NHKスペシャル 戦争の真実シリーズ2 樺太地上戦 終戦後7日間の悲劇
- KADOKAWA (2019年10月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041067383
作品紹介・あらすじ
北海道の北に広がるサハリン。かつて樺太と呼ばれ、約40万人の日本人が暮らしたこの地で、
終戦後も7日間にわたって戦闘が続き、住民を巻き込んだ悲惨な地上戦が行われていた――。
重い沈黙を破る貴重な証言、国内外の発掘資料を初公開。知られざる地上戦の実態に迫る一冊。
話題を呼んだNHKスペシャル番組、待望の書籍化。戦争の真実シリーズ第2弾の登場。
感想・レビュー・書評
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無条件降伏をし戦争は終わった8月15日。その後の7日間戦闘が継続した樺太の地上戦を取材した記録。
地上戦というものの、戦闘の記録でなく逃走の記録。どんな残酷なものを見てきたのかを、思い出したくはなく話したくもないが、語らないことで歴史から消えてしまうわけには、忘れさせてしまうわけにはいかないという思いで取材に応じてくれた方々には、何を思えばいいのか。
感謝ではある。誰かが語らなければ残らないことでもある。平和安全な時代の日本を生きてきた身として、かつて起こった戦争、今でも起きている戦争の中で、言葉では言い表せない残虐な行為が行われていることを伝えるというのは、残していかなければいけないことだと思うから。
感謝だけでいいのか、良いわけはないのだけど、苦衷の記憶に寄り添うなんて綺麗事を並べては意味がないと思う。
後世のために語り残すことを選んでくれたことに対して、同じことを起こさないという思いを持ち続けることで応えたいと思います。
停戦命令がなかったから起きてしまった必要のない7日間。
無駄死に、というしかないのか。軍人でもない民間人が、死ぬ必要のない人たちがただただ無惨に死んでいった記録。勝利とか敗北とか関係なく、無意味に人が死んでゆくというだけで戦争はおかしい。 -
終戦の宣言は何なのか。条約とは何なのか。
条約の一方的な破棄は、何なのか。
一方に集中するための一時的な停戦という見せかけの条約。狡猾な戦略ではないか。
樺太から出られなかった人達の、その後の暮らしに関する本は読んでたけれど、当時の樺太にいた軍の動きも知ることができた。
国境の島の緊張感。 -
東2法経図・6F開架:210.75A/Se73s/2/K
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2017年のNスペの書籍化。真岡郵便局の集団自決以外はあまり知識がなかったので興味深く読んだ。沖縄ではない「もう一つの地上戦」があった、という冒頭のプロデューサーの言葉は、『硫黄島』(中公新書)で同趣旨の記述を読んだばかりだった。
ソ連軍が樺太国境に侵攻したのは8月9日。しかし南部では、玉音放送の時でも生活は日常どおりだったというのが不思議だ。突然のソ連の侵攻、その意図は、どこまで戦闘が続くのか、など現在の視点からではなく、五里霧中だった当時の軍や行政の視点を想像してみる。そしてその後の住民の逃避行や自決、動員された戦闘での悲劇は、沖縄や満州などとも共通する。
玉音放送後、大本営は戦闘行為の即時停止を命じたが、札幌の第5方面軍は北海道占領を阻むため樺太死守を命じたという。21日にやっと、大本営(東京ではなく満州にいた参謀)からの脅しのような電報を受け、第5方面軍も停戦を命じる。そして22日に停戦成立。副題のとおり、ほんの1週間ほどの悲劇だ。本書はテレビ番組が元で、またあくまで樺太の住民と師団の視点からなのだが、そもそも大本営の命令に第5方面軍が逆らうことは可能だったのか、またこの1週間に大本営は何をしていたのか、北海道上陸まで考えていたソ連軍が停戦を求めた経緯、など背景の疑問点は残った。