野々山女學院蟲組の秘密 (2) (角川コミックス・エース)

  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041075999

作品紹介・あらすじ

順調に人間の感情=“蟲”を喰べていく蜘蛛の子・やつめ。優しいカズサとの交流が、やつめに良い変化を齎していた。そんな中、以前にトラブルがあった正塚高校の女生徒がなぜかやつめをターゲットにしていて!?

感想・レビュー・書評

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  • 競い合う蜘蛛の子は、網を張るのもじれったく。

    感情が「蟲」の形を成す世界ではかくして、二つ名もしくは「擬人化」のような形でその人と蜘蛛の人となりを知ることができる。そんな世界のこの漫画、昭和の趣が色濃く懐かしく胸鳴らす。
    「スケバン」や「放課後の喫茶店」という言葉の魔力が現役だった時代と考えれば、元号が令和に入った今時分、さらに嬉しさ、楽しさ、懐かしさを増す頃合いですね。

    主人公ふたりが通う女学園のレギュラー陣も段々と出揃って横同士の人間関係に頬をほころばせるようですが、それはそれと本筋が張られはじめます。

    まずは病弱な青年の形を取った蜘蛛の子「ユウレイグモ」の「夕霧レイジ」の登場と退場。
    学校と並んで人々の思いが巡る場所「病院」に網を張った彼の存在は、恋情を寄せた女学生の記憶とともに消えてしまいました。

    ……そんな、王道の切なさをもった導入で一人目が落とされてしまう、そんな二巻のはじまりです。
    一巻のレビューで語れなかったところの補足ですが、作中で競争し合う「蜘蛛の子」のサポート兼お目付け役の名称が「お地蔵様」ってところが面白いですね。

    まず、各地に像が設置されることで複数人いたところで違和感はないのがひとつ。
    それに地蔵菩薩は子どもを救う本尊であることも「閻魔大王」が習合した一側面であることもあって問題ない。
    あと、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』。

    まとめ役っぽい喫茶店のマスターを含めたとしておそらくこの地区担当者は六名で、受け持つ蜘蛛の子は六名。
    一名が脱落したとして、バトルロイヤルとしては妥当な数ですが同胞を喰うのに前向きな者が現状一組しか見えない以上、どう転ぶか?

    時に、事態を動かした蜘蛛の子「足立たかね」の外見は大人びているのに内面はひどく幼く、この子ならこういう短絡な行動を取ってもおかしくはないと納得します。
    何を考えているかはわかりやすい。
    けれど、不思議でうつろな表情から繰り出される行動が、他の蜘蛛の子と比べることで今後への示唆になっていていい。同じ突飛でも、周囲を見るののとみないのとじゃあ、ねぇ。

    あと、アシダカグモは網を張らない徘徊性の蜘蛛なのですね。
    上は長ラン、下はホットパンツ、長い足を際立たせたデザインはヒロインのやつめと対を成すようで実に鮮やかです。
    蜘蛛の目立つ特徴と言えば、やはり目と脚なわけですから、やつめもそこは主張しているのですがやはり見映えます。

    情動がどこか未発達に思えたやつめも、次第に主人公のカズサに対して気遣いを見せるようになっていますし、この辺りの変化が見えてくるのも見どころかと。

    そして、蜘蛛の子ふたりの対峙にて、二巻は引きと相成ります。
    少し調べてみたのですが、この漫画は元は同人誌からスタートしたのですね。
    覗いてみただけで長く構想を温めていることがわかり、また今後の着想を画という形で先にいただけました。

    連載を追っているわけでもない単行本派ですが、まだ見ぬ蜘蛛の子に画をもって納得をいただけそうで三巻も楽しみですね。
    これは予感ではありません、確信です。

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