ファミリー・レス (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 276
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041074169

作品紹介・あらすじ

「家族か、他人か、互いに好きなほうを選ぼうか」ふたつきに一度だけ会う父娘、妻の家族に興味を持てない夫。家族というには遠すぎて、他人と呼ぶには近すぎる――現代的な”家族”を切り取る珠玉の短編集。

感想・レビュー・書評

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  • それまでの家族という形態の何処かを欠かせた人達の連作短編6編。
    登場人物を少し重ねて、他の人から見た彼らとして作品に登場させます。見失うくらいで楽しいです。
    「いちでもなく、さんでもなく」は、双子の姉亡き後、その娘を引き取り育てた妹夫婦のお話。血縁は濃いけれど、本当の親子にはなれなかった家族。彼女は、姉になりたかったのか、母になりたかったのか、両方なのか。本当の親子だけが家族というわけでないね。って娘の巣立ちの時に、思いが溢れる優しい作品です。
    “家族か他人か互いに好きな方を選ぼうか”がこの本のコピーのようになっていますが、血縁者との関係は何処か許している感じがして、そこが優しい希望になっているかなと思う。

  • どれも面白かったけど2つ目の、指と筆が結ぶものが特に面白かったです。
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    売れない絵描きの夫・鉄平と、それを支える妻・万悠子の会話が絶妙で好きです。
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    万悠子がすぐに怒って、ブリブリと文句を言うのが面白くて、わざとからかって万悠子を怒らす鉄平と、期待通りの反応を示す万悠子が可愛い。
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    6つの短編の登場人物が少しずつリンクしてるところも読んでいて面白かったです。

  • 奥田亜希子三冊目。

    「プレパラートの瞬き」
    幼い頃に母親に言われたのは、「否定的な言葉を口にするのは、自分の未来を自ら閉ざす」ということ。
    それから希恵は、悪口を言わずに来た。
    一方で、シェアハウスで共に住んでいる葉月さんは、朝から晩まで文句を言っているような人だ。

    前向きに文句も言わずにやっていると、あの子はノリが悪いと言われ、飲み会に誘われない。
    反面、あれやこれやと愚痴ばかり言うと、一緒にいても楽しくないと言われてしまう。

    そんな正反対の二人が、お互いに救われる。
    素直に、嬉しかった。
    電車の中で、泣きそうになった。

    悪い部分を、悪い部分とは思わない相手。

    「私ね、鉄ちゃんと結婚できて、本当によかったと思ってるんだよ。私、愚痴とか、不満とかよく言うじゃない?すぐに怒るし」

    「でも鉄ちゃんは、私のそういう話も楽しそうに聞いてくれるよね。出会ったときからずっと。だから私、会社では全然怒らないでいられるの。家に帰れば鉄ちゃんに聞いてもらえるって思うから」

    続く、「指と筆が結ぶもの」の一台詞。
    絵描きという、低収入のない婿を、彼女の親族は揃って批判する。
    鉄平も親族や親戚付き合いを毛嫌いしていた。
    その中で、彼女の祖父母宅に泊まることとなり、盲目の祖父だけが鉄平を受け止める。

    キレイな部分さえ、汚してしまうような物語ばかりなのに、汚れていても、いいなあ、愛おしいなあと思わされてばかりだ。

    他の話に出て来る離婚した後の娘とも、無愛想な同僚とも、実の娘のように可愛がってきた女の子とも、腹違いの弟とも、結局は分かり合えない。
    いや、分かりきれない。

    でも、そのザラっとした感じが、そりゃあそうだよなーと、すんなり思うのだ。
    恐らく波長の合う作家さんと出会えて、しあわせ。



  • 「家族」という言葉は、いつも重荷を感じる。

    私は実母と折り合いが悪く、「母みたいなお母さんには絶対なりたくない」と言えるほど、母の存在はもはや立派な反面教師だ。

    とはいえ肉親である限り、親子関係を切り捨てることはできない。そのせいで母が毎度電話をくれる度は応戦するが、終話後の疲労感はマラソン試合に出たほどしんどい。

    親は子の心配をするのが当たり前。母親は自己犠牲は当たり前。この世の中の当たり前がたくさんあって、もしかして私も知らぬうちに「母親だからこうあるべきだ」というものを母に押し付けてしまったかもしれない。けれど、この世にたった一人の私のお母さんだから、他に比べようがない。

    さて、「ファミリー・レス」は講談社ウェブマガジン「ミモレ」の編集部の @batayomu が、「真夜中の読書会、おしゃべりな図書室」というpodcastで紹介されて、購入した一冊。六つの短編が収録され、それぞれの家族風景を描いた連作。その中の家族たちは、ねじれた関係性も猟奇的なストーリーもなく、ごく普通(私にとっては)の家族風景だった。そんな家族風景はどれも愛おしくて、私のちぐはぐのような家族では生まれない、暖かく心に染みるような話に、ただただ羨ましかった。

    それぞれの家庭に、それぞれの事情があるとは分かっていても、心底のどこかに「この家で生まれていなかったら」

    考えたって仕方ない。そういえば一度友人から「読書は現実逃避ではなく、現実を向上させるという考えがあるよ。」と言って頂いた。あれから何度もこの言葉を咀嚼して考えていました。私は読書から、何を得てきたかについて。多分救いが欲しかったかもしれない。かつて少女の頃、無我夢中にほんの世界に浸って、ただただ現実から逃れたかったかもしれない。

    現実を向上させるには、どうしたらいいだろう。

  • 期待しすぎたなあ
    最初の小説だけよかった

  • 自信はないけどプライドは高い。
    愚痴や悪口は時として潤滑油となる。
    この二文に心打たれた。

  • どの話もスッキリとした読了感よりも「なんだかなぁ」というやるせなさが残る話でした。
    特にウーパールーパーの主人公は、この後うまくいくのかと思いきや、恐らくプレパラートの事務員との食事でメタメタにやらかすんですよね?
    それとエバーグリーンの主人公! 小学校では人気者だったのに、中学入学と同時に地位が転がり落ちてオタク友達しかいないのがなんとも…リアルで…

  • 良かったのは「さよなら、エバーグリーン」。
    人生は選択の連続ってあるけど、自分より年上の家族に関しては存在は選べないからなぁ。家族を続けるか、続けないかは大人になって選択出来るようになるけど。でもどんなに切り離したくても血縁である以上切り離しきることは難しいし。家族ってなんだろう。

  • まさに現代を模倣するような作品。どこか寂しくて、どこか暖かい。どこか不器用で、どこか器用。
    核家族とはよくきくが、それを超えた新しい形がこの本に記されている気がする。

  • 他人以上、家族未満の6つの短編集。
    他人よりも近しい関係だけど、家族というには、少し鬱陶しく感じる関係。
    家族って、無償の愛情があるのかと言われたら、それは人それぞれ考え方や環境が違うから、言いきれないけれど、気持ちのどこかで、切っても切れないものを感じるものだと思う。
    家族になりたくてもなれない家族だったり、家族だからこそ、許せない感情があったり、本当に1つとして同じ家族はいないんだなと思わせてくれる話ばかりだった。

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著者プロフィール

1983年愛知県生まれ。愛知大学文学部哲学科卒。2013年『左目に映る星』で第37回すばる文学賞を受賞しデビュー。他の著書に『透明人間は204号室の夢を見る』『ファミリー・レス』『五つ星をつけてよ』『リバース&リバース』『青春のジョーカー』『魔法がとけたあとも』がある。

「2021年 『求めよ、さらば』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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