不時着する流星たち (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 220
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041082072

作品紹介・あらすじ

盲目の祖父は、家中を歩いて考えつく限りの点と点を結び、その間の距離を測っては僕に記録させた。足音と歩数のつぶやきが一つに溶け合い、音楽のようになって耳に届いてくる。それはどこか果てしもない遠くから響いてくるかのようなひたむきな響きがあった――グレン・グールドにインスパイアされた短篇をはじめ、パトリシア・ハイスミス、エリザベス・テイラー、ローベルト・ヴァルザー等、かつて確かにこの世にあった人や事に端を発し、その記憶、手触り、痕跡を珠玉の物語に結晶化させた全十篇。硬質でフェティッシュな筆致で現実と虚構のあわいを描き、静かな人生に突然訪れる破調の予感を見事にとらえた、物語の名手のかなでる10の変奏曲。

感想・レビュー・書評

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  • 梅雨時に似合う、短編集。

    実在の人物をモデルに描いたフィクションとな。
    と言っても、私が名前を知っているのはグレン・グールドと牧野富太郎だけでしたが……。
    伝記よりも、断片的で、だからこそ色合いが濃い。
    小川洋子がひそひそと切り取って創り上げたコラージュ作品みたいで、楽しかった。

    何を置いても、冒頭話の「誘拐の女王」に持っていかれてしまった。

    突如、出現した不思議な姉。
    彼女が愛おしそうに抱える裁縫箱には何が入っているのか、気になる妹。
    そこから生まれ出づるは、秘密の誘拐譚。
    物語を語る姉は夜な夜な、何者かに許しを請い自罰するのだった……。

    見てはいけないものを見ている感。
    谷崎潤一郎の『マゾヒズム小説集』を思い出した。

    盲目の祖父と孫の歩みが織り成す「測量」も、“放置手紙調査法”なる心理学実験をモチーフにした「臨時実験補助員」も、良かった。
    (放置手紙調査法も初めて知ったけど、ロマンすぎる。つい、探してしまうじゃないか。)

    阿吽の呼吸というけれど、あ、この人とならずっといられる、という空気感って何なんだろう。
    一緒に仕事をしていたい人って、いませんか。
    そういう居心地良さを、ギュッと数値化するとシンクロニシティのようなものになるのかもしれない。

    祖父の歩数をバイタルサインとして、話は進んでゆくのだけど、その乱れに酷くショックを受ける孫に切なくなった。

    沈んだままの終わりを迎える話も多いので、しとしとと雨降る夜に読むのがおすすめです。

  • 実在の人物や作品などからインスパイアされて紡がれた10篇の物語。概要知らずに読み始めたので1話目「誘拐の女王」終わりのヘンリー・ダーガーの紹介まで辿り着いてようやく、なるほどそういうことか、と。お姉さんはグランデリニアに誘拐されていたのだな。そういえば表紙絵(kalo:http://kalo.ws/)のテイスト、ヘンリーダーガー味があるかも。

    人間ですらない世界最長のホットドッグとか、男子バレーボールチームとかはストーリーと直接の関係はなくまあいわばカメオ出演みたいなものなのでちょっと謎だったけど、男子バレーの「肉詰めピーマンとマットレス」は、作者の実体験かしらと思うほど母の愛に溢れていて、いつもの小川洋子さんと少し違う印象を受けた。

    6話「手違い」は「お見送り幼児」という職業(?)がいかにもありそうで面白く、そしてモチーフになったヴィヴィアン・マイヤー(子守を職業にしていて大量の写真を撮っていのが死後発見された)は、あくまで趣味で作品を作り死後発見されるあたりヘンリー・ダーガーと通じるものがあるかも。

    3話「カタツムリの結婚式」パトリシア・ハイスミスがそんなカタツムリマニアだったとは知らなかったので驚いた。4話「臨時実験補助員」は実験の内容よりも母乳ババロアのインパクトが強すぎて・・・。8話「若草クラブ」はエリザベス・テイラーに憧れて何でもマネする少女の話だけれどこれがとても怖かった。

    ※収録
    誘拐の女王(ヘンリー・ダーガー)/散歩同盟会長への手紙(ローベルト・ヴァルザー)/カタツムリの結婚式(パトリシア・ハイスミス)/臨時実験補助員(スタンレー・ミルグラム)/測量(グレン・グールド)/手違い(ヴィヴィアン・マイヤー)/肉詰めピーマンとマットレス(男子バレーボールアメリカ代表)/若草クラブ(エリザベス・テイラー)/さあ、いい子だ、おいで(世界最長のホットドック)/十三人きょうだい(牧野富太郎)

  • 小川洋子『不時着する流星たち』〈刊行記念インタビュー〉世界の隅っこでそっと息づく人々の記憶、手触り、痕跡を結晶化した全10篇。 | インタビュー | Book Bang -ブックバン-
    https://www.bookbang.jp/review/article/527256

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    盲目の祖父は、家中を歩いて考えつく限りの点と点を結び、その間の距離を測っては僕に記録させた。足音と歩数のつぶやきが一つに溶け合い、音楽のようになって耳に届いてくる。それはどこか果てしもない遠くから響いてくるかのようなひたむきな響きがあった――グレン・グールドにインスパイアされた短篇をはじめ、パトリシア・ハイスミス、エリザベス・テイラー、ローベルト・ヴァルザー等、かつて確かにこの世にあった人や事に端を発し、その記憶、手触り、痕跡を珠玉の物語に結晶化させた全十篇。硬質でフェティッシュな筆致で現実と虚構のあわいを描き、静かな人生に突然訪れる破調の予感を見事にとらえた、物語の名手のかなでる10の変奏曲。
    https://www.kadokawa.co.jp/product/321608000246/

  • モチーフとなる人物や出来事の選び方や
    そこから生まれたはずの小説の意外さ。
    重大な秘密を
    自分だけにこっそりと打ち明けてもらったような気分になる。

  • 文庫化で再読。
    各短編にはそれぞれ、モデルとなるものがある。人間のこともあるし、物体のこともある。例え人間であっても、誰もが知っている有名人であるとは限らない。モデルを選ぶセンス、そこから描き出される物語、どれも楽しめる1冊。単行本を持っているが、文庫も買って良かった。

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著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

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