滅びの園

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  • KADOKAWA (2018年5月31日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784041064320

作品紹介・あらすじ

突如天空に現れた<未知なるもの>。 世界で増殖する不定形生物プーニー。 抵抗値の低い者はプーニーを見るだけで倒れ、長く活動することはできない。 混迷を極める世界を救う可能性のある作戦は、ただ一つ――。

感想・レビュー・書評

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  • 新海誠の映画を見ているような、満足感。異生物が「天気の子」の空の上の生物で脳内再生されてしまった。ストーリーは全然違うのだけど。

    異世界転生、ロールプレイングゲームのような雰囲気もあるファンタジー世界とSFの融合という感じ。異次元の存在「未知なるもの」と、それに呼応して出現した白く有害な不定形生物「プーニー」が地球を脅かすという設定。「プーニ―」というのは、何かの隠喩だったのだろうか。体質によって、耐プーニー性の強い人がいるらしく、彼ら、彼女らが地球を救うために活躍する。放射能?ウイルス?実社会でも、こうした未知なるものに対して、耐性を示す人というのは存在する。

    世界を取り戻すために何を犠牲にしなければいけないのか。登場人物それぞれの守りたいものに対する葛藤や物語に引き込まれる。恒川光太郎の小説は恐らく初めて読んだが、また読んでみたいなと思う作品だった。

  • 恒川先生らしいSFファンタジーの内容。
    ある男性が異世界に迷い込む。そこは現世と違い、ストレスなく、居心地もよく、理想が現実になる世界。その男性は戸惑いながらも、その世界を満喫していく。
    いっぽう、現世(地球)では突如「地球外生命のようなもの」が現れ、大勢の人が死んでいく。解決の鍵を握るのが異世界のその男性。
    ファンタジー(異世界)と現世(地球)を上手く結びつけて、この男性や地球で生きている人の苦悩を分かりやすく表している作品。
    恒川先生の想像力に驚かされる小説です。

  • 水槽の中の脳の話かと思ったら、トロッコ問題の話だった。思考実験が流行ってたときに感じたことだが、トロッコ問題って悪趣味。それを小説にするとこんな感じかな。
    トロッコ問題が盛り上がる世の中にウンザリした気持ちが、そのまま小説後半部分への共感につながった。

  • 気がつけば最近手に取っていた本は、世界が滅びるとかそういう方向に進むものが連続していた。

    第一章では日常で生きていたはずの鈴上健一が、いつの間にか見知らぬ土地(世界)に迷い込み、生き始める。
    その世界は現代世界というより桃源郷のような社会で、家や乗り物こそ現代風なものの、魔物とか魔女とか最果ての丘駅とか精霊の森駅とか、とにかくネーミングがファンタジーであり、ふわふわとした読み心地でなんだか落ち着かなかった。
    しかも鈴上の前に唐突に現れた人物・中月の話す内容が(あとの章を読めば本当なのだけれど)、まだ鈴上の生きる第一章しか読んでいなかったときには、とても不気味な話にしか見えなかった。

    第二章ではそれが突然、読者のいる現実に近い世界観になる。
    しかしそこは、謎の物体・プーニーが現れた、恐ろしい世界。
    プーニーという名前はなんだかギャグのようだけれど、それに耐性のない者は死んでしまったり、プーニーをあやまって食べたものは約七日でプーニーの塊になってしまうという、狂気の世界に変わっていく。
    第一章の終盤に登場した中月の話していた世界の裏づけが第二章以降されていくのだが、第一章と第二章の世界観のギャップがすごすぎた。

    他のレビューを見ているとなるほど、自分のいる立場で正しいとされる行動が変わってしまうことがテーマなのか…とおもったが、読めば読むほど私の目には鈴上が悪者に見えていってしまった。
    鈴上が第一章で生きていた世界を壊され、鈴上もまた被害者と言えるだろうに、読めば読むほどなぜかそんな鈴上の言動が傲慢に見えていった。
    「滅びの園」も、鈴上にとっての園と、第二章の世界での園が全然違い、どちらかの園しか残ることはできないのだが、どちらが残ったほうがいいと決めきれなさがあった。
    ただ、鈴上のことは、話を読めば読むほど好きになれなくなっていたので、個人的には第二章の主人公・相川のいる世界のほうをとりたかった。
    これは桃源郷でしあわせそうに生きていた鈴上への、嫉妬なのだろうか?
    もし自分がこの世界にいたならば、おそらく自分は相川のいる世界(プーニーに脅かされる世界)にいたはずだったからだろうか?おそらく、そうなのだろう…
    だからこそ、プーニーのいる世界は本当に怖かったし、なんとかしてほしかった。

