- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041075258
作品紹介・あらすじ
ここまで優れた作品を上梓した作者を、ただただ絶賛したい――。(書評家・細谷正充)
吉原を舞台に、女の生き様を描いた人生賛歌。
遊女に夫を寝取られ離縁したばかりの梅は、生家に戻って髪結の母の手伝いを始める。
心の傷から、吉原で働く女たちと距離を置いていたが、当代一の美しさを誇る花魁の紀ノ川や、
寒村から売られてきた禿のタネと出会い、少しずつ生気を取り戻していった。
そんな中、紀ノ川の妊娠が発覚し――。
男と女の深い溝、母娘の複雑な関係、吉原で生きざるを得ない女たちのやるせなさ。
絶望の中でも逞しく生きていこうとする女たちを濃密に描く。
感想・レビュー・書評
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夫が遊女に心奪われて、本妻を追い出した。
追い出された、梅は、髪結の母親の元へ戻り、手伝いとなった。
梅の母親、マサは、吉原の花魁や遊女の髪を結う、髪結だった。
ある日、マサは、中風で倒れた。
髪結ができなくなったマサの後を継いで、一人で吉原へ行く梅だが、マサのようには行かない。
マサは、髪結の腕も一流であったが、人の心を緩めて、口元を綻ばせ、身体の凝りを取り去る術を持っていた。
花魁や遊女に、なかなか受け入れてもらえない梅だったが、禿のわかなと出会い、少しずつ、自信を持ち、変わって行った。
苦界に身を置く女達に、寄り添い、力づける梅の姿がとても良かった。
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大好きな吉原物語です♪
吉原一の大店〈大文字屋〉花魁・紀ノ川
吉原遊女に夫を寝取られ出戻り髪結・梅
紀ノ川の妊娠そして命懸けの出産。
梅と紀ノ川の互いを思う気持ちに涙です(T . T)
泉ゆたかさん読みやすくて好きです♪
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前々から読みたいと思っていた1冊。
吉原で髪結として働く主人公の視点から描かれた
花魁、遊女たちの物語。
淡々としているのにも関わらず、主人公の髪結としての情熱が物凄く伝わってくる。
主人公と花魁の付かず離れずな距離感も何とも言えず良い。
ラストは決してハッピーエンドとは言えないけれど、
ほんのりと温かく、この作品にふさわしい締めだったと思う。 -
吉原の髪結い職人の梅が主人公。
今まで「吉原」が舞台の話では大抵遊女にスポットライトがあたるが、本書は少し違う。
母であり、技術も話芸も優れた師匠について髪結い見習いをしていた梅だが、ある日師匠のアサが倒れてしまう。利き手が使えなくなったアサの代わりに、突然梅は一人立ちすることになった。それまでは手伝いはしても話すことのなかった遊女たちと、なんとかコミュニケーションをとりながら仕事をする梅。
ある日、大文字屋の一番の遊女、紀ノ川の髪を結うことになった。ほっそりとして美しい紀ノ川。彼女からのある頼まれ事を梅は引き受けてしまったが、その依頼は謎めいていて…。
倒れて依頼気の抜けたアサと、やっかいな依頼。
そして元夫との再会。
二十歳ながら苦労人で、江戸っ子らしい世話焼きな梅がかっこいいです!
あ、ミステリーっぽいあらすじになってしまいましたが、ミステリーではありません。
人間それぞれ過去や歴史があるよね…と言う。
登場人物すべてが、最後には好きになる不思議な話でした。
艶かしさや悲惨な境遇だけではなく、生身の遊女たちを感じることができました。
時代物(歴史物)にありがちな蘊蓄いうたぞ感もなく、自然に江戸時代に降り立ったような気がする。
短いのですっと読めるのに、あと引く作品でした。
装丁もすごく可憐。
女性向けかなあと思いますが、逆に男性が読むとどう思うのかほんのり気になります。
素敵でした! -
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https://opc.kinjo-u.ac.jp/ -
花魁ものは「みおつくし料理帖」で妓楼の話をちょこちょこ読んでいたけど、これは花魁の髪結い師の話を通した物語。
髪結いのことは全く知らない世界だったけど、すんなり世界に入り花魁の生い立ちからその成れの果てまでを物語で読むと華やかさなど一つもなくどこまでも悲しい。
本の表紙絵もまた素晴らしい!