私の頭が正常であったなら (幽BOOKS)

著者 :
  • KADOKAWA
3.82
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本棚登録 : 370
レビュー : 54
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041064351

作品紹介・あらすじ

突然幽霊が見えるようになり日常を失った夫婦。首を失いながらも生き続ける奇妙な鶏。記憶を失くすことで未来予知をするカップル。書きたいものを失くしてしまった小説家。娘に対する愛情を失った母親。家族との思い出を失うことを恐れる男。元夫によって目の前で愛娘を亡くした女。そして、事故で自らの命を失ってしまった少女。わたしたちの人生は、常に何かを失い、その哀しみをかかえたまま続いていく。暗闇のなかにそっと灯りがともるような、おそろしくもうつくしい八つの“喪失”の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 読み終えて著者のプロフィールを見た時に「趣味は焚き火」と書いてあって、分かる!なんて笑ったけれど、実は乙一さんの別名義だったとは知らなかった。

    物語の中には悲しいこどもがたくさん登場して、表題を見てクスッと笑いながら手に取ったことを後悔するほど、「私の頭が正常であったなら」の意味が分かった時には胸が張り裂けそうに苦しくなったりもした。
    死に繋がる苦しい話の連続で、最後の天使の話が全ての話に繋がったような気がして、そこにせめてもの救いを感じた。

  • 帯の「中田永一氏絶賛‼︎!」に笑ったのも束の間…
    ページをめくるたびにチクチクしたようでキラキラしたような冷たさと、とくに後半の4編は涙が溢れてくるやさしい物語の連続でした。

  • 幽霊でてきます、ちょっと怖いです。
    ゾッとしますがホッとしたりもします。

    「喪失」がテーマということで
    限りなく暗い感じがしますが8編の作品は
    ほどよい長さで読みやすかったです。

    暗い感じだけではないのがよかったです。

    最後に薄暗いところから少しだけ光度が増すような終わり方が多くて、
    その話は好みでした。

    「首なし鶏、夜をゆく」だけが苦手。
    タイトル通りだからね。

    山白 朝子と言う作家は
    中田永一であり乙一だそうです。
    おそらくアンソロジーで読んだことありますが、
    1冊全部よんだのは初めて。。と思う。

  • どの暗がりにも
    光がふりそそいでいて。
    私の頭が正常であったなら
    出会うことがなかったものに
    愛を感じて
    また自分を大切にできる気がした

  • 乙一の別名義。幻想オカルト名義とでもいうものかなー。せつない感じの話もあり。

  • 「メアリー・スーを殺して」を読んだ後 
    山白朝子の作品がもっと読みたくなった
    身近な大切な存在を失うと
    死者とか幽霊というものの概念が変わってくる
    なんでこんなに心情が理解できるんだろう。。

  • 帯に「中田永一氏絶賛」とシレっと書いてあるのが良い。短編集。いくつかアンソロで読んだことのある話もありましたが、改めて読みました。

    ・世界で一番、みじかい小説
    世界で一番短い小説とは、たった6つの言葉で構成されている。
    『For sale:baby shoes,never worn.(売ります、赤ちゃんの靴、未使用)』
    ある夫婦のもとに幽霊が出現するようになる。夫婦はその幽霊の出現パターンを突き止めて、彼の正体を探る。
    男はあるレストランの関係者に殺されていて、その時の凶器は料理として出され、夫婦がそれを食べたことが出現理由。

    ・首なし鶏、夜をゆく
    首のない鶏が生きていたという話は知ってました。
    主人公の男の子は、同級生の風子と仲良くなる。風子は親に虐待されているらしい。その風子は親に内緒で、首なし鶏を大事に世話している。主人公も風子を手伝い、その鶏の世話をするが、ある日風子が姿を消す。
    あんなに大事にしていた鶏を置いて風子がいなくなるはずはない。風子は殺されたのだと思った主人公は、警察に通報。
    やがて風子の遺体が見つかる。やはり虐待の果てに殺されていた。しかし、彼女の馘首は切断されており、見つからない。
    主人公は首なし鶏とともに、風味の首を探しに出かける。

    ・酩酊SF
    ある青年の恋人の女性は、酔うと精神だけがタイムトリップできる。青年はそれを使って競馬などをやり、大金持ちになる。しかしその女性はある日、酩酊して「青年が死んでいる」未来を見る。怖くなった青年は主人公に相談する。
    あの手この手で死を逃れようとする青年。
    結局自分のそっくりさんを殺して自分は難を逃れようとする。しかし当然、警察に捕まってしまう。

    ・布団の中の宇宙
    才能はあるのに書けなくなっていた作家。妻子に出て行かれ、狭い部屋で布団にくるまっていると、その布団の中で妙な感触を覚えたという。布団の中の「何者」かと静かに触れ合っているうち、作家は創作意欲を取り戻す。しかし作家は、次第に布団の中の存在を追い求めるようになり、ある日姿を消してしまう。部屋の中に布団を残したまま……。
    布団はどこへつながっていたのだろう。

    ・こどもを沈める
    高校時代、一緒になってある子をいじめていた女性たち。彼女たちは大人になり、結婚して子供をもうけるが、全員が全員自らの手で我が子を殺してしまう。主人公も虐めていた側の一人で、結婚を控えた彼女の許へ、いじめ仲間からの手紙が届く。そこには「生まれてきた子が虐めて相手に見えてくる」といった内容が書かれていた。
    やがて主事項も身籠り、女の子を産む。
    やはり、だんだんいじめた相手の面影が出てきた。主人公は思い悩み、精神科医の助けを借りながら子供と向き合う。
    虐めた相手の生まれ変わりであるかもしれない自分の娘。苦しみながらも我が子として育てていくことを決めた主人公。ものすごい覚悟だなと思いました。

