滅びの園 (幽BOOKS)

著者 :
  • KADOKAWA
3.89
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本棚登録 : 451
レビュー : 72
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041064320

作品紹介・あらすじ

突如天空に現れた<未知なるもの>。 世界で増殖する不定形生物プーニー。 抵抗値の低い者はプーニーを見るだけで倒れ、長く活動することはできない。 混迷を極める世界を救う可能性のある作戦は、ただ一つ――。

感想・レビュー・書評

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  • 基本的な物語の方向性は一貫していながら、常に新しい楽しみを提供してくれる点で、とても評価している作家。だからこそ、単行本が出る度に即買いしてる訳だけど。今回もファンタジー+SF+ミステリ(ホラー)って感じで、それぞれの美味しいとこを上手くブレンドして楽しませてくれます。最初の章だけだと”ん?この程度の世界観?”って思いそうになったけど、マルチ主人公の形式を取って語られる2章目以降、どんどん物語の深みが加わって、どんどん惹き込まれる。突然地球を覆う奇妙な白い物体の造形も見事でした。

  • こういう小説は最近の時世と照らし合わせてしまうね。いつまでも続くと思ってた日常がある日急に変わってしまうような。さすがにこのプーニーの襲来に比べれば、まだマシなのかもだけど。
    鈴上氏の立場が1番不遇なのかな。自分で望んだわけではないのに、ある日舞い降りた世界がプーニーの中の世界で、そして地球に戻ってきたらいろんな人から恨まれる存在になってしまうのは。あとは野夏くんも。

  • 疲弊したサラリーマンが異世界に迷い混み、居心地よく暮らしていたら、元いた世界がとんでもないことになっていると知らされる。異世界と現実世界それそれで話が進み、謎を残したままラストへ。あの人どうなったのか、とか本当はどんな施設か、など気になることがいろいろあるのが良い余韻。久々に読んだ恒川作品はとても面白かった!

  • 面白かった。恒川さんの長編小説は、もう本当に自分に合う。
    世界の終わりとハードボイルドワンダーランドのような、2つの世界にわたる話だけど、村上春樹の小説のよりも圧倒的にわかりやすい物語がある。
    理想の世界で穏やかに暮らす人、地獄のような世界で滅びゆく世界に暮らす人、どちらにもどちらなりの正義があり、どちらにも愛すべき家族や隣人はいる。その葛藤が時には淡々と表現されることもあるが、その分、胸が苦しくなるほど響いた瞬間もあった。
    外宇宙から来た生物の思いは語られない。人類の一サンプルとして、そして自身のエネルギー源として、「生物としてのコミニケーション」よりもはるかに高次元の目的での営みだったのかもしれない。語られないが、最後に誠一が幕につつまれる瞬間の一言は感動した。
    「いったいどこに自分の娘を殺す父親がいる?(中略)百回繰り返しても百回あなたたちの敵に回るよ。」
    現実的に僕がそんな選択が迫られることはなくても、でも、僕もきっと、そんな選択をするんだろうと思った。

  • ある日突然空にあらわれた「未知なるもの」によって世界は粛々と破滅へと導かれていくばかりとなったが、世界にはまだ希望が一つだけ残っていた。それは「未知なるもの」に取り込まれた一人の男性の存在だった…

    「プーニー」なるどこかゆるキャラのような名前の侵略者の存在、これを排除する「プニ対」の人々、そして「未知なるもの」に取り込まれた異界へ侵入せんとする「突入者」…。
    ややこしい説明をほぼ省き、淡々とけれどこれらの独特の単語の語感の印象を強く残しながら描かれる物語は、きわめて絶望に彩られ、圧倒的なディストピアな世界。

    されど、あくまで飄々と己を保って生きる人間たち、絵本のようなうつくしく平和な異界、ファンタジーのような魔獣、それらが恐ろしさを緩和して、まるで読む側も不定形の「未知なるもの」に浮かされているかのような、不可思議な世界にたゆたう感覚に囚われていく。

    文章で描かれているのは膨大な数の死であり、暴力であり、絶望であるのに、その重さがどこか「抜けている」。その絶妙なバランスの味わいが、なんともいえず作者らしいと思うのです。怒りを怒りと、悲しみを悲しみと、不幸を不幸と声高に描かずに、それらをひっくるめた「世界と個人」を描けてしまっている。と、思う。

    主人公(異界に囚われた男性)は考えてみれば最初から最後まで現実的には不幸といえる存在でしかなかったけれど、彼にとってはたしかに「幸福」が「現実」にあった。その酷さは、…受け入れられるものじゃあないよなあと、最後、思ったのでした。

  • 奇妙な雰囲気のSFと言おうかファンタジーと言おうか。突如地球上に現れた「未知なるもの」と、地上を席巻する地球外生物・プーニーを巡る戦いの物語。地上で増殖し人間を滅ぼしていくプーニーは、どこかしら滑稽に思えるけれどやはり恐ろしいなあ。その対処にも決定的なものがないという絶望的な状況が重いのだけれど、作品としてはそれほど暗くなく、少しわくわくするような読み心地です。
    そして「未知なるもの」に取り込まれて生活する一人の男。逆に理想郷のようなこの世界とそこに現れる魔物の意味、そして世界の核がいったいどこにあるのか。こちらは穏やかな印象のように思えつつ不穏な要素をはらみ、これまたどきどきさせられる展開。
    あまりSFやファンタジーには馴染みがないのだけれど。幻想やホラー好きなら好みに合う要素がいっぱいありました。

