小説講座 売れる作家の全技術 デビューだけで満足してはいけない (角川文庫)
- KADOKAWA (2019年2月23日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041077559
作品紹介・あらすじ
現役編集長が「作家デビューの実際」について語った特別講義収録で、現状分析に最適!
エンタメ小説界のトップを走り続ける著者が、作家になるために必要な技術と生き方のすべてを公開。
十二人の受講生の作品を題材に、一人称の書き方やキャラクターの作り方、描写のコツなど小説の技術を指南。さらにデビューの方法やデビュー後の心得までを伝授する。
文庫版特別講義ではweb小説やライトノベルを含めた今の小説界を総括。いかにデビューし、生き残っていくかを語り尽くす。
エンタメ系小説講座の決定版!
※本書は、単行本『小説講座 売れる作家の全技術 デビューだけで満足してはいけない』に掲載された「第二部 受講生作品講評」を未収録とし、「特別講義 大沢在昌&編集長座談会」「新人賞リスト」「文庫版あとがき」を新たに収録した文庫版です。
感想・レビュー・書評
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いくつかためになる箇所はあったものの、実作者の指南本は、どうも……と思うところもなくもない。自分が今求めているのは体系的な知識だなと思った。
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小説を書く身としては、凄く為になる本だった。
こちらはプロを目指す人向けの本だが、心構えや話の作り方、習慣付けなど参考になることが沢山だった。
自分も多くの本を読もうと思えた一作。 -
直木賞・吉川英治賞作家が小説家志望者たちへ行った講義録です。
1979年当時と比べ3分の1へ縮小する出版市場。他方ベテランはリタイアせず新人がなだれ込むようにデビュー。このような厳しい環境に身を投じようとする人へのアドバイスは書き方のテクニックのみではなく心構えにも及びます。プロの作家とはどういうことか、またデビュー後にどう生き残るかは出版業界のみならず他の業界で働く方へも示唆に富んでおります。
「100%の力を出し切って書けば、次は120%のものが書けるし、限界ぎりぎりまで書いた人にしか次のドアを開けることはできません。それを超えた人間だけがプロの世界で生き残っているんです。」
プロの世界で生きることは私のような会社員であっても参考になります。
ぜひご覧ください。 -
後半の批評ページは特に参考になった
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「売れる作家の全技術」というタイトルですが、面白い小説を書くためのノウハウが凝縮された本であるため、小説家を目指していない方にとってもオススメの一冊です。以下、参考になったテクニックをいくつか。
・文章力を鍛えるために、一人称視点で書くこと。視点が限定されるため情報が一点からしか入らず、表現に制限がかかる。その中でどこまで読者に情報を提供し、物語を作れるかの力試しになる。
→一人称視点と三人称視点で表現の型を変える必要があるということですが、自分が文章を読む・書く上でそれらを全く意識していなかったことを痛感しました。
「私は頬を染めた」という表現は、自分の顔は自分で見ることができないため三人称視点の言い回しであり、一人称視点なら「頬が熱くなった」としなければいけない、など、言われてみればなるほどと気づかされます。実際、講義を受けている受講生に一番多いミスがこの「視点ミス」でした。正確な文章を書くために、自分も気を付けていきたいと思います。
・登場人物の性格や年齢と、思考を合わせる。小学生~高校生なのに変に大人びた考えだったりすると不自然に映る。逆に、地の文は幼すぎず大人の表現にすること。
→主人公が小学生なのに「絵にかいたような幸せ家族だった」というような、大人びた思考や物の見方をするのは不自然であるということ。これ自体は一人称視点や回想の場面でよくありそうな表現の仕方ですが、後述する「登場人物が実在するかのように書く」という観点からすると齟齬が生じてしまいます。
・主人公、ヒロイン、悪役は強いキャラクターにする。
→この鉄則、面白い作品は大体当てはまってますね。肉体的強さというよりも「アクの強さ」。善人ばかりではなく悪人を、平々凡々な主人公ではなく山あり谷ありの主人公を配置するほうが、読者がグッと引き込まれます。
