- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041067369
作品紹介・あらすじ
太平洋戦争中、アメリカの戦闘機に装備され、機銃を撃つと自動的に作動する「ガンカメラ」の映像が相次いで発掘された。また米国立公文書館で、B-29が名古屋・大阪を焼き尽くした際の空襲映像も新たに見つかった。日本本土への空襲は、その規模の甚大さゆえに捉えきれてこなかったが、膨大な発掘映像の分析に加え、アメリカ軍の新資料、埋もれていた日本側の作戦・被害記録などを分析することによって、その“全貌”が明らかになっていく。2万ページに及ぶアメリカ軍の戦闘報告書・作戦記録を日本地図に落とし込むと、浮かび上がったのは予想をはるかに上回る被害の実態だった。本土空襲がなぜ無際限にエスカレートし、45万9564人もの多くの命が奪われることになったのか。空襲の恐るべき実態を可視化することで、「本土空襲」の知られざる全体像に迫る。
感想・レビュー・書評
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『ゴジラ−1.0』を鑑賞したあと、興味を持って本書を購入しました。ゴジラ最新作では、戦後日本の復興時期を舞台にしています。1945年〜1947年、48年あたりだったかと思います。空襲で壊滅的な打撃を受けた東京が、徐々に復興していく風景が登場します。史実としてどれくらいの被害があったのかを確認したくなり、本書を読みましたが、私の関心ごとは本書では確認できませんでした。しかしながら、本土空襲がどのようなものだったのかを知ることができました。本書の最初に本土空襲MAPがありますが、ほぼ日本全域に爆弾が落とされたことがわかります。壊滅的な状況から先人の力で今日に至っていることを改めて考えることができました。
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2017年8月にNHKで放送された特別番組の書籍化。
米軍の戦闘機につけられていた膨大なカメラ映像を入手、さらに米国の国立公文書館に保管されていた2万ページに及ぶ機密文書「戦闘報告書」を解読。このふたつの資料をもとに、あらためて本土大空襲の全容を振りかえれば、その回数も規模も、これまでに把握されていた数値をはるかに上回る実態が浮かび上がってくる。空襲は約2000回。投下された焼夷弾は約2040万発、撃ち込まれた銃弾は約850万発、犠牲者は45万9564人――いったいなぜ、空襲はここまでエスカレートしていったのだろうか。
前述の膨大な作戦資料、生々しい記録映像、空襲を体験した人々の証言をたどり、本土空襲の全体像と真実に迫る。
「線路わきの土手の斜面にへばりつくと、上空には敵機が、操縦士の顔が分かるほど低空で飛んでいて、まるで笑っているようだった」(P135)
これは本書に掲載された、米軍機による機銃掃射を受けた人の証言だが、まったく同じ話を私の祖母がしていた。私が祖母から戦争体験を聞いたのは7歳の頃で、残念ながらその当時の私には祖母の体験を理解できるはずもなかった。
2017年8月に放送された本書のベースとなる番組のなかで公開されたガンカメラの映像を見た時、祖母が見たものを初めて理解できたように思う。
米軍機は軍需工場、飛行場、滑走路に並ぶ戦闘機、走行中の蒸気機関車そして、人。小さな木造船で漁をする人、田んぼや畑で農作業をする人、鉄道の客車に乗る人、駅のホームに立つ人。それだけでなく、丘陵地帯を走る馬たちにまで機銃掃射をおこなっていた。
米軍機のパイロットたちは「日本に民間人はいない。すべての男、女、子供は軍隊を援護する武装予備軍」とみなしていたからだ。
映像は地上を動くものすべてを標的にした、狂気の記録。パイロットの視点で見ているこちらも頭がおかしくなってくる。けれど私は目をそらすことができない。
もしかしたら、膨大な映像のなかの、火線の先を逃げ惑う人々のなかに祖母の姿があるのではないかという考えが捨てられなくて。
訥々と語る祖母の声を思い出す。
「……あいつらは電柱の高さすれすれに低く飛んでくる。それより低く飛ぶと、電線に引っかかって自分が墜落しちまうから」
「操縦しているやつの顔が見えるんだぁ」
「オレは赤んぼ背負ってたげんちょ、死なすわけにはいかねぇべ」
「この辺一面原っぱか畑か田んぼだべした。隠れっとこもねえから、雑木林に飛び込んだっけ、みんなもう逃げ込んでんの」
「おんちゃ達が、女子供の姿隠そうと、蓆を上からかけでくれんだげんちょ、飛行機がすぐ近く飛ぶべ。風で蓆がめくれあがって……」
「オレもう、あんなに走れねぇ。もうたくさんだ」 -
死者46万人弱~P51・ムスタングって奴が護衛について~上空1万mからだとジェット気流に乗って何処に落ちるか見当が付かない、ってわけかぁ・テレビで見たかったなぁガンカメラって奴
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2018.12―読了
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東2法経図・6F開架:210.75A/Se73s/1/K
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太平洋戦争で日本が受けた空襲の全体像をとらえるのに適した書籍。
原爆や東京大空襲のように1回で10万人前後の死者が出たものも含めて、本土空襲の被害者は一般市民も含めて約46万人。
本土空襲だけで。戦争末期のたった10ヶ月の間に。
戦争というものの惨禍はこれだけではないけれど、
改めて、戦争はいかんね。
なんとか、外交努力や、譲り合い、落としどころなどで落ち着け続けないと。
日本に生きていた人のうちの46万人の空襲死の犠牲が、
なぜ起こったか、
そこをNHKスペシャルの取材班が、背景などを深掘りして、いくつかの事実や説を整理したもの。
(たぶんNHKスペシャルそのものの映像版もあるだろうと思って検索したら、有料でもオンデマンド対象になっていませんでした。)
ちょっとお高い(2,920円)割に、分量はそんなに多くないけれど、読む価値あります。
社会的な意義も高いので、自分で読むことはもちろん、図書館にリクエストして蔵書にして社会で利用しやすい状態にすることも大事な行動と思います。 -
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読み終えてみて、これほどやられるまで何故にやられるままになったのか、理解できないというのが最初の感想。やられてやられて感情が先走り、仇を討つまではということなのか。それでも国家としてこのやられる状況を放置していたことに合理性があったと言えるのか。
実はこれほどの空襲を受けるようになったのは、1944年11月末から1945年8月半ばまでであり、9ヶ月ほどの間の出来事なのである。それまで砲火が銃後の人々の生活に及ぶことはなかった。弾が飛んでこないうちは実感はないだろう。
B-29はボーイング社が開発した飛行機である。今、多くの人たちがボーイング社が開発した飛行機で旅をしている。現代は過去からの継続であることを思い起こさせるものである。