  • 素晴らしい能力、望みの叶う世界、何十億円というお金…そういうものが良きものとして描かれてるのはわびしい。
    夜市、雷〜、秋の牢獄、草祭、金色機械はどれも読み直すほど好きだった。スタープレイヤーはよくわからなかった。万能な世界や多大な報酬を求めてることはもうわかった。わたし自身、人間の描写が好きなので派手でも世界観だけだと物足りなく感じてしまう

  • プーニーという謎の生命体に支配されつつある地球。
    この話はそのプーニーに知らず知らずの内にとりこまれ、その中で生活するようになった男性やプーニーを退治しに行く者、プーニーに家族を殺された人、プーニーの中に入り、核を壊そうとする人々の物語。

    こうやって書くと、まるっきり現実味のない話で、書きようによっては荒唐無稽で陳腐な話になってしまう。
    だけど、この本は冒頭部、プーニーの中に入ってしまった男が「いつの間にか」自然ととりこまれていたように、読んでいる私もすんなりとこの世界観に入り、陳腐だと読んでいて思うこともなかった。
    どころか、読んでいて何となく哲学的な要素を感じた。

    プーニーの中は意外にも過ごしやすい。
    山に行けば金塊やら宝石がころがっていて、それを売ればお金になる。
    だから特に働かなくてもいいけれど、人々が働いているのは役割のため。
    だというのや、
    プーニーの中にいると魔物が時折現れて悪さをするけれど、それはプーニーを退治しようとする地球人だったりする。
    ・・・というのは読んでいて考えさせられる。
    どちらが悪というのは、その人の立場によって変わるんだな・・・と思うし、単純に、お金のために働くのじゃなく役割のために働く、というのはどういうのだろう?と考えさせられる。

    何だかんだと自分の中で思考を巡らしつつ読んでいるとあっという間に読み終えてしまった。

  • 2020.1.5

    鈴上さんの『未知なるもの』の中でのほのぼのとした生活より、相川聖子側のプニ対の話の方が面白かった。
    なんとなく、プニ対側は「図書館戦争」を彷彿とさせるような。

    理剣の母ちゃんもぶっとんでて良かった。
    かなりSFっぽいのかなと思ったけど転送装置の説明のとこだけ飛ばし読みすればそこまでSF感はなかったかな。

    最後の鈴上さんの地球帰還後の話はあんまり…よくわからなかった。
    誰も悪くないんだけど、プーニーで家族や大事な人を亡くした人は誰かを憎まないと救われないんだよね。そのわかりやすい標的にされてかわいそう。鈴上さんも帰還したくなかったのにね。

    桜姫とかナリエとか理剣とか変な名前が多かった印象。

    これで恒川作品は全部読破!2020年10月3日に読み始めたので約3ヶ月。
    1人の作家さんをこんなに短期間で読破したのは初めて。
    2020年中に読み終えたかったけれど間に合わなかった。

    個人的なランキングは
    1位(ぶっちぎり)ヘブンメイカー
    2位 スタープレイヤー
    同列3位 竜が最後に還る場所
    白昼夢の森の少女
    無貌の神

    次の作品も楽しみにしてます!

  • わたしが無意識のうちに夢見る理想郷は、いったいどんなところなんだろうと考える。
    多分、鈴上誠一が辿り着いた異界のような、のんびりとして自然が沢山あって、悪い人がいなくてお金に困らない、どこまでも自分に都合のよいことが永遠に続く世界だと思う。地域ネコも多いに違いない。

    でもわたしは一人でそこに行きたくない。
    だからきっと鈴上誠一のように選ばれることはないと思う。


    恒川光太郎の本を読むのは2冊目で、初めて読んだのは『夜市』という本だった。
    内容はほぼ忘れてしまったが、装丁が美しいのと、不思議なところに迷い混んだような奇妙な気持ちになった感覚だけを覚えている。それと比べると随分テンポのよい躍動感のあるストーリーで意外だった。
    でもとてもよかった。
    なんせ相川聖子の存在がいい。鈴上誠一の世界と対照的で、絶望的な世界の中でも青春の輝きを放ち、様々な人々の死を乗り越えて成長する姿。
    児島に対する自覚のない恋。

    『私は児島と結婚したいなんて一度も思ったことはないし、自分が主婦だの妻だの母だのなんだのしている姿を想像できないのだが、もし誰かと結婚するなら、児島がよかった。』

    結婚するならの後についている「、」がいい。
    これがあるのとないのでは、受ける印象が全く違ってしまう。恋だったんだ、切ないなぁと思う。


    想念の異界に突入してからは戦闘が始まる。
    弱体化の網を潜り抜け、巨大な鎌になった手と2m超えの体に強化した神流舞が、仮面舞踏会の踊りの中へ切り込む姿。
    520の抵抗値が故にそのままの身体の篠塚(元大鹿)理剣が、鈴上誠一の希望のすべてを打ち砕くことを宣言する姿。
    異界に住み、周りを欺き、核を消滅させる作戦を練り続けた野夏旋が鈴上誠一の大切な家族を、自分もろとも爆破させる様。
    すべてがすごい。

    終わり方には賛否両論あるだろうけど、結局ひとりの幸せと、地球ひとつを比べたら、重さは遥かに違うということだ。この地球だって、元々はひとりひとりの存在であってその塊に過ぎないのに、なんだかやるせない気持ちになった。
    でも面白かった。

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著者プロフィール

1973年東京都生まれ。2005年、『夜市』で日本ホラー小説大賞を受賞しデビュー。同作で直木賞候補に。14年、『金色機械』で日本推理作家協会賞を受賞。著書に『雷の季節の終わりに』『秋の牢獄』『南の子供が夜いくところ』『竜が最後に帰る場所』『金色の獣、彼方へ』『南の子供が夜いくところ 』『スタープレイヤー』などがある。

「2021年 『滅びの園』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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