    世界を救うための突入者を公募する話では、戦時中の特攻隊を思い出し、すごく気持ちが沈んだ。
    そんな中で出てきた「誰もが誰かのために生きている」(225ページ)という一文の気持ち悪さといったら、なかった。
    一方通行とほぼわかっている突入に、こんなにも多くの人が志願する状況が、とても異様で、すごく怖かった。

    鈴上にとっては自分の世界を守るための正義だった言動も、他者にとっては憎むべきものであった。
    鈴上の生きる世界も見ていたはずなのに、わたしはどうしても、鈴上のことを、憐れむことができなかった。
    むしろ第二章の主人公・相川の人生のほうが、気にかかった。

    ここまでの話運びを考えると、このラストは唐突な感じがしてしまい、「これで終わり??」となってしまった。

  • 夢中で読んだ。日常からとんでもないSFに吹っ飛んでるのに「ああ、あるかもね」って読み進める不思議。
    理剣くんの告白は胸熱。

  • 毎回物語の世界にグッと引き込む力のあるお気に入りの作家さんだが、いつからか世界観がぶっ飛びすぎて、
    ちょっとついて行けなくなったのも事実。
    今回も前半は置いてけぼりをくらい、
    これは最後まで読み切れるのか?と心配になったけれど、なんとか後半馴染んできて読了。
    善とは?悪とは?
    それを判断するのが難しい作品だった。

  • こういう小説は最近の時世と照らし合わせてしまうね。いつまでも続くと思ってた日常がある日急に変わってしまうような。さすがにこのプーニーの襲来に比べれば、まだマシなのかもだけど。
    鈴上氏の立場が1番不遇なのかな。自分で望んだわけではないのに、ある日舞い降りた世界がプーニーの中の世界で、そして地球に戻ってきたらいろんな人から恨まれる存在になってしまうのは。あとは野夏くんも。

  • 夢中になって読んだ。
    自分が主人公の鈴上誠一だったら、きっと同じような選択をしていたと思う。
    元いた世界の人が大変な状況にあるって言われても、「はあ、そうなんすか。でも、今順風満帆なんで関係ないっすわ。」と言い放つと思う。
    現実の世界で手に入れられなかった幸せを守ろうとして結果的に想念の異界でも思い通りに行かなかった主人公が気の毒だった。

  • 面白かった。恒川さんの長編小説は、もう本当に自分に合う。
    世界の終わりとハードボイルドワンダーランドのような、2つの世界にわたる話だけど、村上春樹の小説のよりも圧倒的にわかりやすい物語がある。
    理想の世界で穏やかに暮らす人、地獄のような世界で滅びゆく世界に暮らす人、どちらにもどちらなりの正義があり、どちらにも愛すべき家族や隣人はいる。その葛藤が時には淡々と表現されることもあるが、その分、胸が苦しくなるほど響いた瞬間もあった。
    外宇宙から来た生物の思いは語られない。人類の一サンプルとして、そして自身のエネルギー源として、「生物としてのコミニケーション」よりもはるかに高次元の目的での営みだったのかもしれない。語られないが、最後に誠一が幕につつまれる瞬間の一言は感動した。
    「いったいどこに自分の娘を殺す父親がいる?(中略)百回繰り返しても百回あなたたちの敵に回るよ。」
    現実的に僕がそんな選択が迫られることはなくても、でも、僕もきっと、そんな選択をするんだろうと思った。

  • ある日突然空にあらわれた「未知なるもの」によって世界は粛々と破滅へと導かれていくばかりとなったが、世界にはまだ希望が一つだけ残っていた。それは「未知なるもの」に取り込まれた一人の男性の存在だった…

