めぐり逢いサンドイッチ

著者 :
  • KADOKAWA
3.58
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本棚登録 : 1561
感想 : 123
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041079430

作品紹介・あらすじ

「思い出のとき修理します」シリーズの著者が贈る、優しくも愛おしい物語

忘れていた幸せの味、思い出してみて。子供のころの記憶に苦しむOLや、父の再婚に悩む少女──迷える人々の心を、絶品サンドイッチが癒やします。

大阪の靱公園にある『ピクニック・バスケット』は、開店して三年を迎える手作りサンドイッチの専門店。蕗子が、姉の笹子──笹ちゃんのこの店を手伝いはじめて、半年になる。笹ちゃんは店を訪れた人たちの、具材への思いや記憶、そして物語をやさしくパンにはさんで、誰が食べてもなつかしいような新しいような、そんなサンドイッチをつくっているのだ……。おっとりした姉としっかり者の妹、店を訪れる個性的な人々──常連客の小野寺さんやパン職人の川端さん──が織りなす、優しくも愛おしい物語。

感想・レビュー・書評

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  • 『サンドイッチは不思議だ。ふだんの味がちょっとよそ行きになる。外へ持ち出して、親しい人と分け合って食べたくなる』

    サンドイッチ専門店<ピクニック・バスケット>を舞台に人々の悩みに寄り添う物語。
    タマゴサンドというとゆで卵をマヨネーズであえたものというイメージが強いのだが、関西では玉子焼きを挟んだものらしい。<ピクニック・バスケット>の一番の売れ筋商品もそのタマゴサンドで、『塩味の玉子焼きが、バターとケチャップを塗ったパンにはさんである』そのサンドイッチもなかなか美味しそうだ。最近はこのタイプのタマゴサンドも時折見かける。

    玉子焼き、キャベツ炒め、コロッケ、カレー…馴染みのあるメニューほど慣れ親しんだ味と違っていると違和感があるというのは分かる。
    玉子焼きと一口に言っても甘いもの、甘さを控えたもの、だし入り、様々な具を入れたもの…家庭によって様々。それを否定されれば辛いし傷付く。
    また慣れ親しんだ味を作ってくれた人が亡くなってしまったりしてもう二度と味わえないとなるのも辛い。ありふれたメニューだからこそそれを目にする機会が多いからこそそのたびに辛いことを思い出す。

    <ピクニック・バスケット>のメニュー開発・調理担当の姉・笹子は一見ふわふわしてつかみどころのないキャラクターだが、『ピンクの玉子焼き』『何か隠し味のあるキャベツ炒め』『衣だけのコロッケ』というなんともふわっとしたヒントからなぞ解きをしたりそこから一歩踏み出すサンドイッチを作り出す。
    一方の売り子と帳簿付け担当の妹・蕗子は真面目でしっかり者のキャラクター。だが時折懸命過ぎて空回りしている感もある。それでも姉のため<ピクニック・バスケット>のお客さんのため、何とかなぞ解きをしようと奔走する。

    ほかにもちょっと癖のある常連客・小野寺の正体が明らかになったり、『一斤王子』ことパン職人の川端の見た目とは裏腹な屈託が分かったり、最後には姉妹の意外な関係性が分かったりと深堀りされていく。
    川端の大叔母・徹子さんのユーモアは良いなぁと思った。私もこの先入院するときは(あるかどうか分からないが)クイーン・エリザベス号に乗ると言ってみたい。

    ちょっとハラハラ、でも収まるところに収まって、良いお話だった。
    個人的にはあまり総菜パンやサンドイッチは食べないのだが<ピクニック・バスケット>のサンドイッチは『親しんだ食べ物が、とびきりよそ行きに、おしゃれしたように見える』らしい。いわゆるおしゃれ系のサンドイッチなのだろう。最後に出てきたカレーのサンドイッチ、かなり固いペーストにしないと零れ落ちそうだしふんわりした食パンよりトーストしたパンの方が合いそうだが、どんなサンドイッチなのだろうか。

  • 笹ちゃんと蕗ちゃん姉妹のサンドイッチ屋さんのお話。本当は、血の繋がりのない姉妹だけど血の繋がり以上のものが2人にはある気がしました。
    まわりの人たちも温かく読んでいて優しい気持ちになれました。
    卵焼きのサンドイッチ、作ってみようかな?私は、甘い卵焼き派です。

  • 2019年5月角川書店刊。書き下ろし。シリーズ1作目。タマゴサンドが大きらい、ハムキャベツの隠し味、待ち人来たりて、はんぶんこ、おそろいの黄色いリボン、の5つの連作短編。大阪の靱公園近くのサンドイッチ店を営む笹子、蕗子姉妹とご近所の人達の人情仕事ストーリー。読み終えて気づきましたが、これってちょったしたミステリー仕立の展開になってるんだ。誰?、何故?、で始まって、そうだったんだ、そうなのかも知れない、というパターン。で、その過程と結果が面白くて楽しいです。

