今昔百鬼拾遺 河童 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041080450

作品紹介・あらすじ

美しく蛇行する夷隅川に次々と浮かぶ水死体。第一発見者の呉美由紀、研究家の多々良勝五郎らは、「奇譚月報」記者・中禅寺敦子とともにその謎を追う。やがて薔薇十字探偵社が抱える案件との繋がりが――。

感想・レビュー・書評

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  • 昭和29年。団子屋で七年前に、宝石略奪の密議を凝らしていた五人組のうちの三人が、次々と夷隅川で変死している。
    死因は溺死で三人共、ズボンが引き裂かれて無くなっていた。人間のお尻を出して中の臓物を食べるという河童のいい伝え。
    中尊寺敦子と三人目の死体の第一発見者の呉美由紀は、妖怪研究家の多々良勝五郎らと謎を解こうとします。
    五人組の残りの二人も殺されるか、又は共犯、犯人ではないかと推理します。
    果たして河童の迷信はもう信じられる時代ではないはずなのに、まるで河童の仕業のような死体のズボンを下すという仕業は一体、誰が、何のために。

    最後は、とても哀しくも美しい真相が敦子により解明されます。

    • まことさん
      傍らに珈琲を。さん♪

      このシリーズは、色々な名前がついているみたいですね!
      私は、『鬼』『河童』『天狗』の順番で、読んだみたいです。
      その...
      傍らに珈琲を。さん♪

      このシリーズは、色々な名前がついているみたいですね!
      私は、『鬼』『河童』『天狗』の順番で、読んだみたいです。
      その3作をまとめて、今は『月』になっているみたいですね。
      『雲』はわからないです。その、続編かなあ?

      京極さん、たくさん読んでらっしゃいますね。かなりお好きなんですね!
      2023/08/15
    • 傍らに珈琲を。さん
      まことさん、どちらにもお返事有難う御座います。

      それに情報も頂けて嬉しいです。
      「月」を手にすれば、鬼・天狗・天狗が読めますね。
      順番を迷...
      まことさん、どちらにもお返事有難う御座います。

      それに情報も頂けて嬉しいです。
      「月」を手にすれば、鬼・天狗・天狗が読めますね。
      順番を迷うこともありませんし。
      でも、分厚そうだなー「月」笑

      そしてきっと、仰る通り「雲」はその続編っぽいですね。
      今昔続百鬼ですものね。

      いや~順番が大混乱で京極妖怪雪崩が発生していたのですが、
      大変助かりました!
      有難う御座います!
      忘れないうちに登録して、無理なくゆっくり読み進めまーす。
      2023/08/15
    • まことさん
      傍らに珈琲を。さん、おはようございます♪

      京極妖怪雪崩とは大変ですね。
      今昔百鬼拾遺シリーズ、楽しまれてください♪

      傍らに珈琲を。さん、おはようございます♪

      京極妖怪雪崩とは大変ですね。
      今昔百鬼拾遺シリーズ、楽しまれてください♪

      2023/08/16
  • 本書は今昔百鬼拾遺シリーズ3部作の第2作目。
    そして僕が読む京極夏彦先生の作品としても2作目
    なんとなく京極ワールドの感じが分かってきた。

    すごく不思議な魅力を持っているよね。この本は。
    冒頭の女学生達の「河童」についてのおしゃべりが延々と続き、この話はあまり本編には関係ないのじゃないかと思い始めるころに、タイミング良く事件が発生していく。

    本作品の主人公も前作と同じ、記者の中善寺敦子と女学生の呉美由紀のコンビ。まったく、関係のない場所で行動していたと思いきやひょんなところで合流し、河童にまつわる事件に巻き込まれてしまう。
    僕としては初めてとなるが、ここに登場する多々良先生のキャラクターが強烈だ。
    京極ファンならお馴染みの多々良先生なのだろうが、初めて目にすると(いや、文章で読んでいるだけなので実際には目にはしていないのだが・・・)その強烈なキャラに圧倒される。
    「今昔続百鬼シリーズ」では多々良先生が主人公だそうなので、そちらのシリーズもちょっと気になってしまう(笑)。

