S霊園 怪談実話集 (角川ホラー文庫)

  • KADOKAWA
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041081945

作品紹介・あらすじ

携帯メールを打っている最中、変換された奇妙な文章と、その後起きた恐ろしい出来事(「誤変換」)、「兄物」と書かれた古い箱を開けた少年を襲う恐怖(「あにもの」)など、端正な筆致でつづる怪談実話集。

感想・レビュー・書評

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  • 相変わらず安定の福澤徹三さん。
    怖いと言うより不思議な話が面白かった。
    『友人がいた街』『カップ麺のゆくえ』『たき』『偶会』『深夜の電話』など。
    夏はこういう本がたまらなく読みたくなる。

  • 淡々とした文章で、じわじわ怖い

  • 実話怪談を蒐集した短編集。
    それなりに怖かった。

  • 興味深い。
    不可解な体験をする人々。
    本能的に厭なモノを目の端に捉えたまま
    気付かれない様に、作り笑いでその場から
    ゆっくりと離れる。
    そういう事を感じる。

  • 彼女と同棲していたU。平和に暮らしていたが、徐々に険悪な雰囲気になってきた。そして、ある日大喧嘩をしてしまい、勢いのまま彼女が家を飛び出してしまった。なかなか帰らない彼女を心配しつつ、家で待っていると、憔悴した様子の彼女が帰ってきた。
    ***
    実話怪談本。この作者さんの実話怪談は何冊目だろう。さっくり簡潔に読める長さの怖くて不可解な話が40編。 怖いよりは不思議、という話もあり、恐怖度はまちまちだが、これが誰かの日常の中で起ったかと思うと鳥肌が立つ。私は体験したくないとゾッとした。
    そんな中でも特別に怖いと感じた話は、「失踪」、「霊安室」、「S霊園」。 「失踪」はフリーターであるUという人物の体験談。看護師である彼女と同棲していたUであったが、自分がフリーターであるせいで、彼女に生活費やその他諸々をねん出してもらっていた。はじめは、悪い顔をしなかった彼女であったが、仕事の疲れなどが蓄積してきたのか、フリーターであるUと険悪な雰囲気に。そして、ある日大喧嘩をしてしまい彼女が出て行ってしまった。酒の勢いで絡んで彼女と喧嘩してしまった事を反省し、帰りを待っていたが、それから何時間しても帰ってこない。夜になってやっと帰ってきた彼女を迎えつつ、どこに行っていたのかを問うと彼女は「何も覚えていない」の一点張りであった。 これはなかなか不可解な話。小説にある信用できない語り手の話を読んでいるような感覚に陥った。Uは自分の体験したこと、彼女が帰ってきたときの様子などををあったままに語っており 彼女が家を完全に出て行った際、残された彼女の書置きの所為でその部分に対しての信頼が揺らいだ。語っているU自身も書置きを読んだせいで、あの日彼女が「何も覚えていない」といった事は自分がどこかで都合のいいように解釈した偽の記憶なのではないかと、自分の記憶を疑うように。 彼女の書置きを信頼するならば、どこからがUが作り出した妄想の記憶なのだろう。喧嘩して、彼女が出て行ったあとUが彼女に何かをしたのかもしれないが、彼女がすでに去った後となってはわからない。
    「霊安室」は特養の施設に備え付けられている霊安室で起った怪奇現象。深夜、夜勤をしていると突然霊安室からコールがなる。そこには亡くなった方の遺体が安置しているだけで、誰もいないはずなのに。上司からは深夜になるコールは故障だからといわれていたが、中に誰かが迷い込んでいる可能性もぬぐえない。無視をして何かがあってはいけないからと、いやいや確認に行くことに。霊安室の中に入ると、やはり遺体があるだけで誰もいない。気持ちが悪いので、事務所に帰ろうとすると、なぜか線香が灯してあった。無人のはずの霊安室からコールが鳴るという時点で、読みながら勘弁してくれ……。といった心境。どうしたって行った先で変なことが起こるに決まっているのだ。そしてやはりいざ見に行ってみると、誰もつけていないはずの線香がついている。線香を立てるのは弔いのために必要だとは思うが、一体だれがそれをやったのか。コールを聞いてやってきた職員と、その職員に呼び出されて霊安室に来た職員は身に覚えがないのだから、それ以外の人物がやったのは間違いないが、じゃあ誰かと聞かれると、幽霊か安置されている遺体のいずれかという事になるのでは?線香が灯されている光景も異様だし、それを誰がやったのかと考えるとさらに異様。読んで想像して背筋が寒くなった。
    「S霊園」はこの本のタイトルとなっているだけあって、様々な話がこの一編に詰まっていた。どの話も怖かったが、曰くのある廃車の話が個人的にダントツ。不慮の事故で壮絶な死に方をしてしまった人間が乗っていた車とのこと。車体は非常にきれいなので清掃されて一度は売りに出されたが、買い手が次々に変死してしまい業者がS霊園の近くに放置。しかし、脅威はそれだけにとどまらず、なんと触れただけで急死してしまう人間まで出てきた。明らかに車の持ち主の祟りだと怖がった地元住民は、車の上に神社の社のような屋根をしつらえ、しめ縄を渡し、祀ることにしたが……。 一番最初に亡くなった持ち主はかなり気の毒だが、その後そんな死に方をした人間が乗っていた車を売りに出すとかどういう神経?普通は廃車だと思うが。変に車が綺麗だったせいで、欲が出たのかもしれないが、結果何人も変死してしまっている。完全にとばっちりを食らった変死者達は気の毒すぎる。あと、触っただけで人が死ぬというのは、どれだけ呪いの力を持っているのだろう。一番最初に死んだ人間の念がこもっているのか、それ以前になにかあったのか。この車自体に最初から曰くがあってが様々な死をもたらしている気もする。最後は業者が撤去したとの事だが、よく業者が請け負ってくれたし、何も起こらなかったな……。怖いものは祀ってしまう日本人の性には一瞬クスリとしかけたが、それ以上に車が恐ろしくて仕方が無い。怪談を読んでいると、別の本に掲載されている話に関係のある怪談もあった。持っている本がいくつかあったので、また機会があれば読みたい。

