漫画版 日本の歴史 日本のはじまり 旧石器~縄文・弥生~古墳時代 (01) (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041071175

作品紹介・あらすじ

文庫版には
●1巻
 「歴史を学ぶこととは」銭谷眞美氏(東京国立博物館 館長)
 解説  井上洋一氏(東京国立博物館 副館長) 収録
●監修・山本博文教授による「はみだし講義」を各章末に収録
●「日本史と世界史の比較年表」を巻末に収録

感想・レビュー・書評

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  • 1960年代から、漫画版日本の歴史は繰り返し作られて来た。2015年に単行本化されたこれは、おそらくその最新版である。文献資料が無くて、その話をどう持っていくのか、最もむつかしいのが第一巻だろう。よって、シリーズを占う意味でも、この巻は大切だ。

    結果は、いいところと悪いところがあった。いいところは、テーマ設定だ。プロローグ、ユーラシア大陸から日本に渡ってくる旧石器人が言う「これから先、流れに身を任せるだけでは、生きいくことはむつかしいぞ。知恵を得るんだ。そして自分の頭で考えろ」の言葉から始まり、縄文人が言う「このままじゃ、ダメだ。何か考えないと」そして古墳時代の物部旅人は考える。「その道は間違っていないか。そんなことはわからない。それでも、それだからこそ、学ぼう。まだまだこれからだ」‥‥これらテーマは、あるべき歴史への態度そのもの。秀逸である。

    しかし、だからこそ、この中にある歴史観は、或いは細かな歴史描写は、残念だった。
    (1)弥生時代になって、戦争に次ぐ戦争の描写に終始する描き方は、歴史は戦争でしか動かないと思っている証左である。実際は、他の契機で歴史は動いたのだと、私は思っている。大和政権が、有力諸国の連合政権だったというのが、現代のほぼ定説だ。その過程を描くことを無視している。
    (2)邪馬台国が近畿説に傾いていることを、東京大学でありながら、なんとかコラムで認めていた。その態度や良し。しかし何の説明も無く、縄文時代の舞台設定を2500年前と書いていた。場所が何処とも書いていなく、これだと諸説ある縄文時代の終わり(3000年前や2800年前)を読者に誤らせる結果となる。
    (3)魏志倭人伝の説明で、『卑弥呼は「鬼道につかえる人」と呼ばれ、神のお告げを受け、未来を予言する存在であった』と説明している。その様に「呼ばれた」わけではない。「鬼道に仕えた」と説明されただけだ。これは文献解釈の問題ではなく、表現力が稚拙だと言うことだ。
    (4)「6世紀朝鮮半島。大和政権が支配している伽耶地域」「朝鮮半島の一部を安定的に支配していくことになる」この説明は、事実ではない。「支配」はしていない。任那日本府はなかった。山本教授も、伽耶地域に前方後円墳があることを書いて(実際は百済地域にもある)、あたかもそうであるかのように援護射撃しているが、単に古墳時代が終わる頃に伽耶の人々が作り方を真似ただけで、支配の証拠にはならないことは最近の定説である。今だにこんなことを書いているのは、昔の書物をそのまま援用しているからだろう。

    私は小学生の頃、「漫画版日本の歴史」によって、歴史への目を開いた。だから余計に残念だ。

    2018年11月読了

  • 岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
    http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00589621

    歴史学習の最先端は「東大流」今こそまんがで読みたい『日本の歴史』第1巻
    (出版社HPより)

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著者プロフィール

1957年、岡山県生まれ。東京大学文学部国史学科卒業。文学博士。東京大学史料編纂所教授などを勤めた。1992年『江戸お留守居役の日記』で第40回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。著書は『寛永時代』(吉川弘文館)、『日本史の一級史料』(光文社新書)、『歴史をつかむ技法』(新潮新書)、『流れをつかむ日本の歴史』『武士の人事』(角川新書)など多数。NHK Eテレ「知恵泉」を始め、テレビやラジオにも数多く出演した。2020年逝去。

「2022年 『角川まんが学習シリーズ 日本の歴史 全16巻+別巻4冊定番セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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