リズム/ゴールド・フィッシュ (角川文庫)

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  • KADOKAWA (2019年2月23日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784041075289

作品紹介・あらすじ

中学1年生のさゆきは、いとこの真ちゃんが大好きだ。高校へ行かず金髪頭でロックバンドの活動に打ち込むようになっても、真ちゃんのかっこよさは変わらない。家族ぐるみでずっと一緒にいたいのに、真ちゃんの両親の離婚話を聞いてしまい……。

第31回講談社児童文学新人賞、第2回椋鳩十児童文学賞を受賞した著者デビュー作「リズム」と、その2年後を描いた「ゴールド・フィッシュ」を収録した不朽の名作集。

感想・レビュー・書評

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  • 高校に行かず、バンドの夢を追い続ける、いとこの真ちゃん。
    あたしはそんな真ちゃんが大好きだった。

    キラキラした自由人の真ちゃんを愛するさゆきと、まわりの大人の見る目。

    大人と子供。
    常識と瑞々しさ。
    感覚のすれ違いが、細やかだった。

    リアル中学生が読むと、より響くかも。

    「リズム」は、第31回講談社児童文学新人賞、第2回椋鳩十児童文学賞受賞作で、デビュー作。
    「ゴールド・フィッシュ」は、その2年後。

  • 森絵都さんのデビュー作、リズムとその後を描いたゴールド・フィッシュを同じ本で読むことが出来てよかった。子供にも読みやすい作品だと思う。

  •  最初に読んだのは確か、小学校高学年か、中学一年かの頃。それからウン十年の時を経て再読。森絵都さんを知ったきっかけの本だったような気がする。(その後、森絵都さんの「カラフル」、「風に舞いあがるビニールシート」、「みかづき」は大好きな作品となった。)
     本書にはなんとも不思議な思い入れがある。「読んだことのある本」ということですごく心に残っているのだけれど、内容はあまり覚えていない。父に連れて行ってもらった地元の図書館で借りたのだけれど、この本を手にして見上げた窓から見た外が雨だった記憶があるようなないような。タイトルをよく覚えているのに、あまり好きになれなかったような。

     そしてすごく長い時を経て、なぜかまた読んでみようと思って、また図書館で借りてみた。今度は今私が住む町の図書館で。

     再読してみてわかった。あの頃「この本好き」と思えなかった理由が。主人公のさゆきが私にないものを持ちすぎていたから。ある種の嫉妬。近くに住む仲の良いいとこも、歌を、しかもロックを夢にするようなカッコイイいとこも、テツのような優しい幼馴染も、まぶしい街、新宿も私のまわりにはなかった。自分の心に素直で、思ったとおりに行動できて、ガッと燃えて、ワッと泣けて、先生に「個性」を褒められるようなさゆきがうらやましくて、「ふん、所詮、小説」と斜に構えるようなことしかできなかった私は、さゆきのお姉ちゃんと同じタイプだった。固定観念ゴリゴリ、偏見ゴリゴリ、自分の周りの小さな世界しか見えていなかった私には、この本の良さがわからなかったんだなと再読して思った。今回は素直に好きになれた。とても面白かった。児童文学ということを差し置いても、文章のリズムが良く、一瞬にして物語に引き込まれ、一気に読んでしまった。心地よい読後だった。

    脇役だけれど、個人的に大西先生が印象に残った。大西先生の良さを見抜くさゆきはやっぱり魅力的な主人公だった。余談だけれど、最近気づいたことに、少ししか登場しなくても重要な役割を果たす「学校の先生」が気になる小説が多い。私、学校の先生になりたかったのかな(笑)

  • 自分だけのリズムを見つける、他の周りの音は関係ない、とても共感できるし自分もそうありたい。

  • 高校を行かず 夢を追いかけるいところしんちゃん。
    主人公さゆきはそんな彼が大好きだった

    さゆきの前で「俺は東京でバンドマンとして成功する」と言って田舎町を飛び出たしんちゃん

    そんなしんしゃんを心から応援して誰よりも第一ファンだったさゆき

    現実は甘くなかった
    貯めたアルバイトはバンドの為に消えて、食費も節約し、身も心もボロボロになったしんちゃんはうつ病に

    それを知らされたさゆきはショックを隠せなかった
    考えない様に勉強、勉強、日々勉強
    中三だったさゆき下から数えた方が早い成績だったのが一気に上位へ

    しんちゃんとさゆきは会えることはできたのか?