  • 大阪の靭公園にあるサンドイッチ屋「ピクニック・バスケット」。近所の人気パン屋さんのパンに様々な手作りの具材を挟むサンドイッチはとても美味しそうで、近くにあったら通ってしまうだろうな。
    しかも具材は、来てくれるお客さんの思い出からヒントを得て作られるものも。
    臭覚や味覚は記憶と密接に繋がっているし、食べ物で思い出が甦ることも確かにあるだろうなぁ。
    続編も楽しみ。

  • 開店して三年を迎える『ピクニック・バスケット』は、手作りサンドイッチの専門店。姉妹と店を訪れる個性的な人々との物語。妹の視点で物語は描かれる。ラストは姉の視点も描かれる。
    最近感じることだが、私自身は実は食べることに興味がないけれど、食べ物の本を手にしている。たぶん、食べ物にかかわる話はきっと生きることに向き合っているひとの話だからだろうなあと。この物語は「思い出のとき修理します」シリーズの著者が描いた作品ということで手に取りました。読みやすかったです。そして読後は前向きになれる作品でした。
    ----本文より---------------------------------
    「おいしいものをつくれるのって、人を幸せにする才能といっていいだろう。」
    「ううん、その人の話は、わたしのサンドイッチのイメージに重なっただけ。日常の、誰もが食べたことのあるものって、その人だけじゃなくてほかの誰かにとっても、楽しかったり悲しかったりする食べ物かもしれないじゃない。わたしはそれをふかふかのお布団でくるむの。そんな食べ物がつくれたらいいなと思うから。」
    「わたしは、夢を見るのが苦手だ。これといった才能もないし、どうしてもやりたいこともない。高校も大学も入れるところへ行き、就職も高望みはせず、最初に内定をくれたところに決めた。分不相応なことを望まなければ、大きな失敗もしないはずで、それでよかったのだ。でも、人生には、想像もしなかった落とし穴がある。ぬるく生きていると、考えてもいなかったことが起こったとき、どうしていいかわからない。そういうときに強いのは、きっと突拍子もない夢を見られる人なのだろう。」
    「彼にとって世の中、型にはめられるものなんてひとつもないのだ。絵本作家なのはたまたま、今日は紙飛行機をつくって、明日は何をしているかわからない。たぶんそれだけのこと。自分が何者か、これからどうするのか、きっちり決まっていないと不安な私とは違う世界にいる。」

  • 思い出とサンドイッチ。
    優しいお話で、良かった。
    懐かしいサンドイッチというのが、またよかった。
    続編も読んでみたい。

  • 日常生活の謎や人々の気持ちの行き違いをほどいてくれるサンドイッチ屋さんの物語。
    お店のオーナーの姉、笹子さんが謎を解き明かすが、妹の蕗子さんの目線で物語が語られていく。

    お店を切り盛りする姉妹の事情や、一斤王子の想いだったり、常連客の小野寺さんの関係が今後どうなっていくのか気になる。

    出てくるサンドイッチがどれもおいしそう。
    こんな可愛らしいお店があったら、毎日通ってしまう。

    イラストがかわいい。

  • サンドイッチ屋さんが舞台で、とても仲良しの姉妹が営んでいる。
    姉の笹子が店主でおっとりしてるようでしっかり者。
    半年前から手伝ってる妹蕗子。元気いっぱいでムードメイカー。
    食パンを卸してるイケメンパン屋さん川端や、常連で何かと気にかけてくれる小野寺さん。

    いろんな登場人物の食の思いをサンドイッチの中に挟んで、みんなを幸せに導いてくれる、心が温かくなるお話しでした。

  • 笹子さんの優しさがいっぱい詰まったサンドイッチが食べてみたくなった。
    たまごサンド、ゆで卵のと卵焼きのとどちらも好き。
    サンドイッチって何を挟んでも美味しいよな〜

  • サンドイッチ食べたくなっちゃう。
    でも、玉子焼きのサンドイッチは苦手〜。

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著者プロフィール

三重県出身。『パラダイスルネッサンス楽園再生』で一九九七年度ロマン大賞佳作に入選しデビュー。「伯爵と妖精」シリーズ、ベストセラーとなった「思い出のとき修理します」シリーズ、「異人館画廊」シリーズ、『がらくた屋と月の夜話』『まよなかの青空』『あかずの扉の鍵貸します』『ふれあいサンドイッチ』など著書多数。

「2023年 『神さまのいうとおり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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