隠居すごろく

  • KADOKAWA (2019年3月29日発売)
4.11
  • (80)
  • (113)
  • (33)
  • (7)
  • (2)
本棚登録 : 687
感想 : 78
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (368ページ) / ISBN・EAN: 9784041067550

作品紹介・あらすじ

『涅槃の雪』『まるまるの毬』『ごんたくれ』
時代小説の傑作を手掛けた著者が本領発揮!

人生の上がりだと思っていた隠居生活が、まさか「第二の双六」の始まりだったとは……
これぞ笑って胸に沁みる時代小説!

「いいなあこれ。私、すっかり気に入ってしまった。
(中略)この小説が素晴らしいのは、その理想の老後の風景の奥に、
いちばん大事なことを描いていることだ。」(「本の旅人」2019年4月号より)
                                    ――北上次郎氏

巣鴨で六代続く糸問屋の嶋屋。店主の徳兵衛は、三十三年の働きに終止符を打ち、還暦を機に隠居生活に入った。人生を双六にたとえれば、隠居は「上がり」のようなもの。だがそのはずが、孫の千代太が隠居家に訪れたことで、予想外に忙しい日々が始まった! 千代太が連れてくる数々の「厄介事」に、徳兵衛はてんてこまいの日々を送るが、思いのほか充実している自分を発見する……。果たして「第二の双六」の上がりとは?

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 隠居生活を始めた糸問屋の徳兵衛だが、商売一筋だったため趣味もなく無聊をかこっていた。そこへやって来た孫の千代太が、生来の優しさから野良犬を連れてきたのが始まりで、貧しい子どもたちを隠居所に連れてくる。その子たちの手習いを始めたり、商売の手助けをするようになって、あれよあれよといろいろな子どもや女たちが集まってきて面倒をみることになる。そこは元商人の徳兵衛、彼らが自分たちの力を出して生活する手立てを考えていく。そうするうちに徳兵衛自身の人間性も変わってくるのだ。長年冷たかった女房とも…。
    人情味あふれる、最高にハートフルな西條奈加の傑作。この人の小説は本当にいい。読むべし。温かな気持ちになること必定。

    • goya626さん
      にゃあ?
      にゃあ?
      2020/12/14
    • しずくさん
      西条さん直木賞を受賞しましたね。
      好きな作家さんで応援していたので嬉しいですO(≧∇≦)o
      西条さん直木賞を受賞しましたね。
      好きな作家さんで応援していたので嬉しいですO(≧∇≦)o
      2021/01/20
    • goya626さん
      しずくさん
      お知らせ、ありがとうございます。西條奈加さんは、既に押しも押されぬベテランですが、受賞は嬉しいでしょうね。私も、これからも応援...
      しずくさん
      お知らせ、ありがとうございます。西條奈加さんは、既に押しも押されぬベテランですが、受賞は嬉しいでしょうね。私も、これからも応援し続けたいです。「心淋し川」知らなかったなあ。
      2021/01/20
  • 巣鴨の糸問屋「嶋屋」の六代目店主・徳兵衛は、還暦を機に、隠居すると、店の物に宣言する。
    跡取り息子と、嫁は、不安だからと、反対したが、
    徳兵衛の決心は、変わらなかった。
    妻のお登勢は、そのまま残り、徳兵衛は、女中とその息子と3人で、隠居家に移り住んだ。

    ひたすら仕事一途に邁進してきた徳兵衛だった。
    その褒美として、人生の第二の双六をやり直すつもりでいた。

    しかし、仕事しかしてこなかった徳兵衛は、遊びが一向に、面白くない。
    暇を持て余していた時、孫の千代太が、隠居家に現れた。
    大喜びする徳兵衛だが、千代太が連れてくる厄介事に、日々振り回される。

    残された年月は、決して長くはない。その間できる事をできる限りやらねば、悔いを残す。
    二枚目の双六。
    最初は何もない真っ白な紙っぺらだったが、孫の千代太に、引きずられる様にして、厄介事を解決してきて、ようやく、二枚目の双六には「上がり」がないと気付かされた。
    「上がり」ないからこそ面白く、甲斐があると。