    とても良い小説だったバンドで夢を追いかけている人には読んだ方がいいかもね
    せめて高校は卒業したほうがいいよね。。
    中卒だとよくな就職先ないし

  • 中1のさゆきは近所に住むいとこの真ちゃんが大好き。
    何も変わらなければいいのにと願うさゆきの想いとはうらはらに現実は変わってゆく。

    世間的には不良といわれる真ちゃんを慕うさゆきの純粋さに癒された。

  • リズムを読み終え、充足感のないままゴールド・フィッシュも一応読んだ。

    小中学生向けの、少し恥ずかしくなってしまうような文体は変わらなかったけど、リズムよりは読めた。

    最後のしんちゃんの手紙にある、『「社会は厳しい」だとかいうのは、生きてりゃだれだってわかることだから、わざわざ教えたり教えられたりすることじゃない。』という一節が割と好きだったので、★2。

  • 変化について。時の流れは残酷で、だけどたまに優しい。中学一年生のこゆきの周りではさまざまなものが大きく変化する。
    リズム(前半)は、日々の変化の中で周りに振り回されず、自分のリズムを持つことが大切。という言葉で終わる。
    中学生という若い、まだ大きな変化を大変したことのないこゆき。ちょっと寂しくて、苦しくなる。けど、その変化も愛して明日も生きていこうと思える作品。暖かくて優しくて好きだった。

  • 最近どうしたの?ってくらい、あたり本が続いてる。
    幸せだ。

    小学生の時、学校の図書館でたまたま見つけて、当時の友達達とコレは面白いってしばらくハマった本。
    あの本、なんだったっけかなーっ。。。
    確か、リズムって本でー。。。
    続編もあったよなー。。。
    記憶を頼りにAmazonで探してたら、なんとまさかの森絵都さん!!私、見る目あるじゃん!

    あの時の私に、何がどう琴線に触れたのか思い出せないけど、ちょっとお姉さんを生きてる主人公の考えや行動に共感するところがあったんだろうな。
    大人になれば分かると言われた主人公が、子供に戻れば分かると大人に思ったように、しょうがないを繰り返して忘れちゃったことが多くなったみたい。

    自分らしく生きるために、リズムを忘れずにいること。
    今からでも自分のリズムを持って生活しよう。
    そして、金魚飼ってもいいか旦那に聞いてみよう。

  • 中学時代に心酔していた森絵都さんの作品。カラフル、ラン、DIVE!!などの代表作は読んでいた一方、不覚にもデビュー作を読んでいなかった。

    大人になった自身にどう刺さるかドキドキしながら、本を開いた。登場人物、綴られた台詞、文体のリズム、全てが心地よく爽やか。十何年経っても変わらず好きなものがあることは幸せだ。

    ↓以下内容について

    まだ自分の軸というものが確立していない年頃(いい大人でも軸がない人は多いが)様々な周囲の変化に大きく心が揺れてしまう。
    そんな時、大人の大人らしいもっともな意見を聞くと、自分だけ周りが見えてないことに気づき途方もなく寂しくなる。そんな感情が自分にもあったことを思い出した。
    まっすぐがゆえに激しく悩み苦しむさゆきを見守る家族や友達、先生、林田さん、みんなが温かく、愛に溢れている。
    「心のなかでリズムをとる」
    素敵な言葉にまた一つ出会えた。

  • 小中学生の時に読みたかった一冊。

  • なんというか、この小説をもし子供の頃に読んでいたら今の自分とは変わっていたのではないか、と思ってしまった。

    それこそすごく子供っぽくて、ある大人が読めばくだらないと一笑に付されるかもしれない作品だけどそんな人って本当に大人なんだろうか?

  • 変わらないことは安心。
    だけど変わらないものはない。
    自分のリズムを信じろという真ちゃんの言葉は、真ちゃん自身に対する願いであるようにも感じる。
    忘れることはひどいことだけど、思い出だけでは生きていけない。
    さゆきが真ちゃんに求めているのは絶対的な信頼感を寄せた絶対的味方である気がする。

  • ママには悪いけど、あたし、今はいい高校よりも海に行きたい。
    真ちゃんの家までは歩いて十分。軽く走れば五分で着く。あたしはいつも軽く走っていく。p14
    ・みずみずしい。少女のエッセイ感があるよね。

    だいじょうぶ、だいじょうぶ。楽しいうそは罪にならないんだから。p41
    ・ませた女の子だ。

    手ぶらで歩く帰り道は、いつもよりずっと体が軽い。心のなかにある重たいものをみんな、こんなふうにどこかに置きざりにすることができたら、気分もずっと軽くなるのに…。p62
    ・仕事でもこう感じることは多い。

    「でもね、仮病ったって、立派な病気だよ。」
    「病気?」
    「そう、心の」
    「…」
    「でも、こうやってさゆきちゃんが来てくれるうちは安心よ。だいじょうぶ、きっと明日になったらけろっとしてるから、あの子は。」
    おばさんはそう言って、あたしの頭に右手をポンとのせた。
    大きくて、あったかい手。
    この手のなかで育てられたテツは、もしかしたらあたしが思っているよりも、ずっと強い子なのかもしれない。
    一瞬、そんな気がした。p79
    ・理解者がいることが人を思いがけず逞しくするものなのかしら。

