逃亡小説集

  • KADOKAWA
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本棚登録 : 506
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041073872

作品紹介・あらすじ

映画「楽園」原作の「犯罪小説集」に続き、
数多の賞を受賞する著者がライフワークとして挑む、傑作小説集第2弾

職を失い、年老いた母を抱えて途方に暮れる男。
一世を風靡しながら、転落した元アイドル。
道ならぬ恋に落ちた、教師と元教え子。
そして、極北の地で突如消息を絶った郵便配達員。

彼らが逃げた先に、安住の地はあるのか。
人生の断面を切り取る4つの物語。

感想・レビュー・書評

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  • この人の話はなんだか泣かせてくる。
    いかにも泣かせようとするわけじゃないのに、泣いてしまう。
    外から見ているだけではわからないが、登場人物はみんなそれぞれ必死で、同じ分岐点に立ったら私も同じように逃げてしまうかもしれない。

  • 吉田修一さんの小説は、重ねられる描写やエピソードから、脇役の人生まで、体臭も分かる気がするほどに生々しく感じられる。本作だと「逃げろ九州男児」がまさに真骨頂だと思った。
    「逃げろミスター・ポストマン」の春也と幸大が凍った海原を走り、「広い世界に生きてるんだな、とふと思う」ように、閉塞感のある日常・状況から顔を上げて視野を広く持てれば、本書の登場人物達は逃亡しなくて済んだのかな、とも感じるし、そうは行かないよな、みんな逃げろ、とも思う。

  • ニュースで知るのは、“遠く”にいる人のニュース。
    だけども、そのニュースのなかには、紛れもなく血の通った人間がいて、やるせない理由とともに生きているのだ。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    別れた妻からの突然の連絡。
    「春也が、いなくなったの…」

    別れた妻の弟・春也は、郵便局の配達を請け負う運送会社で働いていた。
    しかしある日突然、配達車に載ったまま、行方をくらましてしまったというのだ。

    騒ぐ世間。春也を探す人たち。
    一体、春也はなぜ、消えてしまったのか…?

    (「逃げろミスター・ポストマン」より)

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    “逃亡”をテーマにした短編集。
    逃亡している本人を主人公にしたものもあれば、まわりにいる人の目線で語られたものもあります。
    読んでいると、映画「悪人」を見たときのような、やるせない気持ちが蘇ってきました。

    どのお話も、事件を起こすきっかけは令和、まわりからみたら「なんで?」「そこでそういう行動をとらなけらばよかったのでは?」と思うようなことです。

    でもそれは、そのきっかけのあとの世界を知っている読み手だから言えることであり、第三者で冷静さを保っていられるからこそ、言えることです。

    人間である以上、理性がふっとんでしまうような、そんな瞬間があっておかしくないのだ。
    あなたにも、似たような瞬間がおとずれないとも限らない。

    どのお話も、繰り返し繰り返し、そのことを教えてくれています。

  • ふいに逃げたくなる時ってあるよなーと思った。「犯罪小説集」もそうだけど、ちょっとしたきっかけやタイミングで感情が爆発したり取り返しのつかないことになったり。
    教師と元教え子の「逃げろ純愛」が一番印象的だった。

  • 以前「犯罪小説集」読んで映画も見てきたところだが、今度は「逃亡小説集」である、どこかの三面記事かTVニュースで軽く報道されただけの事件に肉付けし更に創作を加えたような4つの物語である。登場人物たちは逃亡するが、それまでの人生は流されたままで思考停止の状態で生きてきたようである。ぼおーっと生きてたら我々もチコちゃんに叱られそうである。

  • 吉田修一らしい最初の「逃げろ 九州男児」が一番すき。

  • ニュースの表面だけを切り取ったら、あーなんでこんなことしちゃったんだよ、と思うような事件のその当事者の気持ちを分からせてくれるような話だった。教師と教え子の恋愛の話が読んでいて特に好きだった。

  • 逃げる、がテーマの短編集。
    久しぶりに吉田修一を読んだ。ああ、そうだ、こんな話を書く人だったな、と。
    敢えて結末は書かずに読み手にそれを委ねる。人によっては、消化不良になるかもしれない。でもだからとってもリアリティがある物語に、いつもなるのかもしれないな。

  • 短編集ながらも、リアリティと何よりその「逃亡」に至るまでの経緯としての心情が上手く書かれている。誰しも我慢や不満があり、それでも毎日を過ごしているが、ある点で糸が切れてしまう。自分は動機、経緯が他人事に思えないような感覚を持って読み進められた。流石だと思った。

  • 2.9

    短編4編。
    1話目は終わり方が唐突で尻切れ蜻蛉感。
    2話目はオチ無し。
    3話目はまあまあ。
    4話目も終わり方が弱い。
    どの話も終わり方意外はまあまあなのでなんか残念。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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