    子供達の健気さに、何度も涙ぐみながら読み進めた。
    読後感は、すこぶる良かった。

  • 道楽に手を出さず、真面目一辺倒で商いに励んできた、嶋屋徳兵衛。
    念願の隠居生活を始めるも、思っていたのとは大いに違って……。

    テンポよく、一気読み。

    徳兵衛の自己評価と、まわりとのギャップがおかしかった。

    「こんなはずじゃなかった」と思っていた徳兵衛が、孫の千代太によって変わっていく。
    前半の展開は、『小公子』を思い出す。

    他者を思うこと、他者のために行動すること。
    商売抜きで、人と人とのつながりを大切に感じ始める、徳兵衛。

    貧しい子どもたちのけなげさ、賢明さ、そして生意気なところなど、子どもらしい愛らしさでいっぱい。
    彼らの頑張りにぐっときて、何度も泣けた。

    大人も子供も魅力的で、人情味あふれ、心あたたまる物語。

  • とても面白くて時にホロリとさせられる人情噺みたいなほのぼの作品でした。
    糸問屋の商いのほかに何の趣味も取り柄も持ち合わせていないと自他ともに認める徳兵衛だが、還暦を過ぎた61歳で自分も悠々の隠居生活に憧れて自ら宣言して現役を退く!
    踏み切ったは良いけど時間の過ごし方に戸惑うばかりの毎日。そこへ突然現れた孫の千代太(8歳)が激動の隠居生活に誘なう発端になり、千代太の成長と期せずして徳兵衛の再成長がシンクロして行く様子が面白おかしくて小気味よく展開する♪
    千代太とその仲間たちが巻き起こす騒動は想像以上の含蓄と影響を徳兵衛に与えて行くし、それを感受する感性を保有している徳兵衛もなかなかに素敵です。
    あの高田郁のあきない世傳シリーズとどこか通じるものを感じながら読了。

  • 店を息子に譲り、静かでのんびりした隠居生活を始めようとした徳兵衛。
    しかしその思惑は、隠居所に孫の千代太が現れたことから大きく外れていく…。

    西條さんらしい、楽しくテンポよく展開していく作品。
    最初は口うるさく融通の利かない老人だった徳兵衛と、お坊ちゃんで優しいだけが取り柄の千代太が段々変わっていくというベタな展開ではあるものの、これまで店を守るためだけの商いをしてきた徳兵衛が隠居だからこそ出来る自由な商いの楽しさを知り、千代太もまた同年代の子供たちとともに商いのアイデアを捻り実行し実際にお金を手にして商いの楽しさを知るところは面白い。

    またこれまで施しが大嫌いだった徳兵衛が、実際にその日暮らしの親子たちに接することにより、怒鳴りつつも手も差し出すようになるのも良いし、千代太もまたその日暮らしの子供たちと共に商いを学ぶなかで施しではない人助けを知るのも良い。

    偏屈な老人と子供たちの取り合わせは楽しい。なんだかんだで子供には勝てないし、子供たちも老人に学ぶ。
    周囲の人々も良いし、これぞ活きた学問だろう。

  • 商売一筋に生きてきた徳兵衛。思う存分隠居生活を楽しむつもりが、全く趣味が見つからず暇をもて余す日々。
    しかしそんな退屈な日々も、孫の千代太が訪ねてきた日から激変。徳兵衛は人生のすごろくの二枚目を否応なしにはじめることになる。

    最初は考え無しに犬猫、果ては人間まで拾ってくるお坊っちゃんにイライラ。
    でも徳兵衛が不器用ながらも教えさとすこと、それでも千代太が食い下がってくること、礼儀作法かまるでできていない子供たちの主張、それぞれに納得、教えられる部分があって、
    なによりこの先どうなるのかと、きっとハッピーエンドだと分かっていても、子供たち、徳兵衛を応援する気持ちで一杯になって一気に読み進めた。
    最後の一ページには思わずほろり。
    良い話を読ませてもらった。

