根津権現裏 (角川文庫)

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本棚登録 : 10
感想 : 1
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041079607

作品紹介・あらすじ

貧窮と性病、不遇と冷笑の中で自らの¨文士道¨を貫いて書き、無念に散った、無頼の私小説家・藤澤清造。歿後弟子・西村賢太がその代表作を伝える。

感想・レビュー・書評

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  • 前回の読書会課題図書、
    苦役列車から寡聞にして未読だったこちらを。
    実は当の読書会でお借りしていたうちの1冊。
    校訂は西村賢太さん。

    とりあえずコチラを読んで、苦役列車の文体がなぜあんなにも古めかしく、難読漢字がたくさん出てくるのかがわかった。
    めちゃくちゃリスペクトしてるのね。

    読む前から、内容は陰鬱で救われない私小説であるらしいと聞いていたので、心して読みはじめたんだけど…

    …めっちゃ面白いと思ってしまった。

    確かに救われない。
    貧困と病気に生活を苛まれ、
    似たような境遇の友人が自ら縊死した原因についてああでもないこうでもないと模索するという、本当に陰鬱な内容。
    特に最後の方は著者の頭の中の言葉がダラダラと垂れ流されているような…、
    思考の行ったり来たりを追想しているような、
    なんとも重苦しく、正直、
    「ああ苦痛だ、長いなぁ」とも感じたものだった。しかも私小説だからたぶんどんでん返しとか劇的なカタルシスも期待できない状況で、ラスト10頁ほどを読み進めるのは結構しんどかった。

    だったらどこが面白かったのか。

    たぶんこれはわたしの性格の悪さゆえなのかもしれない。
    とことん不幸で、不平不満を綴っているブログとか、某SNSとかを興味本位で読んでいる感覚に近い。
    西村賢太さんが惹かれたのは絶対そこじゃないと思うんだけど、わたしにとっては貧困や病気、絶望感を持った人間の思考を覗き見るのは罪悪感もあるけどどうにも興味深いな、と感じてしまうのだ。
    自分は絶対そうならないとは思わないけど、そうなった時に自分ならどう考えるかという予行演習をしているみたいな。
    いや、やっぱり興味本位な部分が大きいな。
    途中に出てくる極端なルッキズムにも嫌悪感というよりも新鮮さを感じた。

    それと多分この時代背景。
    大正時代くらいの小説が好きなので、この頃の東京の一端をライブ感ある文章で見られるのは単純に楽しい。

    それにしても、時々読みにくいと感じるところもあったけど、全体的に端正で直線的なわかりやすい文章は現代的な校訂があったとしてもかなり良く、そこに支えられて面白いと思わされる部分も大きかった。

    なんだかいろいろな感情がわいてくる味わい深い小説でした。読んで良かった。


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著者プロフィール

藤澤清造(1889・10・28~1932・1・29)
小説家。石川県鹿島郡(現・七尾市)生まれ。尋常高等小学校を卒業後に市内で働き始めるが、程なくして右脚に骨髄炎を患い手術、自宅療養の期間を過ごす。役者を志して1906年に上京。足の後遺症で断念したのちは各種職業を変遷する。『演芸画報』誌訪問記者時代に、同誌等に劇評や随筆を発表。1922年に長篇小説『根津権現裏』を三上於菟吉の尽力で書き下ろし刊行し、島崎藤村、田山花袋らの賞讃を得る。以降、精力的に創作を発表するも、作への不評が相次いで凋落。長年の悪所通いによる性病が因で精神に変調を来たし、内妻への暴力行為、彷徨しての警察への勾留等が続いた末に失踪。厳寒の芝公園内ベンチで凍死体となっているのを発見される。当初は身元不明の行路病者として荼毘に付された。


「2022年 『根津権現前より 藤澤清造随筆集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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