「低度」外国人材 移民焼き畑国家、日本

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041069684

作品紹介・あらすじ

「ルームメイトは逃亡しました」
国からは「高度」と見なされない、圧倒的多数(外国人労働者)の世界。
大宅賞『八九六四』著者が、絶対的な弱者でも敵でもない、彼らの「現実」に追るディープルポ!

日本政府をはじめ、公的機関が使用している言葉、「高度外国人材」。
「高度」な人材がいるということは、国の定義とは真逆の属性を持つ人材も存在するはずだ。
それは、「(年齢だけは若いかもしれないが)学歴・年収が低く、日本語はろくに喋れず専門知識もない、非熟練労働に従事している」人たちといえる。
しかし、日本社会は彼らにこそ強く依存しており、必要としているではないか。
生身の「“低度“外国人材」は、紋切り型の報道のなかで語られるような、絶対的な弱者や被害者たちの群れではない。
ましてや、陰謀をたくらむ存在でもない。
そもそも中国は経済成長をとげ、稼げない日本に見切りをつける中国人は多く、外国人労働者の主役はベトナム人に移行している。

──われわれは記号としての弱者や敵を想定していたのに、いたのは人間だった。

3年にわたって中国、ベトナム、日本各地を回り、生身の姿に迫ったディープルポ!

【目次】
はじめに
第一章 コロナ、タリバン、群馬県――隣人は平和な「イスラム原理主義者」
第二章 「兵士」たちの逃亡と犯罪――主役は中国人からベトナム人へ
第三章 頼りなき弱者――ベトナム「送り出し」業者に突撃してみれば
第四章 「低度」人材の村――ウソと搾取の「破綻した制度」
第五章 「現代の奴隷」になれない中国人――稼げない日本に見切りをつけるとき
第六章 高度人材、低度人材――「日本語だけは上手い」元技能実習生
第七章 「群馬の兄貴」の罪と罰――北関東家畜窃盗疑惑の黒い霧
おわりに
主要参考文献

感想・レビュー・書評

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  • <訪問>「『低度』外国人材」を書いた 安田峰俊(やすだ・みねとし)さん:北海道新聞 どうしん電子版
    https://www.hokkaido-np.co.jp/sp/article/552563?rct=s_books

    「低度」外国人材 移民焼き畑国家、日本 安田 峰俊:一般書 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/321802000135/

  • 私の暮らす地方都市には
    小さな町工場がけっこうある。
    10年ほど前までは
    そこで勤めている彼らが
    近所を通る時に
    話す中国語が聞こえてくるのが
    当たり前だった。
    今は、その同じ道では
    ベトナム語の会話が通り過ぎていく。

    おそらく
    日本の各地、
    それも零細企業の工場が
    あるところでは
    同じ現象が起きているのだろう

    「技能実習制度」という名のもとに
    さまざまな社会問題が噴出ししている
    この国のあり様を考えさせてもらった
    良書である

  •  「低度」の本質を表す一節

    "技能実習生や偽装留学生・ボドイの問題は、いざ調べはじめると関係者が全員「ろくでもない」という構図にしばしば直面する。
     日本もべトナムも、送り出し機関も監理団体も実習先企業も、技能実習生本人も、全員がどうしようもないのだ。(p147)"


     加害者・被害者、悪徳・可哀想、の二極では語れない図式は、実は「全員ろくでもない」で説明できる。
     もし誰か(国、制度、個人)が、真に「まっとう」なら、こんな矛盾は生まれない。自分だけがまっとうだと思い込んだり、上辺だけまっとうな制度だから問題が起こる。


    ルポとSFなので全くジャンルは違うが、カズオイシグロの「わたしを離さないで」に通じるものがあると感じた。
     ある人間の利益になるために、別の人間が身を呈する。受益側の人間は、与益(被損)側には、黙々と決められた通りに、何ひとつ余計なことは考えずに---人間らしさが立ち現れると罪の意識が生まれるから---ただ、ロボットのように任務を完遂して欲しい。
     両書の展開の違いは、
    「わたしを…」は、そんな与益者にも人間らしい感情が存在していると残酷な架空の世界で儚く美しく語ったが、「低度…」は、与益者である実習生を取り巻く、あまりに人間くさくて生々しい現実世界を書き出した点だ。

     

  • 日本人が”美しい”とする清貧思想「民間が切り詰めているから、国も節約しろ」「”低度”でもよいから安いがよい」がこんな”醜い”制度を培ってしまった。「現代の奴隷制度」「人身売買」米も批判する技能実習制度。日本を豊かと思い込んでいる方々の判断力・思考能力の低さ、権利意識の弱さに依存しているシステム。だが外国人労働者への同情を煽るような報道も的外れ。「労働力を呼んだのに来たのは人間」抱く感情を紋切り型では語れない。叩き出すべきも同情すべきもこんなシステムに依存させてしまった我々の乏しい思考力と想像力ではないか

  • いやほんとにおっしゃる通り。なれること、入りこむ努力をすること。地方にゲットーができつつあること。どうなんだろう。

  • こんなの書けるように頑張ります!!!!!

