小説講座 売れる作家の全技術 デビューだけで満足してはいけない (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 98
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041077559

作品紹介・あらすじ

エンタメ小説界のトップを走り続ける著者が、作家になるために必要な技術と生き方のすべてを公開。
十二人の受講生の作品を題材に、一人称の書き方やキャラクターの作り方、描写のコツなど小説の技術を指南。さらにデビューの方法やデビュー後の心得までを伝授する。
文庫版特別講義ではweb小説やライトノベルを含めた今の小説界を総括。いかにデビューし、生き残っていくかを語り尽くす。
エンタメ系小説講座の決定版!

感想・レビュー・書評

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  •  物を書くということは「出す」行為です。出し続ければ、自分の中がすぐに空っぽになってしまいます。必ず「入れる」ことをしてください。小説でも、漫画でも、映画でも、芝居でも、音楽でも、何でもいい、自分を刺激し続けることを忘れないでください。
     すぐれた音楽を聴いて、「この音楽を小説にするとしたら、どういう小説になるだろう」と考える。映画を観て、「自分ならこのネタをどうアレンジするか」と考える。あるいは、「この感動をどう小説に活かすか」、そういう気持ちを常に持って、他の人の創作物に触れる習慣をつけてください。誰も指摘する人はいませんでしたが、私はロマン・ポランスキー監督の『フランティック』という映画を観て、東京生まれ、東京育ちのサラリーマンが大阪でトラブルに巻き込まれるというアイデアを思いつき、『走らなあかん、夜明けまで』という小説を書きました。
     それから、アイデアをいつも身近に置いておくこと。何か思いついたら必ずメモをする。夜見た夢でも構いません。私の『天使の牙』という小説は、「自分が女性で、脳を移植された」という夢をもとに書いた作品です。夢というのは目が覚めた瞬間は覚えていても、半日もするとほとんど忘れてしまいます。枕元にアイデア帳、トイレにもアイデア帳を置いて、思いついたらすぐメモする。そういう習慣もつけてください。メモしたことをすぐに使う必要はありません。とにかくどんどん溜めていくこと。溜めていって、あとでそれを振り返った時に、「これとこれをくっつければ面白い話になる」ということもありますから。

     本当に嫌な奴というのは、私もなかなか書けませんでした。冷酷なマシンのような殺し屋は書けるけど、嫌な人間を書こうとすればするほど嘘っぽくなってしまう。なぜかというと、嫌な人間というのは、実は自分のことを嫌な人間と思っていないんですね。例えばクラゲさんの『蛍』の藤岡も実に嫌な男だけど、自分では魅力的だと思っているし、子供のいじめにしても、本人たちはいじめている自覚はないことが多い。人は皆、自己正当化する生き物ですからね。私はよくヤクザを書きますが、「てめぇ、ぶっ殺すぞ」みたいな単純な奴はあまり怖くない。それよりも、「本当はこんなことしたくないけど、やらなきゃ兄貴にぶっとばされるからさ、勘弁してくれよぉ」と謝りながらドスで刺して穴掘って埋めちゃう奴の方がよっぽど怖いものです。最初から嫌な人を書こうとしないで、嫌な人に見えなかった人間がだんだん嫌な奴に見えてくる、嫌な人にならざるを得ない感じになっていく、読者の中にじわじわ嫌な感じが広がっていく、そういう風に書いてみてください。難しいですけどね。これは小説家の秘中の秘のテクニックですから(笑)。

     まず大事なのは、数字や固有名詞に頼らないでその人物を描写することです。「大沢在昌、五十五歳、サラリーマン」というような書き方は絶対にしないこと。これではキャラクターのふくらみに欠けるし、この人物が些細や役なのか重要な役なのかが読者に伝わりません。なぜこのような描写になるかというと、頭でキャラクターを作っているからでしょう。キャラクターを作るときは、できるだけ具体的に思い浮かべてください。では、具体像とはどういうことか? それは「雰囲気」です。
     例えば、みなさんが初めて私と会ったとして、いきなり五十五歳とはわかりませんよね。「中年の男性で年齢は五十代、……五十前後かな。サラリーマンっぽくはない。なんだか偉そうにしゃべっているなぁ」などの印象を持つかもしれない。そういうところから「雰囲気」は作られているわけです。ただし、目についたものすべて、紺のジャケットにストライプのシャツを着て、淡いベージュのチノパンを穿いて……とベタベタ書いていっても、その人物を描いたことにはならないということはおわかりだと思います。服装や顔の造作、髪型などは実は大した問題ではない。人物を描くためにもっとも必要なのは、その人物を明確に喚起させるような言葉を探すことです。