    ・トランシーバー
    震災で妻と子を失った男。ある日息子が遺した玩具のトランシーバーから息子の声が聞こえてくる。
    それに縋るようにして何とか生きている男。
    男はやがて一人の女性と出会う。
    オーソドックスに泣かせる話。
    「あの子はもう死んだんだ」と自覚することは二度死に別れるみたいで心にくる。

    ・私の頭が正常であったなら
    元夫が子供を道連れに無理心中してしまい、残された女性が主人公。
    精神を病んでしまった彼女は実家に戻り、家族に支えられながら自立を目指す。
    漸く散歩に出られるようになった主人公。道端で子どもの声が聞こえて立ち止まる。
    しかしその声が聞こえているのは彼女だけらしい。
    助けを求めるようなその声に、主人公は声の主を探し出そうともがく。
    精神を病んでいなければ、みんなもっとまじめに話を聞いてくれるかもしれないと悩む。
    彼女の奮闘で、家の中に閉じ込められていた衰弱寸前の女の子が見つかる。
    何とか助けたいという切ない思いに胸を打たれた。

    ・おやすみなさい子どもたち
    客船の沈没事故で命を失い、あの世との中間地点にやってきたアナ。しかしそこで天使に見せられた走馬灯、つまり自分の過去の記憶は偽物だった。天使に連れられて本物の記憶を探しに行くアナ。しかしアナの記憶は残っていなかった。

  • 山白朝子氏による短編集。箔押しされたタイトルが朝焼けからふってくるような素敵な表紙です。
    超常現象というか、どの話にもオカルト要素があって、ひらたく言えば世にも奇妙な物語のような口当たりでした。
    ダントツに良かったのは表題作「私の頭が正常であったなら」ですね。元夫から子どもを道連れに無理心中された女性が主人公で、精神を病んでしまった彼女が今後一生抱えていかねばならないその悲しみは余りにも残酷で名状しがたい。
    そんな折、散歩中の道端でどこからか子どもの声を聞き取るようになるがーー。タイトルの意味がわかったとき、もう苦しくて苦しくてたまらなくなった。涙がこらえられない。そうだ、そういう奇跡があったっていいのだ。再生の一歩と言えるほど深い喪失はそう簡単に癒えるものではないが、ふと顔をあげたところに光を感じたようなあたたかさが広がりました。
    ああ、私は乙一さんのこういうところが本当に本当に好きで愛おしさが止まらない……!(とあえてここで述べておきます)

    「トランシーバー」はちょうど二年前にアンソロジーで読んだことがあったけれど、改めて感動。
    最後に「おやすみなさい子どもたち」をもってくるのも素敵。とても優しく安らかな物語で、この短編集すべての話が一気に救われたような気がしました。

  •  「山白朝子」名義の作品は、描写がきつい作品が多かったが、今回が最もきついと断言できる。子を持つ親という立場で読むと、尚更である。これは、現実社会の理不尽そのものだ。

     「世界で一番、みじかい小説」は、本文中に出てくる。霊現象に見舞われる夫婦。普通にホラーの作品かと思っていた。きちんと謎が解かれて終わる。しかし、最後に明かされる事実こそが、主題だった。最初はわからなかった意味が、突き刺さる。

     「首なし鶏、夜をゆく」。いかにもホラーっぽいが、主題は違う。むごい。あまりにむごい。しかし、少年に何ができたというのか。「酩酊SF」。ある特殊能力を借りて、金持ちになった青年。しかし、その能力が、彼に見せた未来とは…。未来への干渉はSFの定番ネタだが、山白朝子流に料理すると、こんな斜め上の結末に。

     「布団の中の宇宙」。書けなくなった作家が、あるきっかけから、執筆意欲を取り戻す。その理由とは…。彼にとって、これでよかったのかは、もはや確認しようがない。確認したくはないが。タイトルからしておいおいおいおい…「こどもを沈める」。それは因果応報なのか? とにかく、踏みとどまってよかった…。

     再収録された「トランシーバー」。震災がテーマとだけ書いておく。こういうのは弱い…。本作中最もきつい「私の頭が正常であったなら」。こういう夫は現実にいそうで、げんなりさせられる。あまりにも酷な体験をした彼女だから、アンテナに受信することができたのだろうか。「2人」とも、この先に幸あれと願うのみ。

     最後の「おやすみなさい子どもたち」。人間は与り知らない、編集スタジオの存在。当然、彼も知らなかったが、何かおかしい…。これには、まさかの真相が隠されていた。きつい作品が多い本作品集にあって、読後感を多少は和らげてくれるだろう。

     子どもが不幸になる作品が多い。その点については勘弁してくれと言いたいが、救いがないことはないので、何とか読み通せた気がする。誰にでもお薦めはしにくいが、黒乙一と白乙一が高度にせめぎ合う、傑作作品集ではないか。

  • この世とあの世の間から顔を出す不可思議な世界。

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著者プロフィール

怪談専門誌『幽』で鮮烈デビュー。著著に『死者のための音楽』『エムブリヲ奇譚』『私の頭が、正常であったなら』がある。趣味はたき火。

「2019年 『私のサイクロプス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山白朝子の作品

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