ギリギリ (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041076439

作品紹介・あらすじ

夫の一郎太が過労死し、寂しさを紛らわすかのように同級生の健児と再婚した瞳。脚本家の卵である健児は、前夫の母・静江と妙に仲が良く、それが瞳は気に入らない。ある日、瞳は家で健児が書いた脚本の草稿を見つける。静江の伯母の思い出話をもとに構成したというその脚本を読むうちに、自ら選んだ「再婚」という選択に疑問を感じるようになり……。妻、夫、元姑。奇妙な三角関係が織りなす極上の<人間関係小説>。

感想・レビュー・書評

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  • 夫を過労死で突然亡くした妻・瞳。その寂しさから、早々と再婚した相手の同級生・健児。前夫の母親。三人が、微妙な関係を保ちながら、日常生活を過ごしている。
    瞳は、多忙な仕事に追われている。健児は、まだ売れない脚本家、瞳のマンションに居候的佇まい。義母は、一人暮らしの不便さを、関係の薄い健児に頼る。亡くなった夫への、息子への気持ちをそれぞれ隠しながら。さんすくみではない、三つ巴でもないけれど。関係性が未確定のまま気持ちがすれ違っていく。
    健児さんのお人柄の良さが溢れている。妻のできない家事を支えて、義母の困り事を引き受ける。もう、多少何がずれたって、それで良いのでは?と思うんだけど、最後の亀裂が入る。
    後書で、この関係性を相克と表現していてなるほどと同意。でも、社会や家庭は、相克しあって成り立つのだあ。ちょっと、ストレスが残る。

  • 本当に失礼な話、あまり期待していなかったので、これは期待以上に面白かったです。

    夫を亡くした瞳と、再婚相手の健児、そして亡くなった夫の母静江。5つの連作短編集。それぞれのお話で語り手がこの3人の誰かに変わる。

    健児と静江が妙にウマが合うというか、仲が良く、それを快く思わない瞳・・・
    奇妙な人間関係における、それぞれの複雑な感情がとてもよく読者に伝わる作品だと思います。そもそもが人間関係も、個々の人間の感情も、どちらもとても複雑なもの。どちらにも、良いも悪いもない。でもどちらにも目をつぶって生きていけるわけでもない。登場人物がこうなった今の状況も、誰のせいでもないし、誰の感情が正しいとか間違っているとかない。それでも、それぞれがそれぞれに悩みに悩み、意図せず相手を傷つけてしまう。それが本当にうまく表現されていました。

    著者の原田さん、脚本家でもあるんですね。プロフィールを見て納得。何も文章なんて書けない私が、なんとなく上からで申し訳ないんですが、「上手だな」と思いました。なんというか、セリフと感情の描写のバランスが良い。説明しすぎず、でも大事なことは伝わる文章で、そしてセリフも一人歩きしてないというか。構成もとてもうまいと思いました。

    いい意味ですらすらとあっという間に読めました。「ん?どうゆうこと?」と立ち止まって読み直すことも嫌いじゃないけど、ここまですらすらと気持ちよく読めた小説が久しぶりだったのもあって、とても楽しめた読書でした。読了後に少し切ない気持ちになるのも良かった。この「少し」切ないがポイントです。「とても」切ないではダメなんです、本書は。

    「なんかいい小説ないかな?」と思っている人に、ぜひ!!と薦めたい一冊です。

    • yururi4525さん
      こんにちは^^
      面白そうですね(*'▽')
      読ませて頂きますね(^^♪
      ご紹介、どうもありがとうございます(⋈◍>◡<◍)。✧♡
      こんにちは^^
      面白そうですね(*'▽')
      読ませて頂きますね(^^♪
      ご紹介、どうもありがとうございます(⋈◍>◡<◍)。✧♡
      2023/07/18
    • URIKOさん
      >yururi4525さん

      コメントありがとうございます♪
      これ以外にも最近よく原田ひ香さんの作品を目にします。
      (まだまだ読めて...
      >yururi4525さん

      コメントありがとうございます♪
      これ以外にも最近よく原田ひ香さんの作品を目にします。
      (まだまだ読めていませんが・・・)
      yururi4525さんがどんな感想を書かれるか楽しみにしています!
      2023/07/19
    • yururi4525さん
      お返事、どうもありがとうございます(⋈◍>◡<◍)。✧♡
      読ませて頂いたら、感想を書かせて頂きますね^^
      お返事、どうもありがとうございます(⋈◍>◡<◍)。✧♡
      読ませて頂いたら、感想を書かせて頂きますね^^
      2023/07/19
  • 主人公、突然死した夫、元姑、そして再婚相手、登場人物が実に繊細で魅力的。
    静江さんの凜とした素敵な生き方、健児さんの優しさが心を温かくしました。結果的に結婚生活が続行する事なくお話しは終わりますが、けして失敗したという感じでなく、これから先の良い関係性を示唆しているように感じました。

