復活の日 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041065815

作品紹介・あらすじ

生物化学兵器を積んだ小型機が、真冬のアルプス山中に墜落。感染後5時間でハツカネズミの98%を死滅させる新種の細菌は、雪解けと共に各地で猛威を振るう。世界人口はわずか1万人にまで減ってしまい――

感想・レビュー・書評

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  • 子供の頃にテレビで流れていたのを観て、死の街の映像の余りの恐ろしさに、号泣したトラウマ作品です。暫くは夢にまで見て、しんどかった記憶が有ります。
    遅ればせながら、コロナがきっかけになってようやく読了です。
    今読むと、インターネットも無い時代にどれだけの書物を読んで、どれだけの人に取材してこの作品を書かれたのか、その事に唯々感謝しかないですね。
    今読めて良かったです。

  • 2020年、コロナウイルスが世界を席巻した。そこで話題になったのがウイルスの流行を題材とする本作。

    脅威の死亡率を持つ謎のウイルスが世界に流行し、人類は存続の危機に瀕する…という内容。

    まず第一に、ある種の読みづらさは否めない。古典SFに特有の冗長さは見受けられた。何よりも本題に入るまでが長い。

    第二に、パニック映画のような、人々が大混乱に陥る描写は意外と少なかった印象。それよりもむしろ、渦中の人物にスポットライトが当たる。ウイルス研究に携わった科学者や、その辺縁の軍人などが登場する。彼らの葛藤や職務遂行の描写が多かったように思う。

    そういう意味では、静かに、しかし着実に人類はその危機に向かっていくという、そんなストーリーラインだった。エキサイティングな読書体験を期待してはいけない。

    しかし総じて、悪くなかった。コロナウイルスによる混乱を経験した今、本書のある種、予言的だった。流感の描写はやけにリアルで、没入感を持って読ませた。

    驚くべき速度で人が死んでいくので、謎のテンポ感があった。

    第一章の最後、ある人物が独白的に「歴史のif」を問いかけるシーンは痛切さを感じさせた。

    ラストシーンは「悪意が悪意を洗い流す」と言った終わり方。かなりフィクションだけど、寓話的だしSF的。これはこれで面白かった。

    また、特筆すべきは年代設定。本書が書かれたのは1964年。本書の時代設定は50, 60年代だと思われる。当時の日本社会の空気感を面白く読んだ。人々が長寿に対して楽観的なのが印象的だった。長生きすることの負の側面が、社会全体で今ほど認知されていなかったと推測。

    総論。SF小説として、あるいは単に小説として、必読かと問われれば答えに窮する。自分はそれなりに面白く読めたけど、受け付けない読者もいるだろうな、という評価になる。

    (書評ブログの方も宜しくお願いします)
    https://www.everyday-book-reviews.com/entry/%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87%E4%BA%BA%E9%A1%9E%E6%BB%85%E4%BA%A1SF_%E5%BE%A9%E6%B4%BB%E3%81%AE%E6%97%A5_%E5%B0%8F%E6%9D%BE%E5%B7%A6%E4%BA%AC

  • 絶賛コロナ拡大なこのご時世が、まるでこの本を髣髴とさせるとTwitterで回ってきたので、読んでみた。
    作中の時代は1960年代。
    だけど今まさにこの瞬間に、地球のどこかで繰り広げられていることをそのまま書き写してるのではないかと思うほど、現実との境が感じられなかった。
    他の作品も面白そうだから読んでみようと思う。

  • この本を手に入れたのは今から3年前のコロナ禍だった。ずっと「読まなきゃな」と思いながら、ずっと積読にしていた。今年の3月末ごろに読み始めたが、一気読みしてしまった。

    率直な感想は、小松左京、天才か?に尽きる。

    細かな設定は本作で詳しく説明されるが、大まかに言えば「バイオハザードのち世界崩壊」。しかし、この物語はもちろんそれに留まらない。未知のウィルスから生き残った人たちの苦悩が希望的観測なしに描かれている。

    文明も文化も失われた地球上で、もっとも矮小な生き物となった人類は、誕生の時と同じく、幾重もの奇跡と偶然のお陰で、復活の日を迎える。

    小松左京、天才か?

  • あえて今この時期に読見返してみることで、色々改めて考えさせられる不朽の名作

  • 未知のウイルス、世界規模パンデミック…予言の書だと聞き、手にした。科学的解説・宇宙の歴史など、設定がかなり本格的で驚く。世界各国の政治・経済の思惑の絡み合い。このご時世、真っ只中に読むシュールさよ…人間の愚かさ、願い、いつの時代も変わらぬものを感じる。

  • 今の状況と重なるようなウイルスの猛攻による、ちっぽけな地球のちっぽけな人類が消滅する話…かと思いきや、人間が狂気と対抗心から設置したスイッチに翻弄される!最後らへんは話が出来すぎな気もするが、人類が地球上のほんのわずかな哺乳類ということ、手を取り合い協力することを忘れた結果、人類の手により消滅する結果になるのが自業自得だな、と神は言うだろうな。