    「プーニー」なるどこかゆるキャラのような名前の侵略者の存在、これを排除する「プニ対」の人々、そして「未知なるもの」に取り込まれた異界へ侵入せんとする「突入者」…。
    ややこしい説明をほぼ省き、淡々とけれどこれらの独特の単語の語感の印象を強く残しながら描かれる物語は、きわめて絶望に彩られ、圧倒的なディストピアな世界。

    されど、あくまで飄々と己を保って生きる人間たち、絵本のようなうつくしく平和な異界、ファンタジーのような魔獣、それらが恐ろしさを緩和して、まるで読む側も不定形の「未知なるもの」に浮かされているかのような、不可思議な世界にたゆたう感覚に囚われていく。

    文章で描かれているのは膨大な数の死であり、暴力であり、絶望であるのに、その重さがどこか「抜けている」。その絶妙なバランスの味わいが、なんともいえず作者らしいと思うのです。怒りを怒りと、悲しみを悲しみと、不幸を不幸と声高に描かずに、それらをひっくるめた「世界と個人」を描けてしまっている。と、思う。

    主人公(異界に囚われた男性)は考えてみれば最初から最後まで現実的には不幸といえる存在でしかなかったけれど、彼にとってはたしかに「幸福」が「現実」にあった。その酷さは、…受け入れられるものじゃあないよなあと、最後、思ったのでした。

  • 基本的な物語の方向性は一貫していながら、常に新しい楽しみを提供してくれる点で、とても評価している作家。だからこそ、単行本が出る度に即買いしてる訳だけど。今回もファンタジー+SF+ミステリ(ホラー)って感じで、それぞれの美味しいとこを上手くブレンドして楽しませてくれます。最初の章だけだと”ん?この程度の世界観?”って思いそうになったけど、マルチ主人公の形式を取って語られる2章目以降、どんどん物語の深みが加わって、どんどん惹き込まれる。突然地球を覆う奇妙な白い物体の造形も見事でした。

  • 2021.1.5

    鈴上さんの『未知なるもの』の中でのほのぼのとした生活より、相川聖子側のプニ対の話の方が面白かった。
    なんとなく、プニ対側は「図書館戦争」を彷彿とさせるような。

    理剣の母ちゃんもぶっとんでて良かった。
    かなりSFっぽいのかなと思ったけど転送装置の説明のとこだけ飛ばし読みすればそこまでSF感はなかったかな。

    最後の鈴上さんの地球帰還後の話はあんまり…よくわからなかった。
    誰も悪くないんだけど、プーニーで家族や大事な人を亡くした人は誰かを憎まないと救われないんだよね。そのわかりやすい標的にされてかわいそう。鈴上さんも帰還したくなかったのにね。

    桜姫とかナリエとか理剣とか変な名前が多かった印象。

    これで恒川作品は全部読破!2020年10月3日に読み始めたので約3ヶ月。
    1人の作家さんをこんなに短期間で読破したのは初めて。
    2020年中に読み終えたかったけれど間に合わなかった。

    個人的なランキングは
    1位(ぶっちぎり)ヘブンメイカー
    2位 スタープレイヤー
    同列3位 竜が最後に還る場所
    白昼夢の森の少女
    無貌の神

    次の作品も楽しみにしてます!

  • 素晴らしい能力、望みの叶う世界、何十億円というお金…そういうものが良きものとして描かれてるのはわびしい。
    夜市、雷〜、秋の牢獄、草祭、金色機械はどれも読み直すほど好きだった。スタープレイヤーはよくわからなかった。万能な世界や多大な報酬を求めてることはもうわかった。わたし自身、人間の描写が好きなので派手でも世界観だけだと物足りなく感じてしまう

  • 疲弊したサラリーマンが異世界に迷い混み、居心地よく暮らしていたら、元いた世界がとんでもないことになっていると知らされる。異世界と現実世界それそれで話が進み、謎を残したままラストへ。あの人どうなったのか、とか本当はどんな施設か、など気になることがいろいろあるのが良い余韻。久々に読んだ恒川作品はとても面白かった!