     現実の人間というのは、実に非論理的な存在です。甘いものが嫌いだから普段は食べないという人でも、ふとした弾みで隣の人が食べているクッキーをつまむこともあるでしょう。しかし、小説の中で「甘いものは嫌い」と言っていた登場人物がケーキを食べるシーンが出てくるとしたら、そこには絶対に理由がなくてはいけません。小説の登場人物は論理的でなければいけないし、その論理には一貫性が要求されます。もし論理が崩れるとすれば、そこには必ず理由がある。物語には理由が必要だということです。

     作家になるということは、コップの水なんです。コップの中に読書量がどんどん溜まっていって、最後にあふれ出す、それが書きたいという情熱になるわけです。コップ半分くらいで書き出しても、空いた部分は埋められません。いつか必ず無理が来る。もちろん、コップの大きさは人それぞれですし、たくさん本を読んでいれば必ずいいものが書けるというわけではありませんが、ストーリーの引き出し、人物造形の引き出し、サプライズの引き出し、そういうものはたくさんの本を読んだほうが身につきます。

     面白い小説というのは、ミステリーであれ、恋愛小説であれ、どんなジャンルの小説でも、主人公に対して残酷です。主人公に優しい小説が面白くなるわけがない。『ロミオとジュリエット』はまさに典型で、主人公たちに残酷なすれ違いがあるからこそ、あの物語は面白いんですね。ロールプレイングゲームも同じ。主人公が雑魚キャラを倒して倒して、一生懸命レベルアップして、最後にダンジョンでボスキャラを倒す。苦難の道があるからこそ、プレイヤーは「やった!」という達成感を味わえるのです。
     小説の読者は、ゲームのプレイヤーと違って、ただ読むだけで努力する必要はありません。主人公のレベルアップも最後の目標達成もそこにいたるまでの試練も、すべてを演出して読者に提供するのが作者の仕事です。主人公がどれだけ頑張ったか、どれだけ耐えたか、どれだけ苦しんだかを、読者に見せてあげてください。
    「ひねり」がない、面白くない小説というのは、主人公の頑張りが足りない、主人公に我慢をさせてない小説です。もっと我慢をさせなさい、もっと頑張らせなさい、泣かせなさい、苦しめなさい。私は世界で一番「鮫島」という主人公に恨まれている人間だと多くの読者から思われています。「毎回毎回、どうしてあんなにひどい目に遭わせてるよなと自分でも思います。それはなぜか。鮫島に酷いことをすればするほど、みんな買うんだもの(笑)。「主人公に残酷な物語は面白い」。これ、テストに出ます。絶対に覚えておいたほうがいい。残酷であればあるほど、主人公が苦しめば苦しむほど、物語は面白くなる。
     もちろん「そんな小説は嫌だ。もっとふわふわっとして心が温まるような小説が読みたい」という人もいるかもしれない。でも、一見ふわふわっとして心が温まるような小説でも、よくよく分解してみると、目に見えない形で主人公に残酷な運命が訪れ、目に見えない形で主人公はそれを克服しているものです。「物語の最初と最後で主人公に変化のない小説は面白くない」という話にも繋がるポイントです。

