めぐり逢いサンドイッチ

  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041079430

作品紹介・あらすじ

「思い出のとき修理します」シリーズの著者が贈る、優しくも愛おしい物語

忘れていた幸せの味、思い出してみて。子供のころの記憶に苦しむOLや、父の再婚に悩む少女──迷える人々の心を、絶品サンドイッチが癒やします。

大阪の靱公園にある『ピクニック・バスケット』は、開店して三年を迎える手作りサンドイッチの専門店。蕗子が、姉の笹子──笹ちゃんのこの店を手伝いはじめて、半年になる。笹ちゃんは店を訪れた人たちの、具材への思いや記憶、そして物語をやさしくパンにはさんで、誰が食べてもなつかしいような新しいような、そんなサンドイッチをつくっているのだ……。おっとりした姉としっかり者の妹、店を訪れる個性的な人々──常連客の小野寺さんやパン職人の川端さん──が織りなす、優しくも愛おしい物語。

感想・レビュー・書評

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  • 『サンドイッチは不思議だ。ふだんの味がちょっとよそ行きになる。外へ持ち出して、親しい人と分け合って食べたくなる』

    サンドイッチ専門店<ピクニック・バスケット>を舞台に人々の悩みに寄り添う物語。
    タマゴサンドというとゆで卵をマヨネーズであえたものというイメージが強いのだが、関西では玉子焼きを挟んだものらしい。<ピクニック・バスケット>の一番の売れ筋商品もそのタマゴサンドで、『塩味の玉子焼きが、バターとケチャップを塗ったパンにはさんである』そのサンドイッチもなかなか美味しそうだ。最近はこのタイプのタマゴサンドも時折見かける。

    玉子焼き、キャベツ炒め、コロッケ、カレー…馴染みのあるメニューほど慣れ親しんだ味と違っていると違和感があるというのは分かる。
    玉子焼きと一口に言っても甘いもの、甘さを控えたもの、だし入り、様々な具を入れたもの…家庭によって様々。それを否定されれば辛いし傷付く。
    また慣れ親しんだ味を作ってくれた人が亡くなってしまったりしてもう二度と味わえないとなるのも辛い。ありふれたメニューだからこそそれを目にする機会が多いからこそそのたびに辛いことを思い出す。

    <ピクニック・バスケット>のメニュー開発・調理担当の姉・笹子は一見ふわふわしてつかみどころのないキャラクターだが、『ピンクの玉子焼き』『何か隠し味のあるキャベツ炒め』『衣だけのコロッケ』というなんともふわっとしたヒントからなぞ解きをしたりそこから一歩踏み出すサンドイッチを作り出す。
    一方の売り子と帳簿付け担当の妹・蕗子は真面目でしっかり者のキャラクター。だが時折懸命過ぎて空回りしている感もある。それでも姉のため<ピクニック・バスケット>のお客さんのため、何とかなぞ解きをしようと奔走する。

    ほかにもちょっと癖のある常連客・小野寺の正体が明らかになったり、『一斤王子』ことパン職人の川端の見た目とは裏腹な屈託が分かったり、最後には姉妹の意外な関係性が分かったりと深堀りされていく。
    川端の大叔母・徹子さんのユーモアは良いなぁと思った。私もこの先入院するときは(あるかどうか分からないが)クイーン・エリザベス号に乗ると言ってみたい。

    ちょっとハラハラ、でも収まるところに収まって、良いお話だった。
    個人的にはあまり総菜パンやサンドイッチは食べないのだが<ピクニック・バスケット>のサンドイッチは『親しんだ食べ物が、とびきりよそ行きに、おしゃれしたように見える』らしい。いわゆるおしゃれ系のサンドイッチなのだろう。最後に出てきたカレーのサンドイッチ、かなり固いペーストにしないと零れ落ちそうだしふんわりした食パンよりトーストしたパンの方が合いそうだが、どんなサンドイッチなのだろうか。

  • 笹ちゃんと蕗ちゃん姉妹のサンドイッチ屋さんのお話。本当は、血の繋がりのない姉妹だけど血の繋がり以上のものが2人にはある気がしました。
    まわりの人たちも温かく読んでいて優しい気持ちになれました。
    卵焼きのサンドイッチ、作ってみようかな?私は、甘い卵焼き派です。

