- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041067338
作品紹介・あらすじ
前科十二犯、服役累計三十年。西成を拠点に「シャブ極道」として知られた元組長は、なぜ薬物の更正支援活動を始めたのか。売人、使用者としてつぶさに見てきた覚せい剤の恐怖。溝口敦氏による序文・対談収録。
感想・レビュー・書評
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彼が間接的に覚醒剤を売ることで殺した人数って数え切れないだろう。
そこらの大量殺人犯など比べ物にならないくらいの人数の人生を狂わせ、あらゆる面で国家に悪影響を与えてきたにもかかわらず、死刑にならないのはよく考えたら不思議。
懺悔したくなったのは理解できるが、罪深すぎてどうすれば救われるのやらって感じだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
西成密売40年、シャブ屋の懺悔。
このタイトルだけで持っていかれてしまった。
まずタイトル、コピーが素晴らしい。
裏社会モノが好きな関西在住の自分には、これだけで即購入。
家でじっくり読みたい。
大きく感想から言えば、悪の道から足を洗うのは、人の心しかないんだなという事。
悪の道に入る人は、法律や倫理では修正出来ない。
人を傷付ける事を自分の中で正当化し、悪事を働く事も「必要悪」であると思っている。
確かに、社会にはそう言った部分もある。
シャブが欲しいという客がいるから、売っている。
それの何が問題?という感じだ。
(もちろん、法律的に大問題だが、あくまでワルになる人の感覚として)
需要があるから、供給するまで。とてもシンプルな話。
やらなければ、上手くやった誰かがエゲツなく儲かる。
シャブ食って死ぬヤツは自業自得。
別に強制してる訳じゃない。欲しいというから、用意したまで。
誰かが上手く儲けるなら、俺がやってもいいんじゃないか?
薬を渡すだけで、サラリーマンの年収なんかブッ飛ぶぐらいの金が入る。こんな楽な商売はない。
ある程度悪なメンタルをしてれば、これぐらいの事は考えるだろうと思う。
そうやって、筆者もやってきたんじゃないだろうか?
(あくまでこの本を読んだ感想と、個人的な予想だが。)
しかし、一番足を洗うと心を動かされたのは、愛人を交通事故で死なせてしまった事。
身近な大切な人間に取り返しのつかない事をしてしまった事。
睡眠導入剤を飲んだ事を忘れて、無免許にも関わらず起こした事故。
多分その背景には、今まで大きな事故も起こさず、密売も「俺はそんなヘマはしない、上手くやれる」という自信があり、仕事が出来る人程陥りがちな慢心が起こした事故だったと思う。
しかし、それが引き金になり、足を洗う事を決意し、薬物更生施設を設立するというストーリー。
悪からの更生モノには、親、友人、恋人など、身近な大切な人を傷つけた事を深く反省し、更生するパターンが多い。
対にして、悪に入るのも、身近な人に傷つけられて入るパターンも多い。
裏社会や、不良モノにとても人間臭いストーリーが多いのは、こういった背景があるからなんじゃないかと思う。
シリアルキラーや、快楽殺人の類いの悪ではない悪は、誰しも少なからず共感出来る部分があるような気がする。
(無い方はすみません。)
何にせよ、自分は、「あーこうなってはいけないな」という抑止力になって良かった。