  • 奇妙な雰囲気のSFと言おうかファンタジーと言おうか。突如地球上に現れた「未知なるもの」と、地上を席巻する地球外生物・プーニーを巡る戦いの物語。地上で増殖し人間を滅ぼしていくプーニーは、どこかしら滑稽に思えるけれどやはり恐ろしいなあ。その対処にも決定的なものがないという絶望的な状況が重いのだけれど、作品としてはそれほど暗くなく、少しわくわくするような読み心地です。
    そして「未知なるもの」に取り込まれて生活する一人の男。逆に理想郷のようなこの世界とそこに現れる魔物の意味、そして世界の核がいったいどこにあるのか。こちらは穏やかな印象のように思えつつ不穏な要素をはらみ、これまたどきどきさせられる展開。
    あまりSFやファンタジーには馴染みがないのだけれど。幻想やホラー好きなら好みに合う要素がいっぱいありました。

  • もの凄く面白い小説だった。
    ユートピア小説であり、ディストピア小説でもある。
    災害パニック小説でもあり、冒険小説でもある。
    ファンタジーやSFの要素もある。
    恋愛小説的な要素もなくはない。
    怖くて読むのを止めたくなったり、良い展開を求めて早く次を読みたくなったりするところもある。
    それらが群像劇で語られる。
    ハッピーエンドかバットエンドかは、読者によると思われる。
    私的には、切なさを残した壮大なハッピーエンドだと思う。

  • 恒川光太郎ワールド

  • 図書館でたまたま見つけ、本の内容や作者の方も全く知らない状態で読み始めた一冊。こんな内容とは!読んでびっくり。面白かった!本の世界に引き込まれてしまい、未知なるものとプーニーに苦しむ世界に入り込んだ夢を見てうなされてしまったくらい(笑) 鈴上誠一に共感するか、地上の人々に共感するか、読む人によって分かれるだろうなと思う。鈴上誠一に共感した私は、この世界に疲れているのかもしれない。なので物語の終わり方も哀しさが残った。地上で戦う人々は、総じて格好良かった。

    コロナ禍の今読んだことで、また感じ方も違ったと思う。緊急時でも意外と普段の日常が続いていく感じをリアルに思った。

    この作品も作者の方も全く知らなかったので、他の作品も読んでみたい。

    映画化とかアニメ化とかすごくやりそうな作品なのに、してないの?と検索した。人々がプーニー化して消滅していく様とか映像化したくなりません?あ、グッズはプーニーで。

  • 一気に読んでしまった。
    危機が訪れていても、良くも悪くも頭のどこかで楽観的な部分があるから人は生きていけるのだと思う。
    あの天国を破壊されたのだという気持ちが私にもある。実態がどうであれ。誠一が不憫だ。
    自分が何を求めているのか、何を重視しているのか、この物語を通じてよく分かった。自分を見つめ直し苦しむ結果になった。
    究極の選択に答えは出せない。1人を選んでも、大勢を選んでも残酷だ。

  • 鈴上さんが不憫。あなたに全地球が掛かっている、と言われてしあわせな『現実』を壊せるのか。以前の記憶が薄れた今、もはや異界が現実となった状態で突然壊されて放り出されて、インタビューの受け答えもそりゃそうなりますよね、と…。 おそろしい存在だけど想像するだけでプーニーかわいい。プニ対の言い方とか。ぷーにーの響きとか。

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著者プロフィール

1973年東京都生まれ。2005年、「夜市」で日本ホラー小説大賞を受賞してデビュー。直木賞候補となる。さらに『雷の季節の終わりに』『草祭』『金色の獣、彼方に向かう』(後に『異神千夜』に改題)は山本周五郎賞候補、『秋の牢獄』『金色機械』は吉川英治文学新人賞候補、『滅びの園』は山田風太郎賞候補となる。14年『金色機械』で日本推理作家協会賞を受賞。その他の作品に、『南の子供が夜いくところ』『月夜の島渡り』『スタープレイヤー』『ヘブンメイカー』『無貌の神』『白昼夢の森の少女』『真夜中のたずねびと』『化物園』など。

「2022年 『箱庭の巡礼者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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