  • 怪談実話集。実話……本当に? と思うけれど。個人的にはフィクションだと思いたいです。ホラーは好きですが、現実にこんなの体験したくありません。そしてその怪異の原因が解明されることなくそのまま、というのも実話怪談の醍醐味なのでしょうか。わけのわからないままのほうがやはり怖い気がします。
    一番怖かったのは「失踪」。何が怖いのか、誰が怖いのか、その感情がぐるっとひっくり返されてしまう怖さが最強。
    シュールでユーモラスな「カップ麺のゆくえ」も印象的でした。怖いと言えば怖いし、実際こんな目に遭ったら耐えられないけれど。でもなんか可笑しくなっちゃうんですよね。

  • 怖いというよりは不思議という感じの実話収集

  • 小野不由美さんなどとも交流がある作家の収集した実録怪談。

    こういうのは読んで楽しみのが一番です。

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著者プロフィール

福澤 徹三(ふくざわ・てつぞう):1962年、 福岡県生まれ。ホラー、怪談実話、クライムノベル、警察小説など幅広いジャンルの作品を手がける。2008年、『すじぼり』で第10回大藪春彦賞受賞。著書に『黒い百物語』『忌談』『怖の日常』『怪談熱』『S霊園』『廃屋の幽霊』『しにんあそび』『灰色の犬』『群青の魚』『羊の国の「イリヤ」』『そのひと皿にめぐりあうとき』ほか多数。『東京難民』は映画化、『白日の鴉』はテレビドラマ化、『Iターン』『俠(★正字)飯』はテレビドラマ化・コミック化された。

「2023年 『怪を訊く日々 怪談随筆集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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