向日葵のある台所

  • KADOKAWA
3.40
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感想 : 47
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041072035

作品紹介・あらすじ

麻有子(46歳)は、美術館に勤める学芸員。シングルマザーで中学二年の娘・葵がいる。東京の郊外で親子二人、平和に暮らしている。そんな折、麻有子の姉・鈴子から「母が倒れた」と電話がかかっきた。そもそも麻有子自身は、母とも姉とも折り合いが悪く、どうしても避けられない冠婚葬祭以外は極力関わらないようにしてきた。帰省など一ミリたりともしたくない。しかし、一向に聴く耳を持たない姉は、「とにかく来て」の一点張り。しかも、いつの間にか、麻有子に退院した母の世話を押しつけようとしているのだ。電話ではらちが明かなくなったため、仕方なくお見舞いに行くことに。そこから、麻有子の「家族」という檻に捕らわれるようになってきて――。あらためて家族とは何かを考えさせられる、著者渾身の問題作!

感想・レビュー・書評

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  • 秋川滝美さん初読み。実母、姉と自分の関係に悩み、距離を取ることで自分の人生を生きてきた40代半ばの司書の女性が主人公。シングルマザーとして娘を育て、娘の存在に助けられ、痛みを伴いながらも再び母との関係を再構築する過程が描かれる。あまり好きな表現ではないがいわゆる「毒親」と娘の関係がテーマ。
    私自身も実母や妹と離れることでやってきた関係なので、手に取ったが…。

    作者が説明しよう、分かってもらおうという意図が強いためか、背景や筋の説明がやや過多なのが気になる。描こうとしている主人公の寂しさや哀しさ、あるいは逃れられない実親に対する恐れのような感覚は理解できるが、人物・情景描写や会話の展開が単調な印象がぬぐえない。結末も想定内でやっぱり…。
    娘が出来過ぎた人物像であることも気になる。幼い頃から大人の役割を背負った子どもなので、もっと痛みがあるはず。残念ながら私の好みとは合わず、yahooニュースのノンフィクション記事のような印象で終わった。

  • 不仲な親子もいる。
    そういう親子がいることがわかっていても、ひどい親のエピソードを聞くと「そんな親いないでしょ」と思ってしまう。
    特に母は苦労して産んでいるのだから。

    多くの人がそう思ってしまうから、「母から少しでも遠くに逃げたい」と思う主人公の麻有子の気持ちは理解されず、そんなことを思う自分はひどい娘だと思ってしまう。
    また、姉との関係も微妙である。
    でもこれも、母と姉妹というように女が3人揃うと、どこも複雑なのではなかろうか。


    母になってみて思う。このお母さんの気持ちもわからなくはない。
    自分の嫌な部分をそっくりそのまま受け継いだ子どもに苛立つ。
    それが嫌いになった相手に似ていたら?
    自分がちゃんと子育てできてるかなんて自信ない。
    子育てはそうでなくたって難しいのに。

    お母さんがしたことは許されることではないし、子どもに罪はない。
    逃げることができてよかったはずだが…

    歩み寄ろうとする勇敢さに尊敬しかない。

  • 子供を育てるというのは本当に難しいことなのでしょうね。それにしても葵ちゃんは良い子に育っている。ありがとうという言葉はとても大事ですよね。

  •  森園麻有子は中学2年生の娘・葵と2人暮らしのシングルマザー。学芸員として仕事が遅くなっても、自分のことは自分でできるだけでなく、代わりに晩御飯を用意して待っていてくれる葵とは、仲良く心地よく暮らしていた。そんな中、昔から折り合いの悪かった姉・鈴子から突然、母親が倒れたという知らせが入る。昔から姉ばかり贔屓し、自分に対しては怒る・けなす・嫌味を言うばかりだった母親ともできれば縁を切りたいくらいだったが、強引に実家に呼び寄せられた麻有子は、さらにこれから一人暮らしが難しくなるからと、母親との同居を押し付けられる。

     昔の自分と母親の関係、そして今の自分と葵との関係を、ことあるごとに比較して考え込んでしまう麻有子。また、同居する中で、今までの母親の印象とは違う言動を見聞きし、戸惑う。最後は母親の率直な思い、過去の行動についての説明を受けることになるが、確かにはいそうですかとすぐに受け入れられるものではない複雑な心情はよく描かれているなと思う。しかしこの娘の葵の言動が、いわゆる「いい子」すぎてリアルさが無いのと、麻有子と葵の会話が、なんというか作られた感満載で不自然さが異常に気になってしまった。ただ単に自分に合わなかっただけかな。

