夜のリフレーン

  • KADOKAWA
3.68
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本棚登録 : 238
感想 : 42
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041072264

作品紹介・あらすじ

夫に執拗につきまとう女には驚くべき秘密 があった……(「恋人形」)ほか、福田隆義氏のイラスト、中川多理氏の人形と小説とのコラボレー ションも収録。著者が紡ぐ物語世界の凄みと奥深さを堪能できる24編。

感想・レビュー・書評

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  • 装丁に惹かれて手に取ってみた。
    白地にエレガントな蔦模様があしらわれ、差し色は気品のあるペールブルー。バレンタインにデパ地下で売られているチョコレートみたいな装丁だ。一見して老舗の品物とわかる高級感のあるパッケージ。見た目は満点、肝心のお味の方は…と紅茶を片手にページをめくってみる。

    皆川博子が1978〜2016年に雑誌に発表した掌編および短編のうち、2018年時点で単行本未収録だった24編が収録されている。いちおう幻想小説縛りではあるが、ミステリ風味あり、近未来SF風味あり、耽美派風味もあれば無頼派風味もあって、一冊で色んな味が楽しめるアソートだ。

    以下、特に印象に残った作品。
    ◉夜のリフレーン(怖っ)
    ◉スペシャル・メニュー(せめてプラセンタ止まりにして…)
    ◉恋人形(憧れとは魂がさまよい出るという意味だとか)
    ◉踊り場(階段箪笥の上には…)
    ◉七谷屋形(眼のない雛人形の怪)
    ◉赤い鞋("貴女のために"は要注意)
    ◉新吉、おまえの(白雪姫の母は実母だったといいますね)
    ◉そ、そら、そらそら、兎のダンス(ラブリー♡)
    ◉そこは、わたしの人形の(鳥居の先はどこに通じていたのだろう)

    …うん、どれも美味しい。
    皆川博子since1930、ブランド名は伊達じゃなかった。ただ中身はミルクチョコじゃなくて、カカオ80%のビターチョコ、それにウィスキーのたっぷり入ったボンボンといった風情。「子供の食べるものじゃなくてよ」という作者の声が聞こえてくる気がした。

    • 佐藤史緒さん
      地球っこさん、いらっしゃいませ!

      こちらこそつい最近、地球っこさんの本棚にあった皆川博子さんの本のレビューを楽しく拝読したところです。...
      地球っこさん、いらっしゃいませ!

      こちらこそつい最近、地球っこさんの本棚にあった皆川博子さんの本のレビューを楽しく拝読したところです。
      偶然…というよりは、読書傾向がかぶっているから必然なのでしょうね。
      そちらの本棚にあった作品も、私の「そのうち読みたい作品リスト」に入っています。
      ミルクチョコも美味しいですよね♡

      この本はたまたま本屋で見かけてジャケ買いしてしまいました。
      仰る通り、皆川さんの本はどの本も装丁が綺麗で選ぶのに苦労します。
      この本と対を成すミステリ小説集『夜のアポロン』というのもあり、これまた装丁が実に美しく、本棚の前に座り込んでどちらを買おうかうんうん悩んでしまいました。
      周りに人がいたか定かではありませんが、もしいたら、さぞアヤシゲなおばさんに見えたことでしょう…
      2020/02/18
    • 地球っこさん
      佐藤史緒さん、おはようございます。
      お返事ありがとうございます。

      佐藤史緒さんの読みたいと思われる本が、
      こちらの本棚に一冊でもあ...
      佐藤史緒さん、おはようございます。
      お返事ありがとうございます。

      佐藤史緒さんの読みたいと思われる本が、
      こちらの本棚に一冊でもあったのなら、
      それはそれは嬉しいことです(*^^*)
      こちらこそ、いつも美しい本棚と素敵な
      レビューにワクワクさせていただいてます。

      『夜のアポロン』早速チェックしました。
      ほんとこちらもグッとくる装丁ですね。
      これは、佐藤史緒さんだけでなく誰でも悩んじゃいますよ~。

      皆川博子コレクションも読みたい(本棚に並べたい)気になる全集です☆
      2020/02/19
    • 佐藤史緒さん
      そう言って頂けると嬉しいです。
      なにせウチの現実の本棚は、子供の学習マンガやらコロコロコミックやら、私の通販雑誌やらオレンジページやら、生...
      そう言って頂けると嬉しいです。
      なにせウチの現実の本棚は、子供の学習マンガやらコロコロコミックやら、私の通販雑誌やらオレンジページやら、生活感満載で人様に見せられたもんじゃありませんから。
      ブクログ本棚はあくまで私の理想の本棚、いわばフィクションです(笑)

      装丁がきれいな本は並べたくなりますよね。そんな願いをバーチャルで叶えてくれるのがブクログですね!
      2020/02/19
  • 『夜のアポロン』と対になる、どちらかというと幻想寄りの短編集。アポロンに比べて、じっとりまとわりついてくる感じは強くない気がする。

    「スペシャル・メニュー」
    このスペシャルが分かった時の鳥肌感といったら。
    でもあっけらかんとしすぎて、生々しいおぞましさは襲ってこない。

    「紅い鞋」
    纏足に、幸せを願っての女性だけの儀式があるとは知らなかった。
    人道云々は確かにそうだろうし、纏足にしたいともして欲しいとも全く思わないけど、そうすると文化はどこも同じように均されていくなあなんてことを思った。
    均す側の傲慢な考えがなんか嫌だ。

    「新吉、おまえの」
    誰かをどうこうしたいというのよりもよっぽど強い執着を感じる。
    こういうの、昔の時代で描かれると無性に惹きつけられてしまうのはなぜだろう。