  • 2019年5月角川書店刊。書き下ろし。シリーズ1作目。タマゴサンドが大きらい、ハムキャベツの隠し味、待ち人来たりて、はんぶんこ、おそろいの黄色いリボン、の5つの連作短編。大阪の靱公園近くのサンドイッチ店を営む笹子、蕗子姉妹とご近所の人達の人情仕事ストーリー。読み終えて気づきましたが、これってちょったしたミステリー仕立の展開になってるんだ。誰?、何故?、で始まって、そうだったんだ、そうなのかも知れない、というパターン。で、その過程と結果が面白くて楽しいです。

  • 他の方の感想にもあるように、ほっこりほのぼのとゆっくり時間の流れる素敵なお話でした。
    姉妹で開くサンドイッチ屋さん。
    2人を囲む、優しい人達。
    決して、邪悪な雰囲気なく、気持ちよく読める内容でした。
    ただ、あまり展開がなく淡々としているので、たまに寝落ちしちゃうかも。

  • 大阪の靱公園の近くで、小さなサンドイッチ屋さんを営む、清水笹子、蕗子姉妹。店名はピクニック・バスケット。

    近所の食パン専門店のパンを使った、美味しいサンドイッチが並びます。姉の笹子は、調理担当。おっとり、ふんわりした感じで、でも芯はしっかりしている。そんな姉のちょっと頼りないところを、妹の蕗子がサポートしています。笹子は、通常のサンドイッチの他に、お客さんの小さい頃の食べ物の思い出話を聞いて、それをサンドイッチにしてくれます。思い出は、楽しいことだけでなく、大人になっても、心に刺さったトゲのように、苦しいものもある。もちろん、完全に同じ味にはならないけれど、思い出のサンドイッチを食べた人達は、心が癒されたり、当時、自分では気付いてはいなかったものに、気付かされたりする。味覚から思い出が蘇ること、よくありますよね。とても素敵なサンドイッチ屋さんです。特に、第3話の「待ち人来たりて」がいいお話でした。

  • ほっこりするお話ばかりで暖かい気持ち。
    美味しいと優しいとちょっとドキドキもあり、面白かったです。
    実はあまり主人公の姉妹に思い入れできないまま読み進めていましたが、最終章でぐっと2人が好きになりました。
    最初の章で姉妹の話が出れば、もっと親近感を持ちながらすべてのお話をどっぷりとこの世界観に浸かり、楽しめたかもしれないなーと思うことでした。

  • 2023年の最新作を読み始めようとした時にシリーズものだと気がついて、これは「めぐり逢い」から読むしかないと。大正解だったかな。妹の蕗ちゃん目線で描かれる、姉の笹ちゃんが作るサンドイッチが愛おしすぎて、おなかがすきまくりだった(笑)嬉しいことも辛いこともサンドイッチにふわりと包みこむ物語がとても好きになっていって徐々に明かされる姉妹の生い立ちにも感動だった。脇を支える小野寺さんや一斤王子も絶妙で盛り上げに一役も二役もかっていたように思う。
    とても大好きなほっこりシリーズにめぐり逢えた。私自身もめぐり逢いだったのかもね。

  • 姉妹で営むサンドイッチ屋さんのお話
    姉妹のまわりの人もいい人ばかり、猫ちゃんも登場で穏やかな気持ちで読めました
    こんなお店が近くにあったら通いたいな
    特にツナとレンコンのサンドイッチ食べたいです

  • 大阪の靭公園にあるサンドイッチ屋「ピクニック・バスケット」。近所の人気パン屋さんのパンに様々な手作りの具材を挟むサンドイッチはとても美味しそうで、近くにあったら通ってしまうだろうな。
    しかも具材は、来てくれるお客さんの思い出からヒントを得て作られるものも。
    臭覚や味覚は記憶と密接に繋がっているし、食べ物で思い出が甦ることも確かにあるだろうなぁ。
    続編も楽しみ。

  • 思い出とサンドイッチ。
    優しいお話で、良かった。
    懐かしいサンドイッチというのが、またよかった。
    続編も読んでみたい。

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著者プロフィール

三重県出身。『パラダイスルネッサンス楽園再生』で一九九七年度ロマン大賞佳作に入選しデビュー。「伯爵と妖精」シリーズ、ベストセラーとなった「思い出のとき修理します」シリーズ、「異人館画廊」シリーズ、『がらくた屋と月の夜話』『まよなかの青空』『あかずの扉の鍵貸します』『ふれあいサンドイッチ』など著書多数。

「2023年 『神さまのいうとおり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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