- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041075432
作品紹介・あらすじ
美貌の丹夫人をめぐる決闘に敗れた初山は、「丹夫人の化粧台に気をつけろ」という言葉を残してこと切れる。勝者の高見は、丹夫人の化粧台の秘密を探り、恐るべき真相に辿り着き――。表題作他13篇を所収。
感想・レビュー・書評
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怪奇ミステリ。「誘蛾灯」「髑髏鬼」「丹夫人」男を弄ぶ怪しい女の話。「青い外套」画家がポケットの紙切で女と出会い事件に巻込まれる。1.山:守銭奴2.川:回転木馬3.双生児:偏執狂5.血屋敷:お染伝説
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横溝正史『丹夫人の化粧台 横溝正史怪奇探偵小説傑作選』角川文庫。
横溝正史の初期短編14編を収録。角川文庫から横溝正史の新編集本が刊行されるのは15年振りらしい。30年前は本屋に行けば必ず角川文庫の横溝正史作品が並んでいた。当時は書棚に並んだ黒い背表紙に緑色のタイトルに目を引かれ、読み漁ったものだ。本作の場合は黒い背表紙に白文字タイトルだった……
今読み返すと流石に時代を感じるし、今では差別用語となった言葉も登場し、少しドキリとする。
横溝正史の作品は江戸川乱歩の作品とも似ているが、江戸川乱歩よりも陰湿で底知れぬ不気味さを感じる。いつも事件を颯爽と解決してしまう神出鬼没の明智小五郎に対して、金田一耕介が扱う事件の一族や狭い地域の泥々した因縁であったり、事件を解決するのが常に一連の猟奇的犯行が終結してからというのが、陰湿さを感じる原因なのかも知れない。 -
横溝正史の作品には、「長編はめちゃくちゃ面白いが短編はそこまででも…」というイメージを持っていたのだけれど、この本を読んでそれは大間違いだったと気付かされた。あの短いページ数でこれだけのドラマを見せてくれるなんて。それはものすごい技巧であるのに、それを必要以上に感じさせず、さらりと読ませてしまう。すごい。どの短編も楽しかった。めくるめくワンダーランドのような一冊だった。中でも特に面白いと思ったのは「妖説血屋敷」「青い外套を着た女」だった。恐ろしい昔話に彩られたものから、軽快な読み口のもの、不思議な後味のもの……本当に楽しい読書の時間だった。
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山名耕作の不思議な生活
川越雄作の不思議な旅館
双生児
犯罪を猟る男
妖説血屋敷
面
舌
白い恋人
青い外套を着た女
誘蛾燈
湖畔
髑髏鬼
恐怖の映画
丹夫人の化粧台
著者:横溝正史(1902-1981、神戸市中央区、小説家)
編者:日下三蔵(1968-、神奈川県、文芸評論家) -
昭和を感じさせるけどあまり古くさくは無い。
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1926(大正15)年から1940(昭和15)年、戦前期の横溝正史「怪奇」ミステリ集。
先に読んだ『蔵の中・鬼火』も1935(昭和10)年から1937(昭和12)年の作品集だったが、これは意外なまでの文学性があったりしてとても良い本だった。それと同様のものと思って本書を読んでみたのだが、かなり失望した。ここに収められたどの作品にも文学性は無いし、「怪奇趣味」の面でもほとんどの作品は物足りなかった。怪奇好きな傾向は確かに見られるのだが、怪奇小説としては追い込みが弱く、結局は探偵小説として落ち着く。
多くの作品は、アイディア勝負ですっきりと書かれており、何だか江戸川乱歩の作風に酷く近いように思った。が、似ているのだけれども、乱歩の作品に漂うあの「いかにも嘘くさい、人工的な感じ」は弱く、横溝の作風はやはり語りが上手で、どこか江戸時代の戯作をも思わせるような闊達さがあるのだ。逆に、江戸川乱歩のあの人工性とは何だろう、と気になってくる。
探偵小説としては、やはりこの時期はまだ未熟な感じがして、戦後の金田一耕助ものへと発展してゆく手前の状態を示している。
そんな感じで、何やら未熟さばかりが目立ってしまった。読む前から過度に期待しすぎていたのかも知れない。 -
大好きですね、こうゆう雰囲気の怪奇探偵小説。
横溝さんは、乱歩とはまた違うんですよ。それがそそるですわ。
こうした短篇集は大歓迎。