  • 技能研修生などで話題になる「外国人労働者」の現状を、著者の体当たりな取材を通して明らかにする一冊。主にベトナム人労働者(働いてない人もいるが…)の状況を書いている。

    読んでの印象は「かわいそうなまでに、弱くどうしようもなく救われない」。
    親戚が岐阜の工場で働いているんで多少状況はわかるんですが…あのあたりの田舎の中小企業にはろくでもないのが結構含まれている。「プレス機で従業員が死んだあと、社長夫人は車をいいのに買い替えた。保険金で払ったのでは?」なんて噂が流れる会社でその親戚が働いていたこともある。そんな会社でも、製造業の盛んな中京圏では潰れることなく会社自体は存続してしまえる。

    それに対し日本人であれば「転職」という”現実解”を選びうるわけだけど、技能研修生は「逃亡」し在日ベトナム人社会で生きるしかない。
    そして、今のご時世に出稼ぎ先としてあえて「日本」を選んでしまうような”情弱”ばかりが日本に来ているので、本人も在日ベトナム人社会の新入りもその生き抜き方が稚拙。反社会的な行動に手を出すことにも抵抗が低い。本国でもまともに頼れるような社会がない階級の人間が、外国人慣れしてない日本社会をあてにするわけがない、と言ってしまえばそれまでだけど、社会への期待感のなさの裏返しとしての社会規範意識の低さが露骨に出てる。
    その対比としての、第五章(「現在の奴隷」になれない中国人)は別な意味で興味深い。国力が上がり信頼度が増した中国社会が、中国人労働者の不満を妥当なやり方で一定解消させる役割を果たしているらしい。

    第七章に出てくる「群馬の兄貴」にしても、「豚の大量窃盗」の指導的役割を果たしたかは怪しいとしても、そういうことをベトナム人がやっていてもおかしくない、というムードは既にあった(岐阜県でも数年前に「除草用のヤギをベトナム人がバラシて食った」という事件があった)。「これだからベトナム人は…」と言われても仕方のない現状が一方であり、それが日本人社会の態度を硬化させさらに状況が悪くなる、という日本の現状を象徴するような章だった。

    日本語能力はあるのに年齢などの問題で日本への入国すらままならない例(第六章)は「日本は…もったいないことをしているなぁ」と思う。一方で『君の名は』を本国で見てあこがれた日本にやってきてセクハラ被害にあった外国人労働者が、その『君の名は』の舞台である岐阜県で働いていることを告げられ絶句する例(第五章)なんかは「『君の名は』の微妙なセクハラ的演出を見てそこに驚くか」と言いたくなる。
    日本社会に普通に存在するチグハグさが、外国人労働者を送り出す側のチグハグとの相乗効果でほんとに救いのない状況になっている、そのような印象を受けた。

    労働者2世の教育問題含め誰がどうこの問題の落とし前をつけるんだろう、とは思いつつ…一時期中京圏の外国人労働者界を席巻したブラジル人労働者の多くが「ブラジルにワールドカップを見に帰る」と言って大半が帰国したように、本国が経済成長して労働者自ら日本を見放してくれるのを期待するより他ないのかもしれないなぁ…。

  • 日本側はもとより現地の送り出し機関も大概なのは分かっていたが、元技能実習生が技能実習生を喰う側に回ってしまう事があるというのはなんともつらい。

  • *もうベトナム人が主役なんだなぁ

    *確かにコレ系の話題は「かわいそう系」になりがちだなぁ

    *外国人割合が2割の地域があるのは知らなかった(群馬県大泉町)

  • 本書のおわりに、著者が吐露する取材感想が最も印象深い。豊かになった中国にとって、日本は魅力的な国ではなくなり、労働集約型の産業をベトナム、そしてカンボジアなどの情報弱者が呼び寄せられ代替すること。今後地方で進む未来の姿がリアルに描かれている。

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著者プロフィール

ノンフィクションライター

「2021年 『中国vs.世界 呑まれる国、抗う国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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