- 本 ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041077832
作品紹介・あらすじ
天文九年の師走。毛利元就の居城、安芸国(現広島県)の郡山城に尼子軍が攻め寄せようとした時、一万の援軍が颯爽と現れた。まだ二十歳の美しき軍師の名は、陶隆房(晴賢)。毛利家を従える大内義隆の重臣にして、援軍の大将を務める男だった。見事な戦略により尼子軍を打ち破った隆房は、毛利元就の盟友として、親交を深めていく。だが、隆房の敵は、外部だけではなかった。下克上の悪名を背負った武将の
儚き半生を描く、長篇歴史小説。
感想・レビュー・書評
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■陶隆房(晴賢)の興亡物語
■登場人物で人間らしく描かれているのは、陶隆房、毛利元就、弘中隆包。女性が登場人物として出てこない
■陶晴賢は最期に自分の首をこの人物に預けるものだろうかと疑う。そのように寂しい人物だったのだろうか
■毛利元就は優れた戦略家、謀略家、知略家として描写
■作者は悪名を残した人物にもその人物なりの大義があったといいたいのだろう だが理解が難しかった詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
室町の名家大内氏の重臣でありながら、止むを得ず主家を裏切り戦国の表舞台に出るも、かつては盟友であった毛利元就によって儚い命を散らした陶晴賢。
主人であった大内義隆を討ちながらも、養子を立て大内の名の下にいるという、下克上の悪名を背負う事を回避したいというスタンスの陶晴賢と、安芸の国人から這い上がってきた毛利元就とでは、根本的な覚悟が違ったということか。
しかし、クライマックスの厳島合戦が結構あっさりとしか描かれていなかったのが残念。 -
陶晴賢の一生を題材にした小説。
敬愛していた主君が汚名を残さない為に謀反を起こして自分が悪名を被るという、一見矛盾した動機にも見えるがそこに至るまでの過程を通じて陶晴賢を作者独自の解釈で描いている。また当時の領国経営の実態や家臣団との派閥争いなど合戦以外にも見所が多い。毛利元就との関係が変化していく様は時代の流れに適応する者とそうでない者の比較になっていたと思う。 -
<厳島の戦い>で毛利元就に敗れた陶晴賢(晴賢を名乗っていた時期は短く、長く「陶隆房」を名乗っていた)を主人公に据えた小説だ。
他所の勢力との戦や家中の抗争に臨む様子が描かれる。華々しい合戦の他方で、あらゆる手段、諜報合戦、謀略の応酬となる家中の抗争もなかなか凄い…そして盟友のように歩みながら、反目し、争うことになる毛利元就の視点で描かれる部分も在る。
主家を実質的に簒奪し、そして敗れ去ったことで「悪名」が残ったが、そこに至るまでに何が?なかなかに読み応えが在った。 -
中国地方の雄大内家(義隆)、の家老:陶隆房(晴賢)が尼子氏との戦いの中武勇を捨て遊楽に勤む姿を憂い、力を付けた盟友-毛利元就(外様)との内通で悪名覚悟で主の義隆を亡き者にして大友家に出した義隆の養子の大友晴英を戻し担ぎ大内家の再興に努めるも当初お互いに認め合った毛利元就との考え方の違いから袂を分かち戦う。戦国時代西国の毛利元就の成上りを学べた子の戦略結婚での小早川、吉川との繋がり、家臣に福原貞俊が居た様だ。
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陶晴賢、と毛利元就の小説と言った方が正確かもしれない。それぞれが求めたものが違った故に、途中から道が別れてしまった。それが必然だったのであろうが、やはり哀しかった。
歴史は勝者によって書かれる。敗者は、ボロクソに書かれる。しかし、若くして万単位の用兵をなし、大内家を取り仕切った陶晴賢は、やはり凄かった。はずである。
もっと評価されるべき人物が、歴史の中に埋められてしまっている。再発掘し、再び日を当てることで、何か見えてくるものがあるのかもしれない。
著者プロフィール
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