今昔百鬼拾遺 河童 (角川文庫)

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  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041080450

感想・レビュー・書評

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  • 結末が悲しいお話だった。このやるせない感じ、あれだ、本編の方に似てるんだ。
    多々良先生が明後日の方角から語り出して確信をつくのは、京極堂と同類だと思う。多々良先生は迷走して蛇行するタイプで、京極堂は周辺からジワジワと中心に迫る、というか。二人で話してたらあっという間に日が暮れそう。読んでみたいような、読みたくないような。

  •  品がないのです、この小説は。
     ネタは河童ですから。尻子玉抜きますから。
     このシリーズ、前作で中禅寺妹シリーズなどと称しましたが、ちょっと違います。中禅寺敦子が兄に代わって謎を解き、呉美由紀が榎木津の代わりに事件を粉砕するという趣向となっておるのですな。
     前作『鬼』が昭和29年の春先で、いまは夏。『鵼の碑』と思しき「栃木の事件」は「事件なのかどうか、最後までわからなかった」ようなもので、もう解決したらしいのですが、今度は「東北の方の事件」がこじれているようなのです。それって『鵼の碑』のさらに次の作品ということでしょうかね。忙しそうな京極堂に相談するまでもない事件ということで、榎木津の下僕の探偵・益田が敦子に知恵を借りに来ます。
     その前に、美由紀とその級友たちの河童とはいったい何なのかという談義がかなり長く続きます。いかに河童が各地で様々に伝承されて、ひとつに像を結ばないかを、まあ、作者は披瀝したいのですな。もっとも作者も、というか美由紀も述べるように、河童なんていないわけですけれども。そして、その話題のもとになったのが、連続の覗き事件、しかも男を覗く事件だというのです。
     他方、敦子のもとにもたらされたのは、尻をむき出しにした連続水死事件の話。
     お尻お尻なのでありますが、水死体はあたかも河童に尻子玉を抜かれて溺れたかのように上がってくるわけです。
     舞台は浅草から房総半島の夷隅川に。河童に誘われて多々良先生が登場するので、にわかに話はコメディタッチになっていきますが、まあ、彼には何とか黙っていてもらいましょう。

     ときに、敦子は第五福竜丸事件の取材に行っていたなどという話題が出てきます。なかなか発表されない『鵼の碑』は、福島原発事故にからむ内容があるので発表できなくなったという伝説がネットに流布しておりますが、「栃木の事件」=『鵺の碑』は第五福竜丸事件と同じ時期ですなあ。ここで作者はネット情報の信憑性を示唆しているのか、ネット民をさらに撹乱しようとしているのか。

  • こちらも一日で読み終えた河童。鬼よりは軽い印象だった
    のは、コントのようなやりとりが多かったのと、多々良先生
    登場のおかげかな。一番楽しかったのは冒頭の女学生たちの
    河童談義だったりするので、やはり私は妖怪が大好きなの
    だろう。私が物心着く頃にはすでに河童は皿に甲羅で緑色
    だったような気がする。

  • 正直、京極堂と榎木津が出てこないシリーズなんて如何なものかと思っていたのだけれど思いの外、呉美由紀のキャラが濃いめで残念感皆無。
    やっぱり人間の心はこわいものと、改めて思う。見えないものだからこそ、強すぎる想いはきけんをはらむ。

  • 日本推理作家協会新会長 京極夏彦さん 怒涛の3社3カ月連続発刊「百鬼夜行」スピンオフ敦子&美由紀シリーズ第2弾は角川から河童。千葉県夷隅川からお尻を出した水死体が次々と、探偵、妖怪研究家などと謎に迫る。 河童といえば私的にはセクシーな黄桜酒造のコマーシャルです。

  • かっぱ カッパ 河童 。 頭の皿、鳥の嘴、亀の甲羅 。誰もが同じイメージだと思ってた。小倉トーストは全国にあると思ってたのと同じか?違うか。

  • 満足しました。
    冒頭部分でかなり満足しました。とても楽しい。女学生の会話の雰囲気がとてもよかった。女学生、女性の会話を書かせたら太宰、そして北村薫、と思っていましたが、ここにまた一人、素晴らしい書き手が現れたなあ、と思いました。
    登場人物がなかなか整理できずに「え~と、この人は……」とページを遡る事を何度か繰り返しました。死んでる人多いし、だから、会話の中だけで出てくる人、多いし。
    敦子さんがいろいろ語ってくれるかと思ったら、兄とは違うからなあ……、と納得してました。しかし、美由紀さん、カッコいいですねえ。前作に続いてカッコいいですねえ。
    このコンビ、とてもいいです。
    とにかく、ラスト、大満足で終わりました。
    しかし、どういう縁であんなに人が集まっていくのだろう?もちろん小説だからだろうなあ。この二人がいると事件がある、って、時々、いろんなところで読むセリフみたいな事件との遭遇具合だと思います。

  • 鬼に続き読了。
    今回出版社をまたいでの連続刊行とのことで、普段意識してなかったけど文字組が結構ちがって、おお…と思いました。

    今回凄い登場人物多いなと思ったらなんかキャンペーンの特典も含めた作品だったんですかね…?す、すごすぎる…。

  • 前回は〈鬼〉の話が核にあったので、今回も何かあるのかな、と思ってましたが、そこは特になく事件が進みます。

    呉さん、ほんとに千葉っ子だったのね、と。
    ま、薄いからしょうがないのですが、後半!彼のこととか集落のこととか、そこは中禅寺兄がかかわったら、とんでもなく掘り下げて長くなっただろうにな、とちょいと惜しい。

    あと益田と磯辺刑事のやりとりがかわいかったです。

    実名登場とは、面白いなぁ。

  • 300ページ越えをしているのにあっさり読み終わりました。きっと品のない話を面白く追っていたからでしょう。冒頭から女子高生たちの恋愛でも悪口でもない馬鹿話を盗み見てる気持ちになり、彼女たちが知ったら恥ずかしがるんだろうなと勝手に感情移入してました。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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