ラストナイト (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.78
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本棚登録 : 320
レビュー : 38
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041082898

作品紹介・あらすじ

片桐達夫、五十九歳。顔には豹柄の刺青がびっしりと彫られ、左手は義手。傷害事件を起こして服役して以来、三十二年の間に誘拐事件を三回、強盗を一回起こし、刑務所を出たり入ったりの生活を送る男には、胸に秘めた思いがあった――。
菊池正弘が営む居酒屋「菊屋」に、刑務所を出所したばかりだという片桐達夫が現れた。三十五年来の友人を迎える菊池だが、刑務所から離れられない彼に忸怩たる思いを持っていた。片桐が犯罪に手を染めるようになったきっかけは、彼が「菊屋」で起こした傷害事件だった。しかしそれは因縁をつけてきた暴力団員から、店と菊池の妻をを守るための行動だったのだ――。
片桐は、なぜ、罪を重ねることになったのか? 涙腺崩壊必至! 心奪われる、入魂のミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • こういってはなんだけど、ここまで完成された作品だとは思ってなかった…… 発売当初はページ数が他の薬丸作品より少なめに感じたので、内容も軽めのものかな、と勝手に思いその時は買わず、電子書籍のセールでようやく買ったのですが…… いや、完全に自分がバカだった……

    顔に刺青を彫り、再犯を繰り返す片桐。そんな片桐が再び出所。彼の出所後、数日間の足取りを友人、弁護士、娘などといった様々な人物の視点を通して描きます。

    更正を願う友人は、一向に生き方を改めようとしない片桐に複雑な感情を抱き、若い弁護士は片桐とその娘の様子から、自身の過去を思い出し、そして娘は、片桐の逮捕後、母が覚醒剤に溺れ自殺したことを知り、片桐に黒い感情を持ち……

    それぞれの片桐に対する思いがとにかく読ませる。元々薬丸さんの文章は読みやすいと、思っているのですが、この読みやすさと重厚なドラマを両立させるのは、やはりスゴいと言う言葉しか出てきません。デビュー作から一貫して、犯罪とその後の人々の苦悩を見つめ続けた薬丸さんだからこそできる芸当だと思います。
    そして読んでいけばいくほど、片桐が再犯を繰り返すような凶悪な男にはどうしても思えず、彼が何を思って行動しているのか気になり、グイグイと読み進めてしまいます。

    そして徐々に片桐をめぐる視点は核心へ。夜の街に立つ女性、そしてそれぞれの語り手をつなぐ謎の男。女性の章での一級品の犯罪小説のような緊迫感もさることながら、女性の過去と贖罪、そして片桐の言葉や行動に胸を打たれます。そして最後の男の章で、片桐のこれまでの行動の意味が明らかになったときの衝撃……

    片桐の行動の意味もさることながら各語り手の話が見事に繋がるのも、薬丸さんの物語の構成力の高さを感じます。そしてミステリとしての出来に加え、罪と罰、贖罪と赦しをめぐる重厚な人間ドラマとしても、とにかく読ませます。

    そして先にも書きましたが、これが結構ページ数が少ないのです。電子書籍で読んでいたので、後でサイトで確認したのですが文庫本で256ページ。このページ数でミステリとしての完成度も、犯罪をめぐる重厚な人間ドラマとしても洗練された作品を書くことができるのか、とそういう意味でも衝撃を受けました。薬丸さんはどこまで行ってしまうんだ……本当にムダのない作品だと思います。

    読みやすい文章、手頃なページ数、それでいてミステリとしての完成度や、片桐の目的や真の人間性に興味を持たせ続ける展開、そして何より、犯罪をめぐる人間ドラマ……

    薬丸作品を一つ誰かに勧めるとなったら、そうした総合的なバランスから一番がこれになりそう。ミルクボーイの漫才じゃないけど、栄養バランスの五角形みたいにこの作品を表すとしたら、メチャクチャ大きいものを書くだろうなあ。

  • 薬丸岳『ラストナイト』角川文庫。

    なんとも壮絶な男の物語である。余りの結末に絶句した。

    主人公の59歳になる片桐達夫は顔に豹柄の刺青をびっしり入れ、左手は義手という異様な容貌を持ち、32年間、刑務所に出たり入ったりを繰り返していた。何故、片桐は犯罪を繰り返すのか……