    本作は、フーダニット・ハウダニット系のミステリとなるが、前作と同じようにミステリとして楽しめるとともに日本古来の妖怪怪異への知的好奇心をも満たしてくれる。これが京極ワールド。妖怪好きにはたまらないのだろう。

    本作は戦後まもなくの時代が舞台なのだが、前作と同じように全く古さを感じさせない。ぐいぐい物語に引き込まれてしまう。このあたりが京極先生の筆力の凄いところなのだろう。
    本作もいろいろと楽しめた。
    次作は遂に本三部作最後の『天狗』なので気合いを入れて読みたい。

    • くるたんさん
      kazzu008さん♪
      こんにちは♪

      河童図鑑が作れるんじゃないかっていうぐらい、地方によって違いがあることに驚きました♪

      多々良センセ...
      kazzu008さん♪
      こんにちは♪

      河童図鑑が作れるんじゃないかっていうぐらい、地方によって違いがあることに驚きました♪

      多々良センセイ、濃すぎますよねー(笑)。

      多々良先生行状記 なる作品はまるごと多々良センセイを味わえました。イラっとしますが憎めない…そんなセンセイの魅力を楽しめました♪
      2019/09/19
    • kazzu008さん
      くるたんさん。こんにちは!
      コメントありがとうございます!
      本当に河童って地方によっていろいろあるんですね。全然知りませんでした。緑色で...
      くるたんさん。こんにちは!
      コメントありがとうございます!
      本当に河童って地方によっていろいろあるんですね。全然知りませんでした。緑色で頭にお皿を乗っけてるっているイメージしかないと思ってましたよ。

      そうそう、多々良先生は面白いですね。もし本当に話をしたらイラッとくると思いますけどね(笑)。『今昔続百鬼 雲』が多々良先生スペシャルなんですよね。今後読みたいリストに入れました。

      この三部作もくるたんさんのおすすめシリーズで当たりでした。ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします!
      2019/09/19
  • 河童と奇妙な水死体事件に敦子と美由紀が挑む。

    お尻、尻子玉…河童についてのガールズトークで幕開けの今作。
    前作よりもさらにライトな印象で読みやすく面白かった。

    キャラの濃い多々良さんのトーク、河童談義が熱いのも楽しめたのも大きなポイント。
    別作品に登場しているのかなぁ…多々良さんに興味がわいた。
    相変わらず終盤に誰もが放つ言葉が気持ち良くて良い。

    戦争、戦後という時代背景、そこに絡められた感情がちょっとしんみりくる。人たるもの、河童たるもの…見事に最後まで河童が描かれた作品、大満足。

    • kazzu008さん
      そうなんですね!
      では安心してこの今昔百鬼拾遺シリーズ、機会を見て読んでみたいと思います。今まで京極先生の本はあの分厚さでちょっと手に取る...
      そうなんですね!
      では安心してこの今昔百鬼拾遺シリーズ、機会を見て読んでみたいと思います。今まで京極先生の本はあの分厚さでちょっと手に取るのを躊躇していたんですよね(笑)

      こちらこそ、いつも「いいね」をしていただいてありがとうございます。
      そうですね。最近レビューした本はどれもみな面白かったです。特に「動物農場」はオーウェルの傑作ですし、あのゾクゾク感はたまりませんでした。今度は「一九八四年」に挑戦しようと思っています。
      あと、今日の「泥の銃弾」もあまり話題になっていませんが、これもおすすめですよ。

      まだまだ読みたい本がたくさんあるので、読み終わったらその都度、また詳しくレビューさせていただきますね!
      2019/06/26
    • cowbell01さん
      くるたんさん、こんばんは。
      多々良先生ですが、「今昔続百鬼――雲」という作品に出ています。副題が「多々良先生行状記」ということで、メインで出...
      くるたんさん、こんばんは。
      多々良先生ですが、「今昔続百鬼――雲」という作品に出ています。副題が「多々良先生行状記」ということで、メインで出ていますよ。
      京極夏彦さんの笑わせ系で、厚いですが、気楽に読める本です。
      2019/06/26
    • くるたんさん
      cowbell01さん♪

