- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041083116
作品紹介・あらすじ
臨床心理士・佐久間美帆が担当した青年・藤木司は、人の感情が色でわかる「共感覚」を持っていた……。美帆は友人の警察官と共に、少女の死の真相に迫る! 著者のすべてが詰まった鮮烈なデビュー作!
感想・レビュー・書評
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柚月さんのデビュー作にして「このミス 大賞」という大評判となった作品。粗削りではあるが、確かに力作。
臨床心理士の佐久間美帆は新人でありながら、救急隊員への暴力を振るった藤木司の治療を行うこととなった。「共感覚」という、人の感情が色で見えるという藤木に、最初は信じられなかった佐久間が徐々に信じて行くことから事件が動き出す。
強引すぎる佐久間の事件への傾注や、障碍者に対する性的暴行などあり、読み味としてはスッキリしないが、事件の黒幕探しは楽しめた。
犯人は途中から分かったが、この犯人の動機や佐久間への暴行がグロ過ぎる。新人の女性作家が良く書けたなと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
他人の言葉が色で見えるという少年と、新人臨床心理士が障害者更生施設の闇を暴いていくサスペンス作品。
中盤まではストーリーに惹き込まれるも、後半は22時35分あたりからのサスペンス劇場を観せられているような展開に失速。私には珍しく、早々に黒幕が分かってしまった(どんでん返しがなかった)ことが残念だった。 -
柚月裕子さんデビュー作品。
きれいな色彩の表紙が気になり手に取った。
「共感覚」を持つ司は、誰にもその能力を信じてもらえず唯一慕ってくれていた彩も失い、孤独にすべての負を抱え込んで生きることを諦めているように感じた。次第に辛くても立ち向かう行動が多くみられるようになったのは、佐久間が司を信じ約束を守る行動を重ねたからだと司の佐久間に対する態度や思いの変化からもわかる。
佐久間は過去からの後悔と司を救いたい一心でどんどん行動していくが、-後先考えない性格なのか- 思考と行動が暴走する場面が多くヒヤヒヤした。元同級生の栗原が冷静かつ強力的でよかった。いいコンビ。
終盤、佐久間の安易な判断により大きな危機が訪れるも、佐久間の患者を思う強い意志と正義感からくる行動があったから真実が解明されたと思う。
事件については、途中まで真相を追ってどんどん深く広がっていくように感じたが、真犯人はもしやという勘が当たって珍しくサラッとわかってしまった。
自分の利益や欲しか考えない残念な大人たちの行動は本当に許せないし、被害者の子供たちを守るには佐久間や看護師:内田のような思いやりある大人が近くにいることって大切だと思う。 -
これ、デビュー作なんや!凄いな。
知的障害者施設の闇って感じ。実際はどうなんか分からんけど、こんなんあったらツライな。何も分かってない子に酷い…
その施設で、少女が自殺?
ほんとに自殺なのか?
臨床心理士の美帆、カウンセリングをした話した事がほんまかどうか色が見える人間嘘発見器の司が真実を…
でも…何となく途中で怪しいヤツ分かる。
まっ!王道って感じの犯人像やな。お前が施設に入っとけ!って思うわ( *`ω´)
なかなか、生々しい描写で、活字なんでええけど、マンガなら電車では読めん…^^; -
面白かった!
柚月裕子さんのデビュー作!
ハードボイルドサスペンス&ミステリーってな感じ
主人公は臨床心理士の美帆。この人すごい!心が強い!
その美帆が担当するのは、人の言葉の感情が色で分かるという「共感覚」の持ち主の司。
司を通して、知的障害者厚生施設で起きた彩の自殺の真相を明らかにするとともに、施設の闇を暴いていくという展開です。
警察ではなく、美帆が事件の真相を暴くというところがちょっと面白い。
もちろん、美帆の友人の警察官栗原がいろいろ助けてくれます。この関係も良いです。
黒幕はなんとなく途中からわかってしまいますが、ラストのその黒幕との対峙シーンがまたすごい!
お勧め! -
展開は予想できるし、一部は胸糞悪い感じもあるが全体としては面白くて読みやすい。年齢と共に一線引いた感じで人と接してしまう事が多い自分に対して、相手に踏み込んで関わる事の難しさとそれを職業としている主人公が凄いと思った。
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このテーマにとても果敢です。読んでて本当に具合が悪くなるぐらいの筆致でした。
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これがデビュー作とはおもえないほど、のちの彼女の作品のスタイルが出来あがっている そして描写が容赦ない 今年に入って読書を再開して、ほかの作家の本も読んだが、いまは彼女の文章がいちばん好きだ ストレスなく入ってくる
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柚月裕子のファンとしてはイマイチな気もするが、これがデビュー作だとなれば流石だと思う。
ミステリとしてはどんでん返しまで含めて途中で展開が読めるが、私たち読者がこういう展開の作品に慣れ過ぎて驚かなくなってしまったので仕方ない。「共感覚」という要素を取り入れたことで、読者への新しい知識を提供しながらも多少SF要素が感じられてしまう。
本作はそういうミステリやSF要素はさておき、根底には精神を疾患した社会的弱者への作者の思いが溢れており、それを理解してもらうためにミステリという方法を採用したのではないかとさえ感じさせる。
それにしてもこのクオリティのデビュー作の後、「最後の証人」「検事の本懐」という傑作を生み出す力量は驚くしかない。
現在、最も好きな作家の一人だ。