最後の晩ごはん 聖なる夜のロールキャベツ (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041068892

作品紹介・あらすじ

ばんめし屋を訪れた中学生の少女。その目的は「幽霊に会うこと」。店員の海里たちは困惑し、幽霊など出ないと嘘をつく。一方作家の淡海が海里をモデルにした小説が完成。しかし彼は驚きの行動に出て……。

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ第11弾。
    回を重ねる程、主人公の海里の今後が気になって仕方ない。

    作家の淡海が海里をモデルに書いた小説がいよいよ完成。
    完成したら真っ先に読ませてくれる、と言っていたのに、それをテレビで知る海里。
    そして私達読者はプロローグで、淡海が爆弾発言する事を知っているので、かなりドキドキで読み進める事になる。

    三章、試される心。
    四章、投げられた小石。
    本当に大波乱ではあるが、海里はしっかりと地に足をつけた成長を見せ、家族の絆は強くなり、夏神の愛情もより強く感じられる。
    ロイドの存在も心強い。
    海里がいつか俳優の道へ戻る日が来ることを予感させる物語。

    そして今回の幽霊は、なんと幽霊ではなく、会いたいと強く願った事による幻。
    とても良いお話でした。

  • 夜だけ営業する<ばんめし屋>を舞台に、ちょっと不思議でちょっと温かいドラマが展開するシリーズ第11作。
    切りのいい10作で完結と思いきや、まだ続いている。
    だが読み終えてみると、そろそろ完結に向かっているのかなと思わせる。

    今回は父親の自殺の真相を知るために父親の幽霊に会いたい女子中学生カンナの話と、作家淡海五朗の新作出版に関する爆弾発言による海里たちの心の揺れを描く。

    これまでは偶然出てきてしまったりやって来たりした幽霊を絡ませてきたのだが、今回は初めて「出てきてもらう」幽霊。
    幽霊が出て来やすい場所にある<ばんめし屋>、ロイドの付喪神としての力、そして父親の幽霊に会いたいというカンナの強い思い。それらが噛み合った時、父親の幽霊に「出てきてもらう」ことは出来るのか。

    個人的にはやはり海里の今後が気になって読み進めた。
    淡海が何故海里に何も言わず、フライングのような形でテレビ番組で新作のモデルが海里であること、そして新作がやがてドラマ化される際には海里が主役を演じて欲しいという爆弾発言をしたのか。
    その真意を知ると、淡海はこれまで海里らに見せてきた優しくて穏やかな面だけではなく、彼の半生にも裏打ちされた厳しいものを持っているのだと知る。

    そんな淡海により『投げられた石』による波紋に対し、海里の家族はかつての海里に対する態度とは反対に彼を優しく包み、夏神はかつての自分の過ちとも対抗するかのように堅固で頼もしい壁として海里を弄ぼうとするメディアに対抗し、ロイドは迷える海里をロイドらしい付喪神視点で諭す。
    海里が行き着いた答えはシリーズ序盤とは違い、しっかり地に足が着いたものであり成長を感じさせてくれるものであった。今の海里ならきっと良い役者になりそうだとは思うのだが、やはり寂しい気持ちにもなる。

    この結末を見る限り、シリーズとしての完結の形も見えてきたように思う。
    それをどのように描くのか、読むのが辛いような楽しみなような。
    そのくらい海里・夏神・ロイドの三人のバランスは見ていてホノボノする。

  • 「最後の晩ごはん」シリーズ、第11作目。
    毎回面白く読んでいるが、夏神さんの過去の心残りが解決してからは、正直、少し緊張と謎への興味が薄れた気がしていた。
    良い意味で気が抜けたというか?
    しかし、それも必要な平穏だったということが今回の話を読むと分かる。
    ちょっとプレリュード的であった10作目を引き継いで、いよいよ平和な日々に波を立てるべく、一石が投じられる。
    海里のプライベートと並行して、今回は幽霊の件も短編ではなく長編として描かれ、いつもと違う試み。
    そして、読みやすさの理由はやはり、巧みな心理描写だと思う。
    心に響く言葉もあちこちにちりばめられている。
    “家長”夏神さんと住み込み弟子の海里、ロイドとの3人暮らし、温かいです。
    夏神さんの海里にたいする気持ちが、ほんとうの親のよう。
    弟子として、海里をよろしくお願いします、と私からも。
    いつもでもこのまま続いてほしい気持ちとともに。

    プロローグ
    一章 北風、隙間風
    二章 夜のお嬢さん
    三章 試される心
    四章 投げられた小石
    五章 いつも傍に
    エピローグ

