモールで母親が目を離したわずかなすきに連れ去られる。それは偶発的に起きた事件だったが、両親の元に戻ってきた愛子は失明していた。12年後、彼女は再び何者かによって誘拐される。一体誰が? 何の目的で? 一方、人気漫画家の江間礼遠は突然失踪した妻、優奈の行方を必死に探していた。優奈は12年前に起きた事件の加害者の娘だった。長い歳月を経て再び起きた、「被害者」と「加害者」の事件。偶然か、それとも二度目の誘拐に優奈は関わっているのか。急展開する圧巻のラスト35P! 文庫化に当たり、単行本から改稿されたシーンも。大注目作家のサスペンス・ミステリー。(解説:瀧井朝世)

感想・レビュー・書評

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  • 幼い頃に連れ去られ、12年後に再び誘拐事件に巻き込まれる少女と、登場人物のそれぞれの視点で展開していくミステリー。

    登場人物の独白形式の進行は多角的な視点により、物語に新たな魅力や驚きが芽生えて、どんどんと惹き込まれていくことが多いのだが、今回は進展に疑問符が増え、理不尽なオチに、残念ながら何の共感も得ることができなかった。

    好きな著者だけに、またの作品に期待しよう。

  • 2回も誘拐されるって…可哀想過ぎる(涙)愛子ちゃん。
    1回目の誘拐で、目が不自由になったけど、それを感じさせないぐらい明るく生きている。
    それが、また、誘拐とは…
    でも、一緒に行った友達は、どうしてんねん。君らも多少の罪悪感はないのか?
    全然、登場してないような。それは、当事者のせいではなくて、作者のせいか^^;
    まぁ、そんな偶然は、あんまりないから、何か必然があるとは考えるな。
    更に1回目の誘拐の関係者が、関連すると。更に失踪してるとなると。
    警察もそう考えて、探す。
    失踪だけでは、な〜んもしてくれんかったのに…

    急展開するラストというほど、回ってはおらんけど、まぁまぁ面白かった。

    自身は、自覚なくても才能が溢れてくる人の近くにいてるとツライわな。

  • 偶発的に起きた誘拐事件により失明した愛子。12年後、再び誘拐されてしまう。
    容疑者として浮上した優奈は、12年前の誘拐犯の娘だった。
    相手の夢を叶える為に、漫画家になった礼遠。傍目からみたら、借金完済してくれて浮気も許し、出来すぎた夫だが、夫婦で同じ夢を持ちどちらかが才能に溢れていたらやはり上手くいかないのかな。
    理不尽な理由での誘拐ではあったが、あんな目に合いながらあの状況で、冷静に物事を考え成長していく愛子が良かった。
    努力だけではどうにもならない事が沢山あるが、優奈が夢を諦めていたら、起こらなかった事件だったと思う。

  • 記録

  • 期待してたのと少し違った。「急展開する圧巻のラスト」に期待しすぎたからかな?
    新手のストーカーの犠牲者となった愛子。優奈もまた。
    我が子が事件でも事故でも被害に遭えば、愛子の両親のような葛藤は自然な事なのだと思う。
    あと少しで3.11。子どもを亡くした親御さんたちのインタビュー報道が多いのでそこに目がいくのかも。
    愛子の成長が救いでした。

  • ほんのひと握りの人しか成功しない夢を持つ人にとって、夢をあきらめるタイミングってこんなにも難しいものなのかな、と思った。
    『漫画家になる夢をあきらめる』って言えていたらこんなにたくさんの人を巻き込まずに済んだのでは?と思わずにいられない。
    ラストシーンで、まだ夢を捨てきれていない優奈に、もうやめときなよーーーって言いたくなった。
    単行本の違うラストも読んでみたい。

  • 気鋭の作家のサスペンス・ミステリ。

    宮下愛子は子供の頃、母親とはぐれて連れ去られ、その過程で失明してしまう。
    12年後、友人と出かけたコンサート会場で、彼女は再び、何者かに連れ去られる。
    彼女が2度も「誘拐」事件に巻き込まれたのはなぜだったのか。