・主人公にどんな変化を起こさせるのかということを意識してストーリー作りに取りかかること。魅力的なキャラクターが居てこそストーリーはいい物になる。徹底的にキャラを作り込もう。そうすれば自然とストーリーを動かしてくれる駒になる。
→著者の大沢さんは口を酸っぱくして「キャラクターを作り込め」と言っています。実際、ストーリーとキャラクターは不可分のものであり、役を徹底的に練って魅力的なキャラを作れば、ストーリーもより魅力的なものに変わっていきます。
・キャラクター表を書いてみる。役のキャラクターを台本に書かれていない部分まで、より具体的に、リアルに、あたかも実在しているかのように、はっきりとした個性を持って生活しているかのように描く。それが物語を面白くする。
→この「見えていないところでも生活しているように」がかなり難しいです。2人の登場人物の視点を交互に行き来するような物語を書いていると、片方の視点で動いているときもう片方の行動が止まってしまっていて、気づいたら2人の行動に何日間か大きなずれが生じているといったことがあります。それを防ぐために、キャラの生活や行動、思考までも作り込む必要があります。
ちなみに、ジョジョの作者である荒木飛呂彦さんもキャラクター表を付けているらしいです。
・小説の登場人物は論理的でなければいけない。信条と違う行動やいつもと違う振る舞いをしたら、そこには行動を変えるに至った、一貫性のある理由がなければ駄目。
→この約束を破っている作品、最近読んだミステリー小説でありました。登場人物の支離滅裂な行動によって謎を深めているため、全てが解き明かされても全然すっきりしませんでした。
・地の文で性格を描写しない。「彼は正直な男だ」と書くのではなく、ある出来毎に対する行動や誰かとの会話を通して、読者に「この男は正直だ」と思わせる。大変な作業だが、人物描写で楽をしてはいけない。
→これも物凄い大変です。書いてるうちにどうしても楽してしまいたくなる。人物の見た目や雰囲気をそのまんま描写して「こういう男なんです」で終わらせたくなってくる。でも、男なら行動で語らなければ野暮ってもんですね。
・読者にどんな楽しみを提供するかを意識する。そうすると物語の作り方は2つになる。
①変化を読ませる。この先主人公はどうなるのか、というハラハラドキドキ。
②謎を解き明かす。心の中に秘めた謎や行動のナゾを解明する。
優れた小説には必ず謎がある。謎をどのように物語に置いて行くかがプロットの鍵であり、「作品の核になる謎は何なのか」をはっきり自覚すること。書き始める前に、この小説の読みどころ、読ませどころは何なのかを、自分の中で定義しておく。
→これもなるほどと納得しました。傑作小説を思い返してみれば、種類の差こそあれ必ず謎を解き明かすストーリーになっています。しかも一つではなく複数の謎を配置し、起承転結に沿っていくつかの山を配置しています。
【以下、本書のメモ書き】
作家になるために大切な4つのポイント
①正確な言葉を使う→怪しいと思ったらすぐ辞書を引く
②書き終わったら、自分の原稿を時間を空けて読み返す。これが一番重要。冷静な目で文章表現に間違いがないか見つめる。
③毎日書く
④手放す勇気を持つ
一人称視点で書くこと
→視点が限定されるため、情報が一点からしか入らず、表現に制限がかかる。その中でどこまで読者に情報を提供し、物語を作れるかの力試しになる。「表情を曇らせる」「頬を染める」など、三人称ではOKだけど一人称ではNGな表現もあるぞ。
登場人物の性格や年齢と、思考を合わせる。小学生~高校生なのに変に大人びた考えだったりすると不自然に映る。逆に、地の文は幼すぎず大人の表現にしよう。
出すだけでなく入れることも忘れない。書いたら今度は、「この映画をもとにどういう小説を作ろうか」「このネタを自分はどうアレンジするか」を考えて、アイデア帳を持ち歩く。
【強いキャラクターの書き方】
キャラクター表を書いてみる。役のキャラクターを台本に書かれていない部分まで、より具体的に、リアルに、あたかも実在しているかのように、はっきりとした個性を持って生活しているかのように描く。それが物語を面白くする。
ストーリーが進むにつれ主人公は変化していかなければ駄目。物語の頭と終わりで主人公に変化のない物語は、人を動かさない。
主人公にどんな変化を起こさせるのかということを意識してストーリー作りに取りかかること。魅力的なキャラクターが居てこそストーリーはいい物になる。徹底的にキャラを作り込もう。そうすれば自然とストーリーを動かしてくれる駒になる。
どうしたらそれが出来る?→人間観察をしよう。電車の中で周りを見て、この人はどういう生活をしているのか想像してみる。
小説の登場人物は論理的でなければいけない。信条と違う行動やいつもと違う振る舞いをしたら、そこには行動を変えるに至った、一貫性のある理由がなければ駄目。