     長編になればなるほど、書き手はたくさんの情報を書き込まなければいけないと思い込み、その人の顔や着ている服の様子を細かく書いてしまいます。でも、「年齢、職業、服装、顔の造作で人物描写は成立しない」ということはすでにお話ししたとおりです。ためしに皆さんの親しい友達、あるいはお子さん、奥さん、旦那さん、ペットなどをひと言で表現してみてください。「うちの父は面白い人です」「私の父はとんがってるんです」「うちの旦那さんは、真面目が服を着ているような人ですね」……まあ、これはあまりいい表現じゃないけど(笑)、とにかく、よく知っている人だからこそ、ひと言で表現できるんですね。知らない人を説目しようとすると、どうしても言葉数が多くなる。でも、どんなに多くの言葉を費やしても、その人を説明したことにはなりません。皆さんが自分の作ったキャラクターのことをよくわかっていれば、服装や顔立ちなどの説明を一切しなくても、その人物がしゃべる場面、歩く場面、誰かと街で出会う場面を書くだけで、「ああ、この人はきっとこういう人なんだろうなあ」と読者の中にそのキャラクターのイメージが立ち上がってくるはずです。そんな描写ができればベストです。

     これを例えば、鮫島がサウナの入口をくぐる場面、「入口で料金を払って入る。ここはホモのハッテン場である。鮫島は聞き込みのためにやって来たのだ……」という説明で始める方法もあるでしょうが、私は一切説明を省きました。冒頭シーンの説明はマイナスに働くことが多いからです。ものすごく変わった設定や極端に常識から離れている設定の物語の場合は、その世界の説明から入らなければいけないケースもあるでしょうが、現代社会を舞台にした普通の小説であれば、冒頭シーンはなるべく説明しないほうが面白くなります。

     読者が小説を読むということは、理解をしたいということなんですね。登場人物の行動原理が理解できるかどうかということが、読者がその小説に入っていけるかどうかという部分と深く関わっている。主人公、敵役、恋人、すべての人間の行動が、「この人だったら、こう行動せざるを得ないだろうな」と読者に理解されること。登場人物全員を100パーセント読者に理解させろということではありませんよ。そんなことは不可能だし、100パーセント理解できる人間しか出てこない小説なんて面白いわけがない。ただ、どんな人間であっても10
    パーセントくらいは理解できるというキャラクターを設定すること。そして、自分がその登場人物の立場に立って、なぜそんな行動をとるかと聞かれたときにちゃんと答えられるだけの理論武装をした上で書くことが大切です。

  • 視点人物、つまり語り手である「私」や「僕」や「俺」の個性をどれだけ読者に伝えられるか

  • 一人称の情報の入口は一点しかない
    一人称というのは視点がひとつしかない。情報が一点からしか入らないということは物語を動かす上でかなり足枷になる

    プロットの作り方
    「変化を読ませる小説」
    「謎を解き明かす小説」
    理想とするのは、変化を読ませていって最後に謎が解ける
    「謎」というものをどういうふうに物語の中に置いていくのかが、プロット作りの大きなカギになる
    自分の書く謎は何なのかをはっきり自覚する

    冒頭で主人公を印象づけろ

    描写は、天地人動植

  • 小説に限らずストーリーテリング全般に役立つものであるような気はするし、ビックリするような技術が書いてあるわけではないんだけど、別れ道は、なんだって結局のところ、しっかりアウトプットできるかどうかというところにあるんだよね。

  • 正直なところ、小説を書く予定もないので、実用性としては評価のしようはないのだけど、小説の作りという事に興味があれば面白いかも。

  • 大沢さんの作品は読んだことないが、自作の例を中心に、わかりやすく小説を書くために必要な項目と心構えを伝えてくれたと思う。

    とりわけプロット&新人賞に関しては個人的に悩んでいたこともあり、丁寧な方法論は書いてない(書けない)が、大沢さんの考えをちゃんと書いてくれていたのは良かった。

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著者プロフィール

大沢 在昌:1956年、名古屋市生まれ。79年『感傷の街角』で小説推理新人賞を受賞しデビュー。代表作に『新宿鮫』(吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞長編部門)、『無間人形 新宿鮫IV』(直木賞)、『パンドラ・アイランド』(柴田錬三郎賞)、『海と月の迷路』(吉川英治文学賞)、近著に『爆身』『漂砂の塔』『帰去来』『暗約領域』など。

「2020年 『天使の牙 上 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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