つながりの蔵

  • KADOKAWA
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  • 本 ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041067574

作品紹介・あらすじ

41歳の夏、同窓会に誘われた遼子。その同窓会には、蔵のあるお屋敷に住むの憧れの少女・四葉が来るという。30年ぶりに会える四葉ちゃん。このタイミングで再会できるのは自分にとって大きな一歩になるはず――。
 小学校5年生のある夏。放課後、遼子と美音は四葉の家でよく遊ぶようになった。広大な敷地に庭園、隠居部屋や縁側、裏には祠、そして古い蔵。実は四葉の家は幽霊屋敷と噂されていた。最初は怖かったものの、徐々に三人は仲良くなり、ある日、四葉が好きだというおばあちゃんの歌を聞きに美音と遼子は遊びに行くと、御詠歌というどこまでも悲しげな音調だった。その調べは美音の封印していた亡くなった弟との過去を蘇らせた。四葉は、取り乱した美音の腕を取り蔵に導いて――。
少女たちは、それぞれが人に言えない闇を秘めていた。果たしてその心の傷は癒えるのか―。輝く少女たちの物語。

感想・レビュー・書評

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  • アラフォーの遼子は、特別な思い出を共有した四葉ちゃんが小学校の同窓会に来ると聞いて、遠い新潟から懐かしい東京へ30年ぶりに友だちに会いに行くことにした。
    それがきっかけで、30年前の小5の頃に記憶は戻っていく…。
    誰もが経験する身近な人の死、それを受け入れて前向きな気持ちになるきっかけを与えてくれる話だった。小5の少女たちの友情。かつて少女だったオバハンの胸に懐かしさがリフレイン。2018.9.1

  • 椰月さんの本はこれが二冊目。
    前に読んだ物語もとても好きだったけれど、この本は読み始めた一文目から「あ、この人の文章すごく好きだ」と感じた。主人公の遼子のあっけらかんとした、自分に素直な口調にシンクロするように、思った。こんな風に一文読むたびにうれしくなるのは久しぶりだった。
    児童書、と分類に書いたけれど、正しいかは分からない。でもこれを叶うなら遼子たちの年代の時に読んでいたら物凄く生き方に染みこむ一冊になっただろうなと思ったら、児童書にしてしまった。

    遼子の家はおばあちゃんが病気になり、それを機にお母さんは仕事を辞めた。父親のお母さんなのにお父さんはおばあちゃんの世話をお母さんに任せているのも、中学生のお兄ちゃんが家のことを手伝わないことも、それを許している家族にも遼子は少し不満をもっている。不満、まではいかないけれど、不信の種のようなものが植えられていくような。
    遼子の友人の美音は五年生になって仲の良かった友達とクラスが離れ、少し怒りっぽくなっていた。彼女には亡くなった小さな弟がおり、その存在が彼女のなかで大きく重たい重りとして彼女の小さな体を揺らしている。
    そんな二人はクラスメイトの四葉と仲良くなる。四葉の家は幽霊屋敷と噂されるほど大きな家で、その家には四葉の母、四葉の祖母、そして四葉に詩吟を教えてくれている曾祖母がいっしょに暮している。
    彼女にはどこか不思議なところがあり、遼子は彼女に魅かれる。
    ある日四葉が詩吟を見てみないかと美音と遼子を誘ってくれたのだが、そこから彼女たちは魂同士の触れ合いを体験することになる。


    遼子のおばあちゃんが病気になり、いままで大好きだったおばあちゃんが少し疎ましく、可哀想なのにイラつきを覚える存在になったことに動揺し、自分のことを残念に思う気持ちがよくわかる。
    美音の亡くなった弟が賽の河原で石を積んでいるなんて可哀想だと泣きじゃくる場面、ひどい言葉を四葉に投げつけながら、いっしょに傷付いている姿がありありと浮かんだ。
    四葉という子のにこにことした顔を、遼子がお地蔵さんのようだと気づく前から、私は同じことを考えていた。
    四葉ちゃんってお地蔵様みたいな顔で笑うなぁと。
    彼女たちの問題が蔵に入ったあと劇的に変わっていくわけではないけれど、自分の心の在り方が定まったら、それだけで大丈夫になることがある。
    一度知った真実が、それからの大きな自分の時間を、遠くに来ても照らしてくれる。
    そういうお話だった。

  • 子供から大人に至るまで、実はシームレスに時間が続いているのに、どうして子供の頃の思い出や感情というのは特別に感じるんだろうか。
    絶対だと思っていた友情も、卒業や転校であっという間に雲散霧消します。自分が取り残されたような気がするのに、実は自分の心がもうそこには無かったりします。