  • なるほど。義理義理の関係だから、題名が『ギリギリ』なのね。しかし、それだけでなくて、それぞれがギリギリの感情を持っていてって意味もありそうだなぁ。。題名だけでも深い。
    とても、難しい題材の小説なのでは?と思ったし、どこに着地するんだろう?と読んでいった。章ごとに物語の視点が変わるので、それぞれの感情がストレートに伝わってくる。それぞれがとても人間的だ。
    巻末の解説にもあった『人間は脆い部分を持ちながら、一方でどれほどぺしゃんこになっても立ち上がってくる強さも併せ持っている』っていうのに納得。原田さんの文章からヒシヒシと伝わってきた。

    そして、結局、人を救うのは人なんだなぁとも改めて。
    ちょっと切ない感じで終わってしまったけど、それぞれがまた幸せになってくれたらいいなと思わせるお話だった。

  • 亡くなった夫の母と、現在の夫との端からみたらちょっと首をかしげたくなる三人の関係。大きな事件が起こるわけでもないし、お互いに普通にやりとりをするのだけれど、心の中は様々な思いが渦巻いていて、読んでいて引き込まれる。
    それぞれの関わりや、亡くなった一郎太を通して、自分の思いに気が付いていく。
    自分に息子がいるからだろうか、「スカイプ」の静江さんの、息子一郎太を思う描写に涙が出た。
    タイトルの「ギリギリ」が「義理義理」だったとは。
    解説の仁木英之氏も書いておられるように、心の中に余韻が残る素敵な作品であった。

  • 本のタイトルの『ギリギリ』ってなんだろうと思いながら読みましたが最後の章で(遅いかもですが)納得しました。
    章ごとに複雑な関係性の三人からの視点で描かれていてそれぞれの立場に立って読むことができて良かったですし、亡くなった一郎太さんを中心にした三人の心の動きに共感することもできました。
    寂しさも感じつつでしたが、終始温かい小説でした。

  • 夫・一郎太が過労で急死して未亡人となった瞳。
    瞳の同級生で、脚本家の卵である健児。
    一郎太の母・静江。

    章ごとに各人の視点で描写される。
    読み始めは3人の関係性にとても違和感があったけど、段々3人の心情が理解できて、その気持ちに寄り添えるようになっていく感じが不思議だった。
    結末は哀しくもあり、前向きでもある。
    最後のシーン、別れ際に静江が言う「マイ・フレンド」。
    とても素敵だった。

  • タイトルの『ギリギリ』は、ある程度予測できていたけれど、やはりそうだったのかと。

    夫を亡くした瞳さん、息子を亡くした母親、夫を亡くした後の再婚相手の健二さん。
    それぞれの立場で、微妙な関係性を保っているが、危うさも持っている。

    子供に先立たれた母親、始めは、もっと瞳さんの気持ちを汲んであげてもと思ったけれど、だんだんと自身が強く立ち直るに連れて元嫁への真の思いを伝えるまでになってくれた。

    瞳さん、再婚や元夫の母親との関係に悩みながらも、必死に自分と向き合う選択をしたのは、エールを送りたい!

    いい人として描かれている健二さんの母親との対面で、素の部分も見えて良かった。

    これまで読了した原田ひ香作品とは、別の味わいが楽しめた。

  • ギリギリってそういうことだったのね。
    面白いシチュエーションだけど、瞳と健ちゃんの繊細さ、静江さんの典型的昭和の主婦の微妙な変化、きめこまやかに描かれていて、ますます原田ひ香さんが好きになった。

  • 久しぶりに読んだ原田ひ香さん。
    夫→妻→妻の元夫(死別)の母親→妻→夫の目線で書かれる全5章。
    盲目からの脱却。
    文庫本を読んだのだけれど解説を読んで「だから彼女の本は映像が頭に浮かびやすいのか!」ということを知ることができました。

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著者プロフィール

1970年神奈川県生まれ。2005年『リトルプリンセス2号』で、第34回「NHK創作ラジオドラマ大賞」を受賞。07年『はじまらないティータイム』で、第31回「すばる文学賞」受賞。他の著書に、『母親ウエスタン』『復讐屋成海慶介の事件簿』『ラジオ・ガガガ』『幸福レシピ』『一橋桐子(76)の犯罪日記』『ランチ酒』「三人屋」シリーズ等がある。

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