あひる (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 2852
感想 : 273
  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041074435

作品紹介・あらすじ

我が家にあひるがやってきた。知人から頼まれて飼うことになったあひるの名前は「のりたま」。娘のわたしは、2階の部屋にこもって資格試験の勉強をしている。あひるが来てから、近所の子どもたちが頻繁に遊びにくるようになった。喜んだ両親は子どもたちをのりたまと遊ばせるだけでなく、客間で宿題をさせたり、お菓子をふるまったりするようになる。しかし、のりたまが体調を崩し、動物病院へ運ばれていくと子どもたちはぱったりとこなくなってしまった。2週間後、帰ってきたのりたまは、なぜか以前よりも小さくなっていて……。なにげない日常に潜む違和感と不安をユーモラスに切り取った、著者の第二作品集。

感想・レビュー・書評

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  • 今村夏子 著

    話題の…今村夏子さんの作品は以前から ずっと読んでみたい作家さんの作品だった。
    初めて読む作家の作品ということ。初心者ということもあって、短編集的な(実はそうでもなかった)
    短めの本を読むことにした。
     どう表現したら良いのか分からないほど、
    衝撃で引き込まれていった作品だった
    最初は児童文学的な要素の 平素な家族のある日常を、描いているかと思えば、ある日、あるひがやって来た それは何を意味するのか?
    最初は可愛くて 珍しい、あひるにヒトが集まってくるのだが、あひる自体を超えた人の視点というべきか?行動に 不可思議な思いのまま、気持ちが
    ゾワゾワするばかり…。
    何を言ってるんだろう?何を言おうとしてるのか?
    もう、ホラーなみに、ずっと何だか、不穏な空気感の中に、読むことをやめられない小説だ!
    そこにある ひとつの風変わりとも、よくある家族ともいえそうな一部を切り取っているのかもしれないのに…
    それでも、何だか、ずっと怖い感覚がつきまとってゆくのだが、怖いのに、何故か泣けてしまうような情景が見えたり…
    この作品を、読了するまで目を離せない感覚に陥ってしまった自分だった。
    「あひる」も、えっ!となりつつ終わるのだが、
    それに続く「おばあちゃんの家」には、ここで終わるの?と驚かされる しかし、最後に続く
    「森の兄弟」に繋がり、何となく、ホッとする気持ちも 何だろう…それでも 置いてきぼりにされたように、物語りは終わりを見せないまま
    作品は終わってしまうのだ 
    寝れなくなりそうなのは、余韻を残して終わるからとは、また別の感覚だった 
    いや〜知らなかった こんな不思議とも個性的とも言えない作家にまた、出会ってしまうとは(*_*)

    分かりやすく…分からない 心の奥にある恐怖と孤独なのか?それでいて、私的には嫌な印象を全く、持たない作品だった。
    それよりも、今村夏子さんの他の作品が、より楽しみになってきた。

    現在の私は、なかなか、外の場所に本を求める事が出来なくなってきているので、ネットで中古本を求める機会が多く、すんなり本を取り寄せない問題もあるが、単行本は重いので、是非、色々ある所に文庫本を探して読みたいと切望している
    なんて、全く違うジャンルでも、興味ある才能優れた作家さんが沢山いらっしゃって…
    本当にブク友さんのレビューがとても参考になっています。
    今村夏子さん、勿論…注目です!

    • 5552さん
      hiromida2さん、おはようございます。
      遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
      今年もよろしくお願いします。

      今...
      hiromida2さん、おはようございます。
      遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
      今年もよろしくお願いします。

      今村夏子さん、好きです!
      好きなんですが、良さを言語化できなくて、レビューがなかなか書けないんですよ。
      hiromida2さんの好意的なレビューを拝見して嬉しくなりました。
      不穏なのに、不安なのに、でも目が離せない。
      吸引力ある作家さんですよね。

