- Amazon.co.jp ・マンガ (178ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041080153
作品紹介・あらすじ
最強勇者・レオは、ボロボロ魔王軍に再就職!再建のため動き出した矢先、四天王の二人が脱走した! 数千年積み重ねた知識と教養を武器にまとめてイノベーション!…数千年?最強の秘密がついに明らかに!?
感想・レビュー・書評
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剣も魔法もすべて知ってしまった、それでも誰かを守る生き方しか知らなかったんだ。
メインキャラの男女比が均等で万人が手に取りやすいと思う小説『勇者、辞めます(略称:ゆうやめ)』!
そのコミカライズ二巻のはじまりです。
人の上に立つ心得を説くのが一人でなんでもできる勇者の仕事なのか? その疑問にはこれから答えていくとして。
酒の席にて、真摯に為政者としての本音を打ち明ける「魔王エキドナ」に応えようとする主人公「レオ」でしたが……。
半壊し再建途上の魔王軍は前途多難のようです。
冒頭で早速四天王ふたり、「無影将軍メルネス」と「竜将軍エドヴァルド」が同時に問題を起こします。
つまりは一巻で四天王の内、女子ふたりの課題が片付いたなら、今度は男子ふたりのターンというわけで。
まずは出奔しようとしているメルネスを捕まえ、話を聞くことにしたレオ。
コミュニケーションが苦手というあまりに等身大な理由から現実逃避をしようとした彼の問題を解決すべくウェイトレス姿にします。
……?
いえいえ、回答は理に適っていますし、なによりどこか似通った者同士、どこか通じ合うものがあってよかった。
あと女装姿は原作者のクオンタムさんに勢いで「男装女子」に設定変更しようかな? ってのたまわせるほどに素晴らしいものだったと言っておきます。
それと、ウェイター姿が堂に入ってるので気づきませんでしたが、レオ自身女装が似合いそうですね。
しかして線の細い少年の無防備な日常姿という、読者へ思わぬサプライズの後は、いよいよこの物語の本題へ。
一巻のワンページを開いて数秒、初見の誰もが見逃せないだろう「2060年 東京 6月」の真実についてレオ本人の口から明かされます。
「最初は弱かった」「十一体いたきょうだいはもういない」「今は一人でなんでもできる」「もはや敵すらいない」「だから自由だなんて笑っていても」。
……いくらでも箇条書きできそうですが、ネタバレ防止も兼ねて一部ですが抜粋しました、これほど虚しい「最強」があるんでしょうか?
レオが自分のことを第三者による俯瞰のような形でしか語れていないので、意識はあってもほとんど我の無い悲しい人としか語りようがないのがまた悲しいのです。
だからこそ、強烈な個性と自分勝手にも似たエゴの強さを持つ魔王と四天王に――。
そして、最後の四天王エドヴァルドに向けた当たりの強い荒療治を読者もまた受け入れられるのかなと思います。
ちなみにエドヴァルドの娘「ジュリエッタ」のデザインはコミカライズの方で実装ですね。
イラストが必要なギリギリのラインをすり抜けたのか、小説原作で見ることが出来なかったのは残念ですが、まさにイメージ通りでした。素晴らしい。
もちろん、頭を下げることも出来、快活に笑う姿が似合う父エドヴァルドも素敵な父だと言っておきます。
そして四天王の一段落の後は、情報ではなく心情を明かす丸々ひとつの説明回が挿入、実はここで泣きました。
漫画ならではの俯瞰した光景の中で、繰り広げられる、能面のような表情と、コロコロと変わる「エイブラッド」との表情のやり取り。
説明回のはずなのにものすごく胸に染みたのですよ。
そして、この回を挟んでの視線/視点誘導が実に見事でした。
クライマックスに向けて「勇者」から「魔王」に移っていく比重を、コミカルな中に表していると思えば、三巻で描かれる怒涛の決戦を前に笑ってばかりもいられないのですが、やっぱり笑いました。
笑いと言えば、話をわかりやすくすべく随所に挟まれる説明寸劇もいい仕事をしていますね。
ちびキャラな獣将軍リリがやたら目立っていることに顔をほころばせつつ、原作者同様思うのでした。
けれど、同時にそれは彼女ら彼らにも出番がまだまだあるということ!
次巻予告を見るに、原作小説二巻以降の内容を風都ノリ先生が描く目は大いにあるということです。
できうるなら、そのすべてをと願いつつ、一旦の〆となる三巻では鏡のようにすべてを写し取るレオ自身の願いを知ることが出来るのでしょうね。
願わくば、どうか彼の目撃者になっていただきたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示