- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041073230
作品紹介・あらすじ
介護施設「アミカル蒲田」で入居者の転落死亡事故が発生した。高齢者虐待の疑いを持ち、調査を始めたジャーナリストの美和は、介護の実態に問題の根の深さを感じていた。やがて取材をした介護士・小柳恭平の関与を疑った美和は、再び施設を訪れる。恭平は「長生きで苦しんでいる人は早く死なせてあげた方がいい」という過激な思想を持っていた。そんななか、第二、第三の死亡事故が。家族の問題を抱え、虚言癖のある小柳による他殺ではないのか--疑念が膨らむ一方の美和だが、事態は意外な方向に展開してゆく。高齢者医療の実態に迫り、人間の黒い欲望にメスを入れる問題作!
感想・レビュー・書評
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ありがたいことに
行きつけの図書館があり、
掛かりつけの司書さんたちがいる。
自分だけの選書に頼ると
どうしても偏ったものになってしまうので
「こんなの いかが?」
と言ってもらえる人が居てくれるのは
まことに ありがたい。
さて、この一冊
久坂部羊さんは初めてである。
むろん、ご存知の人にとっては
何をいまさら感をおもちなのでしょうが…
高齢者のケア問題、
重いテーマを
現場(?)の医師ならではの
視点で
生々しく、
興味深く、
読ませてもらった
介護士、医師、患者、取材者
それぞれの視点からの
見え方、考え方、疑問点を
それぞれの人物に託して
語られるところが
実に興味深い
「こうだ!」と決めつけずに
読者に委ねられているところも
また興味深い
次の一冊に
手がでそうである -
久坂部さんの作品はいつも考えさせられます。
介護職、大変なお仕事と思います。
最後は誰が本当の事を言っているの?
Kが人によって嘘を話しているの?
う~ん、もやもやしています。 -
介護士K(小柳恭平)とジャーナリストの美和の視点から、介護施設「アミカル蒲田」で発生した事故について、発生時の状況とその後の経過などを描く問題作。ジャーナリストにここまで介護士が話したりするものか…疑問に思うこともあります。また、根本的な思想のことを言えば…介護士Kの考えもわからないではないかなぁ~生きていても仕方がない…と話される高齢者も確かに多いです。だからって犯罪を犯してはダメですけどね…介護士Kは優しすぎるのかな…ラストは、え?そうなの??と意外な展開で幕を閉じました。現役医師でありながら作家でもあり…そんな久坂部羊さんの作品は初読みでしたが、別の作品も読んでみたくなりました!
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記者目線の美和と、介護士目線の介護士Kこと小柳の目線から話は進んでいきます。 小柳が働いている介護施設で不審死があり、それについて、美和の目線は推理小説を読んでいるような感じで進んでいきます。 一方の小柳目線は介護の立場から進んでいくので、これからほとんどの人が経験する介護についての問題が突きつけられます。 自分が寝たきりの年寄りになったとしたら、苦しいし、早く楽になりたいと思うかもしれない。でも、それが肉親とかだったら、生きて欲しいと思う。その矛盾が突きつけられた感じがしました。
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これからの超高齢化社会がもつ、「介護」という問題について本格的に考えていかねばならないということをひしひしと感じさせる作品でした。
実際の有料老人ホームで起こった入居者の転落死亡事故を題材にし、また実際の事件は障碍者施設での大量殺傷事件でしたが、「選民思想」とでもいうような、社会的弱者を「社会の負担」として切り捨てる言説を語る主人公たちの主張に対して、読者が自分自身の意見をしっかりと考えてゆくことが必要です。
とくに、主人公に大きな影響を与えた医師が、「介護により、寝たきりで苦痛を受けながら生き続けなくてはならない状況をつくりあげること(介護施設での、十分に手をかけることができない現状での介護)こそが虐待だ」という主張については、医療倫理や生命倫理を考える大きなヒント(安楽死をめぐる問題にもつながるものだと思います)になると感じます。
