代体 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2018年5月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (480ページ) / ISBN・EAN: 9784041068953

作品紹介・あらすじ

近未来、日本。そこでは人びとの意識を取り出し、移転させる技術が発達、大病や大けがをした人間の意識を、一時的に「代体」と呼ばれる「器」に移し、日常生活に支障をきたさないようにすることがビジネスとなっていた。大手「代体」メーカー、タカサキメディカルに勤める八田は、最新鋭の「代体」を医療機関に売り込む営業マン。今日も病院を営業のためにまわっていた。そんな中、自身が担当した患者(代体)が行方不明になり、山の中で無残な姿で発見される。残される大きな謎と「代体」。そこから警察、法務省、内務省、医療メーカー、研究者……そして患者や医師の利権や悪意が絡む、壮大な陰謀が動き出す。意識はどこに宿るのか、肉体は本当に自分のものなのか、そもそも意識とは何なのか……「科学が倫理を押しつぶす世界」を描いた、「百年法」を凌駕するエンタテインメントがここに誕生! 解説:藤田直哉

感想・レビュー・書評

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  • 近未来の日本を舞台にしたSF小説。人間の意識を義体(代体)に転送してしまう技術が開発されて、それが実用に移されるという、攻殻機動隊の如き世界だ。ただ、もっと現実感のある、現代に極めて近い親しみやすい世界ではある。義体ばかりでなく、意識を転送してしまって空になった肉体などというものが出てきて、おおという感じだ。とんでもない展開が待っていて、非常に面白い。しかし、思うに中心になるのは、究極の友情なのだ。人物描写もなかなかのもので、とても親しみやすい、しかも分かりやすいSFだ。こういうところは山田宗樹の持ち味なんだろう。

  • 人の意識を代体と呼ばれる人造人体に移すことができるようになった。ただし、三十日以内に元に戻さなければならない(代体のエネルギーが持たないし、新しい代体に移し換えることは法律で禁止されている)。

    この代体技術はもっぱら、重い治療を施す際に患者の意識を一時的に退避させるため、或いは死を待つ患者に健康状態を体験させるために用いられている。

    代体技術を悪用すれば、(違法行為だが)永遠の生も不可能ではない。生身の健康な人間を拉致してその意識を消去し(クリーンナップ)、その人体(ブランク)に別の者(例えば生に執着する死期間近の老人)の意識を転送すれば、意識は存続し続けることができる(意識だけで生き続ける人々をクリンガと呼ぶ)。この世万歳を手掛ける地下組織〈ダス・ディング〉は摘発され、消滅したが、十九名のブランクが残され、ラザロ(L)計画が始動したのだった。

    SFの面白さ満載の、ワクワクするような展開。ただ、後半やや失速(というかスケールダウン)してしまったかな。人間の"意識"についてもうちょっと哲学チックに深掘りして欲しかったし。何だか惜しい気がする作品だった。

  • 代体 山田宗樹

    人間はいつの時代でも不老不死を求めるものなのですね。「代体」とは代わりの身体器のこと。ある人(治療の必要な患者など)から、意識(魂)を抜き取り、ロボットの中で生かす。ただし、期間は1か月で終わり。長期間は機能的に無理みたい。法律で1人1体と決まっているで、肉体が死んでも意識だけでロボットを移り変わって永遠に生きることはできないが、まぁ、それは裏道というのか人間がやることなのである。発想は面白くストーリーも楽しい。でも、意識は取り出せないだろと思うので、リアリティは欠けるのです。

  • 近未来のSF作品。いつかは人間の機械化、もしくはそれに似た、今回のような意識の機械への転送が可能になるのだろうか。

    言語化するのは難しいが山田宗樹はこういった、近未来に対する作品が非常に引き込まれる内容で描かれる。
    未来に対する想いを馳せる。

  • 以前読んだ「百年法」がとても面白かったので手に取りました

    人間の意識を取り出し移転させる技術が存在する、近未来の話ですが、人工知能などの存在を考えると意外と現実的にも思えて怖かったです

    次元の解説は正直ついていくのに苦労しましたが、代体のルールや仕組み含め、メモをとりながら整理して読みました

  • 人の脳のデータ(意識)をアンドロイドへと転送し、
    生活をするという近未来的小説。
    代体のルールや小難しい箇所はあったが、
    概ね楽しんで読めた。