  • 西條さんの作品初読みです。

    直木賞受賞に際して、新潮社中瀬さんがラジオで紹介されていた西條さんに関するコメントに興味を持ちました。
    貧困をモチーフにすることが多く、貧しくて寄る辺ない人々の生きる困難を描く作家さんというような内容でした。
    生きることに倦(う)んだ人々、生きるのに疲れた長屋の人々をテーマにした作品が今回の直木賞受賞作『心淋し川』とのことなので、こちらはこれからのお楽しみに。

    『隠居すごろく』は昨年春発売の作品。
    挿画が表すように、ご隠居と貧しい街の子どもたちの関わりで大きく物語が動いていきます。

    生まれ育ち、気質、商売(仕事)、人との出会いと相性等々が複雑に絡み合い、人格を形成するのは今も同じ。
    主人公の大店の主徳兵衛は早めの隠居後に、自分の生活を180度転換し、今まで見たことのない景色の中に戸惑いながら、居場所を見つけていきます。

    丁寧な人物描写のための説明や出来事の描写から、きっちりした作家さんなのだなと想像します。
    前半から中盤はその説明が若干冗長で我慢ですが、後半からどんどん展開するための出来事が投入されます。

    丁寧な筋ではあると思いますが、後半は詰め込みすぎなのかなと残念な印象。
    あれこれ出来事が続き、説明過多の印象なので、個人的にはもう少し間引いて、読み手に委ねてもらえる作品が好みです。

    他の作品も読んでみたいなと次回に期待します。

  • 人生を双六に例えるなら、隠居はひとつの上がりだと考えていた嶋谷徳兵衛

    糸問屋嶋谷の六代目として、苦労を厭わず、ひたすら仕事に邁進してきた褒美として、この世の極楽ともいうべき、安穏とした余生が待っているとこれからの隠居生活に胸を膨らませるが・・・

    心優しい一途な孫千代太の節介と、意外なしぶとさに動かされ、人と関わり繋がる喜びを知った徳兵衛

    野良犬・猫に始まり、勘七、なつ・・と千代太が何かを誰かを連れてくるたびに、翻弄される徳兵衛がいつしかその人たちの暮らし向きに思いを馳せるようになる過程が楽しく、幸せな気持ちになった

    まさしく『負うた子に教えられ』ならぬ『負うた孫に教えられ』だ

    また、千代太を取り巻く勘七やなつ、てる、飄吉兄弟など子供たちの様子が生き生きと描かれているのも楽しかった
    境内での縁起芝居の場面は、一観客となって声援を送った

    千代太のお陰で、隠居生活は予想とは全く違う展開になるが、たくさんの人に囲まれ、頼りにされ、知恵を働かせた素晴らしい第二の人生だった
    人生に上がりはなく、生きている限り双六は続いていく

    西條奈加さんの作品は、「心淋し川」に続いて二作目だが、他のも読んでみたくなった

  • 嶋屋徳兵衛(しまや とくべえ)は糸問屋の六代目あるじ。
    このたび、隠居して、店の主の座をを息子に引き継ぐ、と宣言した。
    長年、手堅く商売に励み、代々続いた暖簾を守りぬいた。
    幼い頃から商人として、父親に厳しく躾けられ、趣味も持たず仕事一筋。
    隠居したら好きなことを思う存分にしよう!
    と楽しみにしていたのだが…

    "仕事人間で家族を顧みなかった男の定年退職後"
    テーマは現代にも置き換えられる。
    仕事人間?
    趣味が無かった?
    やばいぞ、ボケるぞ、家族に邪魔にされるぞ―――!

