ヒトラーの試写室 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 151
レビュー : 22
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041066850

作品紹介・あらすじ

1935年、20歳の柴田彰は活動写真の俳優を夢見るが、大工の父親は猛反対し勘当されてしまった。家を飛び出しオーディションを受けるが箸にも棒にもかからずあえなく挫折。だが、人手不足だった日独合作映画「新しき土」の特殊撮影助手の仕事にありつく。主任の円谷英二の情熱に触れるうち彰も仕事にのめり込み映画は見事に完成。ベルリンにも運ばれ、映画で人心の掌握と扇動を狙っていたナチス宣伝大臣ゲッベルスの心に刻み込まれる。日本は41年、ついに太平洋戦争に突入。軍部の要請から戦意高揚をねらった映画「ハワイ・マレー海戦」が製作されることになり彰も特殊撮影で参加。この作品もベルリンに運ばれ、丁度イギリスの権威を失墜させる為に映画「タイタニック」を製作したが、どうしてもクライマックスの沈没シーンが上手く撮影できないことを悩んでいたゲッベルスが目をつけ、彰がドイツに招聘されることになる。環境の違いから撮影は苦戦。日本に残した妻子を想う柴田だったが、ベルリンは戦火に……。意外すぎる歴史秘話に基づく、一気読みと感動必至の傑作エンタメ小説。

書評家から熱い賛辞が続々!

「すでに八〇年近く昔の話とはいえ、ネット上に巧妙につくられたフェイクニュースが流布している現在、映像によるプロパガンダは古くて新しい問題だと言える。この物語が単なる歴史を題材にした小説に終わっていないのは、このテーマに今日性があるからだ。」
タカザワケンジ(書評家) (解説より)

「特撮の舞台裏を描くことで戦争の舞台裏を描く、その試みには明らかに「ポスト・トゥルース」に象徴される現代社会の潮流――信じたいものを信じるために、事実に目をつぶる――が反映されている。あるいは、先の大戦を語ることへの過剰な情熱、過剰なフォビア(恐怖症)が渦巻く日本の空気が、ありありと。この小説が二〇一七年の今書かれたことには、意味がある。」
吉田大助(ライター)(「本の旅人」2018年1月号より)  

感想・レビュー・書評

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  • どこからが史実でどこまでがフィクションなのか不明だけど、細かな作業を得意とする日本人は特撮技術に優れてるんだろうな。海外にも認められて素直にうれしく思う。誇りに思う。
    寒天とか鰹節とか面白い。そんな技術で作られた映画、観たかったなー。

  • 題名のヒトラーはもちろん、彼の取り巻き、それに特撮の神様円谷英二、さらに原節子も登場。
    史実をもとにしたフィクションというが、どこまでが史実でどこからがフィクションだろうか。
    日本で特撮に携わった技術者の青年が、戦時下のドイツに渡り、ナチスの映画つくりを手伝うという数奇な運命をたどる。青年の特撮技術による映画には、ナチスの悪辣な陰謀が隠されていた。
    その陰謀を知ったドイツの映画人たちと青年の、ナチスに対する抵抗と戦い、そして彼らの家族に対する愛情の物語は、熱い感動とともに一気読みをさせる。

  • またもや松岡圭祐の近現代ものの傑作。全く知らなかった史実にかなり興奮した。

  • 1935年、20歳の柴田彰は活動写真の俳優を夢見るが、大工の父親は猛反対し勘当されてしまった。家を飛び出しオーディションを受けるが箸にも棒にもかからずあえなく挫折。だが、人手不足だった日独合作映画「新しき土」の特殊撮影助手の仕事にありつく。主任の円谷英二の情熱に触れるうち彰も仕事にのめり込み映画は見事に完成。ベルリンにも運ばれ、映画で人心の掌握と扇動を狙っていたナチス宣伝大臣ゲッベルスの心に刻み込まれる。日本は41年、ついに太平洋戦争に突入。軍部の要請から戦意高揚をねらった映画「ハワイ・マレー海戦」が製作されることになり彰も特殊撮影で参加。この作品もベルリンに運ばれ、丁度イギリスの権威を失墜させる為に映画「タイタニック」を製作したが、どうしてもクライマックスの沈没シーンが上手く撮影できないことを悩んでいたゲッベルスが目をつけ、彰がドイツに招聘されることになる。環境の違いから撮影は苦戦。日本に残した妻子を想う柴田だったが、ベルリンは戦火に……。意外すぎる歴史秘話に基づく、一気読みと感動必至の傑作エンタメ小説。

    そもそもナチス・ドイツの時代にタイタニックの映画化がされていたことすら知りませんでした。主人公のモデルとなった人物(実在するのであれば)と、参考文献を知りたいと強く思います。

  • この著者については、デビューされた直後にその作品を読み、うーん自分にはちょっと合わないかなあと感じてから遠ざかっており、以来本当に久しぶりに買ってみた。
    先入観を持っているわけではないと思うが、やっぱり文章を運ぶリズムや物語の構成とかが若干物足りなく、プロの小説家ならもう少し…などと偉そうにも感じたところはあったが、いや、十二分に面白い作品だった。
    まずは実在の人物の名前をポンポンと繰り出して興味をつなぎ、油断すると、あれ、これはノンフィクションだったっけ? と読み手が一瞬錯覚しそうなぐらい。
    悲惨の極みにまでは寄っていないが、それほどには戦時中の空気も生々しく描かれている。
    クライマックスからの流れを含め、最後は色々が都合の良いところに収まるのでズドンと来るような読後感はないが、映画というものが当時、どれほどの意味合いを持ち、どういった位置付けにあったのかということに思いを馳せられて、とても興味深かった。
    そして、これが2017年の日本で書かれ出版されたということも併せて。

