道草 (角川文庫)

  • KADOKAWA
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041075883

作品紹介・あらすじ

留学帰りの健三は仕事に忙殺され、妻子を思いやる余裕もなく日々を過ごしていた。
ある日、彼のもとへ絶縁したはずの養父・島田が金の無心にやって来る。かつての恩義や見栄のため、頼みを断れない彼に嫌気がさす身重の妻。
しかし意固地な二人は話し合うこともせず、すれ違う。
腹違いの姉からも経済的支援をせがまれ、健三の苦悩は深まる。そんな中、妻は出産を迎えるが……。
分かり合いたい、分かってもらいたい、けれども分かり合えない二人。

互いへの理解を諦めきれない夫婦の姿を克明に描く、漱石後期の名作。

感想・レビュー・書評

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  • 自伝的小説というのを耳にして読了。
    夏目漱石は、父が年老いてからの子であり、幼少期は実家から出され、親が何回も変わったとか。晩年になってから、その養父母がお金の無心に来る話。全く快く思えないのに、どうしようもなく面会し、どうしようもなくお金を渡す苦々しい心内を吐露している。性質の全く異なる妻との心のすれ違いの描写も巧み。時代が変わっても、親戚、家族付き合いや、夫婦関係の歯車の噛み合わなさや、やりきれなさ、それでも過ぎていく日常は変わらないものだなと無常の観を感じる。

  • 913-N
    文庫

  • 複雑な家庭環境や留学から帰国後の経済状況など、漱石をより深く知ることができた。養父母や異腹の姉、妻の父までもお金の無心にやってくるとは、深い孤独を抱えてしまうのも頷ける。そして、妻との間の埋まらない溝。漱石好きだけど、妻という立場で関わるのは厄介そうだな…

  • ◆読書記録1冊目
    ◆No.044

  • “「世の中にはただ面倒臭いぐらいな単純な理由で已めることの出来ないものが幾何でもあるさ」”

  • 漱石晩年の自伝的小説。縁の切れた元養父に薄気味悪い存在感があり、金をたかる目的でじわじわ近寄る様はひとつの読みどころ。これを縦軸とすると、横軸は夫婦間のすれ違い。小説を通じて、この2要素に、著者がいかに神経を使ったかが伝わってくるようだった。主人公は元養父を含むあちこちからの金の無心にずるずる応じるが、この辺は読んでいてやるせなく、それが当時の人情なりつき合い方だったのだろうかと奇異な感じがした。100年前の小説ならではの読後感なのだろう。

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著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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