夜汐

著者 :
  • KADOKAWA
3.56
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感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041069226

作品紹介・あらすじ

文久三年。やくざ者の蓮八は、苦界に沈んだ幼馴染み・八穂を救うため、やくざの賭場から大金をせしめた。
報復として蓮八に差し向けられたのは、凄腕の殺し屋・夜汐。
京で新選組の一員となり、身を隠すことにした蓮八だが、ある日八穂からの文を受け取る。
帰ってきてほしい……その想いを読み取った蓮八は、新選組から脱走することを決意。
土方や沖田からも追われながら、八穂の待つ小仏峠に向かうべく、必死で山中を進む。
だが、夢で蓮八に語りかけ、折りに触れ彼を導くのは、命を狙っているはずの夜汐だった――。

逃れられぬ運命の中でもがく人々、もつれ合う“志”。
すべてが胸に突き刺さる、直木賞作家の新境地!

感想・レビュー・書評

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  •  苦手な時代物だが苦労することなく楽しく読めた。

     時は文久3年。江戸時代末期の頃の話。ヤクザ者の蓮八が幼馴染の八穂を吉原から身請けするために八穂の弟の亀吉に知恵を貸し、ヤクザのシマで賭場荒らしをする。身請けした亀吉は、しばらく八穂と料理屋「とっつぁん」を営んでいた。一方、蓮八は八穂を亀吉に託し、自分は京都に行き新選組の一員となった。
     シマを荒らされたヤクザは、夜汐という凄腕の殺し屋を雇い、亀吉と蓮八殺しの依頼をする。八穂からの文で亀吉が殺された報せを受けた蓮八は、新選組を抜け出し、新選組と夜汐から狙われながらも八穂の元へと向かう。しかし、蓮八はなぜか夜汐に狙われながらも、守られているようにも感じるのだった。

     これは時代小説の名を借りた純愛小説と言っても良さそうだ。蓮八が八穂を想う気持ち。八穂が蓮八を想う気持ちがヒリヒリと伝わってくる。ただ、この時代に生きなくて良かったと心から思う。いくら志を振りかざしても、新しい時代の波に飲み込まれてしまうのは、あまりにも切ない。
     そして夜汐。夜汐とはいったいなんだったのだろう。

  • 「死が意味を持つのはその生に意味があったときだけさ」
    新選組の沖田総司が蓮八に向かって飄々と言い放った言葉が、後になって胸を刺す。

    やくざ者の蓮八が自分の命と引き換えても、どうしても守り抜きたかったものは、幕末のごった返しのご時世には青臭くて不似合いに思えるかもしれないけれど、このご時世だからこその一途で純粋な想いに胸打たれた。
    凄腕の殺し屋・夜汐や、脱走者として新選組から命を狙われても、ただひたすらに愛する女の許を目指す蓮八。
    誰も正体を知る者はおらず、しかも一度も失敗をしたことがないと噂の夜汐の気配を至る所で感じながらの逃走は、肉体的にも精神的にも蓮八を追い詰め、読んでいてハラハラしっぱなし。
    ようやく生の意味を実感した蓮八と夜汐の最後の決着の付け方は切ないけれど、とても良かった。

  • 幕末より始まる時代物、それに愛を加えたものか。やくざの蓮八は、賭場より大金を盗み、幼馴染の八穂を救う。取られた側は、殺し屋・夜汐を送り込む。蓮八は新撰組の入るが、八穂より文が届く。八穂の元に行くために、新撰組を脱退する。そのことで土方、沖田、夜汐に狙われることになるが…。
    東山さんが時代ものを書くとはね。それだけでなく正体不明の殺し屋を描いて。蓮八の想いの物語でもあり、八穂の女の強さも出てたし、その人たちの志、仁義、主義、くっきり出してて読み入ったなあ、特に後半は目が離せなかった。夜汐の最初と最後はどんな感じなんだろうなんていうのも気になりますが(夜汐中心の物語を読んでみたい)。
    沖田が物語を面白くさせてたね。

