- Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041066430
作品紹介・あらすじ
この男を失い、日本は焦土と化した。
最期の言葉は「話せばわかる」「問答無用」ではなかった!?
5・15事件の実態はじめ、驚愕の事実に基づく新評伝。
政界を駆け抜けた孤狼の生涯を圧倒的筆力で描く!!
「極右と極左は毛髪の差」(犬養毅)
日本に芽吹いた政党政治を守らんと、強権的な藩閥政治に抗し、腐敗した利権政治を指弾し、
増大する軍部と対峙し続け、5・15事件で凶弾に倒れた男・犬養木堂。
文字通り立憲政治に命を賭けた男を失い、政党政治は滅び、この国は焦土と果てた……。
戦前は「犬養の懐刀」、戦後は「吉田茂の指南役」として知られた古島一雄をもう一人の主人公とし、
政界の荒野を駆け抜けた孤狼の生涯を圧倒的な筆力で描く。
最期の言葉は「話せばわかる」ではなかった!? 5・15事件の実態をはじめ、驚愕の事実に基づく新評伝。
「侵略主義というようなことは、よほど今では遅ればせのことである。どこまでも、私は平和ということをもって進んでいきたい」
(1932年5月1日、犬養首相の日本放送協会ラジオ演説より)
真の保守とは、リベラルとは!? 明治、大正、昭和の課題を、果たして私たちは乗り越えられたのか??
※本書は2017年に逝去された林新氏が厳格なノンフィクションでなく、敢えて小説的な形式で構想し、着手したものを、堀川惠子氏がその意志を受け継ぎ、書き上げたものです。
感想・レビュー・書評
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五一五事件で亡くなった犬養毅の伝記的小説。西南戦争では慶応の学生ながら従軍記者として現場から臨場感溢れる記事を送る。福沢諭吉の秘書のようなことをしているうちに(中略)国会議員になり、大臣になり、首相にまでなる。しかしその過程で辛酸なめまく
り。
まさに大傑作。
清貧を貫き、立憲政治をとことんまで貫く犬養。多量の登場人物。多くの「偉人」が嫌な野郎に見えてくる。山縣有朋、加藤高明、井上毅、原敬など。
どんな風に辛酸をなめるのかがまさに肝なので、ネタバレしないように(と言いつつ、あまりにも多いので思い出せない)これにて終了。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
あとがきにある通り、西南戦争後、日中戦争が始まるまでの国内情勢は政党、首相が目まぐるしく替わり、メディアや一般書で取り上げにくいこともあって、断片的な知識しか無かった。本書の犬養毅のことも、ほんとんど初めて知ったことばかり。
普段はフィクションは読まないが、著者がノンフィクションで傑作を書かれてきた堀川氏ということで手に取った。事前の調査が丁寧になされ、歴史事実に立脚したものであれば、こういう仕立てもかえって自由度が増して良いものだと感じた。
本書の共著者はNHKのプロデューサーで本書の調査をされた亡き夫だという。残された遺作を苦心惨憺の上で完成させたとは、その点でも胸を打つ。 -
ずっと愛読してきた堀川惠子さんが、亡くなったご主人の遺志を継いで書かれた、犬養毅の評伝。
発行から一年ほど経ってやっと購入して、電車の中で、通勤の往き帰りに手にとってやっと読了。
この本で吉田茂の指南役であった古島一雄のことを知りました。 -
良書。読むべし。
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「五・一五事件」で凶弾に倒れた「憲政の神様」犬養毅の評伝である。タイトルの「木堂」は犬養の号。
西南戦争に従軍記者として参加した犬養の若き日から説き起こし、首相となり暗殺されるまでの年月が綴られている。
犬養毅の評伝はすでに汗牛充棟だが、本書は著者の執念の調査によって発掘された新事実が多く盛り込まれており、類書に屋上屋を架すだけの内容に終わっていない。
とくに鮮烈な印象を残すのは、犬養が暗殺されるまでのプロセスが精緻に描かれている点。
これまでの犬養を扱った書物の中には、「犬養は軍の言いなりだった」という評価も多かった。著者たちは新事実によって、その評価の誤りを正してみせる。犬養は最後まで命がけで軍部の暴走を止めようとし、だからこそ殺されたのだ。
たとえば、著者が新たに発掘した、暗殺2週間前に首相として行ったラジオ演説の中で、犬養は次のように述べていた。
《私がいう産業立国は、皇国主義じゃない、侵略主義じゃない、これとは正反対のものである。(中略)侵略主義というようなことは、よほど今では遅ればせのことである。どこまでも、私は平和ということをもって進んでいきたい。政友会の内閣である以上、決して外国に向かって侵略をしようなどという考えは毛頭もっていないのである》
軍部に抗して「満州国」承認を拒否していた犬養は、「侵略主義は時代遅れ」とまで公共放送で言い切ったのである。
本書は、NHKのプロデューサーであった林新と、その妻でノンフィクション作家の堀川惠子の合作だ。
元々は、林が定年退職後の仕事として、在職中から準備を進めていた。だが、本書の半ばまで(明治の終わりまで)執筆したところで、林は病に倒れ、闘病の末に亡くなる。
そして、生前の約束で執筆を引き継いだ妻・堀川の手でついに完成をみたのだ。感動的な〝夫婦合作〟である。
堀川は本書で、完全なノンフィクションではなく、小説に近いスタイルをとっている。
それも、ハルバースタム的なニュージャーナリズム(=取材でつかんだ事実を小説のように再構成する)というより、もう少し小説寄りだ。
というのも、本書には架空の人物が1人重要キャラとして登場しているし、犬養やもう1人の主人公・古島一雄(犬養の参謀役として活躍し、のちには吉田茂の指南役にもなった政治家・ジャーナリスト)の心理描写などには、明らかに著者が想像で作った部分も多いからである。
そのような手法を用いることによって、本書は評伝ではあるが、重厚な歴史小説のように楽しめる一冊となった。
犬養、古島以外にも、大隈重信、原敬、正岡子規、西園寺公望、井上毅、尾崎行雄ら、綺羅星のごとき人々が次々と登場する。
帯には、「この男を失い、日本は焦土と化した。」という惹句が躍る。
この言葉どおり、軍部の暴走を命を賭して止めようとした犬養を失ったあと、日本は坂を転げ落ちるように戦争への道を走り、敗戦を迎えたのだ。
テロと暴力が渦巻く時代に、真の政党政治確立のために戦った人々の群像を熱く描いて、感動的な評伝である。 -
東2法経図・6F開架:289.1A/I59h//K
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犬養元首相しのび4年ぶり墓前祭 岡山、地元住民集い児童が供花:山陽新聞デジタル|さんデジ
https://www.sanyonews.jp...犬養元首相しのび4年ぶり墓前祭 岡山、地元住民集い児童が供花:山陽新聞デジタル|さんデジ
https://www.sanyonews.jp/article/13985152023/05/16
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