傘をもたない蟻たちは (角川文庫)

  • KADOKAWA
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本棚登録 : 256
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041068885

作品紹介・あらすじ

かなわない――。天才肌の彼女に惹かれた美大生の葛藤。
書いた原稿がそのまま自分の夢で再現される不思議な現象にのめりこんでいく小説家の後悔。
幼なじみの秘密を知り、彼との接し方がわからなくなってしまった男子中学生の苦悩。

自分の心に正直でいたいだけなのに。
誰もが胸に抱える生きづらさを鮮烈に切り取った、著者初の短編集。

単行本未収録作品であるタイムリープSF「おれさまのいうとおり」を加えた全7編。

感想・レビュー・書評

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  • 加藤シゲアキさんを知っているから、
    それも含めてすごく楽しかった。
    もう一回読みたい話があるし、
    長年に渡って楽しめそうだなと思う。
    個人的には、コーヒーの染みがついてしまったのが
    とても痛い。けれど、なんか良いかもしれない。

  • 本屋さんでカドフェス2018の棚に並んでいた中からタイトル買いをした。 読み始めて作者のプロフィールを読んだが、なんと彼は30歳の若者で、ジャニーズのタレントだった。失敗したかもと思いながら。


    だからどうというのではないが、タレントや芸人という既にその世界で名前が出ている人たちの本も多い。小泉今日子さんの書評は前に読んでいたのでとても好感を持っていた。タレント本という名前で苦労話や成功譚など特にファン向けにあるような本や写真集が出ていたが、最近は又吉さんのこともあって、タレントという名実ともに才能がある小説家で活躍する人が増えて来た。

    世代の差や世界観の違いがあればレビューが難しいかもしれない、と重い気分で読み始めた。

    短編が7編、初めての短編集だというが、キャラクターもストーリーもいい。べたべたの現実を自己流の視点で著すのではなく、心に拡がる風景を暖かく時には哀歓をもって語っていく。スタイルも言葉も新鮮で、年齢の差を超えて共感できる部分があった。

    ☆染色
    美大生のはなし。橋げたにこっそりアートを描いている女性との出会いと別れ。
    これは若者の平均的な生活の欠片のようだが、今時感がたっぷり。

    ☆Undress
     タイトルが面白い。
    父親のように零細企業に勤め倒産の憂き目にあいたくない。家族は満足な暮らしができなかった。そんなのはごめん だ。
    猛勉強をして有名広告会社に入り実績を積んだ10年。さあ念願の脱サラだ。脱いで重なったスーツは過去の抜け殻だった。送別会の拍手に送られて、こちらも選りすぐった赤いボールペンを配った。残った一本は自分用に。
    休暇が始まった。実績があるし未来には余裕があった。そろそろひた隠しにしていた彼女と遠慮なく会える。と思ったが。彼女の意外な真実が甘い未来を打ち壊す。軽いミステリかも。

    ☆恋愛小説(仮)
    出版社から「男子の恋愛」という女性週刊誌から執筆依頼が来た。という書き出しで。これで作者は何を書くのかちょっと期待した。 
    これは上手い。着想がファンタジックなSFだ。
    書けるはずがないと思いつつ題名は「恋愛小説(仮)」とした。とりあえず200文字書いた後酒を飲んで眠ってしまった。200字に書いた理想の美女とのあれこれをそのまま夢に見た。200字書けばそれを夢に見る。次々に200字だけの内容は理想通りに更新して付き合いが発展して行った。200字の夢に取り込まれた。だが。予想外なことに。

    この依頼は実際にあったそうだ。

    ☆イガヌの雨
     イガヌは食べ物だ、18歳未満は食べてはいけない決まりがある。
    イガヌは突然飛行機から降ってきた、それから毎年12月に降ってくる、おいしいし薬効がある、栄養が豊富で食べれば餓死寸前の子供がみるみる回復する。試験明けの開放感で友達と初めて食べた。おいしすぎて従来の家庭料理や食材が消えていく。

    ☆インターセプト
    なんとなく自分留意いいと思った彼女の落とし方。
    こんな所はこう演じるのか、スーパーボールで黄色いタオルを降ることなどまねる。
    大人な世界が若者風に。

    ☆おれさまのいうとおり
    ゲームをしていたら8階なのにベランダから「おっさん」が入って来た。
    「LOOPER」とか「時かけ」だの「タイムリープ」だのという言葉が挟まる。おっさんは俺の恥ずかしいことまで知っている。これは未来の俺か。まじで?

