皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。

  • KADOKAWA (2019年2月27日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784041076682

作品紹介・あらすじ

あるとき、会議中に原さんが猛然としゃべりだした。とある鉄道の本について、熱く熱く語っているのである。「いや、そんな細かい部分、ここにいるだれもわからんがな」と呆気に取られつつ、私は深く納得した。
なーんだ、ただのオタクだ!
そこからなにがどうなって対談をすることになったのか、いまいち記憶が定かではないのだが、小説や天皇制や鉄道について、二人で好きなようにしゃべったのが本書だ。
私と同様、門外漢のかたにも、肩肘張らずにお読みいただける内容になったのではないかと思う。
――三浦しをん(「まえがき」より抜粋)
   *
三浦さんが女性作家として、時にびしっと本質を衝く意見や質問をされることに、思わずはっとさせられた。
「社会全体の中で女の人をどう位置づけるかは、学校教育も政治家も何も考えていないような気がします。」
「アマテラスは女性の神様ですが、その子孫であるとされる天皇家は、なぜ女系を採用しなかったんでしょうね。」
学者でない人々、とりわけ女性との対話を積み重ねることで、自らの学問が鍛えられてゆくことの大切さを、改めて思い知らされた次第である。
――原 武史(「あとがき」より抜粋)

感想・レビュー・書評

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  •  政治学者であり,なおかつ鉄学者である原武史さんと,小説家の三浦しをんさんの対談。
     哲学じゃないですよ。鉄学です。鉄道オタクです。
     三浦しをんさんも,オタク気質のある方です。

     5回の対談ですが,2016年6月から2018年8月までの間に,イギリスのEU離脱が決まったり,天皇が「生前退位」の意向を示されたりと,大変歴史的な出来事がありました。

     特に「生前退位」に関しては,原さんの専門分野でもあり,微に入り細に入り話されているのがとても印象的でした。一般庶民にはわからないことを,歴史的なことや,皇室のしきたりなど,様々な角度から話されていたのが印象的です。

     原さんの膨大な知識量と,その話を聞き適切な相槌を打ったり,ときには鋭く切り込む三浦さんの対談。お二方の丁丁発止のやり取りに,そうだったのか~と感心するばかりです。

     内容が濃すぎて,オイラの頭の中に入っていかないのは,オイラの頭が悪いだけ。
     濃さを伝えきれてないのも,オイラの語彙力が貧しいだけです。マジごめん。

  • 今まで読み逃していましたが、なかなか楽しく勉強になる本なので、お勧めします。

  • 原武史先生の自由なオタクぶりに感心した。同時に、専門家の話をきちんと受け止めつつ、自分の感覚や意見でしっかり渡り合うしをんちゃんって、なんてステキなんだろうと、あらためてファンになった。

    天皇について語ることって、週刊誌的興味以上のことはかなりデリケートだ。そこに果敢に踏み込んでいく対談なのだが、原先生が筋金入りのテツで、話はしばしばそっち方面に脱線、結果的にあまり構えずに読んでいける形になっている。我らがしをんちゃんがすごく勉強していることに感心するのだけど、あくまで実感から離れずに話が進んでいくのもいい感じだ。

    それにしてもまあ、皇室関連のエピソードで、え!そうなの?知らなかったーっていうことが次々出てきて驚く(昭和天皇が膵臓癌だったって周知の事実なの?)。「生前退位」をめぐる報道についての疑問など、言われてみれば確かに、ということも多く、考えさせられた。

  • もと日経新聞記者で、政治学者(皇室専門)、鉄学者(鉄道学)の原武史氏vs.よく読まれている作家・三浦しをん氏との平成時代終盤期における対談本です。昭和天皇崩御、「生前退位」の衝撃、「天皇陛下の象徴としてのお務めについて」のおことば(2016.8.8)、女系天皇と「国体」のこと、JR東武線の特急スペ-シアに乗って鬼怒川温泉での対談など、天皇の代替わりに当たって硬派の問答が展開されています。