  • 熱血小松SF祭り続行中。

    細菌兵器といして開発されたウィルス(正しくはウィルスでもない)が冷戦下に事故で漏出してしまう。風邪そっくりの症状であることと、その特性のために存在が特定できないため治療薬が開発できないという恐ろしいウィルス。ウィルスで人類は事実上滅び、生き残った人々にも数年後さらに追い討ちをかける問題が・・・
    世の中のこのタイミングとも相まってゾッとする。

    もう何度読んだだろうか。熱い人類愛あふれる小松SFの傑作。吉住の南極からの旅立ち前夜のシーンは泣いたな。

  • 小松左京のSF長編。
    突如として現れた未知のウイルスによって人類が滅亡していく様と、感染を何とか免れ最後の人類となった一万人の人々が人類復活への道を模索して行動する様が描かれる。

    ストーリーは非常に面白く、示唆的だった。
    「人類の滅亡」さらに「人類の復活」という壮大なテーマを描き切ることができる作者の力量には脱帽する。

    本作で人類の滅亡の直接的原因となったのは未知のウイルスだが、その背景にあるのは大国間の既知の対立である。彼らの対立がもたらす際限なき軍拡の結果として開発されたウイルスが漏出し、そしてこの事実も「軍事機密」の壁により世界の防疫体制に向けて発されることはなかった。
    故に、世界中の人々は必死に闘いながらも、何故人類が滅ぶかもわからないまま、惨めに死んでいく。この凄惨な描写は本書の山場のひとつだろう。

    本作における作者のメッセージは、作中でも何度も語られるように、「人類間の対立を終わらせ、種としての普遍性を獲得すること」の重要性である。
    宇宙や地球レベルから観測すれば、人間など、文明など、表皮をなぞるちっぽけな存在でしかない。そんなちっぽけなもの同士の価値観の違いなどで争っておらず、もっと大きな存在に目を向けてそれを乗り越えるべきだと説く。人間的な精神が巨大な物質に勝つことを目的としなければならないと訴えるのだ。

    本作は1964年に発表された作品であり、旧冷戦の緊張が最高潮に達していた頃に書かれたものである。故に米ソの対立や軍拡が本作の一つの大きなテーマとなっているわけだが、現代に生きる我々もこれを杞憂に満ちた妄想だと切り捨てることはできないだろう。
    確かにソ連は崩壊し、核ミサイルの応酬を招くことも、未知のバイオ兵器が暴走することもなかった。しかし旧冷戦が終結した後も大国間の軋轢と対立は残っている。ロシアはウクライナに攻め込んで今も戦争をしているし、中国はアメリカをはじめとする西側諸国への反感を隠そうともしない。いつこの対立が暴走して、人類を滅亡の道に誘うかはわからない。

    さらに我々は2020年からのCovid-19の流行を本作と重ねずにはいられない。幸い、このウイルスは人類を滅亡させる前に自ら弱毒化し、人類との共生の道を選んだために人類が絶滅することはなかった。
    さらにかつてない速度でワクチンを作り上げ、我々はここに人類の科学の崇高さを感じた。だがそれは同時に世界に「ワクチン格差」を表出させ、このことが現在の発展途上国の人々の将来の反感の種となってしまったとも言える。

    現時点でCovid-19の詳細の発生原因は判明していないが、中国武漢の軍事研究施設から漏出したといつ説もある。発生から3年以上経っても詳細の調査ができなかった今更、これが明るみに出ることはないだろう。しかしこれが事実であるにしろないにしろ、そうした説がまことしとやかに囁かれる現状が非常に危険な状況なのだ。

    「人類は試行錯誤し、間違えながらでしか前に進めない」これはある程度は真実だろう。
    しかし、その試行錯誤がいつか取り返しのつかない事態を招く可能性は常にあることを肝に銘じなければならない。人類の為したことがいつも人類でリカバリーできるとは限らないのだから。

  • 実は映画化されたとき観てるし、その頃に本の方も読んでいる。でも、ほとんど忘れていたので30年ぶりに。

    SFとしての迫力空想が売りなのに、コロナパンデミックの今や切実になってしまってる。ウイルスや細菌などの化学的なことも詳しく描かれてあるのは、前ならちんぷんかんぷんで飛ばし読みしていたと思うが、今、違和感なくよくわかるのがちょっと怖い。当時それだけしっかりし調べあげて書かれたのもすごいと思う。

    小説のおもしろさはもちろんだが、作者の述べたかった思索、哲学的な部分も奥深く、メッセージも厚みのある力作。1964年(半世紀以上前だ!)に書かれたとは思えないというか、空想予言力に満ちみちていて、読み継がれているわけだ。

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著者プロフィール

昭和6年(1931年)大阪生まれ。旧制神戸一中、三校、京大イタリア文学卒業。経済誌『アトム』記者、ラジオ大阪「いとしこいしの新聞展望」台本書きなどをしながら、1961年〈SFマガジン〉主催の第一回空想科学小説コンテストで「地には平和」が選外努力賞受賞。以後SF作家となり、1973年発表の『日本沈没』は空前のベストセラーとなる。70年万博など幅広く活躍。

「2019年 『小松左京全集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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