  • 『夜のアポロン』よりも不気味で猟奇的な話が多くて、読み辛いかと思ったが、皆川さんの魔力でまた一気読み。戦中戦後の話は幻想的でも臨場感あり特に引き込まれた。

  • すごいなあ。幻想小説を書ける人の感受性ってどうなってるんだろう……設定が明らかにされずに、何のことかよく分からないお話も多くて、それでも独特の雰囲気は保たれていて、実際に目にしたら気持ち悪かったり怖かったりする風景も、この文章で綴られると綺麗だと思ってしまう。でも凄みは決して消えていない。そのまま。

    表題作『夜のリフレーン』と、『青い扉』が特に好きだった。皆川先生のミステリ系のお話も読みたいな。

  • どのお話の地下でもマグマのような情念がふつふつと、静かに湧いている。ふとした拍子に窯の蓋が開いて、瘴気が足元を立ち昇ってくる感じがする。読み進めていくと急に引き倒されてぐるりと視界が回るような、ストーリーの美しいからくりがある。
    読み始めればすぐに濃密な世界に引き込まれていく強い強い引力を感じて、皆川さんの本は本当にすごいな、と思う。
    私が特に好きなのは「妖瞳」。
    ひとの愛情が妄執へと、夕暮れが闇に沈むように染まっていく、そのあわいで苦しみもがいている人たち。歌舞伎の筋書きと、祭りの長い伝統の中で現れては消えていった青年と少年との思いと、光次郎の抱えるいきさつとがオーバーラップして、海のみぎわでなにかが現れる。
    「笛塚」や「青い扉」もそうだけど、一種の狂気の中にあってようやく当人たちは救われていく、その儚く光差す感じがとても良い。
    今のところ短編集しか読んでいないけど長編も読みたいし、とにかくもっとたくさん読みたくなる。皆川さんの本、少しずつ揃えたい。

  • うふふ。ほほほ。(変な笑いですみません)
    大好きな皆川博子さんの本を読むときは、いつもこういう笑いが漏れてしまいます。
    皆川博子さんの本は、うまく表現できませんが、蠱惑的という感じでしょうか。
    私の頭では到底わからない世界ではあるのですが、わからないことも含めてうっとりしてしまいます。あぁ、とっても素敵な時間でした。
    ちなみに、こちらは今まで収録されていなかった短編を集めた本になります。

  • どの短編も秀逸、としか。ふわふわとした淡い幻想というよりも、薄闇の静けさの中にあるような雰囲気。それが皆川博子の幻想の世界の魅力だと勝手に思ってる。虹、陽射し、紡ぎ歌、恋人形のような毒気のある話もよかったし、島のような寂寥感でいっぱいになる話もよかった。妖瞳のような蠱惑的な人物が出てくる話や、少しコミカルなスペシャル・メニューも面白かった。こくのある文章だなとつくづく思う。

  • あれほど長大かつ重厚で素晴らしく質の高い長編の数々を著す一方で、掌編を含む短編作品においても比類なき傑作揃い…、編者を始め多くの人が言及されているように、とてもじゃないがこれまで書籍化に至らなかった”落選作”を集めたものなどでは、決してない。
    表現の世界においては分野を問わず、長い尺や多くの言葉を費やすよりも、短い時間と限られた少ない紙幅で伝える方が、格段に難しい。
    文章量としては少なくても、皆川博子氏がものす短編は驚くほど濃密かつ具体的なイメージを読者にもたらし、そしてそれが読中に脳内で広がり続けるという類。
    語彙の選択とそれを並べるタイミングが極めて絶妙であり、可食率100%以上だからだ。
    幻想小説あるいはミステリーの薫りを纏う”らしい”雰囲気の物語から、実体験を基にしているであろうエッセイのような軽い作品まで幅広く、いわばモチーフの宝庫のようになっていることも、他の作品群に思いを馳せながら読むと実に面白い。
    例えば「赤い鞋」でチラリと描かれている宗教観からは、皆川氏の心の奥に通底しているラインが垣間見える気がしたり。
    衆道=男色の歴史に関する考察も興味深かったし、ジェンダーを巡る文化についても然り。
    2019年現在の若い人たちが当たり前に教えられてきて、抱いているような感覚がもしこれまでずっとスタンダードだったとしたら、氏の傑作は悉く生まれてこなかったことは間違いない。
    良い悪いの尺度ではなく、時代が下がって進歩し続けるものがある傍らで、かつての妖しくて醜くも麗しいドロッとした塊が失われつつあることもまた、確か。

  • 哀しい、恐ろしいけど奥深く美しい。

  • 24の短編集だが、短い文章で凄い内容を書き上げる力は凄い.「青い扉」での生烏賊の不気味さ、母親の大坪喜久枝の厚かましさ、うまい文章だ.どの作品もエロティックな面とミステリアスな切り口が混在しており、このようなモチーフを蓄えている著者の奥行きを感じた作品集だ.続編を期待!

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著者プロフィール

皆川 博子(みながわ・ひろこ):1930年旧朝鮮京城生まれ。72年『海と十字架』でデビュー。73年「アルカディアの夏」で小説現代新人賞受賞。86年『恋紅』で直木賞、90年『薔薇忌』で柴田錬三郎賞、98年『死の泉』で吉川英治文学賞、ほか多数の文学賞を受賞。著書に『聖餐城』『海賊女王』『風配図 WIND ROSE』『天涯図書館』など。

「2024年 『大江戸綺譚 時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

皆川博子の作品

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