      コメントありがとうございます(*´∇`*)
      そして情報ありがとうございます♪多々良先生行状記とは!それは面白そう...
      cowbell01さん♪

      コメントありがとうございます(*´∇`*)
      そして情報ありがとうございます♪多々良先生行状記とは!それは面白そうです♪

      あの熱いキャラ、お気に入りです♪

      楽しみがまた増えました✧*。(ˊᗜˋ*)✧*。
      2019/06/26
  • 前作と同じ出版社じゃない!?え?どゆうこと?三作目も出版社違う?え!え?
    装丁もタイトルも同じなのに、ほぼ同時期に別の出版社から刊行されてる。この謎が気になって、本編に入る前にググりました。

    さてさて、鬼の次は河童です。やっぱり蘊蓄語れる人が出てきた。よく喋る研究者だなぁ。中禅寺敦子と美由紀のコンビは読んでて楽しい。校長先生の外孫といい、団子屋の女将といい、女性がたくさん出てくる。京極夏彦の女性感が卓越してて、書き手が男性なのに読んでて違和感を感じない。女性の心理(しかも現代の!)よくわかるなぁ、、、この人。

  • 本書の説明やブクログのレビューで、多々良先生が出ると知って、これは読まねばと思い、読みましたが、やはりおもしろい。薔薇十字探偵社の益田くんも飛ばしまくりで、前半は笑いながら読み進めました。
    後半は事件の真相にもつながっていくため、深刻さが出てくるものの、やはり二人が絡むと和みます。
    しかし、キチンと問題はぶち込まれている。例えば、地域の特性があるはずの川辺の妖怪の意匠が、テレビが一気にイメージを伝播させることで、河童のイメージに固定されると、この時代に起き始めた事象と絡めて問題視される。かつて『妖怪馬鹿』で嘆かれていたガラッパもなんでもかっぱイメージにまとまってしまっている話だが、反面イメージ自体が時代によって、塗り替えられてきたものでは?という考えも示されたりして、その議論だけでもおもしろい。
    事件の真相につながるところが、そもそもの河童などの出自にもつながるかと思うと、考えさえられるし、女性の社会進出も、警察の話に絡まって出てくる。色々と考えさせられる。時代も大きくかわっていく雰囲気が、ところどころにあり、シリーズ自体にも影響していくんだろうと感じた。
    あと、各種これまでの事件に話がちょいちょい出てくるものの、『邪魅の雫』だって、いつ読んだかという感じなので、どれだっけ?誰だっけって感じでした。

    • くるたんさん
      cowbell01さん♪
      おはようございます♪
      この作品、面白かったですよね♪
      くだけた雰囲気からしっかり時代背景を絡ませた事件の真相、三作...
      cowbell01さん♪
      おはようございます♪
      この作品、面白かったですよね♪
      くだけた雰囲気からしっかり時代背景を絡ませた事件の真相、三作品の中で一番印象に残りました。
      cowbellさんから教えていただいた、多々良先生行状記も楽しく読みました♪
      スピンオフものもほんと、キャラにグッと近づける感じが良いです♪
      ありがとうございました✧*。(ˊᗜˋ*)✧*。
      2019/07/27
    • cowbell01さん
      くるたんさん
      こんにちは。ホントにおっしゃる通りでくだけた感じで進んでいくと、オッという感じで考えさせてくるのが、にぎやかな面白さのみならず...
      くるたんさん
      こんにちは。ホントにおっしゃる通りでくだけた感じで進んでいくと、オッという感じで考えさせてくるのが、にぎやかな面白さのみならずという感じで、よかったです。
      多々良先生が出てくるとニヤニヤしながら読んでました。
      キャラが、グッと近づく感じって、ホントにそうですね。今回は多々良先生と敦子さんの組み合わせで、よりそれぞれの良さが見えた感じがしました。
      2019/07/27
  • 尻、尻、尻...と何度もお尻というワードが本の中で散見される。

