- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041081471
作品紹介・あらすじ
(目次)
序章 こんなに楽しい職業はない(対談)
第1部 研究者の醍醐味--世界で自分だけが知っている
1章 1番になるよりも誰もやっていないことを(大隅)
2章 研究は「おもろい」から(永田)
第2部 効率化し高速化した現代で
3章 待つことが苦手になった私たち(永田)
4章 安全志向の殻を破る(大隅)
第3部 「役に立つ」の呪縛から飛び立とう
5章 「解く」ではなく「問う」を(永田)
6章 サイエンスを文化に(大隅)
終章(対談)
感想・レビュー・書評
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ノーベル生理学・医学賞受賞者である大隅良典氏と、京都大学名誉教授で歌人としても活躍する永田和宏氏の共著。科学研究の魅力と、研究者としての喜びや挑戦について語られる。若い研究者たちへのアドバイス、前向きな論説が多く、学生には非常に有意義な一冊になると思う。
かつて大企業はどこも中央研究所というのがあり、大学の先生に匹敵する位の実力のある研究者がいた。会社の利益に直結することだけでなく、様々な基礎価格の研究を行っていた。ところが、どの企業も中央研究所をつぶしてしまった。今もう残している企業はほとんどない。科学に対する「実益」志向がそうさせた。企業に関してはそれでも良いと思うが、大学はそうであってはならない。「利用価値」を先に設定してしまう事で既定路線に沿ったアプローチから逸脱できぬようになることは、損失ですらあるのだろう。
ー ほとんどの人にとって、教科書で習った事は本棚に収めておくべき知識で生活の中で引き出される対象ではないようだ。例えば、肌の張りを保つ効果のあるとされるコラーゲンのエピソードは、科学の知識が生活に密着していないことを如実に示している。摂取したコラーゲンは必ず肉などの他のタンパク質と同様に胃や腸でアミノ酸やペプチドという物質に分解されて吸収される。食べ物としてタンパク質を取るのは体に必要な新たなタンパク質を構成する材料としてのアミノ酸が必要だからである。すべてのタンパク質は遺伝情報に従って、アミノ酸を1個1個つなげることによって構成される。したがって、コラーゲンを飲んだり食べたりしても摂取したコラーゲンがそのまま肌や骨に含まれるコラーゲンに置き換わる事は決してない。
上記は、日常に科学思考が浸透していない事を示す文だ。残念ながら、その通りだと思う。反知性主義とまでは言わないが、ロジカルな理解を放棄すれば、人間は印象論のみで右に倣えとなる。それは極めて危うい事であり、マス操作の源泉ともなる群集心理とも言える。個人としての愚考権は許容しても、集団における最低限の教育ラインは重要だという事だ。対人的な意味だけでは無く、真実に対し、誤ったリンチをしてしまう恐れがある。
ー 何かを知るため、理解するために費やす時間やその長さが大切だと思っている。すぐにわからなければその疑問はずっと頭の片隅に残る。わからない間、想像力が働く。インターネットはすぐに答えを得られるので便利な反面、想像力が働く場面がない。
重要なのは、検索結果ではなく、想像力や結晶化である。刺さる言葉だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2人の生命科学者が考える、科学者のあり方、今の科学者の現状、若い科学者へのメッセージなどが、わかりやすい言葉で語られている一冊。
経済を最優先とするかのような社会の動きを反映してか、科学者の世界でも、経済性が優先されている現状。
もともと「好奇心」を原動力に発展してきた科学は、「役に立つこと」を目的とはしていなかったが、経済性が過度に優先されるようになった結果、「すぐに役に立つこと」を求められるようになり、基礎研究はおざなりにされ、科学者の研究対象は、小粒で、つまらないものになってきている。
この点に関して、自分は科学者ではないですが、同じ課題意識を持っています。
企業にいても、似たような時代の流れを感じるので。
このことに対し、自分ができることは多くないと思いますが、少しでも科学者の状況の改善に貢献できるよう、考えることだけはしています。
いずれは、何か一つぐらい実現したい。 -
女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000060170
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摂南大学図書館OPACへ⇒
https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50263171
この世の理を見出す科学研究の魅力を、第一線を走ってきた二人が伝える!
(生命融合科学分野 大塚正人先生推薦) -
何のために研究をするのか
研究者を志す息子に渡した -
大隅さんは、東大卒、オートファジーの仕組みの解明でノーベル生理学・医学賞受賞。永田さんは、京大卒。やはり京大出身の永田さんは、「おもしろい」を大事にしている。
・ディスカッションに喜びを見出す。
・迷ったら「おもしろい」ほうを選ぶ。
・流行の研究を追わないと決めていた。
・一番乗りを目指すのではなくて、人のやらないことをやる。
・「役に立つかどうか」を気にしすぎる傾向がある。科学は技術と結び付けられてしまっているが、科学を文化にしたい。スポーツ選手の活躍は、「何の役に立つのか」という突っ込みがはいらない。それは文化になっているから。科学もそうなるといい。 -
この世の理を見出す科学研究の魅力を、第一線を走ってきた二人が伝える!
(出版社HPより)
★☆工学分館の所蔵はこちら→
https://opac.library.tohoku.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=TT22182366 -
この本を読んで、大学で若者が豊かな学びができるような、自分が本当に面白いと思えることが研究できるような、そんな環境を整えてあげたいと思った。
著者である二人の研究者は、今の若者に「もっとこうあれ!」とエールを贈る。
一方で、今の教育システム、研究者を取り巻く環境に危機感を抱き警鐘を鳴らす。
現実には、みんな、毎日を生きるために必死で、今日一日のことで精一杯である。
ずっと先じゃなくて、我が子や孫が大人になる、少し先のことを考えることさえ難しい。
それでも、考えないとダメだと思う。考えて行動を起こさないと。
日本の政治家や官僚は何もしてくれないだろう。未来の日本に向けて舵取りしていくはずの人たち、あなた達はちゃんと進路が見えていますか?
一市民に出来ることはほとんどないかもしれない。でも、考えることは、考え続けることは出来る。
そして機会があれば、小さなことでいい、何か一つ、自分の思い描く未来につながることをやってみよう。
私のアクションはただ終わるかもしれないが、誰かのアクションは大きな動きになるかもしれない。
だから、みんな、考えることを続けよう!