蟹工船・党生活者 (角川文庫 こ 32-1)

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041068021

作品紹介・あらすじ

オホーツクのソ連領海を侵して蟹を捕り、缶詰に加工する蟹工船では、貧困層出身の人々が奴隷のような過酷な労働を強いられている。船には海軍の軍艦が寄り添い、この搾取が「国策」により行われていることを示していた…。「ワーキングプア」の文学として脚光を浴びる、日本プロレタリア文学の金字塔「蟹工船」。小林多喜二虐殺後、遺作として発表された「党生活者」。新たに雨宮処凛による解説も加えた、文字が読みやすい新装版。

感想・レビュー・書評

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  • 蟹工船のラストが印象に残る。
    途中はさておき、個人的にラストが印象に残ったのは「海の向こうで戦争が始まる」以来かもしれません。単なる記憶喪失かもしれませんがw

    党生活者。小林多喜二のその後を考えると、酷い時代だと実感する。今はより陰湿になっているだけで衆愚が酷い時代であることは変わらないかもしれませんけど。

    払ってもいい金額:1000円

  • プロレタリア文学とかそういうの抜きにしても物語として面白かった。
    さすがたっきー!
    新装版だからか?読みやすかったし。
    しかし、啓蒙として考えた場合はどうなんでしょうかね。
    「党生活者」なんて、「俺は搾取され続ける大衆のために己を犠牲にしても戦わねばならぬ」という壮大な思想に酔ってる感も漂っててちょいと鼻白む部分もあったりする。
    自分の生活費のために、女をカフェで働かせてしかも「あいつは自覚が足りない」とか。今見たら、とっても酷いw
    ブルジョワの搾取っぷりも鬼畜だったんでしょうけど。

  • 蟹工船
    オホーツク海での蟹工船が描かれている。資本主義によって働かない偉い人たちと働くけど酷い扱いを受ける人という構造が目に見えるようになっていく。全国から集められた漁夫たちは過酷な労働環境で働かされ、死んでもなお雑に扱われることに対して不満を抱きついにストライキを起こす。しかし、味方だと思っていた帝国海軍によって鎮圧されてしまうが労働者の反骨は止まらないところで終わった。
    今も知らないところで低賃金で過酷な労働を強いられている人がいるのだろう。共産主義に賛成するわけではないが行き過ぎた資本主義は人を破滅させてしまうのだろう。

    党生活者
    軍事工場の臨時工として潜入した佐々木は帝国主義による戦争に反対するため活動する。途中同志が警察に捕まったことで笠原のところに身を隠すことになり裏から須山や伊藤といった同志と連携しながら共産主義活動を続ける。臨時工の大量馘首に対してビラを撒きストライキで対抗しようとするが工場側に先手を打たれてしまい多くが首となるところで終わった。これは前編となっており、作者の小林多喜二が特高の拷問によって死んだことで後編は描かれはことはなかった。
    佐々木が個人としての生活を放棄して党のため、人のために警察に見つからないよう行動する様は臨場感があった。しかし、一緒にいた笠原に対しての扱いは酷かった。活動のためのお金をもらうだけの佐々木が笠原にその正当性、重大性を説いてるけど笠原からしたら知ったことではないよな

  • 奇しくも、読了日が作者の命日だった。
    マジで特高には(その性根は今も健在であるので余計に)ムカつく。

    一体、共産党が何をしたというのだろう!?。

    確かに当時の共産党の中に急進的で過激な思想はあったかもしれないが、権力側の犬と化した人間に、そんな彼らを無制限に拷問できる権利はない。

  • 遠くから聴こえる声がある。暗闇を手探りで歩いている。しかし、向こうの声は決して当てにはならない。隣にいる見ず知らずの男たちの息遣いが便りだ。時代背景を無視せずにはいられない。作者が伝えたかったのは、“闘争”ではなく“人権”ではなかったか...命の鼓動が聞こえた

  •  巷で流行っているというので、初めて読んでみました。

     以前、3K=「きつい」「汚い」「危険」という言い方が流行りましたが、言うまでもなく、この本で書かれていることは、それどころの話ではありません。でも、ある特殊な状況に置かれると、人間はこういうところからも逃げられないのかなと思いました。

     それほど説得力があるというか、リアリティのある描写に驚きながらも、吸い込まれていきます。

     当時この作品を読んだ人たちは、今の私が感じたもの以上の、もっと別次元のことを読み取ったのだと思いました。

  • 一言でいうと、読んでいて辛い。先に進むのが辛いです。文章自体はさすが小林多喜二。テンポよく、会話文中心でリズミカルに書かれています。

    ただし、これが実話に基づいているというから驚き。
    こんな時代がつい数十年前の日本にもあったのか。卑劣で劣悪、苛酷な労働環境。
    生きているはずなのに死んでいるかのような見た目を繊細な描写で描いています。毎日の気が狂いそうな労働に、辛うじて命を繋いでいて、その中から決して抜け出せない労働者たち。

    記憶に残ったのは、ロシア人の言葉です。「一生懸命働くのは労働者(プロレタリア)。金を取るのは指示だけして働かない上の者。この構造がおかしい」と指摘され、初めて立ち上がり、労働組合のように結成していきます。

    労働者たちが目の前の悪を敵と思い、立ち向かっていくのは船長です。しかし、上には上がいて、それは決して自分たちの味方ではないということに気づかされるところまで描かれています。まさしく今に通ずるものがありますね。

    今はこの頃と比べてたしかに労働環境が随分よくなりました。ただ、今があるのはこの時代の労働者たちがいたからです。声を上げる大切さを教えてくれます。

    こういう文学こそ日本の歴史の一ページとして読み継がれていくべきものではないでしょうか。

  •  カニ缶製造舟の過酷な労働実態について。読んでいて大変辛いが、一度読むにはいい。こういう時代もあったんだよなと思うのは無駄じゃない。
     ただし、読むのは辛い(二回目)。精神力をガジガジと削られる。

  • 『蟹工船』
    プロレタリア文学。とても読みやすい。
    労働環境は劣悪であったが団結していくことで立ち向かっていく姿は今にも通じるものがある。

  • 「遙か昔のプロレタリア文学」って印象しかなかったけど、思った以上に現代に通じている部分があって怖い。社畜文学。

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著者プロフィール

1903年秋田県生まれ。小樽高商を卒業後、拓銀に勤務。志賀直哉に傾倒してリアリズムの手法を学び、28年『一九二八年三月一五日』を、29年『蟹工船』を発表してプロレタリア文学の旗手として注目される。1933年2月20日、特高警察に逮捕され、築地警察署内で拷問により獄中死。

「2008年 『蟹工船・党生活者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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