    本書では、大事な時間を共有した3人の少女たちが、30年後の同窓会で再会します。
    皆、人生色々あって、子供の頃思い描いたようにはなっていないけれど、3人で過ごした時間が宝物のようにピカピカしています。
    学校や放課後遊んだ思い出の描写がとてもいいです。男子とはまた違った精神的なやり取りではありますが、幼さの中に少しだけ大人の要素の混ざった微妙な機微を書くのが本当に上手い。
    筆者の不朽の名作「しずかな日々」の牙城は崩せませんが、十分にいい作品に仕上がっていると思います。
    ファンタジックな部分が若干邪魔に感じられましたがこれは好き好きですね。

  • 祖母から母、そして娘へ。悩める少女たちに伝えたい感動物語。
    感動、感動しました。小学5年生の少女たちの友情、ゆれ動く心、その3人の関係が緻密に描かれいてすんなり読めました。ラスト同窓会の再開も感動しました。

  • 今の時期にちょうど良い。夏だし。お盆が近い。
    あちらの世界とこちらの世界を繋ぐ不思議な蔵の話し。
    児童書?と思う位にほぼ小学生時代の回顧。

  • 主人公は双子の母親の主婦。
    彼女は久しぶりに小学校のクラス会に出席する事にする。
    それは、その頃仲が良かった「四つ葉ちゃん」という友達がクラス会に来ると知ったから。

    小学校の頃の彼女は美音という、可愛くてちょっと気の強い友達がいて、その子とは別に、ちょっと変わった雰囲気の四つ葉ちゃんという女の子と仲良くなる。
    四つ葉ちゃんの家は大きな家で、その敷地には蔵があった。
    そこで主人公と美音は不思議な体験をする。

    表紙とタイトルから「イイ話系」の話なんだろうな・・・と想像して読んだらその通りだった。
    個人的にそういう系統の話はあまり好きじゃないので、期待せずに読んでいたら意外にも良かった。
    話そのものが・・・というよりも、小学生の女の子のちょっと傷つきやすくて瑞々しい感性みたいなのが、作者の繊細で鋭い感性によって描かれている、という感じで、想像しながら読でいるとあっという間に読めてしまった。
    3人の女の子もいい子たちでそれほど刺激的な事があるわけでなく、書いてある事もそれほど驚いたものじゃなかったけど、言葉遣いや文章そのもので読ませてくれる本だった。

    亡くなった人に対しての思いは私もここに書いてある事と全く同じように思っていて共感した。
    あと、主人公の女の子が祖母が認知症になり、自分の事を忘れかけている、淋しい・・・という気持ち、それを踏まえて、生きている時よりもその人が亡くなってから側にいてくれてると感じる、生きている人の事の方が忘れてしまう事がある、って分かるな・・・と思った。

  • 蔵の詳細が知りたい。

  • 二児の母親である遼子のもとに小学校時代の友人から同窓会に出ようという誘いがある。

    遼子の記憶は小学校5年生の時に巻き戻り、クラスの状態にかすかに苛立つ美音と、おっとりとしてどこか神秘的な四葉と過ごした日々がよみがえる。

    世界に対峙する力がまだまだ不器用でままならない幼少時代のもどかしさや楽しさが伝わってくるのだけれど、タイトルにもある蔵のくだりやその後の顛末についてはあまりにもふわっとし過ぎていてどこか物足りなさが残った。

  • 小学5年生の女の子3人の少し不思議な物語。現象として不思議な部分はあるが、それよりも3人のそれぞれに抱えている思いや悩みがその年齢ならではのリアル感があって、じわりと伝わってきた。特に主人公の遼子の素直な詩がとてもストレートに心に入ってきた。大人になると小さい頃にあった不思議なことも曖昧になるというのは誰にでもあることなのかもしれないなと読み終わってふと自分の幼い頃を振り返ってしまった。

  • 「魂というのはね、ずっと存在するの」
    その人に思いをはせて祈ることが出来れば、いつか心は穏やかさを取り戻せるのだろうけど、受け止められない気持ちは暴れると手が付けられなくなるから、この言葉は心のよりどころになり、いつか平穏をもたらしてくれる気がする。
    よくある「この手の話」にして、あらず。

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著者プロフィール

1970年神奈川県生まれ。2002年、第42回講談社児童文学新人賞を受賞した『十二歳』でデビュー。07年『しずかな日々』で第45回野間児童文芸賞、08年第23回坪田譲治文学賞、17年『明日の食卓』で第3回神奈川県本大賞、20年『昔はおれと同い年だった田中さんとの友情』で第69回小学館児童出版文化賞を受賞。『明日の食卓』は21年映画化。その他の著書に『消えてなくなっても』『純喫茶パオーン』『ぼくたちの答え』『さしすせその女たち』などがある。

「2021年 『つながりの蔵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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