      ネットの古本屋って便利ですよね。
      状態を確かめられないのが難点ですけど。
      たま〜に文章に傍線が引かれた本に当たって、おお、前の持ち主はここに興味を引かれたのか!と新鮮な思いで読んでいます。
      2021/01/06
    • hiromida2さん
      5552さん、こんばんは!
      あけましておめでとうございます。こちらこそ、今年もよろしくお願いします。
      今村夏子さん、本当にいいですね。
      しか...
      5552さん、こんばんは!
      あけましておめでとうございます。こちらこそ、今年もよろしくお願いします。
      今村夏子さん、本当にいいですね。
      しかしながら、5552さんのおっしゃる通り
      良さを言語化出来なくて、レビューに書けない まさにその通りでした (このコメント文書いてるうちに何度もフリーズしてしまうので 2回に分けてコメントします)
      2021/01/06
    • hiromida2さん
      5552さん、前から気になっていた 今村夏子さんの作品が、あまりに良くて、何とか、拙いながら、感想で良さを伝えたくて…しかし、5552さんに...
      5552さん、前から気になっていた 今村夏子さんの作品が、あまりに良くて、何とか、拙いながら、感想で良さを伝えたくて…しかし、5552さんに私の思い理解して言語化して頂き嬉しいです(^。^) ありがとうございます。
      ネット本は確かに状態やら、読みたい本がなかったり難ありですが、最近はここのネット本は比較的綺麗とか…分かるようになってきました(^^;;
      そうそう、そうなんです 文章にライン引かれてるの、昔は嫌だったけど、今は、誰かがここに引っかかって読んだと思うと、ニンマリ(^.^)新鮮な思いで読めるようになりました。
      今村夏子さんの他の作品も是非、探して読むのが楽しみです!
      5552さん いつも、私の心にささるコメント嬉しいです。ありがとうございます!
      2021/01/06
  • あひるが可愛いので、子どもたちが集まってくる。
    活気もでてくる。

    でもそんなあひるだって、個性もある。
    うわべだけを見ていても気づかないかもしれない。
    でも、言う言わないは別として気づく子は気づく。
    気づいて、それを表に出していってもいいのかどうか。

    そこからが大人の世界、おとなの事情。
    軽く読んでいたけれど、確かにその辺り、引っ掛かります。
    「あれっ?」と。

    私は声に出さななかった。そして流してしまった。
    それは大人になったということか。
    知らず知らずのうちに面倒に巻き込まれたくない、という大人の気持ちが染みついているのかもしれない。

    ぞくぞくするお話。

  • 可愛らしい装丁、挿し絵があり絵本、童話のような話なのかなと思って読みましたが、なかなか闇が深そうな話でした。
    三編とも私には、ハッピーエンドでは終りそうにないなと思いました。

  • 短編3編の小品だけどいかにも今村夏子さんの味わいが出ていてすんなり読了しました♪ たしかに皆さんが評するとおり、暗黙の喩えが散りばめられていますけど、それが嫌味でなくてちゃんと収まっています。表題作もいいけど、書き下ろしの2編も印象的です。

  • 初めて味わう感覚だった。
    あひるを家で飼ってること自体ぎょっとするのに、そのあひるを見に集まってくる、一見無邪気に見える子供たち。
    それを無防備に受け入れる両親。
    その様子をニ階から、試験勉強をしながら見つめる私。
    何だか背筋がぞくぞくする。余計なことが書かれていないから、なおさら怖い。
    そして少し遠目から見ると何だかおかしくもある。

    「おばあちゃんの家」と「森の兄妹」には、共通したおばあちゃんが出てくる。
    おばあちゃんについて、こういう目線で切り取られているのは初めてだし、いろんな捉え方のできる作品だと思う。

  • 知らない空き地に放り出されたような読了感。

    解説から「今村夏子が何について書いているかは誰も知らない。ー中略ー 文章は平易で、曖昧なところはどこにもない。見えるものが書かれ、見えないものは書かれていない。」

    表題『あひる』(わたし目線)…寂しさから⁈ 何かにのめり込むことに夢中になる父母。その対象自体には執着せず、無くなると次の対象へ矛先を変える。その冷淡さにゾクッとした。

    他『おばあちゃんの家』(みのり目線)、『森の兄妹』(モリオ目線)の2話は連作短編。迷宮入りの疑問が、なんとも言えず好き♡

  • 河合隼雄物語賞受賞の表題作「あひる」。何も起こっていないはずなのに、読み進めるほど漂ってくる不穏さに、気持ちをざわつかせながら読んだ。他の2作も静かに壊れている。

  • 文章は、とても読みやすく、
    1日で、読了しました。
    読了後の、余韻が、凄く、読み返してみたり、
    あれこれ想像して、結びつけてみたり。
    私の中で、物語の続きを、作ってしまう。
    そんな小説です!凄い!
    まず、アヒルの語り手は、何者?
    おばあちゃんと、森の兄妹の、繋がりも、よかった。

    今村さんの、小説は、初めて読みましたが、
    独特の世界観で、ハマってしまいそうです!

