ドクター・デスの遺産 刑事犬養隼人 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041077948

作品紹介・あらすじ

死ぬ権利を与えてくれ――。安らかな死をもたらす白衣の訪問者は、聖人か、悪魔か。警視庁VS闇の医師、極限の頭脳戦が幕を開ける。安楽死の闇と向き合った警察医療ミステリ!

感想・レビュー・書評

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  • 犬養シリーズ第4弾!
    テーマは、重〜い…「安楽死」。
    日本では、認められてないだけに、罪になる。
    なので、逮捕する!
    しかし…苦しんでる人を楽にする…

     警察官としての職業倫理
         VS
     父親としての娘に対する気持ち

    2つの想いに悩まされる犬養さん。
    確かに、日本では認められてないけど…認められてなければ罪になるから、捕まえるんとあかんけど…
    と悩む気持ちは分かる…
    安楽死した本人の同意の上なんで、誰もが納得という状況なんで…
    変に延命処置もなぁ〜とは思う。私の身内でも経験有るけど、QOLが著しく低下してんのに…そのまま続けても…と個人的には思う。但し、これは色んな考えがあって、それはそれで尊重すべきで、自分の考えが、決して正しい訳ではないと思う。

    相変わらず、中山さんなんで、どんでん返しありで、面白かった!
    ラストは、色々な葛藤があったんやろうな…犬養さん…(/ _ ; )

  • 何が正しいのか、テーマが切実でした。自分がその瀬戸際に立った際に悩まず、感情を選ぶと思う。

  • 刑事犬養隼人シリーズ4

    難病を抱える娘を持つ、捜査一課・犬養隼人刑事が、20万円で、安楽死を任務として遂行する黒い医師を追い詰める。

    ある日、通信司令センターに一本の電話が。
    相手は、小学生低学年の男の子で「悪いお医者さんを逮捕して」と。
    突然やってきた医師が、父親に注射を打って、直後に父親は、息を引き取ったという。

    犬養刑事が、捜査を進めるうちに、母親が「ドクター・デス」と名乗る人物のサイトにアクセスしていたことが、判明する。

    -----

    要介護患者を抱える者にとっては、本人と家族を苦しめる精神的苦痛と、経済的困窮は、筆舌に尽くしがたい。
    安楽死を、個人の権利として認めるのか、じっくり向き合う時期が来ているのかもしれない。

  • 刑事犬養隼人シリーズ第四弾
    テーマは安楽死

    ストーリとしては、
    様々な死について、ドクターデスと呼ばれる医師が絡んだ安楽死であること、そのドクターデスを追い詰めていく展開です。
    ドクターデス=安楽死は悪なのか?
    職業倫理にも悩む犬養達
    一方で、ドクターデスの強い信念
    ドクターデスは何者なのか?

    犬養たちのトラップも難なくかわし、逆に犬養たちを追い詰められます。

    そして、明らかになるドクターデスの正体。
    しかし、そこからのクライマックスが重い。
    ドクターデスの信念の裏側にあった事件
    そして、最後の最後、犬養達の前で突きつけられた選択。

    一部海外では認められている安楽死ですが、介護や終末医療についての問題も含み、考えさせられます。

    映画見てみたい!
    とってもお勧め

  • 安楽死をテーマに、本人・近親者が死を望んだら死亡(毒殺)させて良いかどうかの重い内容。猟犬のような優秀な刑事と抑止役の女性刑事が殺人者(?)のドクター・デスを追って行く。犯人を罠に掛けて逮捕かと思ったら裏を掻かれる。近づいたら離れる、最後は著者得意のドンデン返し。そっちが犯人か、と呆れてしまう。逮捕の場面は、あり得ないような設定。犯人が何故安楽死に手を染めたかのエピソードもあり、読後感が重い。

  • 犬養隼人シリーズ。安楽死の是非が主なテーマ。
    苦しみながらも生き永らえさせること。
    苦しみから死を持って解放させてあげること。
    身近な大切な人がこの2択を迫られた時、どういう決断をするのか。
    考えさせられる作品でした。
    中山さん作品真骨頂のどんでん返しは薄め。
    でも読了後重くのしかかる気持ちにさせられる。
    そんな作品でもありました。

  • 日本で認められている安楽死は、「所謂消極的安楽死と呼ばれている終末期医療だけ」であり、「患者に毒物を注入するという所謂積極的な安楽死は認め」られていない。

    このタブーに挑戦するかのように、ドクター・デスを名乗る人物が安楽死を請け負うサービスを始めた。その料金はたったの20万円。

    ドクター・デスは果たして、苦痛に苦しむ患者の救世主なのか、或いは快楽殺人者にすぎないのか? 犬養、明日香のコンビが犯人を追う。

    本作、事件解明の仕方にやや不自然さを感じた(安城邦武殺害の真相などは、よく突き止められたなと思った)ので、まあ星三つかな。そもそも、子供からの110番通報「悪いお医者さんが来て、お父さんを殺しちゃった」で捜査一課が現地にでばってく冒頭のシーンからして違和感あったんだよな。