  • 最近の松岡氏の作品は、近代史もの・史実に基づく話になり
    『黄砂の籠城』は読むのはかなりつらく
    『生きている理由』は冒頭でやめてしまいました。
    そもそも歴史小説は苦手なので、松岡氏の作品でなければ見向きもしてないはず。

    本作はタイトルからして、ヤバそうだし…としばらく躊躇してましたが
    読み始めたら一気読みに近かったです。
    ヒトラーに円谷英二、原節子、と有名どころの方が登場します。
    円谷英二の下で特撮技術を学んだ柴田は、タイタニック号沈没のシーンを撮るためにドイツに呼ばれ
    …どこまで史実で、どこからフィクションなのかわかりませんが…
    この戦争で、ドイツ、日本、長崎がどうなるかわかっているだけに
    「それはヤバいヤバい」と思いながら読みました。

  • 昭和10年頃からスタートし、終戦までの時代背景
    タイトル通り日本とドイツは日独伊同盟を結ぶような関係だったわけで
    それは娯楽としてもそうだし。というわけで
    架空の人物ながら、実際いたらすごいなーとか思いを馳せながら読んだ本。
    特撮といえばこの人、円谷氏。
    その下で技術を身につけて単身ドイツへ行く彰。
    日本でも、そしてドイツでもプロパガンダ映画を作って
    その制作スタッフとして働くわけで
    ドイツでの暮らし、当時の特撮をより本物に見せる難しさ。
    あとは沢山のスタッフの人たち、ナチス将校、ゲシュタポ。
    今の時代、フェイクニュースなのかそれとも本物のニュースなのか
    情報が溢れすぎているけども
    本当のことなんて誰にも分からないけど
    己が正しいと思うことを曲げたらいかんよな、どんな時も。
    って思う本でした
    つまり最高

  • 2018045

    日本とドイツで、特殊撮影の力を見込まれて、映画の作成に携わる柴田彰。ドイツに渡った彰は、戦争に巻き込まれて。ある程度の実話に基づくストーリー。

    戦時下においても、国民の戦意と士気を高めるために、映画がここまで有効なものであり、如何に国に保護されてきたか。単なる娯楽と思うところもあったけど、バラバラの心をひとつにまとめあげるには、これほど有効なものはないのかもしれない。

    戦争は如何に自国の民を、優勢であるか騙して、その気にさせるもの。勇ましい言葉や甘い言葉をはくのは、戦争に限らず、何かやましいことがあるから。

    特殊撮影と言うと、フェイクで、見ている人をだます。同じだますでも、騙されて、嫌な思いをするよりも、騙されて、みんながハッピーになれるフェイクなら素敵だと思う。

    ナチス名誉党員なるものを得た日本人がいたことを初めて知ったし。国民よりも、組織の体裁を守ろうとする既得権益者たちがいること。

    いつの時代にも、それに歯向かおうとした人たちがいるのは、時代が変わっても救われる材料のような気がします。

  • 最近の松岡氏は史実に基づくフィクションばかりで、時に重苦しそうなあらすじにいつ読もうかと長引かせてしまう。
    ナチスドイツの非道さは色々見ていたので、物語が進むにつれ、日本に帰れなくなった主人公の行く末にひやひやし、戦時中でも映画が作られていた余裕さに驚きながらも、目的を知れば切なくなる。
    目の前の仕事を必死でやり抜いている人間がいいように利用されるのは、この時代だからじゃない。いまも同じだ。
    ある種の戦争小説だけど、映画・特撮の視点から描かれるのは新鮮だし、小説的なトリックに、いかにも松岡氏らしいなと苦笑い。

  • 第一次世界大戦後から第二次世界大戦終わりまでの時期。
    俳優になりたかった男が、オーディションに落選するも、特殊撮影部に関わりをおくことに。そこにはわかり氏の円谷さんが課長として存在した。まだ黎明期のそれは、情熱と低予算で、創意工夫とメンバーの情熱だけに支えられていた。アメリカから石油が輸入できないようになって、日本の経済および軍備は逼迫する。大国からはじき出された日本とドイツは当然のように近く。プロパガンダのための映画製作がどの国でも当然のように政策の一環として行われていた。特殊効果を遺憾無く発揮したマレー海戦の映画の高評価により、ナチスドイツから日本に依頼が来た。主人公はドイツに渡り、初めは心通わないメンバーであったが、仕事を成し遂げて行く。戦争末期のドイツ、日本の負け戦を隠そうとするでっち上げの映画。国民にも隠される本当の姿。
    終盤に近くにつれてどんでん返しの連続。息を持つかせぬ逼迫したストーリー展開で一気に読ませた。

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プロフィール

松岡 圭祐(まつおか けいすけ)
1968年生まれの作家。1997年に出した小説デビュー作『催眠』がヒット作となりシリーズ化される。1999年の『千里眼』も人気を博し、シリーズ化。
一番著名なのは『万能鑑定士Qの事件簿』をはじめとした「Qシリーズ」で、「面白くて知恵がつく 人の死なないミステリ」というキャッチコピーで人気を博し、映画化された。

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