    どこにでもありそうな女学生のおしゃべりのシーン。しかし内容はお尻の話題から...なんだなんだと思って読んでみるとどうやら河童の定義について話しているらしい。呉美由紀という女の子もその話をしている一人である。確かに河童は尻子玉を抜くと言われているが...。あらからしゃべり倒した後にやっと本題の浅草界隈を騒がせている覗き魔の話へ。女学生だし、こういう物騒な話には敏感だよね、と思っていたらどうやらその覗き魔のターゲットは男性らしいのだ。まぁ、いなくはないだろうけど妙な話...。

    場面は変わって京極敦子の話へ。薔薇十字探偵社の下っ端、益田から宝石泥棒を探す手伝いをしてほしいと依頼がくる...泥棒はお尻に刺青をした男だとか...ここでも尻である。

    その調査の線上で起きる連続水死事件。死体はみんなお尻を出して死んでいたと言う。またお尻である。どこを見ても尻、尻、尻...まるで河童が犯人かのような奇妙な事件。

    その後、美由紀と敦子の物語が交錯していき、そこにまたメーワクな民俗学者、多々良勝五郎先生までが登場し拡大していく。さて、この事件の行く末は?

    と一貫したテーマをリフレインしていくのがお得意の京極さんの作品、今作も最後の最後までテーマを貫き通しててめちゃよかった。今回はネタバレしてもいいかなー!?と思うくらい犯人を言いたいのだけど我慢。いやほんとに見事に最後まで書ききってます。そして数々のキャラの描き分けが好き。理知的な敦子、どこか要領の悪い益田、はちゃめちゃな多々良...etc. セリフの選び方や人物描写が読んでいてとても楽しい、頭の中でどんどんイメージが固まっていく感じ。

    あぁ、やっぱり犯人言いたい...我慢我慢。

  • 今昔百鬼拾遺シリーズの2作目。「鬼」に続いて「河童」である。タイトル通り「河童」についての談議が冒頭で繰り広げられるが、女子学生が黄色い声で河童談義を長々と続けているのは、いかにもリアリティがない。戦後間もない頃、という時代設定であったにせよ、女子学生がそれぞれ己の出身地に伝わる河童像や逸話を披露しあうとは思えない。この部分がそれほど長くなく、物語への導入として簡潔に語られたのならまだよかったのかもしれないが、いかにも長く続く談義を読まされると違和感を覚えるのみである。

    物語は、薔薇十字探偵社の探偵と中善寺敦子が邂逅し、それぞれが追いかけている事件の話をすることで、互いの事件は呼応し、さらにそこに河童が絡んでくるというものだ。これらの事件を追いかけるのは、一作目に続き中善寺敦子と主人公の一角を務める呉美由紀だ。妖怪研究家の多々良も加わり、ドタバタ劇の雰囲気をまとって物語は進んでゆく。

    一作目の「鬼」はそれほど際立ったキャラクターはいなかったように思うが、今回は薔薇十字探偵社の探偵である益田にせよ、やたらと喚く妖怪研究家多々良にせよ、いずれも賑やかだ。特異なキャラクターを持つ彼らの登場は、京極夏彦の真骨頂である(と思っている)京極堂シリーズを髣髴とさせる。懐かしさを感じながら読み進めることができた。

    明治維新以来、打ち続く戦争の集大成たる第二次大戦(物語の中では「先の戦争」と表現されている)で日本は破れ、国内は混沌と化した。敗戦、降伏、GHQ占領という混沌とした社会の中で、どさくさで発生した事件が端緒となり、河童になぞらえた水死体が揚がる。尻子玉を抜くという河童にちなんで、やたらと「尻」にこだわりながら、事件は端緒となった7年前の宝石にまつわる出来事と関連し、それらの因縁を解きほぐしながら大団円に向かう。京極作品のいわば定番化されたプロセスであり、読んでいて安定感はある。

