晴れ女の耳 紀ノ国奇譚 (1) (角川文庫)

  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041067482

作品紹介・あらすじ

私の一族は「うつるイボ」ができる。私にその「イボ」ができたときは絶望的な気持ちに襲われ、大好きだった絵も描くことができず、じっと動かないでいた。そんな私に母は「イボ神様にお願いしてみる?」と持ちかけてきた。「けれど、信じなあかんよ」と。イボが無事消えたあと、そのイボはどこへ行ったのでしょう?私はお礼参りとともに、その謎を解くためにイボ神様に会いにいくことにしました。そこで見たイボ神様とは…!(「イボの神様」)
卒業以来初めての同窓会が開かれ、40代になった私たちは昔話に花を咲かせていた。かつての同級生で、日本人形のような神秘的な雰囲気の漂うちょっと暗い女の子の話題になった。けれどだれももう、連絡先が分からない。ところが、その晩、実家の母親から、その彼女からの手紙が出てきたという。住所は和歌山県の山奥にある村。どういうわけだか私は見も知らないその場所に強く惹かれ、たいして知りもしない彼女に導かれるごとく、会いにいくことになった。彼女の家は、仏壇やを経営しながら民間療法の診療所を経営していた。扉を開けて中に入ると何やら儀式的なことをしている真っ最中で・・・・。(「ことほぎの家」)
ほか、和歌山の人柱や神隠しを題材に、娘を神に取られた母の壮絶な心情を描いた「赤べべ」、和歌山の山奥の貧しい炭焼きを生業とする夫を殺したという無実の罪を着せられた妻が村八分に遭い、6人の子供たちを次々に貧困で失っていく母親の狂気をある種のユーモアで描き切った快作「晴れ女の耳」。
ほか、「怪談実話系 妖」に掲載した「サトシおらんか」、ほか書き下ろしを加えた全8編。

感想・レビュー・書評

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  • 「晴れ女の耳」 紀ノ国奇譚
    著者 東直子

    【目次】
    イボの神様
    ことほぎの家
    赤ベベ
    晴れ女の耳
    先生の瞳
    サトシおらんか
    あやっぺのために
    緑涙

    参考文献に『読みがたり 和歌山のむかし話』とありました。 
    八篇から成る短編集ですが、題材となっているのが、和歌山の民話や実話ということで、古い日本の風習やその土地の文化のようなものが根底に感じられます。人柱や神かくしなど、どのお話にも、そうしなければ生きていけなかった切なさがあります。
    どのお話にも、人の想いが込もっている様に感じられました。

    表題作、『晴れ女の耳』を出来るだけネタバレのない範囲でご紹介させてください。
    『私が外に出る時は必ず晴れる。それは耳の中に住んでいる豆粒ほどの小さなおばあさんのお陰だった。おばあさんに耳の中に住む理由を尋ねると、哀しいおばあさんの遠い昔の記憶が語られます。何の罪もないのに、無実の罪を着せられ、村八分にされた母と兄妹たち。それでも生きることを諦めずに、どんなに辛くとも、子供達のために生きようと頑張った母。、、、。』
    ー不覚にも外出中に読み進めてしまい、涙をこらえるのに必死でした。

    どのお話も丁寧な語り口調で綴られています。
    何にも大切なメッセージが込められています。
    気持ちが、苦しくなるお話もあります。

    『先生の瞳』、『緑涙』がほんのりと、好きです。

  • 紀州の話し言葉はなんだか和やかな印象なのに、実際言ってることはえぐくてくらくらします。
    この夏みたいにからりと晴れた日に読みおわれてよかったです。

  • 和歌山弁による穏やかな語りに油断していると突き落とされる感じ。人間を引摺り込もうとする婆さんや狸や元々人だった何かは恐ろしかったり滑稽だったり。でも女達の何処にも行けなさがどの短編の底にも流れていて、ちょっと物悲しいのね

  • 和歌山の民話や実話を題材に紡がれた短編8編(帯より)。初読み作家さん。
    私が刺激に慣れすぎているからか気持ちが汚れた人間だからか、物足りなかった。でも「あやっぺのために」だけは作風が違い、引き込まれた。狂気と老いのボーダーラインは曖昧で、孤独が追い打ちをかける。でも憐憫はなく微かに可笑しみが匂うところが逞しかった。自分の未来が見えたようだ、とは言いたくないけど片鱗はあるかもー(泣)

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著者プロフィール

歌人、作家。第7回歌壇賞、第31回坪田譲治文学賞(『いとの森の家』)を受賞。歌集に『春原さんのリコーダー』『青卵』、小説に『とりつくしま』『ひとっこひとり』、エッセイ集に『一緒に生きる』『レモン石鹼泡立てる』、歌書に『短歌の時間』『現代短歌版百人一首』、絵本に『わたしのマントはぼうしつき』(絵・町田尚子)などがある。「東京新聞」などの選歌欄担当。近刊にくどうれいんとの共著『水歌通信』がある。鳥好き。

「2023年 『朝、空が見えます』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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