    実は最初の事件は、意図された誘拐ではなかった。たまたま連れ去られた形になり、失明したのも転落事故が原因だった。だが、誤って愛子を連れ帰り、大怪我をさせてしまった尾崎典子は慌てた。自分と娘の優奈に影響が及ばぬよう、誘拐事件をでっちあげ、架空の犯人のふりをして身代金を要求する。しかしそれは当然のごとく、バレた。典子は罪に問われるが、執行猶予がつけられる。
    そして12年が経った。

    事件は、大人になった優奈、その夫、愛子の父、愛子、事件を捜査する刑事、その他、いくつかの視点から語られる。
    優奈は人気漫画家の江間礼遠と結婚していたが、愛子の2回目の誘拐事件の直前に離婚を申し出て失踪していた。物語が進むにつれ、優奈の失踪より前に、礼遠と優奈がとある理由で、愛子の家を訪ねていたこともわかる。
    一方で、眼の見えない愛子の監禁シーンは、「見えない」中で誰ともわからぬ犯人に翻弄される恐怖を描いて秀逸である。映像にはない、小説ならではの描写だろう。

    実は、語り手の中には、「信頼できない語り手」がいる。語っていることの背後に、語っていないことがある。物語が進むにつれ、読者の違和感は膨らんでいく。そして終盤にすべての謎に答えが出る。

    よく練られたプロットである。
    が、ストーリーは爽快とは言えない。
    愛子の両親は愛子の失明に責任を感じ、守り寄り添い育てている。そこにあるのは確かに愛だが、同時に束縛でもある。いつまで? どこまで? 両親の庇護が及ばない未来があることを、愛子も両親も知っている。そこに事件が起こる。
    優奈は自身も漫画家を目指していた。だが、到底夫の才能にはかなわない。彼女は次第にわからなくなる。本当に自分は漫画家になりたかったのか。どこか居場所を求めていただけではないのか。夫は優しく才能にあふれ、心から優奈を愛している。傍目から見れば完璧な幸せである。だが、果たしてそうだろうか。
    誰もが誰かに囚われている。誰もが何かに固執している。
    「人質」となったのは誰なのか。事件が解決した後、事件に関わったすべての人々は「解放」されるのか。
    わずかに一人、凛と立とうとする愛子の姿が清々しい。

    なお、文庫版と単行本版では、ラストに若干の違いがあるそうである。そのあたりを読み比べてみるのもおもしろいかもしれない。

  • プロローグから引き込まれ、続く第一章からもテンポよく話が進みあっという間に読み終わった。

    とにかく愛子ちゃんが可哀想で仕方がない。
    昔も今も彼女は何も悪くないのに。

    中学生って悪意のない残酷さがあって、読んでいて辛かった。
    でも障害のある子にあんなに無神経になれるかなぁとも思ったり。
    犯人の動機は分かったけれど、その目的で誘拐したならあんなに酷いことしなくても・・

    必要以上に愛子ちゃんが悲しい目に遭っているように思えた。

  • 主人公の愛子は12年前の連れ去り事件の際失明してしまいます。

    12年後、再び愛子は何者かに誘拐されてしまいます。
    同時期に、愛子連れ去り事件の犯人の娘である江間優奈が失踪します。
    優奈は愛子が連れ去られる前に、夫の江間礼遠とともに愛子のお宅へ謝罪に訪れています。
    12年前の事件から再び被害者と加害者の線が繋がってしまいました。
    そこからの愛子誘拐事件。

    犯人はやはり優奈なのか…?
    という展開で、犯人はやはりあの人か、と割と早い段階でわかってしまうのですが(伏線があるので)でもそれでも引き込まれてしまいました。

  • 最後の結末の所でゾッとしてしまった。どうしても頭ではこんなんだろうなという内容を描いてしまうが、一気に最後で変わっていった。
    久しぶりにおぉ〜と思う作品だった。

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著者プロフィール

芦沢央
1984年東京都生まれ。出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。『火のないところに煙は』が静岡書店大賞を受賞。吉川英治文学新人賞、山本周五郎賞、本屋大賞、直木賞など数々の文学賞候補にノミネートが続いている。著書に『許されようとは思いません』『カインは言わなかった』『汚れた手をそこで拭かない』『神の悪手』など。

「2022年 『夜の道標』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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