    本作では、物語に戦後の社会問題となった事件や時代背景が織り込まれている。これらは奇想天外とも思える物語にリアリティを与えることに寄与している。第五福竜丸、差別、女性の社会進出……いずれも河童と絡み合いながら、大団円を迎えるための重大なパーツとなっている。冒頭の河童にまつわるガールズトークにしても、日本各地に伝わる河童伝承をまとめたものと読めば、河童に関する百科事典としての読み方もできるかもしれない。

    返すがえすも、なぜ河童伝承をガールズトークの形式で語らせたのだろう。しかも、物語の冒頭で。内容が奇想天外なのは京極作品の特徴だし、テーマである「河童」が物語の通奏低音となっていることも理解できる。だが、これが仮に明治時代の物語だったとしても、さすがに15歳、16歳くらいの女子学生が河童談義をし合い、長広舌を繰り広げるであろうか? 本来は、このトークは中善寺明彦の役回りのような気がしてならない。

  •  なんか、河童がブームになってたとか、さう言はれる昭和二十年代後半。の日本、第五福竜丸に関するいろいろが出る中出た、謎の出歯亀事件と謎の尻、尻、尻が出てくる水死体。
     個人的に「小山田刑事」と言ふ人が出てくる京極作品につられる体質があるらしく、謎の河童懲罰刑事小山田が出てくる本書を買ってしまった。
     その、河童駒引伝承とか、いろいろが水木しげるファンの手で、ごちゃごちゃと展開する。
     犯人の関係と、重要なアイテムの関係はしっくり来た。

  • 最初の河童談義はなにか落語っぽい。益田の口調のせいか多々良先生のせいか。
    と思っていたら、戦争や被差別部落やと、なかなか重いテーマになり…でも最後は美由紀が救ってくれるんだろうな、と期待しながら。

  •  3ヵ月連続刊行の『今昔百鬼拾遺』シリーズの第2弾。前作の「鬼」に続いて、今回は「河童」だという。「鬼」と同様に、「河童」も日本人には馴染みがあり、ステレオタイプのイメージが出来上がっているが…。

     序盤から、呉美由紀と級友たちの河童談義が延々と続くが、どうやら覗き魔が出没しているらしい。男が男の尻を覗くのだという。その理由は読み進めばわかるが、本題に入るまでが長いなおい。一応、河童談義にも意味はあったわけだが。

     一方、中禅寺敦子は、薔薇十字探偵社の益田から相談を受けるのだが、益田の話がとにかく要領を得ない。キーワードは、「宝石泥棒」と「尻」?ん?「尻」でさっきの話と繋がったのか?千葉県の川で、尻を出した男性の遺体が発見されたとか…。

     河童の話なのか尻の話なのかどっちやねん。河童が尻小玉を取るという伝承は聞いたことがあるけども。美由紀が木更津に帰省中、従姉妹を訪ねると、そこになぜか多々良勝五郎先生が現れる。京極堂シリーズっぽくなってきたじゃない。

     多々良先生は「稀譚月報」の取材で来ていたため、結局敦子も千葉へ出向き、そこで美由紀と会うことに。事件の発端は、戦後の混乱に乗じた悪巧みにあるようなのだが、尻を出した死体ばかりがどんどん増えていく。いや、笑っちゃいけないのだが。

     すべての真相は、ある場所にあった。戦時という時代背景があるにしろ、現代にも置き換えられるテーマだろう。このような境遇にあって、彼の心の根底にあったのは…。偶然の産物とはいえ、これは肝が据わった悪党でも驚いただろうなあ。

     今回の舞台装置は、京極堂シリーズ本編用にアレンジすることも可能だったのではないか。手ごろな文庫にまとめたのは、嬉しいような惜しいような。前作よりもシリーズの「らしさ」が増えている感があり、今後がますます楽しみになってきた。

     それにしても、夷隅川って本当にものすごく蛇行しているな。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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