  • 何とも言えない不思議な感じの短編三作、心がジンワリ暖かくなる。

  • 「こちらあみ子」の前後は寡作と思われていたが、その後は佳品を矢継ぎ早に発表し続けている。
    現代純文学界の傍流からアプローチしながら主流に食い込み続ける(文芸5誌以外の「たべるのがおそい」や「小説トリッパー」から芥川賞にノミネートという経歴)という、純文学の新たな模範ともいうべき、特別な作家。もちろんファンです。
    こういう作品を単行本化するだけではなく文庫化して一般読者に届けようとしているあたり、出版界の良心を感じる。

    「あひる」の語り手は、割と冷徹に父母を見る。
    少し先に死を控えて、空しい。
    次世代に拡張することにしか生活の喜びを見いだせない。要は孫が欲しい。
    そのためには子も孫も交換可能な存在として使う。
    自ら行った、あひる交代=密やかな代替わり=こっそり埋葬には、目を瞑るが、その自己欺瞞は自身の現実認識を歪めてしまうくらい、強固だ。
    動機は(暴かれてみれば暴力性だが)表面上は自身にも他者にも、たっぷりの愛情ゆえ、と映る。
    やがて父母ー私と弟ー弟の息子、と悲願は達成され、あひるも子供たちもどうでもよくなり、のりたまの小屋は潰され、孫のブランコの場所になる。
    だが、その孫は、果たして交換不可能な存在なのか……?
    僕自身母や義父から孫を切望されその圧力の切実さと暴力を思ったことがあるので、この作品に込められた皮肉だか悪意だか暴力性だかには「たべるのがおそい」発表当時からびりびりと思うものが多かった。
    「こちらあみ子」や、今から述べる2作に比べると、そういった悪意に対して多少距離を置いているのだな、と再確認できた。

    「おばあちゃんの家」と「森の兄妹」はいわば連作、というか裏表のような対の関係。
    前者ではおばあちゃんの痴呆を、孫の視点から描く。
    後者ではそのおばあちゃんが独り言を言っていると思っていた「ぼくちゃん」の視点から、おばあちゃんとの出会いが描かれる。
    どちらも視点人物は家庭の中にいる子供だが、家族が他人をないがしろにする様子が、悲劇でも喜劇でもなくフラットに描かれる。
    うっすらと貧困や生活苦のにおいがするが、ことさら過酷というわけでもなく、ただそういう生活がそこにあって子供は淡々と受け入れて生活している。
    そして子供もまた、おばあさんのような傍流の存在を軽く扱う姿勢を身に着けることもある。
    じわーっと嫌な感じや怖い感じもあるのに、語り口は良質な児童文学のように「突き放した」ものだから、作品の意義は固定されておらず、たぶん読むたびに着目ポイントが変わってくるだろう。
    「信頼できない語り手」ものとしても、再読必須。

    wikiによれば「岡山市出身の小川洋子を「神様みたいな人」と敬愛し、「ずっとあんなふうに書いていけたらすてき」と話している」。つまり作者が小川洋子好きらしい。
    むべなるかな、な作風。そして宗教へのスタンスも、また。
    芥川賞選評で小川洋子が「「殖(ま)してゆく子供たちの気色悪さ、誕生日会に誰もやって来ない奇妙な欠落、あひると赤ん坊がすり替わるのではないかという予感。どれも書き手の意図から生まれたのではない。言葉が隠し持つ暗闇から、いつの間にかあぶり出されてきたのだ。そう思わせる底知れない恐ろしさが、この小説にはある。」「受賞に至らなかったのは残念だ。」と書いているらしい。
    んで2019年上半期芥川賞に「むらさきのスカートの女」でノミネートされている。
    今回こそ!

    ところでネットで感想を漁っていて、藤野可織、小山田浩子、吉田知子に連なる「不穏文学」の担い手として「書かないこと」が上手い、という感想を読んだ。
    確かに!

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著者プロフィール

1980年、広島県生まれ。2010年「あたらしい娘」で第26回太宰治賞を受賞しデビュー。「こちらあみ子」と改題し、同作と新作中編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で2011年に第24回三島由紀夫賞を受賞。2017年『あひる』で第5回河合隼雄物語賞、『星の子』で第39回野間文芸新人賞、2019年『むらさきのスカートの女』で第161回芥川賞を受賞。他の著書に『父と私の桜尾通り商店街』『木になった亜沙』がある。

「2022年 『とんこつQ&A』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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