    安楽死についてちょっと考えてみた。末期患者本人が望むなら、安楽死を積極的に認めるべきなのは明らか(異論を唱える人は、自分が苦痛に苦しむ姿を想像できないのかな?)。未だに積極的安楽死が認められないのは何故なんだろうな。

  •  この小説が映画化され、既に上映されていることなど露知らず、普段は見ないテレビのCMで知ることになり手に取った。
     物語は、ある日突然子供の声で警視庁の通信指令センターに通報があった。
     『ねえ、聞いてよ。悪いお医者さんが来て、お父さんを殺しちゃったんだよ』
     受けた女性警察官は、『またあなたね、昨日も同じ電話をしてきた子でしょう』と、医師が患者を殺しに来たというのは、あまりにも妄想じみていると思いながら、医療過誤の可能性もある。刑事部捜査一課の高千穂明日香に内線で回した。裏付けを取るため、明日香はあまりやる気がない犬養隼人を連れて通報者の自宅に向かいインターホンを鳴らしてみるが反応はない。貼り紙の末尾に斎場の場所が記されていた。

      〈馬籠健一 葬儀式場〉
     既に受付が始まっていた。遺族は二人で、故人の妻小枝子・八歳の馬籠大地である。犬養は二手に分かれて事情聴取したところ、重要な点で相違があり、まもなく通夜が始まろうとしているにもかかわらず、司法解剖に回したのだ。勿論、式会場は大混乱に陥ったのは言うまでもない。
    検体の血液を調べ、異常に高いカリウムの濃度を示しており、病気由来のものではないことが分かった。犬養は小枝子に尋問したところ、安楽死を請け負う闇サイトにアクセスし依頼していたのだ。サイトの管理人は「ドクター・デス」と名乗っている。
     この小説が興味深いのは、ドクター・デスの仕事が迅速で丁寧・低価格、勿論患者本人の同意も取っている。そして捜査を惑わす心理的なトリックの設定だ。施術は患者に痛みがなく、安らかに終末を迎えることが出来る点で被害者がいないこと。誰も奴等を恨んでいない。しかし日本の現行法上、安楽死は認められていない。情状酌量の余地はあっても殺人及び自殺幇助は免れない。判例を鑑みれば極刑も然り。作品は読者へのメッセージ性が高く、今や社会問題になっている死生観ではなかろうか。最後の章を読み終えて犯人の世界観に納得してしまう。
     最後に本書から引用
     『あなたは家族と法律のどっちが大事なのかしら』
    『被害者が不在なら犯罪が成立しないというのは、単なる言い逃れでしかない』
    『その観点こそがあなたの限界なのよ』
     生命倫理の見直しと法律の整備を切に願うばかり。

  • ドクター・キリコを思い出した。手塚治虫の傑作「ブラックジャック」に出てくる黒い医者だ。
    中山七里は多種多様な作品を書いているが、その中でも犬養隼人シリーズは作者が気になる社会問題を提起する場にしているような気がする。
    「切り裂きジャックの告白」では臓器移植。
    「ハーメルンの誘拐魔」では子宮頸がんワクチン。
    そしてこの「ドクター・デスの遺産」では安楽死。
    医療に関する社会問題を作中で賛否両論展開し、読者に「貴方はどう考える?」と提起しているように思える。中山七里の作品にはシリーズ化しているキャラクターがいるが、毒島や御子柴に語らせるよりはまだ「普通」に近い犬養隼人に語らせる方が良いと思ったのかは分からないが。
    安楽死について作中で色々な意見が出るが、根本はただ一つだけ。日本で合法化されているか否か、それだけだ。どんなに人間としての尊厳や死ぬ権利を叫んだところで現在は違法で殺人にしかならない。今後、状況が変わって合法になれば罪に問われない。それだけだ。
    手塚治虫がドクター・キリコを初めて登場させたのは1974年。そこから約50年経過した今も尚、日本では安楽死が合法化されてはいない。

  • 中山七里の作品で犯人を予想できたのは初めてでした。
    少々ありきたり感も否めませんが、やっぱりストーリーは面白いです。

    犬養隼人は主人公には珍しく、人情派刑事とでもいうのか、罪に対しての迷いがありました。
    扱うテーマが安楽死だからですかね?

    他の犬養隼人シリーズではまた違う側面が見れるでしょうから、読んでみたいです。

    11/13に、綾野剛主演で映画公開されます。
    楽しみにしています。

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著者プロフィール

1961年岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ルビ:ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作目。本シリーズは「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~(ソナタ)」としてドラマ化。他著に『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『能面検事の奮迅』『鑑定人 氏家京太郎』『人面島』『棘の家』『ヒポクラテスの悔恨』『嗤う淑女二人』『作家刑事毒島の嘲笑』『護られなかった者たちへ』など多数ある。


「2023年 『復讐の協奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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