    元百姓家の大きな家を買い取り、まだ大おかみとして頼りにされている妻とは別居。
    何もしない生活と静かな自然を楽しむが、ひと月で飽きる。

    そんな徳兵衛の元に、嵐を呼ぶ(!)、孫の千代太が参上!
    次々と人助けと事件の渦に巻き込まれ…
    あ~れ~…とか言いながら渦潮でくるくる回ってるじじさまが目にうかぶような…

    とにかく退屈しない。
    困っている人を見ると放っておけない、純粋で優しい、孫の千代太、
    隠居屋で徳兵衛の世話をするベテラン女中・おわさもとってもいいキャラ。
    「貧乏は怠慢の報い」と冷たく突き放すばかりだった徳兵衛も、庶民の様々な事情に触れて、変りはじめる。

    隠居で「上がり」だったすごろく=人生ゲームの二枚目が始まった。
    一回休みも、三マス下がるも普通にありますぞ!
    釣りも俳句の会も、お茶屋遊びも、結局、性に合わなかったのだ。
    自分は根っから商売が好きだった。

    「リタイア後、得意な事を生かして地域の役に立ちませんか?」
    地元の広報誌などで見かける言葉。
    それが、飛びきり面白い小説になった
    すごろくに「上がり」はなく、誰かに引き継ぎが出来るのは幸せなことである。

  • カドブン夏推し2023で選ばれた本のハードカバー。

    悠々自適な毎日を期待して一人隠居を決めた糸問屋の主、徳兵衛。しかし隠居生活をいざ始めるとすることもない。強がりながらも虚しさを感じていると、孫の千代太がやってきた。千代太はやがて犬を連れてきて、次は町人の子供達を連れてきて、ドタバタ劇が始まる。

    描写が細かすぎず、すぐにストーリーが展開されていくので、読み始めのイライラ感が少ないのは嬉しいところです。
    糸問屋の6代目として自分に厳しく人にも厳しく、完璧な仕事ぶりの徳兵衛が、隠居をすると人生の楽しみ方もわからず強がっているところが面白い。いつの時代もこういう人、いっぱいいるんでしょうね。
    徳兵衛のような性格に多少難がある人が主人公だと人間らしく感じられ、その考え方や葛藤ぶりに自分を重ねて本の世界に入り込んでしまいます。
    徳兵衛が純真無垢な千代太に巻き込まれ、ジレンマに陥りながらもお節介をやいていき、徳兵衛だけでなく他の登場人物達も成長していく姿が生き生きと描かれています。
    結局は女中のおわさや妻のお登勢の掌で徳兵衛が転がされているところがおもしろくもあります。

    ただ、王子権現の劇の内容は私には難しく、私自身の力不足を感じました。
    この王子権現に、和歌山県の熊野速玉大社の近くにある王子神社の分霊を移したと言われているそうです。この夏に王子神社へ行けたらいいな、と思っています。

  • 公明新聞2017年6月1日〜2018年5月31日連載のものに加筆修正し、2019年3月角川書店刊。徳兵衛の第二の人生である隠居生活を二つ目のすごろくに例えて語る、江戸人情お仕事ストーリー。少し、ごちゃごちゃした話ではあるが、工夫があって楽しめる。

  • 待ち焦がれていた“隠居生活”を始めた、糸問屋の元店主・徳兵衛。
    孫の千代太が隠居家を訪れたことで、徳兵衛の隠居ライフは思わぬ方向に向かい始めて・・・。
    商い一筋に生きてきた頑固爺徳兵衛が、千代太が持ち込む“厄介ごと”に渋々対応していくうちに、気がついたら隠居家が、さながら“生活&就労支援センター”のようになっていく様が面白いですね。
    生活に困窮している子供や女性達が再生して生き生きとしてくる様子は読んでいて心が温かくなります。
    狡猾な大人に邪魔されながらも、貧しさ故に自分たちで働いて稼ぐために、色々思考を重ね協力し合い頑張る子供たちの姿には特にグッときました。
    めちゃめちゃケチで石頭だった徳兵衛の変化や、優しいけれどボンボン育ち故の甘さがあった千代太の成長も微笑ましいです。
    楽しく読めて、清々しい読後感の素敵な物語でした。