    「そうね。植物は考えたりしない。なにかを感じているかもしれないけど。」
    「じゃあ、きっと植物はみんな、太陽のことが好きなのよ。考えなくたって、自分の好きなものくらいわかるじゃない。」
    本気でそんなふうに思ったわけじゃないけど、口に出して言うと、その通りのような気がした。
    植物は太陽が大好きで、その大好きな太陽に向かってすくすく伸びていく。
    「そうだといいな。」
    「そうだといいわね。さゆきちゃんも、C組のみんなも、好きなものにむかってすくすく伸びていってくれればいいな。」p95
    ・好きなものは考えなくたってわかる。考えなくたってそこへ向かう。

    「あたし、三木先生でよかったよ。たった一輪だけ学校に持っていった花のこと、こんなふうにおぼえてくれる先生でよかった。」
    「ありがとう」
    先生は今までで最高の笑顔を作った。
    休日の朝っぱらから、コスモスの花束を抱えて生徒の家へ自転車を走らせる、三木先生にしかできない特別なスマイル。p96
    ・いい先生だなぁ。自信がないながらも精一杯生徒のこと考えてる。

    いつかあたしが大人になって、本当に海外へ行くことがあったら、長い長い作文を書いて、先生に送ってあげよう。
    いいことをたくさん探して届けよう。p98
    ・こういう風に思えるっていいな。

  • 「ゴジラが火をふくように勉強をつづけた」

    受験に合格した時に、みんなで「サクラサク」と言い合っていたのがイイ。

  • テーマ【わたしの推し作家:森絵都】

    子どもにも読みやすい文章だけど、大人にも刺さる。
    感情移入させられる繊細な人物の心理描写が魅力の作家さんです。

    =========================
    【配架場所・貸出状況はこちらからご確認ください】
    リズム ; ゴールド・フィッシュ / 森絵都 [著]
    (角川文庫 ; 21444, [も16-13])
    https://libopac.shoin.ac.jp/opac/opac_link/bibid/SB00051721

  • なんだかほっこり元気になった。
    社会人になって忙しさを言い訳に送らなくなってた親戚のおばちゃんへの手紙を、この本を読み終わって直ぐに書きました。

    素敵だなと思った言葉
    ・もうこれでお別れかと思うと「実はみんないい人かも」と思えてきて、いきなり好きになってしまったりするから困る

    ・心の中でリズムをとるんだ

    ・じゃーな。みんなによろしく。愛していると伝えてくれ。

  • 森さんの作品は確か何冊か読んでる。
    読みやすい文体と、分かりすぎるぐらい、どうなるのかが分かるストーリー。

    ただ時々、はっとする言葉に出会う。
    本を読んでると、その時自分が求めている言葉と言うのに出会う事がある。
    言ってほしい言葉なんだろうと思う。

    今回もそれがたくさんあった。

    ストーリーは中学生の女の子がかっこいい従兄に憧れて、その従兄が挫折していなくなったことに絶望して。。と、思春期あるあるの心の変化を森さん独有の言葉で綴られている。

    自分の思春期も思い出したりして。
    似てるなぁ。。いや、ほとんどの人がどこかしら似てると思うんだろうなぁ。皆通ってきた道だからかな。。

    何者になるか分からない自分にワクワクしたり、何者にもならないかも知れない自分に絶望したり、未来の事なんて誰にも分からないのに。

    あの頃って本当不安定だったなぁ。
    なんて、思いださせてくれた本でした。


  • 主人公さゆきの
    「わたし、テツや真ちゃんみたいに立派な夢はまだないけど、そういう小さなこと、ひとつひとつ楽しみながらやっていきたいの」
    という言葉がいいなと思った。

    そしてテツに
    「楽しい魚屋さんになってね」
    という。

    人生を楽しむっていうのが1番だよなと
    歳を重ねた今だからこそ共感してしまった。

  • 中学生さゆきちゃんの物語。中学生だったのははるか前なのに気がつくとさゆきちゃんになった気持ちで読んでいた。したいことと出来ることの圧倒的な差が悔しくてもどかしかったあの頃を思い出した。

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著者プロフィール

森 絵都(もり・えと):1968年生まれ。90年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞し、デビュー。95年『宇宙のみなしご』で野間児童文芸新人賞及び産経児童出版文化賞ニッポン放送賞、98年『つきのふね』で野間児童文芸賞、99年『カラフル』で産経児童出版文化賞、2003年『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞、06年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞、17年『みかづき』で中央公論文芸賞等受賞。『この女』『クラスメイツ』『出会いなおし』『カザアナ』『あしたのことば』『生まれかわりのポオ』他著作多数。

「2023年 『できない相談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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