    私はデータにはなりなくないなぁ。
    「ガイン」の孤独が何とも切ない。
    でもやっぱり、お母さん大好きだよね。

  • ラストが怒涛の勢いで進む。
    最後の数十ページ、とても良かった。余韻に浸る。
    最初はやな奴だと思っていたが、彼はずっと孤独でただひたすらに純粋だったのだと思う。

  • 近未来SF。
    百年法と同じく、将来この技術ができたらどうなるのか、思考実験のような感じで面白かった。

  • 身体から意識を取り出して代体(人工身体)に移すという発送は、流石、山田宗樹さんという感じで惹き付けられました!ただ、ф次元移動(他の人の意識の中を超高速で飛び交う)が出てきたところから、癖が強すぎて、理解が追いつかなかったので星三つ。なんでガインはф次元移動がしたかったのか、単なる冒険心なのか…

  • この著者の話はいつも考えさせられるものが多い。
    体のない精神なんてありえないのでは?この間、テレビのAIの番組をみていて、体があったればこその思考や感覚がある。それがない意識なんてない気がするけど。あっても人間の意識ではない。

    ラストどうなるかと思ったが、そういう落ちか。

  • あらすじを読んで面白そうだなと思って読んでみたのですが、期待が大きかった分個人的には好きではなかったです。。。
    知識というか、科学の根本というか、そういう部分が薄くて近未来でも知識量的にもう少し現実に近づけることができていたらもっと緻密になって面白いのになと思いました。。。

  • すっかり山田宗樹さんのSFにどっぷりつかり、一気読み3作目。

    データとして生きてきたガインの最後が切ない。

  • 面白かった~!毎度ながら山田宗樹のSFは壮大で凄く奥深くて面白いと思います。
    近未来的な話が多く、そのせいで有り得ないとは思いながら、もしかしたら有り得るかも、と感じてしまいます。
    このお話は、「代体」文字通り病気を完全に治癒させる為に、一時的に義肢ならぬ義身体に人格の全てを移し、空になっている本体を治すと言う医学がベースにあります。その技術の開発者が暴走していくと言うストーリーです。
    少し難解な部分もありましたが、良くこんな話が創造出来るなと関心しました。また今後も壮大なSF作品を期待します。
    しかし何故山田宗樹作品を映画化しないのかなぁ、日本人の作品でこれだけヒットしそうな映画原作ないと思うけど⁉️

  • 意識を自在に移せる技術が発達した世界が舞台。意識とは?生きてるとは?を考えさせられる。

  • テーマ自体は非現実的ですが、そう感じさせない構成、文章力が素晴らしく、物語に引き込まれました。
    代体以外にもリスター等様々なツール等近未来の世界観も楽しめます。

  • 未読
    ちょっと初めから分かりにくくて続かなかった

  • さすが山田宗樹だとは思うけど、百年法に比べるとちょっと文系には共感しにくかったり理解しにくかったり...理系の人はこれにワクワクするんかな

  • 人工的に作られた代理の体に『意識』を移す事が可能になった社会の話。

    自分が自分であると間違いなく証明できるか。この意識は 記憶は、体は、本当に自分のものなのか。「百年法」に続き、どのように生きていくかを考えさせられた。
    当たり前だけど生に固執してしまう。だから、百年法の不老処置や代体に心惹かれてしまうのだろうな。

    前半は、ミステリ感もありワクワクしながら読めた。後半も明らかになっていく事象に夢中になって読んだけど、色々と難しく理解しきれていないのが本音。でも面白かった。

    センチメントなどないと言い続けたガインだけど、脳デバイスの中でどれだけ膨大な情報を吸収し成長したとしても、彼は5歳の子供だったのだな、と。
    母親と再会した時に、5歳のガインの顔にちゃんとなれて良かった。母親としっかりと最後の別れができて良かった。消滅、消去だとしても、それは二人にとって正しく別れの儀式になっただろうから。

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著者プロフィール

1965年愛知県生まれ。筑波大学大学院農学研究科修士課程修了後、製薬会社で農薬の研究開発に従事した後、『直線の死角』で第18回横溝正史ミステリ大賞を受賞し作家デビュー。2006年に『嫌われ松子の一生』が映画、ドラマ化される。2013年『百年法』で第66回日本推理作家協会賞を受賞。その他著作に『ジバク』『ギフテット』『代体』『人類滅亡小説』『存在しない時間の中で』など。

「2022年 『SIGNAL シグナル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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