焼肉ドラゴン (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041069066

作品紹介・あらすじ

万国博覧会が催された1970(昭和45)年。高度経済成長に浮かれる時代の片隅。
関西の地方都市の一角で、ちいさな焼肉店「焼肉ドラゴン」を営む亭主・龍吉と妻・英順は、静花、梨花、美花の三姉妹と一人息子・時生の6人暮らし。
失くした故郷、戦争で奪われた左腕。つらい過去は決して消えないけれど、“たとえ昨日がどんなでも、明日はきっとえぇ日になる”それが龍吉のいつもの口癖だった。
そして店の中は、静花の幼馴染・哲男など騒がしい常連客たちでいつも賑わい、ささいなことで、泣いたり笑ったり--。
そんな何が起きても強い絆で結ばれた「焼肉ドラゴン」にも、次第に時代の波が押し寄せてくるのだった--。伝説の舞台を演出家自ら映画化&小説化!

感想・レビュー・書評

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  • 演劇を見ているよう。
    春に読みたい一冊とのことで読んでみましたが、
    確かにこの話には「桜」が必要なのかも。

    前知識なく、実写化など知らずに読みました。

    まだ生まれてないけど、
    高度経済成長期という怒涛の変化のなかで
    ドラマがあったのだろうと思います。

    ツッコミどころも多くありますが、
    それがどこか令和とは違う人情なのかも…と思いました。
    想像を膨らませながら一気に読むことができます。

  • 演劇が好きだ。
    人柄や見た目の良さだけでは
    演劇の役者は務まらない。
    その空間に集う人々を魅了する、
    何かしら引き込む力が求められる。
    それは良いものだけと限らない。
    ネガティブなものでもいい。
    美しいもの、醜いもの、異形なもの、
    熱いもの、大きいもの、小さいもの
    ありとあらゆるものが引力になりうる。
    唯一方向性があるとしたら、
    それは濃さかもしれない。

    演劇を思わせる情念の濃い物語。
    高度経済成長に湧く中取り残され、
    貧しくあり続ける大阪の小さな町。
    そんな町にへばりつくような
    焼肉屋を営む在日韓国人の夫婦と
    3人の娘と1人の息子。
    そして店でくだをまく常連の男たち。
    世の中への不満や好いた惚れた、
    貧乏や国籍や国家権力や町の汚さ臭さ、
    そんなものすべてを下敷きにして、
    激しい言葉が行き交う。
    ほとばしる感情がぶつかり合う。
    互いの情念が入り乱れ、
    絡まり隆起して大きなうねりとなる。

    そして静かで穏やかな
    エンディングがやってくる。
    でもそれは終わりではない。
    抑えきれない情念や感情、
    言葉に出口は無い。
    一時の休息が終われば、
    また戦いが始まる。

  • 背表紙に「すべての人におくる応援歌」ってあったのでほっこり系かとおもいきや…。舞台は大阪の豊中(伊丹空港の近く)。大阪万博の頃。在日韓国人のお話。時代といえば時代だけれど、男も女もろくでもない人たちばかりだし、明るい未来は見えないし。何より、ラストの僕が寂しかった。

  • ヤンソギルのような暗さはなく、サラッと読める。

  • 20201030

  • 映画観てからの原作。
    よりディテールが伝わる。
    切ないけど目を背けてはいけない一旦。だったと。

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著者プロフィール

1957年7月11日生まれ兵庫県姫路市出身。93年に『ザ・寺山』で岸田國士戯曲賞を受賞。その一方、映画に進出して、同年、『月はどっちに出ている』の脚本で、毎日映画コンクール脚本賞、キネマ旬報脚本賞などを受賞。98年には、『愛を乞うひと』でキネマ旬報脚本賞、日本アカデミー賞最優秀脚本賞、菊島隆三賞、アジア太平洋映画祭最優秀脚本賞など数々の賞を受賞した。2008年には『焼肉ドラゴン』で朝日舞台芸術賞グランプリ、鶴屋南北戯曲賞、読売演劇大賞 大賞・最優秀作品賞、芸術選奨文部科学大臣賞、紀伊國屋演劇賞個人賞、韓国演劇評論家協会の選ぶ2008年今年の演劇ベスト3、韓国演劇協会が選ぶ今年の演劇ベスト7など数々の演劇賞を総なめにした。14年春の紫綬褒章受章。近年の主な作品に『エダニク』(19)、『密やかな結晶』(18)、『すべての四月のために』(17)、『パーマ屋スミレ』(16)、『GS 近松商店』(15・06)、『僕に炎の戦車を』(12)などがある。18年公開の映画版『焼肉ドラゴン』では長編映画で初めての監督も務めた。(日本映画批評家大賞作品賞受賞)。

「2020年 『泣くロミオと怒るジュリエット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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