  • 好きな作家さんではあり、内容もちゃんと書けているものの、時代物はあまり向いていないように思う笑

  •  東山さんが時代モノを書くんだあ、と最初は物珍しさで読みましたね。シリーズにして映像化を狙ってるのかなとかね。

     ほんとは☆5こにしたいんだけど、新選組とかを絡ませる必要はあったのかということで☆4つ。幕末の渡世人というだけでよかったんじゃないかな。夜汐の正体は蓮八の幻想だったのかしらね。もののけとかにしてほしくない。

     それらいろんなことはありますが、時代を描いても臨場感抜群の筆さばき。読んでて気持ちがよかったです。

  • 変わってしまう事、変われないこと。
    成し遂げたり、成就したり。
    多く語られてきた新選組も、夜汐という存在を感じながら読むとまた時代の刹那が際立つな。

  • 舞台は幕末、江戸。タイトルの「夜汐」は殺し屋の名。やくざ者の争いはマフィアの抗争のよう。
    新選組は脇役で、沖田総司は友であり敵であり。
    攘夷だとか開国だとか言って簡単に人が殺されていく時代に、主人公は生き伸びる道を模索する。
    会わぬと決めた好きな女に会いに行くと決めたときに、逃亡劇が始まる。
    追っては多数、殺し屋もいる。迫りくる死。

    走れ、走れ、逃げろと思いながらページをめくる。

    ところどころ、ふっと回想シーンが入る。これが上手い。実にスムーズに過去に何があったのかがわかってくる。
    たまに、唐突に回想シーンが入って混乱する小説があるが、この作品はそういったストレスを感じない。

    殺し屋の登場も、女の生きざまもクールだ。

    エンディングで生と死の「生」を感じさせるも印象的。

    素晴らしく良い作品でした。

  • ひたすらに時代や人情や人生を語るきれいな文章が並んでいるが、結局どこにも焦点が合っておらず、結果として何一つ印象に残らない駄作になってしまっている。タイトルの夜汐は主人公ではなく象徴的な狂言回しなのだけれど、神秘性が足りず、さほどの存在感もなく、そもそもこの物語にその存在の必要性があったとは思えなかった。蓮八と八穂のつながりにもそこまで強い思慕の感情が生まれる説得力がなく、繰り出される愛の言葉を冷めた目で見てしまった。そして何より、新撰組のエピソードが無駄に長い。沖田総司との交流がこの物語に何の必要性があったのか?????????
    たぶん時代の流れと人の運命みたいな大きなものを描きたかったのだろうと推察するが、浮いた文章だけが噛み合わずに空回りする残念な力作でしかなかった。

  • 人が運命を乗り越えて生きるためには、強い願望が必要と言うことなのだろうか。仮に願望がなくても、あのとき、死ななくて良かったと、思える日が来ないと誰が断言できるだろうか。まぁ、その逆も、誰も断言できないが。

  • これは面白い!!

    新撰組と殺し屋と幕末の時代背景。
    斬新な設定に読む手が止まらなかった。

    新撰組の沖田の飄々とした人物像も面白く
    夜汐の得体の知れない幻想的な面も興味深く
    変わり行く時代も絡ませて、とても面白かったです。

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著者プロフィール

1968年台湾台北市生まれ。9歳の時に家族で福岡県に移住。 2003年第1回「このミステリーがすごい!」大賞銀賞・読者賞受賞の長編を改題した『逃亡作法TURD ON THE RUN』で、作家としてデビュー。 09年『路傍』で第11回大藪春彦賞を、15年『流』で第153回直木賞を、16年『罪の終わり』で中央公論文芸賞を受賞。 17年から18年にかけて『僕が殺した人と僕を殺した人』で第34回織田作之助賞、第69回読売文学賞、第3回渡辺淳一文学賞を受賞する。『Turn! Turn! Turn!』『夜汐』『越境』『小さな場所』『どの口が愛を語るんだ』『怪物』など著書多数。訳書に、『ブラック・デトロイト』(ドナルド・ゴインズ著)がある。

「2023年 『わたしはわたしで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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