  • 導入部でちょっと戸惑iましたが、すぐに引き込まれてしまいます。
    七代目に店を譲った、一本筋は通っているが偏屈で吝嗇な糸問屋の隠居・徳兵衛。喜々として隠居所での生活を始めたものの、元々道楽など無く暇を持て余していた。その隠居所に通い始めた孫の千代太が、次々と可哀想なもの、犬、猫、果ては飢えた子供を拾ってくる。その後始末に振り回されているうちに。。。というお話。

    いわば大江戸版「小公子」。
    純真で一途な孫にひきずられオタオタする徳兵衛の姿が可笑しく、それと共にどんどん他人への思いやりを持ち直して行く姿が楽しい。心地良い読後感でした。

  • 巣鴨で六代続く糸問屋の嶋屋。店主の徳兵衛は、三十三年の働きに終止符を打ち、還暦を機に隠居生活に入った。人生を双六にたとえれば、隠居は「上がり」のようなもの。だがそのはずが、孫の千代太が隠居家に訪れたことで、予想外に忙しい日々が始まった! 千代太が連れてくる数々の「厄介事」に、徳兵衛はてんてこまいの日々を送るが、思いのほか充実している自分を発見する……。

    書評は高い。でも「隠居すごろく」というタイトルと表紙絵に引くところがあるなぁ、孫と祖父のハートウォーミングストリーだったら嫌だしと思いながら図書館に予約を入れました。が、いい意味で予想を裏切りました。そんな単純な物語ではなく含蓄のある好著でした。
    優しい孫の千代太が、新しくできた友人・勘七の家が貧乏で可哀想だとぽろぽろ涙をこぼしながら、何とか援けられないかと徳兵衛に頼む。徳兵衛はそれは憐れみをかけてるのと同じで、腹を空かした動物を拾って飼うのと同じことだ。友人を見下しているのに等しいと、教え諭す所から始まった。先生が怖くて手習い所へ通えない千代太に、そんなおまえを可哀想だと人に言われてどんな心持がするかと投げかける。徳兵衛さん、す、凄いぜ! それだけでなく、幹太の困窮している母親が組み紐仕だったことを知り、組み紐商いへと発展させて経済的な基盤を作るように仕向けて行く。幹太だけでなく似た様な境遇の子供たちで隠居屋は大所帯となる。
    徳兵衛も隠居するまでは代々続いた暖簾を守る商いしかやって来れず「商いは楽しい」と思えなかったのが、攻める商いをやれ、商いの醍醐味を再発見する。
    徳兵衛と千代太の両者は相まって相乗効果を生み出していくのだ。
    小説背景の頃は経済がエコノミック(economic)となる転換期だったのだろう。それまで経済は「経世済民」と言われていた。唐の古い書物にある言葉で、世を治め民の苦しみを救うことを意味し、元々は治世で政治や行政の在り方を示唆していたが、貨幣の流通が盛んになると意味合いが変わってきて、生産や消費、売買などを指すようになった。「経済とは金と人をまわすことで民の助けとなり得るもの。商人はその担い手でなくてはならない。それが私の矜持」と、徳兵衛が胸を張って応えるようになったのは、どうして千代太のおかげだろう。
    子供らの活躍も鮮やか。近くの王子権現に参詣する人らの荷物運びや道案内をやって糊口をしのいでいたが、横やりが入って商売敵が現われる。それに抗して寺社の縁起芝居を打ちお客を獲得し、さらには参加した人に組み紐をプレゼントする案を出す。お仕事小説の手本のようだ。芝居の脚本を書く立作者など「 渦 妹背山婦女庭訓 魂結び」の世界観に再会できたようで愉しかった。

  • +++
    巣鴨で六代続く糸問屋の嶋屋。店主の徳兵衛は、三十三年の働きに終止符を打ち、還暦を機に隠居生活に入った。人生を双六にたとえれば、隠居は「上がり」のようなもの。だがそのはずが、孫の千代太が隠居家を訪れたことで、予想外に忙しい日々が始まった!千代太が連れてくる数々の「厄介事」に、徳兵衛はてんてこまいの日々を送るが、思いのほか充実している自分を発見する…。果たして「第二の双六」の上がりとは?
    +++