  • 普段なら手に取らないテーマだが、三浦しをんちゃんが好きなので読んでみた。やはりわからないことが多々あったが知らない世界を垣間見れて良かった。

  •  意外と長い時間をかけて読了。三浦しをんさんと鉄道にひかれて手にとってみたものの、皇室関係が多くてなかなか容易に進まず……。
     そもそも昨年の12月に一般参賀に初めて行った時が皇居初めてだったので、あまり皇室関係ってなじみがなかった。だから、原さんの次から次へとでてくる皇室話がどれも新鮮で勉強になった。特に大正天皇=在位が短いという印象しかなかったので、逆に皇太子時代の、のびのびとしたエピソードに親近感がわいた(いや、もしかしたら今の上皇陛下もそば屋にふらりってことが?!)。

     4回目の鬼怒川遠足回が良い意味ではじけていておもしろかった。特に原さんの暴走(?!)の数々がw武里団地は大学時代に電車でしょっちゅう通過してたので、そんなにスゴいトコロとは知らず……。

     令和になってからの対談も少し気になるところ。

  • 皇室に興味なかったけど、歴史上の人物として見ると俄然面白くなるという発見。改元前に読めてよかった!

  • 2人のキャラは、面白かったけど、もう少し深く掘り下げて欲しかった。前に読んだ[松本清張で読む昭和史]の内容とよく似た部分もあった。

  • 『平成』天皇の生前退位と「おことば」に世の中(ワイドショー)が騒いだ当時の有り様を政治学者であり天皇研究の第一人者たる原武史と作家の三浦しをん(一般人として)の対談で振り返る。天皇制の明治、大正、昭和からの変遷を再認識する。東武ワールドスクエアに萌えたオマケもあり。

  • 政治思想史学者で鉄オタの原武史さんと三浦しをんさんの対談集。自分が皇室のことを本当に何も知らないんだなと思いながら読んだ。大本、日本会議、北朝と南朝、女性天皇と女系天皇などなど、三浦さんのツッコミと原さんのわかりやすい説明により、皇室と近代思想の知識が少しだけ深まった気がする。
    閑話休題的に随所にはいってくる鉄道話がおかしみ。

  • 発表当時ではないにしろ、ある意味リアルタイム(201911)に読むことができました。

    オタクの凄さと、斜めの位置だから言える意見。
    そして、みんなが意見を持たないと気付けば思惑通りに流れてしまうと考えさせられる。

  • 原先生の豊富な知識を
    三浦先生が どんどん引き出してくれて
    とっつきにくい話でも なかなか面白く仕上がってます
    出来たら最後に 令和になってからの
    対談が入っていたら よかったのにな と残念
    今なら もっと明るい話にも
    なった気がします

  • 三浦しをんの新作ってことで借りる。対談相手の方は初めて知ったけど。皇室のことって興味なかったから初めて知ることが多かったけど、なかなか面白かった。昭和と平成で違うとか、天皇夫婦が訪問しないとこがあるとか、女系がなぜダメなのかとか。あの震災の時、精神の人の見張り番に立たされたことを私は忘れない。これも天皇達より周りの人の意見なんだろう。忖度か。三浦しをんの意見は新鮮だったし、やっぱ皇室だって時代に合わせて変わらなきゃなんだろう。離婚したら皇室に戻れるかとか、仕事してた方がいいとか、未婚ではいられないとか。本当気の毒だよなー。そういう気づきを得たという意味で星4つ。

  • 対談本って読まないんだけど~2016.6.24通学の沿線風景~女官の世界~『源氏物語』は不敬か2016.8.2「生前退位」のご意向~女系天皇と「国体」~天皇の代替わり2016.9.9「おことば」の衝撃~蕎麦屋にふらっと入る自由~三島由紀夫、幻の計画2016.12.8コンパートメント車両~鬼怒川温泉~東武ワールドスクウェア2018.8.30「作詞:昭和天皇」~宮内庁詰めになる~平成の終わりに~ラベルに隠れて背表紙で判らなかったんだけど、三浦ってしをんか? と手に取ったら、三浦しをんだったので、読むことにした。原先生の指摘は正しかったのになぁ。蕎麦屋に…ってのは、大正天皇の気楽さのこと。作詞:昭和天皇…ってのは、山形県民の歌で、題は最上川。原先生ってのは中学から慶応大学を出て、新聞社で宮内庁詰めになって体調を悪くして退社して大学院に入り直して博士課程を中退して、天皇制を中心とする政治学者をやっていて、明学と放送大学の先生をしている、1962年生まれで、テツ学者(鉄道オタク)でもある