    ☆にべもなく、よるべもなく
     田舎町なので首都高速に乗ったことがあるという工藤先輩を尊敬している。中三で「妄想ライン」という小説で小さな賞を取った、村で知らない者はない。先輩は首都高を走ったのか、免許もないのに。
    しかし親友のケイスケは、フィクションだろうそれでも本質には変わりがない、という。
    ケイスケの秘密を知って、彼を理解するのに時間がかかった。
    浜で独り暮らしの根津ジイとは親しくしていた。ケイスケが遠くなっていく姿を見て、根津ジイがいう。

    「お前、なにか間違ってるな。人ってのはな、喜ぼうと思っても限界があるが、悲しもうと思うと際限なく悲しむ悲しむことができる。わしは悲しんだりしない。ただの出来事として受け入れる」

    喜びは有限。悲しみは無限。僕は心の中でそう何度もつぶやいた。

    先輩は実際に運転したのだろうか、免許を取った僕は首都高を走っている。


    スタイルも、テーマもよく考えられ面白かった。アイドルで今30歳の加藤シゲアキさんに若書きとは言えない。
    私はその頃子育てで忙しかった、環境は全く違っていても、この短編集の面白さはよくわかる。
    言葉の感覚もテーマも好きなので、こういった人間性や観察感の豊かさが好きでこれからもいい文学を作り出してほしいと思う。ずいぶん世代のギャップはあるが現代の若者言葉もうまく嵌っていいリズム感を出している。

  • NEWSのファンではないけれど、興味本位で読んでみた短編集。映画になりそうなストーリーも平成時代らしい表現も、とても好みだった。時々、ふとシーンを思い出すことすらある。特に「イガヌ」は強烈なインパクトがあった。

  • 短編集。
    ミステリアスな感じ。

  • ほろ苦い青春小説あり、奇妙な物語あり、人情話もあり?
    一冊で様々なジャンルの物語を読める短編集。

    「ジャニーズの人」という先入観抜きにして読んでも純粋に面白かった。

  • <図書館の所在、貸出状況はこちらから確認できます>
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=334605

  • 一遍のUndressはプチドラマみたいな展開。
    メタ認知気味な文体が多い。

    人間だから当たり前のことではあるのだけれど、ほぼ各話で性描写が出てくることが軽率な印象になっていると感じてしまう。

    好みの人は好みなのでは。

  • 張り詰めたような、若者の焦りに似た微妙な感情。
    傷を負いながらも、また傷つけないではいられない。
    こういう感覚を第一線で描けるのは、彼ならでは。

    いやー私は彼の文章が大好きだわ!
    特に「イガヌ」のエピソード。
    ほんとうに食べてみたくなっちゃった。

  • 2018.7.12

  • 本当になんとなく、本屋さんで目に付いたので買って読んだ。
    最初の、染色を読んでから作者どんな人なんだろう?と見てみると写真があって珍しいなと、そうしたらジャーニーズのアイドルなの?とびっくりした。
    それで少し後悔してしまった。だからちょっと理解不能な感じなのかな?と一瞬思ってしまった。アイドルが文を書いてみました、的な軽いものなんだろうと勝手に憶測した。

    でも、その次の話からどんどん面白くなって、なんだこれって言う感じですぐに全部読んだ。
    頭も相当いい人なんだろうなあと、私はこういう物語好きなので楽しめた。救いがないと言えばないのだろうけどそういうことはもはや問題じゃないなと思えた。
    単純に読み進めることが面白かった。新鮮だった。

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著者プロフィール

加藤シゲアキ(かとう しげあき)
1987年生まれ、大阪府出身。青山学院大学法学部卒。2012年1月、『ピンクとグレー』で作家デビュー。同作は16年に映画化され、大ヒットした。以降『閃光スクランブル』『Burn.-バーン-』(以上、渋谷サーガ3部作)と年1作のペースで執筆を続ける。最新刊は『チュベローズで待ってる(AGE22・AGE32)』。NEWSのメンバーとして芸能界でも活躍の場を広げ、近年はドラマやバラエティ、情報番組などに出演し、アイドルと作家の両立が話題を呼んでいる。

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