- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041067499
作品紹介・あらすじ
女性の体に嫌悪感を覚える元恋人の冠(かん)くん。冠くんと別れ、半ばやけでつき合った遊び人の藤野。今の恋人、大学生のせっちゃん…人を強く求めることのよろこびと苦しさを、女子高生の内面から鮮やかに描く群像新人賞優秀作の表題作と15歳のデビュー作他1篇を収録する、せつなくていとおしい、等身大の恋愛小説。
感想・レビュー・書評
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島本さんの初期の短編集。
その年代を思い出すこともできない程、若い作品。
「シルエット」2001年 17歳の時の作品
好きだった男の子と別れて、違う子と付き合ってみるけど、やっぱり気になってしまう元彼。
元彼の男の子をヤングケアラーとしている。20年以上前に高校生でこの設定を使いまとめ上げています。
「植物たちの呼吸」16歳だと。
大学生カップル。父親が自殺して部屋を植物だらけにしている彼。離婚歴が多い母親を持つ彼女。
彼の帰りをまつ、ふたりのひとときのお話。
「ヨル」15歳で書いたんですと。
夜の匂いに誘われて。泣きたい夜にちょっと孤高な同級生に偶然出会う。それは、恋が始まる予感。
10代後半、人生で一番楽しいはずなのに、思春期というのか、沈みがちの気分です。その時期を乗り越える為の恋愛小説を書きたいんだろうなと思った。
微妙なバランスのショートを完成させていると思う。おませさん。
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私が読むには少し若くて気恥ずかしいな、と思ったら著者17歳の時のデビュー作なのですね。17歳でこれか、と逆に感心してしまいました。彼女のことを「あなた」と呼ぶ感じがとても素敵だな、と思いました。
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島本さんの本はそんなに読んでないけれど相性が良いのか、言葉がするすると流れていて気持ちがいい。
シルエットの最後はなんとも言えない気持ちになる。
あのときこうしていればと思っても、時間が経ち過ぎていることがほとんど。
傷つくのも傷つけるのもこわくて
もう恋から離れようとは思わないたのだろうか
それでも落ちてしまうのが人の性か -
主人公の誰も報われる気がしないのはなぜ。mol-74を聴きたくなった。特に瞼。
その人の口から語られることがなければ一生その出来事は日の目を見ることができない。それが相手を自分とは異なる人だと否応なく感じさせる。その通りだと思った。
ところで17歳でこの作品を書く著者はどんな四半世紀を送ってきたの?単純に気になる。 -
とても綺麗な表現が多くて引き込まれた。
心の雨の描写が特に印象的。
書いた時の作者の年齢にびっくり。 -
はじめの存在に安心する。
高校生のころのあれこれを、いろいろ思い出す。
今は、大人だから、
水や栄養を注ぎあって、どこにでも出かけたい。 -
暖かい絶望だな、と思う作品。
気持ちに寄り添って分け合いたいと思っていた主人公。
過去のトラウマから女性に触れることができない、恋人の冠くん。
大切な人に、1ミリも触れてもらえない切なさは計り知れない。それが拒絶でないとしても、誰かに縋りたくなるのはひととして自然な現象に思える。
雨がつきまとう作品だから、冷たく感じるかもしれないが、全員がずっと暖かい。だけど、だからこそ苦しくて絶望的なんだと思う。 -
目次
・シルエット
・植物たちの呼吸
・ヨル
表題作を読んで、やっぱり彼女の才能はずぬけていたなあと思う。
17歳の少女が書く恋愛小説で、きちんと家族を書いている。
あなたと私、二人だけの世界では、ない。
言葉で伝えるものと、体温のぬくもりが伝えるもの。
感情で気になる人と、感覚で恋うる人。
高校生がそこまで生々しい恋愛をするのか、という気もするが、作者が東京生まれの東京育ちということで納得。
だってこれ、東京の高校生だなあって感じがすごくするもの。
雪を見ると母に捨てられた時のことを思い出すという冠くんが長野に行くことを主人公は心配するけれど、この先の冠くんは穏やかに雪を見られるようになるんじゃないかな。
冠くんのお母さんも。
「植物たちの呼吸」は普通にショートショートとして面白かった。
どんでん返しが面白いはずのショートショートでまさかのリドルストーリー。
私は怖い結末を想像しましたが、さて…。
「ヨル」の神谷くん、脳内イメージは「セトウツミ」の内海でした。
神谷くんも何か昏いものを感じさせる存在でありながら、温かくもある。
これ、15歳で書いたのか…。 -
読んでいる間ずーっと感じる重さ。
全部が全部暗いわけじゃないのにずんと重い。
どうにもこうにも好きな話ではないけど
この雰囲気を作り出せるって本当にすごいと思う。 -
講談社文庫から角川文庫での新装版。
自分の中では、特別な一冊で。
でも、ストーリー的なことを言うとモゴモゴしてしまうというか、要領の得ないものになってしまう。
だから、どうして特別なのかを探しながら何度も読んでいるような気がする。
新装版ということで、案の定買ってしまったのだけど、2018年の島本理生の「あとがき」というオマケ要素があって、なるほどと嬉しくなった。
それがなくても、やっぱり買っていただろうけど。
二つの、色合いの違う恋心。
狂おしく好きだけど、触れることさえ叶わないという拒絶に耐えられなくて、ガリガリと削り取るしかなかった冠くんとの恋。
触れることの中で、水が流れるように当たり前に、空気を吸うように当たり前に、そこにいることで日常になるせっちゃんとの恋。
そんな二つの恋を味わいながら、高校生らしからぬ奔放さと、奔放さから離れた孤高ささえ持ち合わせる主人公が羨ましかったのかもしれない。
17歳で書いたということに、納得する。
稚拙さとかそういうのではなくて、主人公がいる世界を否応なく感じるからだ。
上手く言えないけど、そこは「わたし」がいる世界なのだ。一人であっても、誰かがいても。
でも、悲しいかな、今の自分には「わたし」だけがいる世界を描くことが出来なくなっている。
「わたし」がいなくても、世界は回ることを知ってしまったと言うのだろうか……。
それは、寂しささえ感じさせないことだった。
レビューというより、思い入れになりました。
しかも、分かりにくい思い入れ(笑)
17歳がここに在り続けることに、文学というものに、感謝したい。
著者プロフィール
島本理生の作品






と思うのであります。
と思うのであります。