  • 普段政治学の本なんて手に取ろうともしないので、三浦しをんの名前を前面に出す判断は全くもって正しい。
    天皇と皇后のあり方から皇族女性の結婚の心配、一般社会での女性の立場までがつがつ突っ込んでいく三浦さんはさすが。
    原さんの鉄ぶりが面白い。
    松本清張の「神々の乱心」が読んでみたい。

  • いったい何の本やろ?と開いてみると、タイトルそのままでした!東武ワールドスクエアとか餃子とか、よいなあ。

  • 初読。図書館。しをんさんが自分のオタクジャンルを控えてひたすら原さんの皇室と鉄道のオタクぶりに耳を傾ける。ところどころでナチュラルな疑問をツッコミのように差し込む。皇室にはあまり興味はないんだけど、政治学者の原さんの語る皇室話は知らないことばかりで興味深かった。

  • 政治学者の原武史と作家の三浦しをんが複数回にわたって対談した内容を収録した一冊だ。
    タイトルの通り、話の内容は皇室にまつわる話が多く、そこに鉄道の話が混じり、あとはその周辺、ということで、テーマに馴染みがない項目が多く、なんとも驚くことばかり。

    そもそも皇室にあまり興味がなかったため、昭和天皇が母親である貞明皇后に頭が上がらなかった、とか、大正天皇は没する前の五年間は摂政制がとられていて実権がなかった、とか、はーそうなの、と初めて知ることばかりだった。

    平成天皇の生前退位がちょうど対談時に発表になったこともあり、NHKだけが独占で発表したのはなぜか、とか、陛下のおことばの裏にはこんな意味があるはずだ、とか、ものすごいテンションで語られていて、天皇の周りに陰謀渦巻くような話が頻出して圧倒されるというか、呆気にとられるというか。

    そういったゴシップと紙一重みたいな部分はいまいち馴染めなかったのだけれど、天皇制ってなんなんだろう、と、考えたことのなかった部分に自分の意識がフォーカスされたのは面白かった。

    三浦しをんが指摘しているけれども、自分もいっそ無邪気と言うほど当たり前のように、天皇は認知症になることもなく、天皇になる人がLGBTであることもないだろうと思っている。

    年頃になれば適切な異性と婚姻をし、子どもを設けられるものだという「イメージ」を抱いている。これだけ独身率が高まり、また性的マイノリティの人たちの存在が世間一般に認知されていても。

    天皇家に生まれたからには、健やかで、人格者で、頭もいい、そういうものだと思い込んでいる。

    残虐な嗜好を持つ人や、暴力衝動の強い人はいないと端から考えている。鬱になったり、何かに中毒になったり、異様な女好き、男好きであったりすることはないと思っている。

    それは、そういう「血筋」だからだ、と、言葉で突き詰めればそんな風に自分は思っているのではないか。

    これってすごく暴力的な妄信で、怖くないか。

    まるで天皇を生身の人ではないと思っているみたいだ。神格化されて、瑕疵がひとつでもあることを認めない、許さないような暴力的なまでの信仰。
    そういうものが、いつの間にか、自分の中にある。
    そのことに気づいて、驚いた。

  • 今旬の皇室の話題、三浦しをんさんの素直な疑問によくぞ聞いてくれたと感謝。それになんでも答える原氏の皇室オタクぶりに感動。勉強になりました。

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著者プロフィール

1962年生まれ。早稻田大学政治経済学部卒業,東京大学大学院博士課程中退。放送大学教授,明治学院大学名誉教授。専攻は日本政治思想史。98年『「民都」大阪対「帝都」東京──思想としての関西私鉄』(講談社選書メチエ)でサントリー学芸賞、2001年『大正天皇』(朝日選書)で毎日出版文化賞、08年『滝山コミューン一九七四』(講談社)で講談社ノンフィクション賞、『昭和天皇』(岩波新書)で司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『皇后考』(講談社学術文庫)、『平成の終焉』(岩波新書)などがある。

「2023年 『地形の思想史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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