さらに、疑惑の介護士を取材しているルポライターにその医者が語った、「(虐待がある意味で必然的に生じる過酷な労働環境がある介護業界について)優秀な人間を集めるためには、介護報酬を上げなければならん。介護に多額の公費を注ぎ込んで、優秀な人材を集めてみても、年寄りを喜ばすだけで、生産性にはつながらない。優秀な人間は、国の生産性と技術の向上に資するべきだ。それで社会が潤えば、介護業界も改善される。逆に高齢者は大事にすべきなどと、甘っちょろいことを言って、優秀な人材を介護業界が浪費したら、国力が落ちて、ひいては介護業界も破綻する。だから、現状でいいんだ……介護は有限な資源なんだ。今の日本に三千万人を超える高齢者を介護するだけの実力はない」という指摘についても、もちろん感覚的・「倫理/道徳的」には賛成してはいけない(できない)内容ではあるのですが、「非常識で、非道徳的で、人間として主張することが許されない意見だ」と切り捨ててしまってはいけないような気がしています。
実際、このルポライターは取材を通して色々tな人の話を聞く中で、「許容される死」があるのか、考えることになっていきます。
さらに、この作品では介護問題だけではなく、何らかの事件が起きたときのメディア(マスメディア)の白熱した取材合戦のあり方について対策を考えたり、社会的弱者への支援(=やさしさ)は結局自己満足であるだけなのではないか、という不安についても考えることが必須です。
一方で、作品はミステリの要素もありますが、基本的には社会問題について(高齢者への介護の必要性や「安楽死」という”救済”の与え方など)を読者に問う、かなり「重い」本だと思います。
色々な意見があると思いますが、ぜひこれは様々な人と読みあい、議論のきっかけとしてもらいたいと思う作品です。主人公の精神状況には不安定な部分もあり、そこは小説ならではの脚色ではありますが、本書が取り上げているテーマはまさに喫緊の課題です。 -
説明
内容紹介
現役医師作家が、高齢者医療の実態に迫り人間の欲望にメスを入れる問題作!
介護施設「アミカル蒲田」で入居者の転落死亡事故が発生した。高齢者虐待の疑いを持ち、調査を始めたジャーナリストの美和は、介護の実態に問題の根の深さを感じていた。やがて取材をした介護士・小柳恭平の関与を疑った美和は、再び施設を訪れる。恭平は「長生きで苦しんでいる人は早く死なせてあげた方がいい」という過激な思想を持っていた。そんななか、第二、第三の死亡事故が。家族の問題を抱え、虚言癖のある小柳による他殺ではないのか--疑念が膨らむ一方の美和だが、事態は意外な方向に展開してゆく。高齢者医療の実態に迫り、人間の黒い欲望にメスを入れる問題作!
介護に関しては人ごとではなく 刻々と自分の身にも迫って来ている事だと感じています。
感じているけど 今考えても仕方がないと考えないようにしている自分がいます。
旦那の両親をたまに面会に行くと 介護の大変さは並大抵なものではないとつくづく思うのと 自分の将来までも悲観してしまいます。
自分が介護する立場にはなっていないので 本当のところはわかっていないのでしょうが...
登場人物の小柳の考えもわかる部分が私にはあります。
殺してあげた方がいいとは思いませんが 私自身、長生きしたくないという考えはやはり変わりません。
自分の命、自分で決めて終わりにすることをいつか許される日が来るのでしょうか...?
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今後の老後の問題を詳細に描いていて、結末を楽しみにして読んだ。最後の部分がよく分からず残念だった。
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著者初読み。
初めから終わりまで終始どんよりとした気分で読んだ。
主人公はアヒル口でアイドルの様な風貌を持ち、タイトルにもなっている介護士の小柳恭平、21歳。
有料老人ホームで次々と起こる入居老人の不審死。
ルポライターの美和は虚言癖を持つ介護士・小柳の関与を疑うが…。
「長生きで苦しんでいる人は早く死なせてあげた方がいい」と言う小柳の考え方は、考えるだけに留めて置く分には問題ないと思う。
ただ、それと手を下す事の間には天と地ほどの差がある事を理解していない。
ミステリー要素を絡ませながら、生と死のあり方を問う医療小説。
著者プロフィール
久坂部羊の作品