    ラノベチックな表紙イラストが似合う柔なミステリーが増える中、薬丸岳は驚くほど骨太のミステリーを描いてみせた。人間はここまで鬼になれるのか。

    本体価格620円
    ★★★★★

  • これほど、壮絶な生き方をする男がいるとは。
    絵空事のような話も、著者の筆力で、その小説世界にたちまち取り込まれてしまった。
    罪を犯した者の思いや贖罪を取り上げたら、著者はやはり当代一。
    顔に豹柄の刺青をした特異な容貌の男の行動を、彼に関わる5人の視点で浮き上がらせる構成も見事。
    ラストで、彼の思いと行動が明らかになり、涙腺を刺激されずにいられない。

  • 薬丸氏の最新作、慟哭のミステリー。
    人はこんなにも、人生の全てを掛けて、人を愛する事が出来るのでしょうか?
    最後のエピローグで、ウルウルしてしまいました(泣)

    片桐達夫、顔に豹柄模様の刺青を入れ、左手は義手。
    見る者を寄せ付けないその風貌に加え、刑務所を行ったり来たりするその人生も、壮絶なものであった。

    なぜ彼は、犯罪を犯し続けるのか?
    その理由とは?

    5章各章がそれぞれ関係者の視点で書かれ、同じシーンがそういう意味であったのか、と別の意味も生まれ、感慨深く読まされます。

    最後は悲しいエンディングでしたが、解説で『ラストナイト』と言う表題の意味を知りました(なるほど)。
    長い様に感じましたが、彼が出所してから、たった5日目の夜までの話なんですね。

    表紙の男性のたたずむ姿は、内容にピッタリです。
    薬丸作品を好きな方は、必読の書です。

  • 顔に刺青を入れた男の復讐の最後までを関わる人の目線で語られながら少しづつ見えてくるその全容。人生の歯車はちょっとしたことで転落していく、、最後に娘のひかりには父親の本当の姿、人柄が『菊池』『荒木』もしくは『中村』から語られることだろう、と思いたい。そしてひかりは結婚して子供を産み幸せになって欲しい。

  • ほんの少し運命の歯車が狂っただけで、人はこうも悲しい生き方しかできなくなってしまうのか。片桐が根っから悪い人間ではないことは序盤から何となくわかるのだが、その行動原理がだんだんと様々な人の目を通して明らかになることで、その優しさと不器用さに胸を打たれる。

  • ページ数はこんなに少ないのにこんなに重厚なストーリー。先入観と切なさと純粋さ。これぞ薬丸作品。

  • 序章は冗長な感じであったが、感動的なエンディングに向かう中盤以降の展開は読み応えがあった。さすが円熟期の薬丸作品。

  • 刑務所への入出所を繰り返す前科5犯の片桐。彼が抱える想いとは。ラストナイトに向かって物語は動き出す。片桐を軸に5人の視点で紡ぎ上げられていく。

    設定や動機の粗さはどうしても目立ってしまい途中までは投げやり気味に読んでいたが、真相に近づいていくと誰かを想い続ける強さ(手法の賛否はともあれ)に胸を打たれた。解説にも記載あるがドラマ化や映画化で非常に冴える作品だろう。

  • 顔にヒョウ柄の刺青を入れ、犯罪を繰り返す男、片桐。第一印象はただの粗暴な男で、現実にいたら嫌悪感しかないタイプ。

    ですが、かつては夫婦でラーメン屋開業を目指す、ごく普通の男だったといいます。どうしてこうなった? と思い始めてからは、ラストまで一気読みでした。

    読後感は、切ないというかやるせないというか…… いちおう復讐は果たせてはいますが、片桐の人生を振り返ると、先ほど書いた感情――切なさ、やるせなさ――がこみあげてくるんですよね。

    変な例えですが、ペットロスに近い状態? 一気読みできたので面白いっちゃあ面白い本なのですけど、妙につらい気分にさせられて落ち込みました。

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著者プロフィール

1969年兵庫県生まれ。2005年に『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2016年に『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を、2017年に短編「黄昏」で第70回日本推理作家協会賞〈短編部門〉を受賞。『友罪』『Aではない君と』『悪党』『死命』など作品が次々と映像化され、韓国で『誓約』が20万部を超えるヒットを飛ばす。他の著作に『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』『刑事の怒り』と続く「刑事・夏目信人」シリーズ、『神の子』『ガーディアン』『蒼色の大地』などがある。

「2020年 『告解』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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