    身代を息子に譲って隠居した徳兵衛は、商売一筋にやってきたので、隠居して間もないというのに、その隠居家で無聊をかこつ有様であった。そんな折やってきた孫の千代太が、やさしい気性ゆえに、さまざまな厄介事を運び込んでくるようになり、最初こそは疎んじていたが、次第に抜き差しならぬ状況になり、さらには、千代太が連れてきた子どもたちに触発されるように、新しいことを考えついては愉しむようになっていくのだった。徳兵衛の変化や、千代太や子どもたちの成長、妻のお登勢との関係など、興味深い要素は満載である。なにより、人生というものの神髄が語られているようで、得心がゆくことも多々ある。文句なく面白い一冊である。 

  • 堅実に仕事に打ち込んできた、糸問屋の6代目、徳兵衛の隠居後のお話。
    最初の100ページ位は、怒りっぽくて吝嗇家の、寂しい隠居生活が綴られていて、ちょっと読み続けるのをどうしようかと思ったけど。
    やたらと優しい孫に振り回される内に、隠居生活が充実したものに。
    商売の工夫と人情を組み合わせたサクセスストーリーに、どんどん引き込まれて、気づいたら一気読みの、2度読みでした。

  • 読み進むうちにどんどん引き込まれていきました。
    糸問屋の六代目徳兵衛が隠居してからのお話。
    孫の千代太が徳兵衛を巻き込んでいきます。
    徳兵衛が千代太に、そして千代太が徳兵衛に感化されお互いが成長していきます。
    とても心に残るいい本でした。

  • 泣けてきた。
    これぞ隠居仕事。
    人は変われる。
    でも、至らない点があっても
    それまできちんと人として生きてきたからこその
    第2の双六だと思う。
    あー、思い返したらまた泣けてきたよ。

  • 読み初めは、こんなじいさま嫌だ~、めんどくさいよ、と思ってたんですが、子どもたちに振り回されて、さすがのご隠居様も形なし状態にはなかり笑えました。しかも、なんだかんだで女性の手のひらで踊らされてる様子もおかしくて。タイトルの『隠居すごろく』って、本当にうまいタイトルつけたなと思いました。子どもたちが隠居家に通うようになって、すさんだはすっぱな感じがとれていって、明るく希望を持っていく様子が本当に嬉しくなり、ホロリときました。現代にも置き換えられそうな物語だったけど、やっぱり人とのつながりにしろ、商売のことにしろ、現代だと難しいのかなと思いました。寂しいけど。

  • 初出 2017〜18年「公明新聞」

    文句なく面白い。笑えるし泣ける。

     商売一筋の厳格な糸屋の主徳兵衛が隠居して、隠居所に引きこもったが、心優しい8歳の孫の千代太が、「かわいそうな」犬、猫、欠食の兄妹を、寂しくて「かわいそうな」おじいさまの隠居所に連れてくる。
     徳兵衛は商人の心得を教え込み、貧しい者に手を貸すのをやめさせようとするが、どんどん巻き込まれていき、隠居所は手習い所になり、組紐の工房になり、子供芝居の稽古場になる。
     徳兵衛は人を助けることが経済を回すことになると気づいて行き、初めて商売が楽しいと感じ、今まで心が通じていなかった人々と心が通じていく。

     続きが読みたいのだが、徳兵衛さん亡くなっちゃいましたね。

     

全70件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー。12年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞、15年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞、21年『心淋し川』で第164回直木賞を受賞。著書に『九十九藤』『ごんたくれ』『猫の傀儡』『銀杏手ならい』『無暁の鈴』『曲亭の家』『秋葉原先留交番ゆうれい付き』『隠居すごろく』など多数。

「2023年 『隠居おてだま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

西條奈加の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×