地の文で性格を描写しない。「彼は正直な男だ」と書くのではなく、ある出来毎に対する行動や誰かとの会話を通して、読者に「この男は正直だ」と思わせる。大変な作業だが、人物描写で楽をしてはいけない。
【会話文の作り方】
「隠す会話」...沈黙やわざと論点をずらすような会話のこと。ロールプレイングゲームのように、Aを手に入れるためのXを手に入れるためのYを手に入れる、というように、会話を一度で終わらせずに、物語を複雑化し、話を前に進めてくれる。
また、キャラクターになりきりながら台詞を考え、それをメモしてみる。
【プロットの作り方】
どんな楽しみを提供するかを意識する。そうすると物語の作り方は2つになる。
①変化を読ませる。この先主人公はどうなるのか、というハラハラドキドキ
②謎を解き明かす。心の中に秘めた謎や行動のナゾを解明する。
優れた小説には必ず謎がある。謎をどのように物語に置いて行くかがプロットの鍵。「自分の核謎は何なのか」をはっきり自覚すること。書き始める前に、この小説の読みどころ、読ませどころは何なのかを、自分の中で定義しておく。
次に、通過点を決める。起承転結などで構わない。起から承へはこのぐらいで、転から結にはなだらかな山を二つほど作り一気に行こうなど、チェックポイントを決めてやる。
また、長編を書くときには最初に大きな話を作って、そこに小さな具材を乗せて整える方が良い。逆だとこじんまりとした話にしかならない。
【小説にはトゲが必要】
物語をひねるときは、後半でひねってはダメ。登場人物が色々出てきて、一人ひとりのキャラクターが分かって来たぐらい(1/3ぐらいで)でひねりを加える。
ではひねるとは何か?→主人公に対してツラく当たる。簡単に目標を達成させないこと。主人公に残酷な物語は面白い。
最後に大切なのは、小説にトゲを作ること。トゲとは読んだ人の内にさざ波を立てるもの。作者自身の個性。「だから何?」で終わらせない小説。
大きく物語を膨らませられない...→有り得ない状況、先の考えられない状況に物語を持っていってしまう。わざと自分を追い込む。そこから大逆転を考える。
答えを出さずに作った問題は、自分でも考えもしなかったような答えが出てくるため、読者を驚かせる力を持つ。
【優れた文章と描写を磨け】
・良いリズムの文章は正確な文章。正確な文章は的確な言葉選びから生まれる。
・描写に緩急をつける。大切な情報とどうでもいい風景描写を同じ厚みで塗らない。そのシーンで一番大事なものは何なのかを意識する。
・描写は「場所」であり、「人物」であり、「雰囲気」である。どこで、だれが、どんな状態にあるのかを説明するのがメインであることを念頭に置く。
・声に出して読もう。音読は正義。
【長編を書くには】
・主人公、ヒロイン、悪役は強いキャラクターにする。
・冒頭シーンが一番大事。読者を引きつけるために何度も書き直そう。逆に、ラストシーンは書いてるうちに自然と決まることが多い。
・クライマックスは2度作る。小説とは謎を解き明かす行為の繰り返しであり、大きな謎一本では中だるみする。
・最後まで書いても「出来た!」と思わずにプラスアルファを考えてみること。そのためには時間を置いて読み直す
・「自分はこの小説で何を読ませたいのか」ということに自覚的になること。
共通して言えるのは、読者は今までに見たこともないような話を欲しがっている。これまでにはいなかったような人間を登場させること。主人公にもっと魅力を持たせること。ストーリーを練って、起承転結を作ること。
【小説家になった後のために】
デビューを焦る必要はない。デビューは5年後、10年後でもいいが、プロになったら後は締め切りに追われながら書くしかない。作家になるよりも作家であり続けるのが一番苦しい。何年か勉強し続け、アイデアを膨らまし、人生経験を積んだり回り道をしたりした後にデビューしても遅くはない。 -
視点人物、つまり語り手である「私」や「僕」や「俺」の個性をどれだけ読者に伝えられるか
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一人称の情報の入口は一点しかない
一人称というのは視点がひとつしかない。情報が一点からしか入らないということは物語を動かす上でかなり足枷になる
プロットの作り方
「変化を読ませる小説」
「謎を解き明かす小説」
理想とするのは、変化を読ませていって最後に謎が解ける
「謎」というものをどういうふうに物語の中に置いていくのかが、プロット作りの大きなカギになる
自分の書く謎は何なのかをはっきり自覚する
冒頭で主人公を印象づけろ
描写は、天地人動植