  • 疎遠となった親を引き取らざるを得なくなるところからスタートする。近い将来誰にでも起こり得るかもしれない問題の一つだ。

    不仲なゆえに距離を置いていたにも関わらず同じ屋根の下に住むことになるものの距離はなかなか埋まらない。親子の確執が拭いきれないほど立ちはだかっている。

    寄り添う二枚貝のようにぴたりとあわさる親子もいれば、どうやっても水と油で交わらないのに血縁故に共にいなければならない親子もいる。不思議なものだ。

    時を経てもあの時凹んだ心は元には戻らない。だが高齢になるにつれ親の方は少しずつその傷はもう治らないだろうけど許してくれと言い出す。当事者をみないまま、ままごとの様にやっていた育児がヒビを生み溝を深める。
    最後の最後まで言い訳がましいことしか言わない母親が正直イライラした。向日葵を植えて愛でるはずだった庭は荒れ果て、のちに母親が草を抜き小綺麗にしたところで向日葵は咲かない。向日葵は、咲かないことがもう何も変わらないことを表しているように感じられた。

  • 最後に和解できて良かったねー!

  • 20240611

  • 「居酒屋ぼったくり」の著者だと思い手に取りました。読み出すと…ぼったくりのほのぼのとした世界観とは違うかも…と。


    中学生の娘を持つ50代の麻有子は、学芸員。彼女は、子どもの頃、姉には甘い母に、厳しく育てられ、実家から逃げ出すように東京の大学に進学。学芸員として就職、子どもが欲しくないという夫だからと結婚したが、麻有子は子どもが欲しくなり、妊娠をきっかけに夫と離婚。1人で娘の葵を育てている。

    姉と同敷地で同居していた母が、脳梗塞で倒れ入院し、退院後は、麻有子が引き取ることに。
    姉は、家事が出来ず、ずーっと母に家事をやってもらっていたのに、母がリハビリが必要になったら、麻有子に押し付けるのかと思うが、言えなかった。昔から、我慢するのが習慣になっていて、2人には反発出来なかったから。

    一方で、職場の先輩に相談すると…
    母が来ることのメリットも考えてみたら?と。
    家事の負担が減る。娘が受験生になるので、彼女の家事負担も減る。また、学芸員として泊まりがけの出張には、中学生を置いては行けなかったが、母がいれば行ける。
    娘にも聞くと、同じように答え、受け入れることを促す。そして、麻有子にも配慮して、断るとおばあちゃんや叔母さんとも仲が悪くなるでしょ?と。


    なんで、こんな自分勝手な姉から、冷酷な母を押し付けられるのか?逃げて!と、私は思いました。
    ここ1年くらい、2chのまとめ?のネット記事を読んでいます。酷い夫や姑なのどの話など…こんな人が本当にいるのか?と思いながら…なぜかやめられない。なので、こんなのは、全力で逃げて!と言いたくなりました。
    ところが…


    麻有子は、母を引き取ることに。
    たまに、母の毒舌があましたが、ほぼ快適。忙しくて手が回らない掃除や布団干しなどをしてくれ、キレイ好きの麻有子にとって快適な暮らしです。多少のゴタゴタはありましたが。

    最後には、母の思いを知り、和解。
    凄く良い終わり方でした。
    最終的に、居酒屋ぼったくりみたいな、ほっこりした結末に安堵しました。

  • ちょっとイマイチ
    冗長

  • 母の厳しすぎる躾の下少女時代を送った主人公が学芸員となり、結婚し、母になり離婚してシングルマザーとなって。
    蟠りを抱えながらも完全に実家を切り離すことも出来ず、冠婚葬祭に顔を出す程度につながっていたのに実家の敷地内に家を建てて、結婚後も母に甘やかされてる姉から母を引き取って同居してしてくれと要請の連絡が来る。

    可哀想すぎるやろ、主人公。

    姉は調子いい上に自分本位過ぎるし、娘はよく出来すぎてる。母は何か隠しているようで、何を考えているのかはっきりしない。

    読んでいてしんどくなるストレス源は実家の母と姉からだけで、娘はお婆ちゃんとの緩衝役になってくれるしとにかくいい子。頭もいいし助かる。助かるーって感心しながら、いつも思うのがこんなものわかりいい中学生おるんかいな。スーパー家政婦さんかいな。

    決して毒親だったわけではないけれど、私自身子どもの頃の親との関係には複雑な気持ちになる思い出もあるので「こういってくれたら良かったのにな」とかあるんだけれど、親も初めての子育て。完璧には出来ないよねと理解もできるんです。
    だから終盤は出来の悪い姉に少し同情してしまったし、ますます良い子の葵ちゃんに大人のご都合主義を感じてしまったかなぁ。

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著者プロフィール

2012年4月よりオンラインにて作品公開開始。2012年10月、「いい加減な夜食」にて出版デビューに至る。他著書に「居酒屋ぼったくり」(アルファポリス)他、「幸腹な百貨店」(講談社)、「放課後の厨房男子」(幻冬舎)などがある。

「2020年 『居酒屋ぼったくり5』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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