  • シリーズ11作目。淡海先生が、新作のモデルが海里であることをテレビで発表してしまったため、再び海里の周りは騒がしくなる。

    信頼していた淡海の裏切りとも思える行動に落ち込む海里に対して、全力で甘やかす家族と、自分が盾になって守ろうとする夏神、優しく励ますロイド、本当に優しい人たちばかり。
    でも、だからこそ、その優しい環境に甘んじていていいのか、と厳しい言葉をかける淡海先生もまた、海里のことを案じているのも確かで。やっぱり海里の周りには優しい人たちが集まってくる。

    淡海先生が意外としたたかだったけれど、でもそのおかげで自分の足で役者に戻る道を選んだ海里。すぐではないにしても、いつかはばんめし屋を離れる日が来ることを予感させ、少し寂しい気分にもなる。

  • ライトノベルによくある漫画の表紙は嫌いなんです。
    作者の思いとは別の、商業的な作為が確かにあると思うから。

    でもこのシリーズ、欠かさず読んできました。
    その理由はただひとつ。この作品の物語には
    本物の力があると感じているからです。偉そうですが。

    少しずつ少しずつ。そうして一人ひとり。
    付喪神のロイドももちろん。

    物語が進むに従って、それぞれの人生が前に進むんです。
    本当にひとりの例外もなく。

    その場限りの登場人物がひとりもいない。
    ばんめし屋で出会ったみんなが、その出番を終えても
    ずっとずっと繋がったままでいることを、いつまでも
    ほのかに感じ続けています。

    そうして今作で、とうとう海里は自分の歩く先を
    自分で選ぶ力を取り戻しました。

    カンナちゃんとお母さんの茜さん。
    この母娘のエピソードにも涙を流しました。

    ばんめし屋の人たちはいつも、誰かの心を解しながら
    自分たちもまた解されてゆく。成長してゆく。

    少しずつ、この物語の終幕が近づきつつあることに
    期待と寂しさを覚えつつ、私もまた心解されました。

  • このシリーズ、本当に好きだなぁ‼️ライトノベルにはもったいない。
    登場人物の感情を一冊でちゃんと回収して描きあげる。それがすごい。

  • 夏神さんが頑張っててほんと好き…
    理想の上司。
    海里と夏神さんが二人でしっかり将来への展望を確認出来たのでひとつ安心しました。
    夏神さん贔屓なので。ひとりぼっちになってほしくないんだよなー、ずっと二人+メガネで定食屋やってて欲しい。

  • 兵庫県芦屋市。定食屋「ばんめし屋」を訪れた中学生の少女。その目的は「幽霊に会うこと」。元俳優で店員の海里たちは困惑し、幽霊いないと嘘をつく。しかし彼女の会いたい幽霊とは、幼い頃亡くした父の幽霊だった。一方、海里はテレビ番組のCMで、作家の淡海が海里をモデルに書いた小説が完成したことを知る。しかも淡海が、モデルが海里であることを明かし、さらに驚きの発言をしたことで大騒動となり…。大波瀾の第11弾!!

  • 「この小説のモデルは五十嵐海里」と淡海がワイドショーで予定外のカミングアウト!またしても大変な騒ぎになったばんめし屋だが、夏神も海里も前回とは違ってたくましい。淡海が勝手なことをしたのは海里の復帰のためと自分のため、本人が語った通り両方なのだろうが、やはり少しアンフェアではないかとも思う。
    幽霊関係は、父親の自殺の真相を知りたい少女との交流。まさかの呼び出し……と思わせつつ、納得できる落とし所。功労者はロイドだ。

  • 淡海先生の爆弾発言のせいで
    またまた受難の海里。
    でもまぁ、先生にも考えがあって。
    海里が自分の気持ちを見つめ直す
    機会になったかな〜。
    家族とたっぷり触れ合えたし( ̄▽ ̄)

    幽霊がらみは変形パターンで
    中学生の少女が来店して
    「幽霊に会いたい」と言い出した!
    はたしてその真意は?

    このカンナちゃんが、なかなかいいキャラで。
    別に幽霊じゃないから
    また顔を見せてくれると嬉しいな。

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著者プロフィール

作家。監察医。講談社ホワイトハート「人買奇談」にてデビュー。代表作は「鬼籍通覧」シリーズ、「奇談」シリーズ(講談社)、「最後の晩ごはん」(KADOKAWA)、「時をかける眼鏡」(集英社)など多数。

「2023年 『妖魔と下僕の契約条件 5』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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